ASUS Chromebook Flip C436FAは、14インチのフルHDディスプレイを搭載する2-in-1タイプのChromebook (Chrome OS搭載ノートPC)です。CPUはインテル第10世代のCore iプロセッサーで、上位モデルはCore i7-10510Uを搭載。価格はCore i3搭載の最安モデルで税込11万5500円から。
直販サイトで購入可能なモデル
CPU/メモリー/ストレージ/その他 | 税込価格 |
---|---|
Core i3-10110U/8GB/128GB SSD | 11万5500円 |
Core i3-10110U/8GB/128GB SSD/USIペン付き | 12万0500円 |
Core i5-10210U/8GB/256GB SSD/USIペン付き | 15万0500円 |
Core i7-10510U/16GB/512GB SSD/USIペン付き | 17万0500円 |
Core i7-10510U/16GB/512GB SSD/USIペン付き、英字配列 | 17万0500円 |
※2020年10月27日時点
「Chromebookで11万円だって!?」――読者のなかには、そう感じる人もいるかもしれません。確かに現行の売れ筋は3~4万円台の格安機種で、Chromebookと言えば「安い」とイメージする人は多いでしょう。

3万円台の「IdeaPad Slim 350i Chromebook」。値段/仕上がり的に多くの人がイメージしているのはこんなモデルのはず
しかしChromebook本来の特徴は安いことではなく、動作が軽くて手軽という点です。低スペックでもサクサク使えるので、結果的に安い値段で販売されているにすぎません。安いことがChromebookの意義ではないのです。

ミドルレンジ機として7万円台で販売されている「HP Chromebook x360 14c 」
では動作が軽いはずChromebookで、なぜCore i7-10510U搭載モデルが用意されているのでしょうか。筆者としては、それはエンタープライズレベルの高度な作業を行なうためだと考えています。
ネットを見るだけ、動画を観るだけ、あるいはちょっとメモをまとめるだけであれば、CPUはCeleronでも十分です。しかし仮想化ソフトでWindowsを利用する、会社や学校で使う複数のChromebookを管理する、Linuxの各種ツールを使うとなると、Celeron + 4GBメモリー + 32GB eMMCではパワーが足りません。CPUは高性能なほど好ましいですし、大容量のメモリーも必要です。

企業や自治体などエンタープライズレベルの作業には高性能なPCが必要
だったらWindowsやMac、あるいはLinuxを使えばいいんじゃないの? という意見もあるでしょう。この点については、まったくそのとおり。必ずしもChromeOS製品を使う必要はありません。
ですが管理やキッティング (開封から設置までの流れ)のコスト、利用者の教育にかかる時間、ソフトウェアのライセンスなどさまざまな理由でChrome OSが好ましいと判断されるケースは多々あります。

OS/システムの選び方は千差万別
あとは、アレですよ。個人の「ロマン」ってやつ。ハイスペックなChromebookを持ってたらカッコいいし自慢できるし、それだけでも満足感高いじゃないですか。「買ったった!」って感じで。32コアCPUでPCを自作したり、MacBook Proを盛々のフルスペックで選んだりしても、結局メインで使うのはTwitter! みたいなのと同じ。
ですので、ASUS Chromebook Flip C436FAは「エンタープライズレベルの実務に耐えうるパフォーマンス」か「薄くてハイエンドでカッコいいChromebook」というフレーズにグッと来る人向きです。今回はメーカーからお借りした実機を使って、外観や使い勝手、パフォーマンスについてレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ

※2020年10月27日時点
ASUS Chromebook Flip C436FAのスペック
画面サイズ | 14インチ |
---|---|
解像度 | 1920×1080 |
CPU | ・Core i3-10110U ・Core i5-10210U ・Core i7-10510U |
メモリー | ・8GB ・16GB |
ストレージ | ・128GB SSD ・256GB SSD ・512GB SSD |
グラフィックス | UHD |
LTE | なし |
タッチ / ペン | 対応 |
幅×奥行き | 319.5×208mm |
厚さ | 13.76mm |
重量 | 1.15kg |
バッテリー | 約11.8時間 |
自動更新ポリシー | 2028年6月 |
※2020年10月27日時点
本体カラー | エアロジェルホワイト |
---|---|
表面処理 | 光沢 |
パネルの種類 | IPS |
光学ドライブ | ー |
テンキー | ー |
有線LAN | ー |
無線LAN | Wi-Fi 6 (11a/b/g/n/ac/ax) |
Bluetooth | 5.0 |
USB3.1 | ー |
USB3.0 | ー |
USB2.0 | ー |
USB Type-C | 2 (USB3.1) |
Thunderbolt 3 | ー |
メモリーカード | microSD |
HDMI | ー |
VGA (D-sub15) | ー |
DisplayPort | ー |
Webカメラ | HD (92万画素) |
顔認証カメラ | ー |
指紋センサー | 対応 |
デザインと使いやすさ
軽量スリムでスタイリッシュ
ASUS Chromebook Flip C436FAの外観は、とても洗練されています。ボディは軽量かつ強度の高いマグネシウム合金製。本体は非常に薄く、エッジの立ったデザインでシャープな印象です。塗料を盛った感は若干ありますが、質感は上々の仕上がり。軽量コンパクトで、持ち歩きにも向いています。

本体カラーはエアロジェルホワイト

角度や光の当たり方によって、ブルーやピンクなど微妙に色が変化します

ホワイトなので指紋はあまり目立たないのですが、光の当たり方によって指紋が虹色に光ることがありました

ディスプレイが回転するタイプの2-in-1。さまざまなスタイルで利用できます

パームレスト (キーボード面)は明るいシルバー

ディスプレイの開閉自体は軽いのですが、開ける際に指に引っかかりにくく、両手を使う必要がありました

ディスプレイのベゼルは左右5.2mm、上部10mm、下部15.8mm。非常に細く、画面周りがスッキリとしています

底面部には吸気口

排気口は背面側

設置面積は幅319.5×奥行き208mm

B4サイズ (黄色い部分)とA4サイズ (オレンジの部分)との比較。サイズ感としてはA4サイズよりもひと回り大きい程度

高さは公称値で13.76mm、実測で13.7mm、底面部のゴム足を含めても14.5mm。非常に薄い!

前面

背面

重さは実測で1.167kg。片手でも軽々と持ち上げられます

付属の電源アダプターやペンと合わせても1.375kgしかありません
映像は色鮮やか
液晶ディスプレイのサイズは14インチで、解像度は1920×1080ドット。Windows PCでは標準的なスペックですが、1366×768ドットが多いChromebook全体で見れば高解像度です。公称スペックによるとsRGB 100%の広色域タイプで、映像は非常に鮮やか。印刷クオリティーレベルには及ばないものの、画面出力中心ならクリエイティブ作業にも向いています。

14インチのフルHDディスプレイ

色鮮やかで自然な発色

コントラストが高く色鮮やか。映像は明るく映し出されています

ディスプレイ表面は光沢ありのグレアタイプ
標準的なキーボード
キーボードは日本語配列ですが、一部英字配列のモデルも用意されています。テンキーなしのバックライト対応で、配列に違和感はありません。キーストロークは公称値で1.2mmとのことですが、体感的には1.3~1.4mm程度の感じました。キーのクリック感が固く、しっかりとした手応えが感じられます。ただしそのぶん、タイプ音はカクカクと聞こえました。キーボードについては標準的な仕上がりです。

試用機は日本語配列でキーピッチは19mm

「¥」キーとBackSpaceキーがやや小さめ

キーボードバックライト対応

バックライトの明るさにややムラがありました

明るい場所でバックライトを点灯すると、キートップの文字が見えづらくなります

キーストロークは公称値で1.2mm。実際には1.1~1.4mmまでのバラつきがあり、平均すると1.2mm程度です

キーを押した瞬間のクリック感が固いため、入力時にカクカクとしたタイプ音が聞こえます。軽めのタッチ推奨

ディスプレイを開くとキーボードが傾くリフトアップ機構。手首を自然な角度にキープしたまま作業できます
ペン入力に対応
ASUS Chromebook Flip C436FAは、USIペンによる手書き入力に対応しています。ペンが付属するモデルと付属しないモデルが用意されていますが、他社製のUSIペンでも使えたのでペンは別に購入するのもアリでしょう。書き味は非常になめらかで、遅延は気になりませんでした。

USIスタイラスペン「ASUS PEN SA300」。4096段階の筆圧感知に対応

ペンホルダーが付属

ペンホルダーはmicroSDカードスロットにピタッと装着できます

長さは136.3mm、直径は9.6mm

ペンの描き味はやや摩擦がありながらもツルツルとした感触。遅延は気になりません
インターフェースは控えめ
USB端子はType-Cが2ポートのみで、フルサイズ (Type-A)には対応していません。あとはmicroSDカードスロットとヘッドホン端子のみ。ノートPCとしては非常に少ないのですが、本体の薄さを実現するためにいろいろ省略されたのでしょう。最近はワイヤレス機器が多いのでなんとかなりますが、いろいろつなげて使いたい場合はType-Cハブの利用をおすすめします。

端子類はUSB Tyep-CとmicroSDカードスロット、ヘッドホン端子のみ。最小限の構成です

ディスプレイ上部のWebカメラは92万画素

キーボード右上には指紋センサー
左右側面にあるUSB Type-CはUSB PD対応で、充電と映像出力に対応しています。ただし18Wの充電アダプター / モバイルバッテリーでは充電時間が長くなるほか、十分なパフォーマンスが得られないかもしれません。標準付属の電源アダプターが45Wなので、45W以上の機器の利用をおすすめします。
USB Type-Cの機能
18W | △ (低電圧) |
---|---|
30W | ◯ |
45W | ◯ |
65W | ◯ |
100W | ◯ |
映像出力 (DP Alt) | ◯ |
スピーカーは本体側面とキーボード上部に設置されています。サウンドは非常にクリアーで、サラウンド感も抜群。低音域の厚みがやや物足りなく感じたものの、とても高音質です。ビデオ会議や音声通話には問題なく利用できるのはもちろんのこと、音楽を楽しむのにも向いています。ただしボリュームを大きくすると、パームレストに振動が伝わってきました。

側面中央部分にスピーカー。高~中音域中心のサウンド

キーボード上部のサウンドバーは低音中心ですが、パワーはやや控えめ

変形時でもサウンドバーの音がこもらないよう、ヒンジ部分がスピーカーグリル仕様で作られています
ベンチマーク結果
ここからは、ASUS Chromebook Flip C436FAのパフォーマンス (性能)について解説します。ベンチマーク結果は環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがある点をあらかじめご了承ください。
試用機のスペック
型番 | C436FA-E10162 |
---|---|
CPU | Core i7-10510U |
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB SSD |
グラフィックス | UHD Graphics (CPU内蔵) |
Octane 2.0
JavaScritの処理速度を計測する「Google Octane 2.0」のスコアは「48443」でした。試用機ではCore i7-10510Uが使われていますが、スコアはCore i3を搭載した別の機種とあまり変わりません。JavaScriptの性能では、ミドルレンジとハイエンドで大きく変わるわけではないようです。

Google Octane 2.0の結果
ベンチマークスコアの比較
CPU | Octaneスコア |
---|---|
Chromebook Flip C436FA (Core i7-10510U) |
48443
|
HP Chromebook x360 14c (Core i3-10110U) |
43914
|
HP Chromebook x360 14 (Core i5-8250U) |
34408
|
IdeaPad Slim 350i Chromebook (Celeron N4020) |
15729
|
低価格Windows PC (Celeron N4000) |
14495
|
Lenovo Chromebook S330(MT8173C) |
11460
|
Chromebook Tablet CT100PA(OP1) |
10490
|
Geekbench 5
CPU性能を計測するGeekbench 5では、順当な結果が出ています。やはりCore i7はハイエンドクラスのパフォーマンスです。Core i3やCore i5でも、普通に使うには十分な性能でしょう。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Geekbench 5 マルチコアスコア |
---|---|
11インチiPad Pro |
4668
|
Chromebook Flip C436FA (Core i7-10510U) |
3626
|
HP Chromebook x360 14 (Core i5-8250U) |
2938
|
HP Chromebook x360 14c (Core i3-10110U) |
2209
|
Celeron N4020 ※Windows PC |
860
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCMark / 3DMark
軽めの作業の快適さを計測するPCMarkの結果は以下のとおり。エントリークラスと比べると十分高めのスコアですが、ミドルレンジと大きく変わるわけではありませんでした。Core i3モデルなら普段使いでもアリですが、Core i5/i7モデルは軽めの処理向けではないと考えていいでしょう。

Core i7モデルによるPCMarkと3DMarkの結果

Core i31-110U搭載「HP Chromebook x360 14c」によるPCMark (左)と3DMakr Sling Shot (右)の結果
起動時間
電源オフの状態から電源ボタンを押してパスワード入力画面が表示されるまでの時間を計測したところ、平均で6.22秒でした。スリープの状態からなら、液晶ディスプレイを開くと瞬時に復帰します。
レスポンスはかなり良好で、起動に待たされている感はまったくありません。格安なChromebookだと10秒程度ですが、ASUS Chromebook Flip C436FAはさらにワンランク高速です。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 6.7秒 |
---|---|
2回目 | 5.8秒 |
3回目 | 6.2秒 |
4回目 | 6.2秒 |
5回目 | 6.2秒 |
平均 | 6.22秒 |
バッテリー駆動時間
PCMarkのバッテリーテストを試したところ、結果は8時間33分でした。Core i7搭載のハイエンドクラスとしてはそこそこ優秀な結果です。公称値の11.8時間はバッテリー消費を抑えた状態でのテストですので、実駆動時間は8時間程度と考えたほうがいいでしょう。

「PCMark 10 Work 2.0 battery life」の結果
それが欲しい人のためのハイエンドなChromebook
ということで、今回はASUS Chromebook Flip C436FAのレビューをお届しました。
本体は非常にスリムかつ頑丈で見た目も上々の出来映え。端子は少ないものの機能面は十分で、使い心地にも優れています。さすがはハイエンドモデルといったところです。アプリやブラウザーを使った日常使いでの体感速度はミドルレンジ機と変わりませんが、CPUを酷使するような使い方で威力を発揮するでしょう。今後もしかすると来るかもしれないChromebookのハイエンド志向に対して、需要を先取る位置付けの可能性もあります。

完成度の高さはピカイチ!
よく「高いChromebookになんの意味があるの」とか、「だったらWindowsを入れればいいじゃん」という発言を耳にします。まあそれはそうなんですけど、そもそもハイスペックなChromebookってそれを使いたい人のものであって、PCを道具として割り切って使っている人のものではないんですよね。
たとえて言うなら「ラーメンなら日高屋ですむのに、なんで二郎に並ぶの?」と同じこと。そこにロマンがあって、それを魂が求めるからなんです。だからChromebookのハイエンド機は本当に欲しい人が買えばいいですし、響かない人はスルーすればいいんじゃないでしょうか。響く人には激しくオススメです。

※2020年10月27日時点
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