NVIDIAのGeForce GT 1030は、2017年5月に発表されたデスクトップPC向けの専用グラフィックスチップ (dGPU、以下”GPU”)です。安価ではあるものの性能が低く、一般的にはそれど使用されていません。一部のBTO / CTOパソコンでオプションとして用意されていたり、通販サイトでグラボが安く販売されている程度です。
GeForce GT 1030のスペック
アーキテクチャ | Pascal |
---|---|
GPUコア | GP108 |
製造プロセス | 14nm |
CUDA | 384 |
メモリー規格 | GDDDR5 / DDR4 |
メモリー容量 | 2GB |
ブーストクロック | 1468MHz (GDDR5) /1379MHz (DDR4) |
消費電力 | 30W (GDDR5) / 20W (DDR4) |
特徴は、消費電力が低い点です。ゲーム用の高性能なGTX / RTXシリーズでは300W以上の電源容量が推奨されますが、GT 1030であれば150~180Wのスリム型PCやコンパクトPCでも利用できます。補助電源はないものが主流です。
前述のとおり、性能は高くありません。CPU内蔵グラフィックスよりはベンチマークテストのスコアが高いものの、GTXシリーズのエントリーGPUよりもだいぶ劣ります。グラフィックス性能をブーストすると言うよりも、ウィンドウズのグラフィックス処理をサポートする程度と考えたほうがいいでしょう。
GT 1030の性能比較 (デスクトップPC向けGPU)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8893
|
GTX 1050 |
6945
|
GT 1030 (GDDR5) |
3509
|
RX Vega 11 (Ryzen 5) |
2219
|
Vega 8 (Ryzen 3) |
2178
|
UHD 630 (Core i7) |
1298
|
UHD 630 (Core i5) |
1102
|
UHD 610 (Celeron) |
636
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ノートPC向けGPUと比較すると、外付けGPUであるGeForce MX250よりもやや上といったところです。グラフには掲載していませんが、過去のGPUで言うならGTX 950Mあたりといったところでしょう。
GT 1030の性能比較 (ノートPC向けGPU)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 2080 |
23762
|
RTX 2080 Max-Q |
20066
|
RTX 2070 |
20037
|
RTX 2070 SUPER Max-Q |
18723
|
RTX 2070 Max-Q |
17839
|
RX 5600M |
15718
|
RTX 2060 |
15459
|
GTX 1660 Ti |
14472
|
RTX 2060 Max-Q |
14275
|
RX 5500M |
13021
|
GTX 1060 (6GB) ※デスクトップ向け |
12415
|
GTX 1060 (3GB) ※デスクトップ向け |
11921
|
GTX 1650 Ti |
10417
|
GTX 1650 |
8589
|
GTX 1050 Ti |
7403
|
GTX 1050 |
5858
|
GT 1030 ※デスクトップ向け |
3509
|
MX250 |
3400
|
Radeon (Ryzen 7) |
3384
|
Iris Plus(Core i7) |
2880
|
Radeon (Ryzen 5) |
2652
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
Iris Plus(Core i5) |
2236
|
UHD (Core i7) |
1335
|
UHD (Core i5) |
1273
|
UHD 630 (Core i7) |
1176
|
UHD (Core i3) |
859
|
UHD 600 (Celeron) |
486
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
とは言え、一部のごく軽いゲームでは効果を確認できました。ゲーミングPCほどの性能ではないものの、軽いゲームであれば息抜き程度に楽しめます。
そこでこの記事ではGeForce GT 1030の購入を検討している方のために、ゲームにおける実際のパフォーマンスについて紹介します。
検証機材
今回の検証に使用したPCのスペックは以下のとおりです。CPUがCore i3-9100なので、スコアやFPSが多少低めに出ているかもしれません。Core i5 / Core i7など上位のCPUを使えばFPSは向上するはずですが、それくらいのCPUにはGTX / RTXシリーズを載せたほうが満足度が高いと思います。
試用機のスペック
CPU | Core i3-9100 |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 1TB HDD + 16GB Optane |
グラフィックス | GeForce GT 1030 (2GB) |
GT 1030搭載のグラボには、玄人志向のGDDR5版を使いました。ボードがとてもコンパクトな上にロープロファイル用のブラケットも付いているので、スリム型PCでも使えるかもしれません。
[wpap service=”with” type=”detail” id=”B07Q6X71JD” title=”玄人志向 NVIDIA GeForce GT 1030 搭載 グラフィックボード 2GB シングルファンモデル GF-GT1030-E2GB/LP/D5″]
なおGT 1030にはGDDR5版とDDR4版がある点に注意してください。DDR4版のほうが新しいのですが、性能はかなり低めです。GDDR5版を選ぶようにしましょう。
ゲーム系ベンチマーク結果
GT 1030 + Core i3搭載の試用機で、ゲーム系ベンチマークテストやFPSの計測を行ないました。結果から言うと、意外にも多くのゲームをそこそこ楽しめそうです。
処理の重い重量級ゲームは厳しいものの、少し重い程度のゲームなら画質変更で快適に遊べる目安をクリアーできました。ただし高リフレッシュレートのなめらかな動きで楽しむには、パフォーマンスが足りません。一般的な60Hzでゲームをライトに楽しむ人向けです。
※テストはフルHDで実施
FF15ベンチ (重い / DX11)
処理の重いFF15では、画質を落としてもプレーには厳しい結果でした。おそらく解像度を落としてもかなり厳しいでしょう。海外の大作系ゲームなど、高いグラフィックス性能が必要とされるゲームはほぼムリだと思われます。
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 1128 / 動作困難 |
標準品質 | 1781 / 動作困難 |
軽量品質 | 2470 / 重い |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
プリセットの標準品質で平均55 FPSと、もう少しで快適に遊べる目安の平均60 FPSをクリアーできそうです。このままでもそこそこ遊べますが、画質をさらに落とすか解像度を低くすればよりなめらかに動くでしょう。意外にも好成績です。
画質 | スコア / 評価 / 平均FPS |
最高品質 | 3712 / 24.8 FPS |
高品質 | 4212 / 28.2 FPS |
標準品質 | 8076 / 55 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
モンスターハンターワールド:アイスボーン (重い / DX11)
モンハンアイスボーンでは、なぜか最低画質エラーが発生してしまいました。ただし高画質時の結果が低いので、画質を落としてもプレーは厳しいでしょう。画質と解像度を下げればなんとかというレベルかもしれませんが、そこまでしてプレーするべきかは疑問です。
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
最高 | 20.1 FPS / 17 FPS |
高 | 21.2 FPS / 17 FPS |
中 | 23.9 FPS / 20 FPS |
低 | ※エラー |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
PCゲームのなかでは超軽量級のドラクエ10については、フルHDの最高画質で最高評価が出ています。このクラスのゲームであれば、ストレスなく楽しめるはずです。
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 12856 / すごく快適 |
標準品質 | 15455 / すごく快適 |
低品質 | 18995 / すごく快適 |
PSO2ベンチ (軽い / DX9)
PSO2は比較的軽いゲームですが、最高画質では目標スコアにちょっと足りませんでした。中がいつ程度であれば、同時接続数が多くても問題なくプレーできるでしょう。
簡易描画設定 | スコア |
6 (最高) | 4,966 |
3 | 25,617 |
1 (最低) | 83,783 |
※スコア5,000以上が快適に遊べる目安
リーグ・オブ・レジェンド (LoL) (超軽い / DX9)
このゲームは処理が非常に軽いので、Core i3+GT 1030の構成でも快適に楽しめます。対人戦でキャラが入り乱れる状況でも問題ないでしょう。
モード | 平均FPS / 最低FPS |
サモナーズリフト (最高画質) | 177.5 FPS / 138 FPS |
TFT (最高画質) | 163.8 FPS / 116 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
フォートナイト (少し重い / DX11)
フォートナイトはプリセットの「中」で快適に遊べるレベルです。画質設定をもっと煮詰めれば、もうちょっと高いFPSが出るかもしれません。とは言え120Hz以上の高リフレッシュレートでのプレーには厳しいと思います。
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
エピック | 21 FPS / 16 FPS |
高 | 32.5 FPS / 26 FPS |
中 | 73.7 FPS / 52 FPS |
低 | 119 FPS / 45 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
オーバーウォッチ (軽い / DX10)
このゲームは処理が軽いため、Core i3 + GT 1030の低スペック構成でも画質を落とせば快適に楽しめます。最低画質で平均92.4 FPSですので、高リフレッシュレート対応ディスプレイがあればなめらかな動きを実感できるでしょう。レンダースケールを調整すれば、さらにFPSは上がるはず。eスポーツ系の軽いFPS / TPSならそこそこ楽しめます。
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
エピック | 31.2 FPS / 27 FPS |
ウルトラ | 45.5 FPS / 40 FPS |
高 | 51.8 FPS / 43 FPS |
NORMAL | 68.5 FPS / 58 FPS |
低 | 92.4 FPS / 78 FPS |
※レンダースケール100%、平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
PUBG LITE (軽い / DX11)
本来のPUBGを遊ぶにはパワー不足だと判断したので、軽量版のPUBG LITEを試しました。FPSを計測したところ、高画質でも高いFPSが出ています。画質を下げれば、高リフレッシュレートでのプレーも可能でしょう。
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
ウルトラ | 47.1 FPS / 40 FPS |
高 | 79.3 FPS / 69 FPS |
中 | 111.7 FPS / 82 FPS |
低 | 138 FPS / 111 FPS |
非常に低い | 162.6 FPS / 109 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
マインクラフト ダンジョンズ (軽い / DX11)
画質を下げることで快適に遊べます。ただしモブの少ない難易度 (デフォルト)で計測したため、難易度が上がるとFPSが低下するでしょう。実際には60 FPS以下でもそれなりに遊べますが、基本的には画質を下げてプレーしたほうがいいでしょう。
画質 | 平均FPS |
描画優先 | 45 FPS |
バランス | 54 FPS |
処理優先 | 82 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
Forza 4 (やや重い / DX12)
このゲームはレース系のなかでもグラフィックス重視なので、FPSはやや低めです。画質と解像度を下げれば、カクつきなくプレーできるでしょう。
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
ウルトラ | 14.1 FPS / 8.2 |
ミディアム | 28.4 FPS / 21.3 FPS |
ベリーロー | 50.2 FPS / 43.3 |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
シャドウ オブ ザ トゥームレイダー (重量級 / DX12)
重量級ゲームのSOTTRでは、かなり低い結果が出ました。おそらくCPU性能が低いためだと思われます。このゲームは画質や解像度を下げてムリだと思ってください。
画質 | 平均FPS |
最高 | ※完走できず |
中 | 14 FPS |
最低 | 24 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
息抜き程度のゲームであれば十分な性能
GeForce GT 1030は本来ゲーム向けのGPUではありませんが、ごく軽いゲームであれば快適に楽しめます。ただし画質や解像度、リフレッシュレートは、ゲーミングPCほど優れてはいません。60Hzの低画質でちょっとプレーできればいいかな、という人に向いています。
なお今回の検証で使ったPCについては、以下のリンクから関連機をご覧ください。
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