HPの「HP Elite Folio」は、13.5インチディスプレイを搭載する2-in-1ノートPCです。ヴィーガンレザーで覆われた本体は、いい意味でPCらしくない仕上がり。本体は極薄&頑丈な上に5G対応で、持ち歩き用に向いています。

HP Elite Folio
ポイント
- 😄 高級感のあるデザイン
- 😄 極薄2-in-1
- 😄 手書き用のペンが付属
- 🙄 使えるソフトが少ない
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

HP Elite Folioのスペック
OS | Windows 10 Pro |
---|---|
ディスプレイ | 13.5インチ 1920×1280(3:2) IPS 光沢 タッチ対応 |
プロセッサー | Snapdragon 8cx Gen2 |
メモリー | 8 / 16GB LPDDR4X |
ストレージ | 256 / 512GB SSD |
グラフィックス | Adreno 690 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5、5G |
インターフェース | USB Type-C(USB PD / DP Alt対応)×2、マイク入力 / ヘッドフォン出力共用端子 |
生体認証 | 顔認証用IRカメラ |
サイズ / 重量 | 幅298.6×奥行き229.6×高さ16.1mm / 約1.33kg |
バッテリー | 最大約21.1時間 |
※2021年12月7日時点。構成は変更される場合があります
本体デザイン
HP Elite Folioの本体はヴィーガンレザー(フェイクレザー、ポリ塩化ビニル製)で覆われています。外観はA4サイズのシステム手帳風。高級文具のような雰囲気で、ノートPCのようには見えません。しかし本体を開くと画面が回転する、特殊なギミックを備えた2-in-1タイプです。

HP Elite Folioの外観

本体カラーはブラック。落ち着いた雰囲気です

カバーにはヴィーガンレザーを使用。合皮よりもしっとりとした高級感のある手触りです。折れ曲がる部分はステッチで補強されています

画面が回転する2-in-1タイプ

天板中央付近のヒンジを軸に画面が180度回転します

画面を回転した状態でたためばタブレットとして利用可能

パームレストはアルミ製。HPがよく使うシャドウブラックのような色合いです

キーボード上部にペンを収納可能。収納時にはペンが自動的に充電されます

左右のベゼルは極細ですが、カメラのある上部がやや太め

カメラはプライバシーシャッター付き。写真では見づらいのですが、顔認証用のIRカメラも配置されています

インターフェースはType-C×2の必要最低限構成

ペンの収納部分に、nanoSIMスロット(写真右端)

公式スペックにはeSIMについての表記はないものの、Windows 10の機能では有効になっていました(使用できるかは未確認)

電源アダプターはType-Cの65W。重さは312g

スピーカは全部で4つ。うち2つはキーボード両脇に配置されています

残りふたつは左右側面。サウンドは解像感が高くてクリアーに聞こえます。音の厚みはやや控えめ

MIL-STD-810H準拠の高い堅牢性を実現。モバイル利用向けに壊れにくく、頑丈に作られています

ファンレス仕様のため、底面部には排気口がありません
サイズと重量
HP Elite Folioは持ち歩き向けのモバイルノートPCです。13.5インチタイプとしてはサイズがコンパクト。そして非常にスリムに作られています。重量は特別軽いわけではありませんが、難なく持ち歩けるでしょう。

サイズは幅298.6×奥行き229.6mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。A4よりもちょっと大きめです

厚さは実測で16.2mm。ノートPCとしては非常にスリムです

底面部のゴム足がなく、なにかがひっかかることがありません

前面

背面

重さは実測で1.33kg。一般的な13.3インチよりもやや大きい13.5インチタイプとしては軽量

手で持つと多少のズッシリ感はありますが、特に重くは感じません
ディスプレイについて
ディスプレイは非常に明るく、色鮮やかです。アスペクト比(画面の縦横比率)は3:2で、一般的な16:9よりも縦長。そのぶん文章の行数が多く表示されるので、文字主体の作業に向いています。

画面サイズは13.5インチで解像度は1920×1280ドット

アスペクト比3:2の画面はやや縦長で、そのぶん文書の行数が多く表示されます

映像は自然な色合い。若干寒色系ですが、違和感はありません

コントラストが高く、色鮮やか。明るさは公称値で400nit(一般的には250~300nit)

視野角も広く、映像を斜めから見ても色鮮やか。表面は光沢タイプなので、映り込みが生じる場合があります
キーボードについて
キーボードは標準的な日本語配列。キーはやや小ぶりではあるものの、配列に違和感はありません。使い始めから、スラスラと入力できるでしょう。

キーボードはテンキーなしの日本語配列。防滴仕様です

バックライトに対応

キーピッチは18.4mmで、標準値の19mmよりもキーの間隔が狭く作られています。実際に入力すると、確かに少し窮屈に感じました

キーストロークはやや浅めの1.3mm。押した瞬間のクリック感は固めで、手応えは感じられます。指をあまり上げ下げせずに軽く打つ人向き

タイプ音は比較的静かですが、軽い力で打ってもカクカクと聞こえます。強く叩くとタンタンと響くので注意

付属のペンで手書き入力が可能。遅延は気になるほどではなく、普通に作業できるレベル。ただスペック的に、本格的なクリエイティブワークには向いていません

専用ソフトでペンの動作をカスタマイズ可能
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Snapdragon 8cx Gen2 |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Adreno 690(CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
ソフトの互換性について
HP Elite Folioで使われているCPU(SoC)はARMベースのSnapdragon 8cx Gen2で、一般的なインテル / AMDのCPUとは異なります。最大の違いは、x64アプリケーション(64ビットアプリ)が動作しない点。最近はほぼすべてのソフトが64ビットで、そのほとんどが動かないと考えていいでしょう。

ウィンドウズで主流のx64アプリ(64ビットアプリ)は利用できません
マイクロソフトはARM版Windows 10でもx64ソフトを動かせるエミュレーション機能を発表していましたが、実際に利用しようとしたところほとんど利用できませんでした。昔からあるx86(32ビット)版かARM用に作られたArm64版を使うしかありません。マイクロソフトストアからダウンロードできるUWPアプリには一部ARM64対応のものもあるようですが、動くソフトを見つけなければならないという時点で、使い勝手はよくありません。

アドビ系のソフトではPhotoshopとIllustrator、Acrobatの32ビット版を利用できましたが、動きはモッサリとしています
なおWindows 11ではx64エミュレーション機能が有効になるとのことなので、OSをアップデートすれば多少は使えるようになる可能性はあります。
CPU性能
HP Elite Folioで使われているSnapdragon 8cx Gen2は5Gモデムやチップセットなどの各種コンポーネントを含んだ統合型のSoCで、CPUとしての処理を担当するのは8コアの「Kryo 495」です。
8コアと言っても、PC向けCPUのように同列のコアが8個あるわけではありません。高負荷処理を担当する4コア(Cortex-A76ベース)と省電力時の処理を担当する4コア(Cortex-A55ベース)で構成された、いわゆるbig.Little構成のようなものです。
ARM64ベースで動作するCPUベンチマークは現在のところ、Geekbench 5(AArch64)程度しかありません。しかしbig.Little構成的な8コアCPUだと、マルチコアのスコアが体感速度以上に伸びる傾向にあります。ちょっと古いデータしかないのですが、HP Elite Folioでは第10世代のCore i5よりやや低い程度の結果でした。しかし体感的な速度では、そこまで達していないように感じます。
CPUの性能差 (マルチコア )
CPU | Geekbench 5 マルチコア |
---|---|
Ryzen 7 4700U |
5677
|
Core i7-1165G7 |
4900
|
Core i7-1065G7 |
4782
|
Core i5-1135G7 |
4746
|
Ryzen 5 4500U |
4468
|
Core i5-1035G1 |
4005
|
Core i7-10510U |
3539
|
Core i5-10210U |
3379
|
HP Elite Folio |
3023
|
Ryzen 3 3250U |
1730
|
Athlon Silver 3050U |
1461
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
シングルコアのスコアで見ると、格安ノートPC向けCPUと同等レベルです。複数のコアを使わない操作――たとえばウィンドウズの基本操作やファイルのやり取りなど――などでややもたつきを感じるのは、これが原因でしょうか。加えてWindows on ARMが不安定なときがあり、その際に処理の遅れを感じます。
CPUの性能差 (シングルコア )
CPU | Geekbench 5 シングルコア |
---|---|
Core i7-1165G7 |
1539
|
Core i5-1135G7 |
1385
|
Core i7-1065G7 |
1311
|
Core i7-10510U |
1242
|
Core i5-1035G1 |
1217
|
Ryzen 7 4700U |
1146
|
Ryzen 5 4500U |
1089
|
Core i5-10210U |
1072
|
Ryzen 3 3250U |
829
|
HP Elite Folio |
774
|
Athlon Silver 3050U |
760
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ブラウザーによるJavaScritの処理速度を計測する「Google Octane 2.0」ではウィンドウズPCのデータがないため、Chromebookの結果と比較してみました。この結果がPCの総合的な性能を表わすものではありませんが、ある程度の指針にはなると思います。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Octane 2.0スコア |
---|---|
FMV Chromebook 14F (Core i3-1115G4) |
55846
|
HP x360 13c (Core i7-10510U) |
48847
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
43914
|
HP Elite Folio |
36225
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
29424
|
HP 14a(Pentium N5030) |
21124
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
19455
|
CB314(Celeron N4020) |
17922
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
16810
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
16471
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
11585
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
10490
|
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) |
9676
|
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、SoC内蔵のQualcomm Adreno 690が使われます。グラフィックス性能検証用に使っている3DMarkではNight RaidがWindows 10 on ARMに対応しているとのことですが、検証機では動作しませんでした。検証機材になにか問題があったのかもしれません。
またクリエイティブワーク向けソフトのGPUアクセラレーション(GPUサポート機能)には非対応のようです。アドビのPhotoshopを起動したところ、ビデオメモリーが少ないと表示され機能が動作しませんでした。共有メモリーは8GB(16GBモデルの場合)確保されているものの、ソフトウェア的にうまく認識されていないようです。

Photoshopをはじめとするアドビ系ソフトは32ビット版が動くものの、GPUサポート機能が働きません。拡大縮小時に描画がカクつくことがあります
起動時間
ウィンドウズの起動時間(バッテリー駆動時)は平均47.66秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動はちょっと遅く感じます。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 48.5秒 |
---|---|
2回目 | 46.8秒 |
3回目 | 48.7秒 |
4回目 | 46.5秒 |
5回目 | 47.8秒 |
平均 | 47.66秒 |
オフィスとブラウザー利用向き
外観面については、とても高品質です。ヴィーガンレザーを使った本体はいまどきですし、ディスプレイの映像品質も上々。キーボードは好みがわかれると思いますが、軽いタッチで入力する人なら問題なく利用できるでしょう。
ただ現在はARM64対応のソフトが少なく、HP Elite Folio本来の実力を発揮しにくい状況です。エミュレーションで動くソフトはあるものの、ものによっては動きがモッサリとしています。さすがにマイクロソフト謹製のオフィスとEdgeは普通に動くので、これらが主体の作業であれば問題ありません。
もしくはWindows 10 ProのHyper-Vを利用してほかのOSを利用したり、リモートデスクトップ機能などで、ほかのPCを操作するという使い方もあります。
いずれにしても、従来のウィンドウズPCのようにゴリゴリとアレコレする機種ではありません。いままでウィンドウズPCを使ったことがない人なら、わりとすんなり受け入れられるでしょう。PCとしてのスペックよりも「5G」「長時間駆動」「ペン付き」「極薄」というキーワードにビビッとくる人に向いています。

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