デルの『Alienware m16 R1』は、ミドルレンジ(中級)からハイエンド(上級)クラス向けのゲーミングノートPCです。CPUは第13世代Coreプロセッサで、GPUはGeForce RTX 40シリーズ。ノートPC向けのCPUとGPUですが、並のデスクトップPC以上の性能を発揮できます。
記事執筆時点での販売価格は、下位モデルで約30万円から。非常に高額な機種ですが、格安タイプよりも品質が高い上に、パーツ構成や機能をある程度カスタマイズできる点が魅力です。ただしフルパワーで利用するとCPUの熱と駆動音のうるささが大きく増すので注意してください。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Alienware m16 R1
スペック
発売日 | 2023年3月10日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
画面 | 16インチ 非光沢 3ms NVIDIA G-SYNC+DDS |
パネル | 1920×1200 480Hz / 2560×1600 165Hz / 2560×1600 240Hz |
CPU | Core i7 13700HX(16コア) / Core i9 13900HX(24コア) |
メモリー | 16GB(8GB×2) / 32GB(16B×2) / 64GB(32GB×2) ※DDR5-4800(Core i7)またはDDR5-5200(Core i9)、最大64GB、スロット×2 |
ストレージ | 1~4TB / 4TB(2TB×2) / 8TB(4TB×2) NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 4060(8GB) / RTX 4070(8GB) / RTX 4080(12GB) / RTX 4090(16GB) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、有線LAN(2.5Gbps) |
インターフェース | USB4 / Thunderbolt 4(USB PD / 映像出力対応)×2、USB3.2 Gen1×2、HDMI2.1、Mini Displayport 1.4、有線LAN、SDカードスロット、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし / 顔認証用IRカメラ |
サイズ / 重量 | 幅368.9×奥行き289.9×高さ25.4mm / 約3.25kg |
バッテリー | 6セル 86Whr ※駆動時間は非公開、バッテリー駆動時はゲーミング性能が著しく低下します |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i9-13900HX(24コア / 32スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB DDR5-4800 |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 4070(8GB) ※最大グラフィックスパワー140W |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Alienware Command Center」の電力設定を「パフォーマンス」に設定。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第13世代のゲーミングPC向けCPUであるCore i7-13700HX(16コア、TDP55W)とCore i9-13900HX(24コア、TDP 55W)が使われています。Core i7-13700HXよりもCore i9-13900HXのほうが高性能です。
ゲーミングノートPC向けCPUとの比較
Core i9-13900HX搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、ゲーミングノートPCとしては非常に優秀な結果が出ました。現時点において、ノートPCとしては最強クラスのパフォーマンスです。
CPUマルチスレッド性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Ryzen 9 7945HX |
14049
|
Core i9-13900HX |
11964
|
Alienware m16(Core i9-13900HX) |
11805
|
Core i7-13650HX |
8977
|
Core i7-13700HX |
8810
|
Core i9-13900H |
8428
|
Ryzen 7 7745HX |
8329
|
Core i7-13700H |
7872
|
Core i9-12900H |
7861
|
Core i9-12900HK |
7711
|
Ryzen 7 7840HS |
7677
|
Core i7-12700H |
7605
|
Ryzen 7 6800H |
6819
|
Core i7-12650H |
6703
|
Core i5-13500H |
6512
|
Ryzen 7 7735HS |
6794
|
Core i5-12500H |
6369
|
Ryzen 5 7640HS |
6028
|
Ryzen 5 7535HS |
5464
|
Ryzen 5 6600H |
5350
|
Core i5-12450H |
5249
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
CPUシングルスレッド性能
CPU | 3DMark CPU Profile 1 thread |
---|---|
Alienware m16(Core i9-13900HX) |
1139
|
Core i9-13900HX |
1113
|
Core i9-13900H |
1102
|
Ryzen 9 7945HX |
1067
|
Core i9-12900H |
1033
|
Ryzen 7 7745HX |
1030
|
Core i7-13700HX |
1029
|
Core i7-13650HX |
1028
|
Core i7-13700H |
1022
|
Core i9-12900HK |
1015
|
Ryzen 7 7840HS |
1009
|
Core i5-13500H |
991
|
Core i7-12650H |
976
|
Core i7-12700H |
967
|
Ryzen 5 7640HS |
951
|
Core i5-12500H |
937
|
Core i5-12450H |
923
|
Ryzen 7 7735HS |
920
|
Ryzen 7 6800H |
894
|
Ryzen 5 7535HS |
878
|
Ryzen 5 6600H |
874
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
ゲーミングデスクトップPC向けCPUとの比較
ゲーミングデスクトップPC向けの高性能CPUと比較しても、遜色ない結果です。非常に高いパフォーマンスを期待できます。
CPUマルチスレッド性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Core i9-13900K |
16473
|
Ryzen 9 7950X |
16065
|
Core i9-13900 |
15335
|
Ryzen 9 7950X3D |
14412
|
Ryzen 9 7900X |
12891
|
Core i7-13700K |
12676
|
Core i7-13700 |
12017
|
Core i9-12900K |
11874
|
Alienware m16(Core i9-13900HX) |
11805
|
Ryzen 9 7900X3D |
11641
|
Core i5-13600K |
10334
|
Core i7-12700K |
10141
|
Core i7-12700 |
9590
|
Core i5-13500 |
9110
|
Ryzen 7 7700X |
9075
|
※そのほかのスコアは3DMark公式サイトによる平均値
CPUシングルスレッド性能
CPU | 3DMark CPU Profile 1 thread |
---|---|
Core i9-13900K |
1211
|
Core i9-13900 |
1173
|
Core i7-13700K |
1150
|
Alienware m16(Core i9-13900HX) |
1139
|
Ryzen 9 7950X |
1112
|
Ryzen 9 7900X |
1109
|
Core i7-13700 |
1103
|
Ryzen 7 7700X |
1102
|
Core i5-13600K |
1092
|
Core i9-12900K |
1091
|
Ryzen 9 7950X3D |
1084
|
Ryzen 9 7900X3D |
1072
|
Core i7-12700K |
1053
|
Core i7-12700 |
1022
|
Core i5-13500 |
1016
|
※そのほかのスコアは3DMark公式サイトによる平均値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはRTX 4060(8GB) / RTX 4070(8GB) / RTX 4080(12GB) / RTX 4090(16GB)が使われています。ミドルレンジからハイエンドまで、幅広く対応可能です。
RTX 4070搭載の試用機で3Dベンチマークテストを行なったところ、ノートPC向けGPUとしては非常に優秀な結果が出ました。同じGPUの平均値をやや上回っているのを見ると、熱によるパフォーマンスの低下などは生じていないと考えられます。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
21665
|
RTX 4080 |
18891
|
RTX 3080 Ti |
13004
|
Alienware m16(RTX 4070) |
12280
|
RTX 4070 |
12053
|
RTX 3080 |
12032
|
RTX 3070 Ti |
11398
|
RTX 3070 |
10497
|
RTX 4060 |
10463
|
RTX 3060 |
8350
|
RTX 4050 |
8341
|
RTX 3050 Ti |
5345
|
RTX 3050 |
4852
|
RTX 2050 |
3531
|
GTX 1650 |
3445
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12 Ultimate)
GPU | 3DMark Speed Way Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
5612
|
RTX 4080 |
4705
|
RTX 3080 Ti |
3177
|
RTX 3080 |
3045
|
Alienware m16(RTX 4070) |
2863
|
RTX 4070 |
2821
|
RTX 3070 Ti |
2840
|
RTX 3070 |
2664
|
RTX 4060 |
2575
|
RTX 3060 |
1893
|
RTX 4050 |
1788
|
RTX 3050 Ti |
445
|
RTX 3050 |
427
|
RTX 2050 |
294
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
熱と騒音について
高性能なゲーミングノートPCではCPUやGPUの発熱量が高いため、内部に熱がこもりがちです。内部の温度が上がりすぎると性能が低下したり、パーツが劣化しやすくなる心配があります。長期間快適に使うためにも、ノートPC冷却台の使用をおすすめします。
CPU温度
Alienware m16 R1を冷却台なしの状態で利用した際のCPU温度を計測したところ、高負荷時でほぼ常時100度に張り付きの状態でした。これは、電源設定を最大パフォーマンスに変更にしているため。高い性能を発揮できるものの、長期的に考えればあまり好ましい状態ではありません。電源設定は標準の「バランス」や静かさ重視の「静粛」に変更しておいたほうがいいでしょう。
GPU温度
GPU温度については、72度前後を推移していました。ただし部分的な最大温度である”GPUホットスポット温度”は80度前後、グラボのメモリー(VRAM)温度を表わす”GPUメモリジャンクション温度”は88度前後と、やや高めの温度で推移しています。許容範囲内ではあるものの、可能であればもう少し温度を落としたいところ。ファンやVRAMのクロック調整ソフトなどを用いて多少パフォーマンスを落としたほうが、PCの長期間良好な状態に保てるかもしれません。
駆動音
ファンの音は、大きく聞こえます。特に高負荷時には、ストレスを感じるほどでした。ヘッドホンやイヤホンを使えば多少は聞こえなくなりますが、場所や時間帯によっては周囲への配慮が必要となるでしょう。
上位モデルであれば基本性能が高いため、パフォーマンスを静音設定に変更してもある程度は快適に遊べるはず。下位モデルであれば、重いゲームをフルパワーでぶん回すような使い方は避けたほうが無難です。
駆動音の計測結果(Core i9+RTX 4070モデル)
電源オフ | 37dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 39.7dBA前後 | ファンの音と排気音がハッキリと聞こえるが、うるさくは感じない |
高負荷時 | 57.7dBA前後 | 排気音がかなり大きい。ヘッドセットを着到すれば多少はおさまるが、それでも聞こえるほど。部屋の外にまで聞こえるほどではない |
ゲーム性能
Core i9 + RTX 4070モデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、非常に優秀な結果が出ました。特にRTX 40シリーズから採用されたDLSS3の対応タイトルでは、フレームレートがかなり伸びる傾向にあります。レイトレ対応タイトルも、フルHDであれば快適に楽しめるでしょう。
RTX 4070検証結果まとめ
- ・激重タイトルでもレイトレオフならWQHDで平均60 fps超
- ・レイトレは1920×1200でなんとか
- ・DLSS3はスゴイ!
- ・中量級FPSは低画質で200~240 fps
- ・競技系FPSは360 fps超
サイバーパンク2077 (重い / DX12)
1920×1200
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ DLSS FG | 59.49 / 48.15 |
レイトレーシング:オーバードライブ | 33.97 / 2.82 |
ウルトラ DLSS FG | 130.5 / 80.95 |
ウルトラ | 85.54 / 42.26 |
2560×1600
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ DLSS FG | 41.90 / 12.3 |
レイトレーシング:オーバードライブ | 26.57 / 5.47 |
ウルトラ DLSS FG | 76.86 / 62.61 |
ウルトラ | 56.29 / 39.84 |
Portal with RTX(激重)
解像度と画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 DLSS FG | 85.5 / 73 |
1920×1200 | 53.8 / 42.9 |
2560×1600 DLSS FG | 51.3 / 35.3 |
2560×1600 | 32 / 27.1 |
※最高画質
ファークライ6(そこそこ重い / DX12)
解像度と画質 | 平均FPS / 最小FPS |
1920×1200 レイトレ 最高画質 | 95 / 84 |
1920×1200 最高画質 | 115 / 102 |
2560×1600 レイトレ 最高画質 | 70 / 64 |
2560×1600 最高画質 | 81 / 64 |
アサシン クリード ヴァルハラ (激重)
解像度と画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 104 / 73 |
2560×1600 最高画質 | 74 / 54 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
1920×1200 最高画質 | 202.2 / 143.9 |
2560×1600 最高画質 | 173.1 / 117.1 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い) ※Vulkan
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
1920×1200 最高画質 | 357 / 274 |
2560×1600 最高画質 | 348 / 283 |
※最高画質設定。ゲーム内ベンチマークの結果
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
解像度 | 平均FPS |
1920×1200 | 419.59 |
2560×1600 | 280.87 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用、画質は最高設定
値段は高いが高品質
記事執筆時点での価格は、下位のCore i7+RTX 4060モデルで約30万円、最上位のCore i9+RTX 4090モデルで約45万円。今回試用したCore i9+RTX 4070モデルなら、約33万円です。下位モデルは割高なので、中位以上のモデルを狙うといいでしょう。
とは言え、一般的なゲーミングノートPCよりもだいぶ高価です。たとえば同じデル製品の下位ブランド「Dell G15」シリーズなら、Core i7+RTX 4060で約19万円。他社製品なら、もっと安い機種もあります。
しかし、安い機種は「なにかを妥協する」必要があるので注意してください。たとえばキーボードの品質やディスプレイの残像感がいまいちだったり、CPUやGPUの性能がちょっと抑えられていたりするかもしれません。ゲームプレーに大きな影響はないかもしれませんが、安い機種ではちょっとした違和感を感じることはよくあります。
https://komameblog.jp/review/g16-7630/
Alienware m16 R1は高いだけあって、基本的には高品質です。さらにカスタマイズオプションにより、メモリー容量やディスプレイのパネルなども変更できる点がポイント。高性能な構成をあえてパフォーマンスを落として使うことで、駆動音の大きさや熱による劣化を抑えられるでしょう。
気になるのは、CPUがかなり熱い点です。何度も繰り返しますが、フルパワーではなく、性能を多少抑え気味に利用するのがベター。冷却台などの熱対策を行なうことも推奨します。
Alienware m16 R1
*
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