レノボ・ジャパンのThinkPad Yoga 260は、液諸ディスプレイを回転させることでタブレットとしても利用できる2-in-1タイプのノートパソコンです。液晶ディスプレイの大きさは12.5型で標準的なノートパソコンよりもふた周り以上コンパクトであるにもかかわらず、CPUには第6世代のCore iシリーズを搭載するなど、パワフルなスペックで構成されています。
今回はメーカーからお借りした実機を使って、ThinkPad Yoga 260の外観や各部の使い勝手、実際の性能などを検証しました。結論から言うと、モバイル向けの2-in-1ノートパソコンとしては非常にパワフルで、外出先でも快適に利用できる仕上がりです。持ち運べる2-in-1モデルを検討している方は、ぜひ参考にしてください。
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ThinkPad Yoga 260のスペック
ThinkPad Yoga 260には、パーツ構成の異なる3種類のモデルが用意されています。それぞれのスペックは、以下の表のとおり。各モデルとも購入時のカスタマイズオプションで、メモリー容量やストレージ・液晶ディスプレイの種類などを変更可能です。
ThinkPad Yoga 260(基本構成時)の主なスペック | |||
エントリーパッケージ | バリューパッケージ | ハイエンドパッケージ | |
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OS | Windows 10 Home 64ビット | ||
CPU | Core i3-6100U(2.30GHz) | Core i5-6200U(2.30GHz) | Core i7-6500U(2.30GHz) |
メモリー | 4GB PC4-17000(最大16GB) | 8GB PC4-17000(最大16GB) | |
グラフィックス | Intel HD Graphics 520(CPU内蔵) | ||
ストレージ | 128 SSD(SATA) | 256 SSD(SATA) | |
光学ドライブ | なし | ||
ディスプレイ | 12.5型、1,366×768ドット、IPS | 12.5型、1,920×1,080ドット、IPS | |
通信機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN、Bluetooth 4.1 | ||
Webカメラ | HD 720p(92万画素相当) | ||
主なインタフェース | USB3.0×2、HDMI、Mini DisplayPort、Lenovo OneLink、microSD/SDHC/SDXC対応メモリーカードスロット、ヘッドホン出力 | ||
バッテリ駆動時間(JEITA2.0) | 最大9.6時間 | ||
本体サイズ/重量 | 幅309.9×奥行き220×高さ17.8mm/1.36kg | ||
オフィス | なし(オプションで追加可能) | ||
税込み価格(2016年9月26日時点) | 10万6002円 | 11万6532円 | 14万2506円 |
ベンチマーク結果をチェック
まずはThinkPad Yoga 260のベンチマーク結果を紹介します。今回試用したのはCPUにCore i7-6500Uを搭載したハイエンドパッケージで、ストレージがSATA接続の256GB SSDからPCIe接続の256GB SSDに変更されています。なお結果はパーツ構成や環境、タイミングなどによって大きく変わることがある点をご了承ください。
Windowsエクスペリエンスインデックス
Windows 10の快適さを表わす指針である「Windowsシステム評価ツール」の結果(Windowsエクスペリエンスインデックス)。もはやこの結果はあまり意味がないものになってきましたが、いちおう比較時の目安として掲載します。
このテストでチェックするのは、「プロセッサ」と「メモリ」、「プライマリハードディスク」の3項目です。各スコアの最高値は「9.9」であるので、かなり高い性能を持っていることがわかります。特にストレージ性能を表わす「プライマリハードディスク」は「9.05」と非常に優秀。PCIe接続SSDの効果が現われています。
試用機のWindowsエクスペリエンスインデックス | |
プロセッサ(CpuScore) | 7.5 |
---|---|
メモリ(MemoryScore) | 7.5 |
グラフィックス(GraphicsScore) | 5.1 |
プライマリハードディスク(DiskScore) | 9.05 |
CINEBENCHベンチマーク結果
CPUの計算性能を計測する「CINEBENCH R15」では、「CPU(マルチコア)」のスコアが「316cb」という結果となりました。Core i7-6500U本来の性能を考えれば妥当なスコアですが、薄型のノートパソコンではスコアが300cbを切ることが少なくありません(熱対策のためにあえて性能を抑えている可能性があるため)。その点を考えると、モバイルノートパソコンとしてはなかなか優秀な結果です。
CrystalDiskMarkベンチマーク結果
ストレージのアクセス速度を計測する「CrystalDiskMark」では、シーケンシャルリード(Seq Q32T1)で2225MB/秒と、驚異的な結果となりました。標準的なHDDが100MB/秒前後、SATA接続のSSDなら500MB/秒ですので、かなり高速であることがおわかりいただけるでしょう。シーケンシャルライトも1262MB/秒と、非常に優秀な結果です。さすがPCIe接続の高速なNVMe版SSDを搭載しているだけのことはあります。
PCMark 8ベンチマーク結果
総合的なパフォーマンスを計測する「PCMark 8」でも、優秀な結果が出ています。3Dゲームや動画のエンコードなど負荷の高い作業ではスコアがそれほど高くはありませんが、写真の加工や文書作成にはまったく問題ありません。モバイルノートパソコンとしては、非常に高めのスコアです。
PassMark PerfomanceTest 8.0ベンチマーク結果
「PassMark PerfomanceTest 8.0」では、CPU性能を表わす「CPU Mark」とストレージ性能を表わす「Disk Mark」で優れた結果が出ています。パフォーマンスを優先するなら、Core i7-6500UとPCIe SSDの組み合わせがベストと言えるでしょう。
ThinkPadシリーズのなかでも特にパフォーマンスが高い
当サイトでこれまで5種類のThinkPadシリーズをレビューしていますが、ThinkPad Yoga 260ではもっとも優れたベンチマーク結果が出ています。同じパーツ構成でも、冷却性能やドライバーソフトの種類、システムのチューニング具合などによってパフォーマンスに違いが現われるのです(もちろん計測時の誤差も影響します)。
ThinkPadのベンチマーク結果(当サイト計測) | ||
モデル | PCMark 8 Creative acceleratedスコア | パーツ構成 |
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ThinkPad Yoga 260 | 4293 | Core i7-6500U/8GBメモリー/256GB SSD(PCIe) |
ThinkPad X1 Carbon | 4118 | Core i7-6500U/8GBメモリー/256GB SSD(PCIe) |
ThinkPad X1 Yoga | 4173 | Core i7-6500U/8GBメモリー/256GB SSD(PCIe) |
ThinkPad T460s | 4046 | Core i7-6600U/8GBメモリー/256GB SSD(PCIe) |
ThinkPad E560 | 3881 | Core i5-6200U/8GBメモリー/500GB ハイブリッドHDD |
3D性能をチェック
ThinkPad Yoga 260は、本来ゲームを楽しむためのモデルではありません。しかし最近ではCPU内蔵のグラフィックス機能でも、中規模クラスの3Dオンラインゲームなら問題なくプレーできます。そこでここからは、ThinkPad Yoga 260で試した3Dゲーム系ベンチマークの結果を紹介しましょう。
先に結論を言うと、国内の人気ゲームなら解像度を1280×720ドットに設定したり、画質を低く調整することである程度快適に遊ぶことができます。作業のあいまに息抜きとして楽しむには十分ですが、本格的に楽しみたいならゲーム用に高性能なGPUを搭載したモデルをおすすめします。
3DMarkベンチマーク結果
総合的な3D性能を計測する「3DMark」では、DirectX 11相当の「Fire Strike」で「778」という結果でした。残念ながらこの性能では、海外の大作ゲームをプレーするのはかなり厳しいでしょう。
しかしDirectX 9相当の「Ice Storm」のスコアはそれほど悪くはありません。国内で人気のゲームはDirectX 9で作られているものが多いため、解像度や画質を調整すればそこそこ遊べるはずです。
ドラクエ10ベンチマーク結果
「ドラゴンクエストXベンチマークソフト」では、1280×720ドットの解像度で「快適」、1920×1080ドットで「普通」という評価になりました。高解像度では画面のカクつきが目立つかもしれませんが、解像度を調整すれば問題なく遊べるかもしれません。
ドラゴンクエストXベンチマークソフト結果 | ||
1280×720ドット | 1920×1080ドット | |
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標準品質 | 7286(とても快適) | 4068(普通) |
最高品質 | 6132(快適) | 3105(普通) |
FF14ベンチマーク結果
「ファイナルファンタジーXIV:蒼天のイシュガルド ベンチマーク」でも、解像度1280×720ドットの標準画質であれば快適に遊べるという評価になりました。解像度や画質を変更すると平均FPSが30を切り、画面のカクつきが目立つようになるかもしれません。
FF14ベンチマーク(DirectX 9)の結果 | ||
1280×720ドット | 1920×1080ドット | |
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標準品質(ノートPC) | 4218(快適) | 2371(普通) |
高品質(ノートPC) | 2785(やや快適) | 1527(設定変更を推奨) |
最高品質 | 2089(普通) | 1131(設定変更が必要) |
人気ゲームは解像度を調整すれば遊べる
ThinkPad Yoga 260は外付けGPUを搭載していないものの、国内で人気の高いドラクエ10やFF14クラスのタイトルであれば、解像度や画質を調整することを問題なく遊べるようです。たまにゲームを楽しみたいという方は、試してみてはいかがでしょうか。
本体の外観をチェック!
続いて、ThinkPad Yoga 260の外観面についてレビューします。基本的にどのパッケージを選んでも外観は同じですが、購入時のカスタマイズオプションから液晶ディスプレイの種類を変えたり指紋センサーを追加したりすると、若干の違いがありますので注意してください。
4種類のスタイルで利用可能
ThinkPad Yoga 260は、液晶ディスプレイを360度回転させることができます。液晶ディスプレイの角度や向きを変えることで、スタンドモード(上記写真左)やテントモード(同中央)、タブレットモード(同右)などで利用可能です。動画を視聴するときや、プレゼン・会議などで相手に画面を見せるのに適しています。特にプレゼンの席で画面をクルリと回転させれば、ちょっとしたインパクトを与えることができるでしょう。
タブレットモードやスタンドモードのときは、キーボード面がデスクに直接触れることになります。キーやトラックポイントが引っかかって、破損してしまうのではないかと心配になる方もいるでしょう。しかしThinkPad Yoga 260ではキーボードのフレームが上昇&キーがロックされる「リフトン ロック」機構を採用しているため、キーやトラックポイントが引っかかったり誤動作することはありません。
気軽に持ち歩けるコンパクトなデザイン
ThinkPad Yoga 260のフットプリント(接地面積)は、幅309.9×奥行き220mmです。A4用紙(幅297×奥行き210mm)よりもひと回り大きい程度と考えると、サイズ感をイメージしやすいでしょう。12.5型で小型の液晶ディスプレイを搭載しているため、本体サイズもコンパクトです。
高さは17.8mmです。15.6型ノートパソコン(平均25mm前後)と比べるとだいぶ薄いのですが、フットプリントが小さいため、めちゃめちゃスリムというほどではありませんでした。液晶ディスプレイを回転させる丈夫なヒンジが付いているので、どちらかというとしっかりとした厚みを感じます。
カタログ上の重量は、約1.36kgとされています。実際に計測してみたところ、約1.31kgでした。モバイル向けのモデルとしては特別軽いわけではありませんが、2-in-1タイプであることとデスクトップパソコン(Core i5クラス)並みの性能であることを考えれば納得できる重さです。
本体の素材には、一般的な樹脂(プラスチック素材)が使われています。カラーはThinkPadシリーズではおなじみのつや消しブラック。メタリック素材のような高い質感はありませんが、かと言って安っぽいわけでもありませんでした。
ハーフグレアで見やすい液晶ディスプレイ
液晶ディスプレイのサイズは12.5型で、試用機では解像度1920×1080ドットのパネルが使われていました。CPUにCore i3/i5を搭載するモデルでは1366×768ドットが基本ですが、カスタマイズオプションからフルHDに変更することができます。
液晶ディスプレイには、発色が自然で視野角が広いIPSパネルが使われています。しかし液晶ディスプレイの表面がやや光沢を抑えた「ハーフグレア」のような仕上がりになっているため、光沢ありのグレアパネルのような鮮やかさは感じられません。コントラストが若干低く、映像はやや青かぶりしているような印象を受けました。
しかしグレアパネルよりも光沢が抑えられているため、光の映り込みもグレアパネルほど激しくはありませんでした。ノングレアよりも発色に優れ、グレアよりも光の映り込みが少ないので、ハーフグレアは両方のいい部分を兼ね備えていると言えます。
十分な大きさでタイプしやすいキーボード
キーボードは、テンキーなしの88キー構成(日本語配列)です。キーピッチは実測で約18.5mmでした。フルサイズ(19mm)には達しませんが、それでも十分な大きさです。Enterキー周辺がやや狭くなっているものの、特に違和感なく利用できました(ただしこれは、筆者が12.5型のThink X260を使っているからかもしれません)。
キーストロークは実測で約2mmでした。ノートパソコンでは1.5mmあたりが標準なので、だいぶ深いストロークが確保されています。ストロークは深いほどタイプ感に優れると言われていますが、実際に使ってみたところ、とても軽快に使うことができました。底打ち感(入力時に指へはねかえってくる力)はまったく感じられず、タイプ時にほどよいクリック感があります。
ただしキーを強めに押すと、わずかなたわみを感じます。特に中指で使うキーをタイプする際に、たわみによる揺れを感じました。もしかすると、キーボードを保護する「リフトンロック」の影響があるのかもしれません。
とは言うものの、総合的には使いやすいキーボードです。外出先でも特にストレスを感じることなく利用できるでしょう。
モバイル利用には十分なインターフェース構成
ThinkPad Yoga 260はコンパクトなモバイルノートパソコンであるため、インターフェースの種類や数はそれほど多くありません。しかしモバイル利用には十分な構成です。
ThinkPad Yoga 260は別売りのThinkPad Pen Proを使うことで、手書き入力が可能です。ちょっとしたメモやスケッチなどに使えるのでとても便利。直感的に操作したい人は、ぜひオプションで追加してください。
また標準搭載の指紋センサーを使うと、センサーに指を当てるだけでWindows 10にサインインできるようになります。セキュリティも強化できるのでおすすめです。
バッテリー駆動時間は実測8時間弱
ThinkPad Yoga 260のバッテリー駆動時間は、カタログ上で約9.6時間(JEITA2.0)とされています。以下の条件で実際のバッテリー駆動時間を計測したところ、テスト開始から7時間53分でバッテリー切れとなりました。カタログ値よりもわずかに短いですが、ネットにアクセスし続けるテストでこれだけもてば十分ではないでしょうか。
バッテリー駆動時間計測時のテスト条件
- Windows 10の電源プランを「省電力」に
- 液晶ディスプレイの明るさを40%に設定
- 輝度(明るさ)の自動調節機能はオフ
- 無線LANとBluetoothはオン
- ボリュームは50%に調整
- 「BBench」で10秒ごとのキー入力と60秒ごとのWebアクセスを有効化
- 満充電の状態からテストを行ない、休止状態へ移行するまでの時間を計測
ベンチマーク中の発熱をチェック
「PCMark 8」実行中のCPU温度とGPU温度を確認してみたところ、それぞれ70度近くまで温度が上昇する場面がありました。しかし限界温度(100度前後)にはまだ余裕があり、本体が触れなくなるほど熱くなることはありませんでした。モバイル向けのThinkPadシリーズでは温度が高くなりすぎるのを防ぐ「インテリジェントクーリング」の機能が有効になっていますので、その効果が現われているものと思われます。
外出先でも快適に作業できるパワフルな2-in-1ノートPC
ということで、今回はレノボの2-in-1ノートパソコン「ThinkPad Yoga 260」についてレビューしました。13.3型以上ではCPUにCore i7を搭載したハイスペックなモデルは珍しくありませんが、11~12型前後のモデルではあまり多くありません。しかも2-in-1タイプならなおさらのこと。パワフルな2-in-1パソコンを探しているなら、ThinkPad Yoga 260がおすすめです。
今回取り上げたThinkPad Yoga 260は、レノボ・ジャパンの直販サイトで販売されています。カスタマイズオプションの詳細や支払い方法、納期などについては、商品ページでご確認ください。
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