ASUSのZenBook 15 UX534FTは、15.6インチの液晶ディスプレイを搭載したスタンダードタイプのノートPCです。グラフィックス機能としてGeForce GTX 1650を搭載しており、特に画像の加工や動画編集などクリエイティブな作業に向いています。
また15インチタイプとしては本体がコンパクトかつスリムで、外観はスタイリッシュです。さらにタッチパッドとしても使える小型のサブディスプレイを搭載しています。
今回はメーカーからお借りしたZenBook 15 UX534FTの実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
※2019年10月31日時点
ASUS ZenBook 15 UX534FTのスペック
画面サイズ | 15.6インチ |
---|---|
解像度 | 1920×1080 |
CPU | Core i7-8565U |
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB SSD |
グラフィックス | GTX 1650 |
LTE | - |
幅×奥行き | 354×220mm |
厚さ | 18.9mm |
重量 | 約1.7kg |
バッテリー | 9.4時間 |
※2019年10月31日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ロイヤルブルー |
---|---|
画面の表面 | 光沢 |
パネルの種類 | IPSパネル |
タッチ / ペン | 非対応 |
光学ドライブ | ー |
テンキー | あり (3列) |
有線LAN | ー |
無線LAN | 11a/b/g/n/ac |
Bluetooth | 5.0 |
USB3.1 | 1 (Gen2) |
USB3.0 | 1 |
USB2.0 | ー |
USB Type-C | 1 (USB3.1 Gen2) |
Thunderbolt 3 | ー |
メモリーカード | SD |
HDMI | 1 |
VGA (D-sub15) | ー |
DisplayPort | ー |
Webカメラ | 92万画素 |
顔認証カメラ | 対応 |
指紋センサー | - |
オフィス | Office Home and Business 2019 標準付属 |
デザインと使いやすさ
2画面で作業効率アップ!
ZenBook 15 UX534FTは、タッチパッドの部分に「ScreenPad」と呼ばれるタッチ対応ディスプレイを搭載している点が特徴です。通常のタッチパッドとして使えるのはもちろん、画面を切り替えることでさまざまな機能を呼び出したり、別のウィンドウを表示するサブディスプレイとしても利用できます。
ScreenPadで利用可能な各種機能は、メニュー画面から呼び出せます。よく使う機能を表示しておけば、ワンタッチで利用できるのでとても便利です。
ZenBook 15 UX534FTには標準でOffice Home & Business 2019が付属していることもあって、エクセルやワード、パワーポイント用の機能も用意されています。ただ実際に使ってみましたが、ちょっと微妙かなというのが正直な感想です。
たとえばそれぞれのショートカットキーを覚えている人であれば、キーボードから操作したほうが効率的な気がします。また利用できる機能も限られており、さらにやり直し (アンドゥ)操作が無効化される場面がありました。オフィスソフトに慣れていない人向けの補助としては有効ですが、バリバリ使うための機能ではないと思います。
とは言うものの2画面表示できるのはカッコいいですし、使うソフトによっては非常に便利です。たとえばSpotifyのプレイリストを表示すれば、作業中でもウィンドウを切り替えることなく瞬時に好みの楽曲に変えられます。ScreenPadは活用しだいで、作業効率が大きく向上するでしょう。
GPU搭載なのにコンパクト
GPUを搭載したゲーミングノートPCの本体は大きくて厚みがあるのですが、同じGPUを搭載したZenBook 15 UX534FTは軽量コンパクトでかつスリムです。見た目はGPU非搭載のスタンダードノートPCと変わりません。むしろ標準的な15インチノートPCよりも小型です。
色鮮やかなディスプレイ
液晶ディスプレイのサイズは15.6インチで、解像度は1920×1080ドットのフルHDです。液晶ディスプレイのベゼルが非常に細いため、画面周りがスッキリとしています。特に画面下のベゼル (ボトムベゼル)が細いため、ほかの15インチタイプよりもコンパクトですがシルエットが若干横長です。
映像は非常に色鮮やかです。液晶ディスプレイには自然な発色で視野角の広いIPSパネルが使われています。公称値ではsRGBカバー率100%とされていますが、実測では91.8%でした。とは言え色域は一般的なノートPCよりも優れており、スマホやPC向けの画像であればプロクオリティーの制作作業でも通用するでしょう。
色域測定結果
sRGBカバー率 | 91.8% |
---|---|
sRGB比 | 100.4% |
Adobe RGBカバー率 | 70.9% |
Adobe RGB比 | 74.4% |
輝度 (画面の明るさ)は計測値で280nitでした。明るすぎるほどではありませんが、作業には十分です。ただ液晶ディスプレイの表面が光沢ありのグレア仕上げなので、映り込みが生じます。気になる場合は、非光沢の保護フィルムを利用するといいでしょう。
ややクセのあるキーボード
キーボードはテンキー付きの日本語配列です。キーピッチ (キーとキーの間隔)は横18.5mmで標準的な19mmよりもわずかに小さいのですが、特に違和感は感じられません。
しかしテンキーが3列構成である点と、一部のキーが極端に小さい点が気になりました。テンキーについてはScreenPadでも代用できるので、4列構成のほうが使いやすい人はそちらを選ぶといいでしょう。
キーストロークは実測で平均1.47mmでした。1.5mmが標準ですが、特に違和感はありません。タイプ感もごく標準的で、押した瞬間のクリック感も確かに感じられます。軽めのタッチならタイプ音は静かですが、強めに叩くとパチパチと音が聞こえました。
インターフェースは十分な構成
周辺機器接続用のインターフェース (端子)類は多くはありませんが、普段使いには十分な構成です。ただし光学ドライブには対応していない点に注意してください。DVDやブルーレイを使う場合は、別途外付けの光学ドライブが必要です。
USB Type-Cはデータ通信のみで、映像出力と充電には非対応でした。
USB Type-Cからの充電
18W | × |
---|---|
30W | × |
45W | × |
スピーカーは底面部に配置されています。このタイプは接地面に向かって音が出るのでややこもりがちなのですが、ZenBook 15 UX534FTでは音がクリアーに聞こえました。一般的なノートPCよりも音の解像感が高く、特に低音域の音は低音らしく聞こえます。高音域もムダに目立つことがなく違和感は感じられません。ノートPCとしては高音質です。
この音質は標準収録のサウンドユーティリティー「AudioWizard」によるもの。試しに効果をオフにしたところ、迫力のないいかにもノートPC的なサウンドでした。AudioWizardによって、ノートPCとしては強めのドンシャリ感が出ていると思います。
ベンチマーク結果
続いてまずはZenBook 15 UX534FTの性能について紹介します。ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがある点をあらかじめご了承ください。
CPU性能
ZenBook 15 UX534FTではCPUとして、第8世代のCore i7-8565Uが使われています。すでに最新の第10世代CPUが登場しているためひと世代古い (第9世代はゲーミングノートPC向けCPUのみ)のですが、最近まで使われていただけあって性能はまだまだ現役レベルです。
CPU性能を計測するベンチマークテストを実施したところ、試用機ではCore i7-8565Uの平均値を上回る優れた結果となりました。さすがにゲーミングノートPC向けのCore i7-9750Hには及ばないものの、非常に優秀です。
CPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-9750H |
14741
|
ZenBook 15 UX534FT (Core i7-8565U) |
10706
|
Core i7-8565U |
9764
|
Core i5-8265U |
8778
|
Core i3-8145U |
5549
|
※スコアは当サイト計測値の平均
高負荷時のCPUクロック (動作周波数)と温度を計測したところ、序盤は高いクロックが出るものの徐々に下がり、1分30秒あたりで2.5GHz前後を推移するようになりました。CPUの熱を上げすぎないようにするためのチューニングで、実際に平均温度は82.1℃とCore i7としては抑えられています。
GPUを利用するFF15ベンチでも同様のテストを行なったところ、CPUの平均温度は若干上がりましたがそのぶん平均クロックもわずかに上がっており、高いパフォーマンスが出ています。
3Dグラフィックス性能
グラフィックス機能として使われているGeForce GTX 1650はエントリー (入門)向けのゲーム用GPUです。ゲーム用としては若干非力ですが、スタンダードノートPCで一般的なCPU内蔵グラフィック機能よりははかるかに高性能。3D性能を計測するベンチマークテストでは、内蔵ググラフィックスのUHD 620に比べて約5.9倍ものスコアが出ました。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 2080 Max-Q |
20160
|
RTX 2070 |
19807
|
RTX 2070 Max-Q |
17147
|
RTX 2060 |
14945
|
GTX 1660 Ti |
14750
|
GTX 1650 |
9039
|
ZenBook 15 UX534FT (GTX 1650) |
7438
|
GTX 1050 Ti |
6770
|
GTX 1050 |
6008
|
MX250 |
3711
|
MX150 |
3386
|
UHD 630 (Core i7) |
1265
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ただし、ゲーミングノートPCで使われているGTX 1650よりはわずかに劣ります。おそらくCPU性能や本体の冷却性能が影響しているのでしょう。とは言え、普段使い用のスタンダードノートPCとしては驚異的なパフォーマンスです。
ゲーム系ベンチマーク結果
ZenBook 15 UX534FTは本来ゲーム用のノートPCではありませんが、ゲーム向けのGPUが使われているということでゲームの快適さについても検証しました。
FF15のような高いグラフィックス性能を必要とする重量級ゲームは厳しいものの、少し重い程度の中量級ゲームであれば解像度や画質を調整することで快適に楽しめます。ガッツリと遊ぶのであればゲーミングノートPCのほうが適していますが、作業のあいまに楽しむ程度であれば十分すぎるパフォーマンスです。
FF15ベンチ (重量級 / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 2624 / やや重い |
標準品質 | 4194 / 普通 |
軽量品質 | 5534 / やや快適 |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (中量級 / DX11)
画質 | スコア / 評価 / 平均FPS |
最高品質 | 7769 / 非常に快適 / 52.7FPS |
高品質 | 10662 / 非常に快適 / 74FPS |
標準品質 | 12684 / 非常に快適 / 94.1FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽量級 / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 17477 / すごく快適 |
標準品質 | 18164 / すごく快適 |
低品質 | 19232 / すごく快適 |
リーグ・オブ・レジェンド (超軽量級 / DX9)
モード | 平均FPS / 最低FPS |
サモナーズリフト (最高画質) | 159.2 FPS / 115 FPS |
TFT (最高画質) | 78.1 FPS / 67 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
フォートナイト (中量級 / DX11)
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
エピック | 44.7 FPS / 38 FPS |
高 | 62.2 FPS / 52 FPS |
中 | 116 FPS / 85 FPS |
低 | 172.7 FPS / 76 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
オーバーウォッチ (軽量級 / DX10)
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
エピック | 62.1 FPS / 52 FPS |
ウルトラ | 87.1 FPS / 73 FPS |
高 | 101.8 FPS / 81 FPS |
NORMAL | 126.1 FPS / 99 FPS |
低 | 146.8 FPS / 132 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ストレージ性能
ストレージとして使われているSSDはPCIe 3.0 x2接続の高速タイプです。アクセス速度は優秀で、実際にファイルのやり取りやアプリの起動でも快適に使えました。
起動時間
ウィンドウズの起動時間は平均9.32秒でした。一般的なノートPCではSSD搭載機種が17秒程度、HDD搭載機種が30秒~1分程度 (筆者調べ)ですので、起動はとても高速です。
なおスリープ時のネット接続&高速復帰のモダンスタンバイ (コネクテッドスタンバイ)にも対応していました。スリープの状態から液晶ディスプレイを開いたり電源ボタンを押したりすると、瞬時にロック画面が表示されます。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 8.9秒 |
---|---|
2回目 | 8.8秒 |
3回目 | 9.4秒 |
4回目 | 9.8秒 |
5回目 | 9.7秒 |
平均 | 9.32秒 |
クリエイティブ性能について
続いて、ZenBook 15 UX534FTにおける動画編集や画像加工の快適さについての検証結果を紹介します。なおここではCPU / GPUの違いが作業にどの程度影響を及ぼすのかについて検証するために、ほかの2機種の結果もまとめました。それぞれのスペックは以下のとおりです。
試用機のスペック
ZenBook 15 UX534FT | m-Book W | ThinkPad X1 Carbon |
---|---|---|
Core i7-8565U | Core i7-9750H | Core i7-8565U |
16GB | 8GB | |
512GB SSD | 256GB SSD + 1TB HDD | 256GB SSD |
GeForce GTX 1650 | UHD 620 |
Photoshopベンチ
Photoshopでの画像加工処理や画像結合などの快適さを計測する「Puget Systems Photoshop Benchmark」では、フィルター処理およびブラー処理などでGTX 1650搭載モデルのほうが優れた結果が出ました。CPUが同じでも、GPUありのほうが高度な画像加工には有利です。
Photoshopベンチの結果
ZenBook 15 | m-Book W | X1 Carbon | |
---|---|---|---|
Overall Basic Score | 643.8 | 697.2 | 539 |
General Score | 56.3 | 61.2 | 43.4 |
Filter Score | 65.7 | 72.7 | 52.8 |
GPU Score | 55.2 | 60.7 | 45.9 |
Photomerge Score | 77.9 | 80.8 | 77.1 |
PCMark 10 Digital Contents Creation
コンテンツ制作時の快適さを計測するPCMark 10のDigital Contents Creationの結果は以下の表のとおりです。写真加工 (Photo Editing)と3D制作 (Rendering and Visualization)では、GTX 1650搭載モデルのほうが高いスコアが出ています。また同じGPUを搭載していても、CPU性能によって快適さが異なります。
PCMark 10 Digital Contents Creationの結果
Zenbook 15 | m-Book W | X1 Carbon | |
---|---|---|---|
Digital Contents Creation | 4853 | 5558 | 3424 |
Photo Editing Score | 5755 | 7247 | 4220 |
Rendering and Visualization Score | 4906 | 7031 | 2267 |
Video Editing Score | 4050 | 3370 | 4168 |
Lightroom ClassicによるRAW現像
Lightroom Classicを使ってRAW画像からJPEG画像への変換 (現像)を行なったところ、GPUの有無では違いが表われませんでした。しかしCore i7-9750Hを搭載しているm-Book Wのほうが処理が早く終わっていますので、CPU性能が大きく影響すると言えます。
Lightroom ClassicによるRAW現像の結果
ZenBook 15 | m-Book W | X1 Carbon |
---|---|---|
1分35秒 | 1分14秒 | 1分34秒 |
Premiereによる動画エンコード
Premiere Proを使って4K動画ファイルをフルHDのMP4ファイルに変換したところ、GPUの機能を使うCUDA処理はCPUだけ利用するソフトウェア処理に比べて圧倒的に有利という結果となりました。
Premiere Proによる動画変換の結果
ZenBook 15 | m-Book W | X1 Carbon | |
---|---|---|---|
ソフトウェア処理 | 7分39秒 | 5分01秒 | 8分17秒 |
CUDA | 2分40秒 | 3分31秒 | - |
パワフルなのにコンパクト!
ということで、今回はZenBook 15 UX534FTのレビューをお届けしました。
一般的にGPU搭載ノートPCはパワフルではあるものの、本体が重くてゴツいというデメリットがあります。逆にGPU非搭載のスタンダードノートPCは軽量かつスリムではあるものの、動画編集などの重い処理には若干不利です。
しかしZenBook 15 UX534FTはスリムなスタンダードノートPC風の外観で、パフォーマンスはゲーミング / クリエイティブノートPC並み。それぞれのいいところを取ったモデルと言えます。特にクリエイティブな作業で利用するのに向いているでしょう。パフォーマンスとデザインの両面を重視したい人におすすめします。
※2019年10月31日時点
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