デルの『G15 ゲーミングノートパソコン(5530)』(以下、”Dell G15 5530″)は、エントリー(入門)向けのゲーミングノートPCです。CPUは第13世代Coreプロセッサのなかでも、特に高性能なHXシリーズ。GPU(専用グラフィックス)は旧世代のRTX 3050または現行世代のRTX 4050 / 4060が使われています。
高パフォーマンス設定時のベンチマーク結果は非常に優秀でした。しかし騒音が大きい上に内部の熱が高く、あまりいい状態とは言えません。高スペック構成をあえてパフォーマンスを落とすことで、ストレスなく利用できるでしょう。筐体や機能についてはエントリークラスで、こだわりなく使える人に向いています。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Dell G15 5530
スペック
発売日 | 2023年3月17日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
ディスプレイ | 15.6インチ、1920×1080、WVA(広視野角パネル)、非光沢、 |
パネル | 120Hz、45% NTSC、Tt+Tf:35ms / 165Hz、100% sRGB、GtG:8ms(標準)/3ms(最大) |
CPU | Core i7-13650HX(14コア20スレッド) / Core i9-13900HX(24コア32スレッド) |
メモリー | 16GB(8GB×2) ※DDR5-4800、最大32GB、スロット×2 |
ストレージ | 512GB PCIe Gen4 x4 NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(6GB) / RTX 4050(6GB) / RTX 4060(8GB) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、有線LAN(1Gb) |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力対応)×1、USB3.2 Gen1 Type-A×3、HDMI2.1、有線LAN、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅357.26×奥行き274.52×高さ26.95mm / 約2.81~2.97kg |
バッテリー | 6セル86WHr ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-13650HX(14コア20スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 4060(8GB) |
最大グラフィックスパワー | 140W |
※各ベンチマークテストはまずWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定。さらに標準収録ユーティリティー「MyDell」の「電源マネージャ」→「設定」→「サーマルモード」を「超高パフォーマンス」に設定し、電源アダプターを接続した状態で実施しています。
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしてはインテル第13世代のCore i9-13900HX(24コア32スレッド、PBP 55W)またはCore i7-13650HX(14コア20スレッド、PBP 55W)が使われています。HXシリーズはハイエンドゲーミングノートPC向けで、ゲーミングノートPCでは一般的なHシリーズよりもPBP(プロセッサーベースパワー、TDPとほぼ同意)が高く、そのぶん高いパフォーマンスを発揮できます。
Core i7-13650HXの試用機で行なったCPUベンチマーク結果は、以下のグラフのとおり。ゲーミングノートPC向けCPUのなかでは最上位ではないものの、非常に優秀な結果と言っていいでしょう。同じCPUの平均値をやや下回っているものの、ほぼ誤差のレベル。熱などによる性能低下の影響は少ないと考えていいはずです。
ゲーミングノートPC向けCPUのマルチコア性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Ryzen 9 7945HX |
14049
|
Core i9-13900HX |
11964
|
Core i7-13650HX |
8977
|
Dell G15 5530(Core i7-13650HX) |
8964
|
Core i7-13700HX |
8891
|
Core i9-13900H |
8428
|
Ryzen 7 7745HX |
8329
|
Core i5-13500HX |
8237
|
Core i7-13700H |
7872
|
Core i9-12900H |
7861
|
Core i9-12900HK |
7711
|
Ryzen 7 7840HS |
7677
|
Core i7-12700H |
7605
|
Ryzen 7 6800H |
6819
|
Core i7-12650H |
6703
|
Core i5-13500H |
6512
|
Ryzen 7 7735HS |
6794
|
Core i5-12500H |
6369
|
Ryzen 5 7640HS |
6028
|
Ryzen 5 7535HS |
5464
|
Ryzen 5 6600H |
5350
|
Core i5-12450H |
5249
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
ゲーミングノートPC向けCPUのシングルコア性能
CPU | 3DMark CPU Profile 1 thread |
---|---|
Core i9-13900HX |
1113
|
Core i9-13900H |
1102
|
Ryzen 9 7945HX |
1067
|
Core i9-12900H |
1033
|
Ryzen 7 7745HX |
1030
|
Core i7-13700HX |
1029
|
Core i7-13650HX |
1028
|
Dell G15 5530(Core i7-13650HX) |
1020
|
Core i7-13700H |
1022
|
Core i9-12900HK |
1015
|
Ryzen 7 7840HS |
1009
|
Core i5-13500H |
991
|
Core i7-12650H |
976
|
Core i7-12700H |
967
|
Ryzen 5 7640HS |
951
|
Core i5-12500H |
937
|
Core i5-12450H |
923
|
Ryzen 7 7735HS |
920
|
Ryzen 7 6800H |
894
|
Ryzen 5 7535HS |
878
|
Ryzen 5 6600H |
874
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
デスクトップPCとのCPU性能比較
デスクトップPC向けCPUとの比較すると、Dell G15 5530で使われているCore i7-13650Hは第13世代Core i5相当と考えていいでしょう。ハイエンドゲーミングPCには到底及びませんが、それでもCore i5クラスであれば十分です。
デスクトップPC向けCPUのマルチコア性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Core i9-13900K |
16473
|
Ryzen 9 7950X |
16065
|
Core i9-13900 |
15335
|
Ryzen 9 7950X3D |
14412
|
Ryzen 9 7900X |
12891
|
Core i7-13700K |
12676
|
Core i7-13700 |
12017
|
Core i9-12900K |
11874
|
Ryzen 9 7900X3D |
11641
|
Core i5-13600K |
10334
|
Core i7-12700K |
10141
|
Core i7-12700 |
9590
|
Core i5-13500 |
9110
|
Ryzen 7 7700X |
9075
|
Dell G15 5530(Core i7-13650HX) |
8964
|
Core i5-13400 |
7358
|
Ryzen 5 7600X |
7071
|
Core i5-12500 |
6098
|
Core i5-12400 |
5960
|
Core i3-13100 |
4238
|
Core i3-12100 |
4044
|
※そのほかのスコアは3DMark公式サイトによる平均値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはNVIDIA RTX 4060 Laptop GPUが使われています。Dell G15 5530では、GPUの最大グラフィックスパワーが140Wに設定されていました。規格上の定格値は35~115Wなので、Dynamic Boost 2.0により性能がだいぶ底上げされていると思われます。
3Dベンチマークテストの結果は以下のとおり。同じGPUの平均値とのさがわずかであることから、本来の十分な性能が発揮されているものと思われます。旧世代と比較すると、ミドルハイ相当のRTX 3070をわずかに下回る程度。フルHDのゲームプレーであれば十分すぎるほどの性能であり、外付けディスプレイを利用したWQHDでのプレーにも問題ないでしょう。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
21665
|
RTX 4080 |
18891
|
RTX 3080 Ti |
13004
|
RTX 4070 |
12053
|
RTX 3080 |
12032
|
RTX 3070 Ti |
11398
|
RTX 3070 |
10497
|
RTX 4060 |
10463
|
Dell G15 5530(RTX 4060) |
10414
|
RTX 3060 |
8350
|
RTX 4050 |
8341
|
RTX 3050 Ti |
5345
|
RTX 3050 |
4852
|
RTX 2050 |
3531
|
GTX 1650 |
3445
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12 Ultimate)
GPU | 3DMark Speed Way Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
5612
|
RTX 4080 |
4705
|
RTX 3080 Ti |
3177
|
RTX 3080 |
3045
|
RTX 4070 |
2821
|
RTX 3070 Ti |
2840
|
RTX 3070 |
2664
|
Dell G15 5530(RTX 4060) |
2597
|
RTX 4060 |
2575
|
RTX 3060 |
1893
|
RTX 4050 |
1788
|
RTX 3050 Ti |
445
|
RTX 3050 |
427
|
RTX 2050 |
294
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
デスクトップ向けGPUとの比較
ノートPC向けより高性能なデスクトップPC向けGPUのスコアと比較したところ、一般的なDirect X12対応タイトルのテストでは、デスクトップPC向けのRTX 4060(8GB)とあまり変わらない結果でした。性能的にはデスクトップPC相当と考えてもいいでしょう。
デスクトップPC向けGPU性能(DirectX 12,WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
36195
|
RTX 4080 |
28127
|
RTX 4070 Ti |
22746
|
RTX 3090 Ti |
21766
|
RTX 3090 |
19903
|
RTX 3080 Ti |
19600
|
RTX 4070 |
17861
|
RTX 3080 |
17654
|
RTX 3070 Ti |
14839
|
RTX 3070 |
13647
|
RTX 4060 Ti(8GB) |
13447
|
RTX 3060 Ti |
11726
|
RTX 4060 |
10622
|
Dell G15 5530(RTX 4060) |
10414
|
RTX 2070 SUPER |
10179
|
RTX 3060 |
8733
|
RTX 3050 |
6204
|
GTX 1650 |
3555
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
デスクトップPC向けGPU性能(DirectX 12 Ultimate)
GPU | 3DMark Speed Way Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
10008
|
RTX 4080 |
7172
|
RTX 3090 Ti |
5885
|
RTX 4070 Ti |
5437
|
RTX 3090 |
5362
|
RTX 3080 Ti |
5303
|
RTX 3080 |
4604
|
RTX 4070 |
4445
|
RTX 3070 Ti |
3749
|
RTX 3070 |
3441
|
RTX 4060 Ti(8GB) |
3159
|
RTX 3060 Ti |
2949
|
Dell G15 5530(RTX 4060) |
2597
|
RTX 4060 |
2518
|
RTX 3060 |
2173
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
熱と騒音について
本体が小さいと、内部に熱がこもりがちです。内部の温度が上がりすぎると性能が低下したり、パーツが劣化しやすくなる心配があります。
表面温度
まずDell G15 5530の表面温度は、キーボード上部がそこそこ熱く感じました。しかし触れないほどではなく、直接触れなければ大きな影響はありません。
CPU温度
高負荷時におけるCPUの温度を計測したところ、テスト開始直後から最後まで、ほぼ100度に張り付きの状態でした。センサーのデータを見ると、各コアでサーマルスロットリング(熱による性能低下)が頻発しています。非常に高温で、あまり良くない状態と言っていいでしょう。
GPU温度
GPUに高い負荷をかけるストレステストを行なったところ、「GPU温度」自体は平均83.7度とちょっと高いかなという程度でした。しかし部分的な最大温度である”GPUホットスポット温度”は平均104.7度前後、グラボのメモリー(VRAM)温度を表わす”GPUメモリジャンクション温度”は平均101.9度前後と、非常に高温です。ただしこれはGPU自体の発熱というよりも、CPUの発熱が強く影響している可能性があります。
駆動音
高負荷時の駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、かなり大きく聞こえます。エアコンの最大出力時と同程度と考えれば、イメージしやすいかもしれません。
ただ、ヘッドホンやノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを装着した上でBGMや効果音が再生されれば、あまり気にならないかもしれません。
駆動音の計測結果(Core i7+RTX 4060モデル)
電源オフ | 37dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 37.3dBA前後 | 「サー」という排気音がうっすらと聞こえる。音は気にならないレベル |
軽作業中 | 37.7dBA前後 | 上記とほぼ変わらず |
高負荷時 | 48.1dBA前後 | 排気音が大きく聞こえる。ヘッドセットを着用しても多少は聞こえるが、BGMや効果音が再生されれば気にならない |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~53dBA前後 | - |
熱と騒音についてのまとめ
高負荷時におけるCPUの発熱は相当高く、その影響で駆動音もかなり大きく聞こえます。今回は最大パフォーマンス設定でテストを行ないましたが、騒音とパーツへの影響を考えれば、標準設定あるいは静音設定を選ぶべきでしょう。さらにノートPC冷却台を使うなどの熱対策もおすすめします。
ゲーム性能
Core i7 + RTX 4060モデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、優秀な結果が出ました。フルHDであれば、どんなゲームでも快適に楽しめるでしょう。ただしこれは最大パフォーマンス設定時のこと。熱や音が気になる場合は、パフォーマンスを抑えた状態でのプレーをおすすめします。※低設定時のテストは行なっていません
検証結果まとめ
- ・激重タイトルでもプレー可能
- ・フルレイトレはやや厳しい
- ・中量級FPSは高画質でも165fps超
- ・競技系FPSは外部出力で300fps超
※最大パフォーマンス設定時
サイバーパンク2077 (重い / DX12)
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ DLSS FG | 53.46 / 22.12 |
レイトレーシング:オーバードライブ | 29.36 / 21.98 |
ウルトラ DLSS FG | 128.52 / 101.68 |
ウルトラ | 90.17 / 66.83 |
Portal with RTX(激重)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
フルHD 最高画質 DLSS FG | 64.7 / 49.2 |
フルHD 最高画質 | 39.3 / 32.1 |
ファークライ6(そこそこ重い / DX12)
画質 | 平均FPS / 最小FPS |
フルHDレイトレ最高画質 | 93 / 83 |
フルHD最高画質 | 113 / 98 |
アサシン クリード ヴァルハラ (激重)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
フルHD最高画質 | 100 / 69 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
フルHD 最高画質 | 220.3 / 142.6 |
フルHD 最低画質 | 298.8 / 198.5 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
レインボーシックス シージ(軽い) ※Vulkan
画質 | 平均FPS / 最低FPS |
フルHD | 310 / 260 |
※最高画質設定。ゲーム内ベンチマークの結果
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
画質 | 平均FPS |
フルHD | 448.33 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用、画質は最高設定
低パフォーマンス設定で使うのがおすすめ
高パフォーマンス設定時のベンチマーク結果は、非常に優秀です。デスクトップ版のゲーミングPCと比べれば、第13世代Core i5+RTX 4060搭載機と同程度と考えていいでしょう。
しかし高負荷時における熱と騒音も、相当なものです。特にCPUの発熱には注意してください。実際のゲームではそこまで高温になる場面は少ないかもしれませんが、念のため高パフォーマンス設定ではなく標準設定か静音設定で利用することをおすすめします。今回は筆者のミスで静音設定時のベンチマークを行なっていませんが、メーカー製ユーティリティーのパフォーマンス設定は主にCPU性能を調整するものなので、グラフィックス性能についてはあまり大きく変わらないはずです。
筐体面では、本体がかなり大きく感じます。またキーボードやディスプレイについても、エントリー向けの品質と言っていいでしょう。コスパはほどほどといったところですが、運用にはユーザー自身の工夫や対策が必要です。
Dell G15 5530
*
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