2024年発売のパソコンデスクトップパソコンデルレビュー

Inspiron 3030 スモールデスクトップ(3030S)レビュー:「普通」が魅力のスリム型PC

2.5
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Inspiron 3030S

機材貸し出し:デル・テクノロジーズ株式会社

世はまさに大ミニPC時代――と言っても過言ではないくらいの雰囲気がPCマニア界隈にはありますが、世の中的には実はそうでないのかもしれません。アマゾンでは中国メーカー製のミニPCがデスクトップPCランキングで常に上位を占めているものの、価格比較サイトや販売店のランキングでは大手メーカー製で「従来型」の製品がほとんどです。

 

そんなネットのランキングで、いつもだいたい10位以内に入っているのがコレ。デルのスリム型デスクトップPCです。ランキングからゲーミングPCを抜くと、概ね3位あたり。デスクトップPCとしては、なかなかの人気と考えていいのではないでしょうか。

 

Inspiron 3030S

デルのスリム型デスクトップPC「Inspironスモールデスクトップ」

 

このシリーズは毎年新しいモデルがリリースされているものの、サイズや外観、端子構成などはあまり変わりません。。2024年モデルの「3030S」は、CPUに第14世代Coreプロセッサを使用している点と、メモリーがDDR4-3200からDDR5-4400に変更された点が主な特徴。また少しでも価格を抑えたい人のために、第12世代Coreプロセッサのモデルも用意されています。

 

Inspiron 3030S

2024年モデルで選択可能なCPU

 

極小サイズのミニPCがロマンの塊であるのに対し、この手のタイプにはロマンもへったくれもありません。「ザ・堅実」的なところが最善とされるわけです。安定感&安心感重視で、手堅いデスクトップPCを選びたい人に向いています。というより、普通は選ぶならミニPCよりコッチでしょう。

 

ということで、この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。作業用に「選んで間違いのないPC」を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

Inspiron 3030S

Inspironスモールデスクトップ(3030S)

公式サイトを見る

おことわり

このレビュー記事では、メーカー貸し出し機材を1週間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。

スペック

発売日 2024年1月26日
OS Windows 11 Home / Pro
CPU Core i3-14100 / Core i5-14400 / Core i7-14700 / Core i5-12400 / Core i7-12700
メモリー 8GB×1 /  16GB×1 ※スロット2基、DDR5-4400、最大64GB
ストレージ 512GB / 1TB SSD
グラフィックス UHD Graphics 730 / 770(CPU内蔵)
フォームファクター ※独自規格
M.2スロット 2 (ストレージ用×1、Wi-Fiカード用×1)
光学ドライブ DVDスーパーマルチドライブ
ドライブベイ 3.5インチ×1
拡張スロット PCI Express x16 ×1、PCI Express  x1×1
通信 Wi-Fi 6、Bluetooth5.3、有線LAN(1Gb)
電源 180W BRONZE
サイズ / 重量 幅92.6×奥行き292×高さ290mm / 約4.72kg
オフィス なし / Office 2021(Personal / Home & Business)

価格(記事執筆時)

スペック 価格
Core i3-14100 / 8GB / 512GB 6万4705円
Core i5-12400 / 8GB / 512GB 6万8990円
Core i5-14400 / 8GB / 512GB 8万6900円
Core i5-14400 / 16GB / 512GB 9万0900円
Core i7-12700 / 16GB / 512GB 11万9900円
Core i7-14700 / 16GB / 1TB 12万2299円

※2024年6月27日時点

本体デザイン

外観

Inspiron 3030 スモールデスクトップの見た目はとてもシンプルです。業務用としても使われるため、本体デザインに斬新さやスタイリッシュさは感じられません。ですが本体がスリムなこともあって、いい意味で存在感が薄い(目立たない)ように感じます。

 

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)の外観。フロントパネル(樹脂製)はやや青みがかったダークグレー

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

前面と背面

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

前面の幅はわずか9.26cm。比較用のスマホはiPhone 14

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

左右側面。奥行きは29.28cmで、高さは29cm

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

ボックスティッシュとのサイズ比較

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

設置イメージ。ディスプレイは23.8インチ

インターフェース構成

端子類は十分な構成です。DVD-Rなどのメディアを使うための光学ドライブが付いている点が特徴。

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

前面には光学ドライブと電源ボタン、SDカードスロット、ヘッドホン端子、USB2.0×2、USB3.2×1、USB Gen1 Type-C(データ通信のみ)

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

光学ドライブは再生と書き込みが可能なDVDスーパーマルチ

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

背面にはライン出力、HDMI1.4b(最大1920×1200@60Hz)、DisplayPort1.4、USB3.2×2、USB2.0×2、有線LAN

パーツの交換について

本体の分解方法

本体内部にアクセスするには、ちょっと手間がかかります。作業にはドライバーが必要なので、あらかじめ準備しておきましょう。

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

まずは左側面のパネルを外します

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

次にフロントパネルを外します

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

ケージ(フレーム)を取り外します

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

これでメモリースロットやM.2スロットなどに触れるようになりました

メモリーの増設

メモリーの取り付けは簡単です。マザーボード上のスロットさえ出てしまえば、あとは差し込むだけ。デスクトップPC向けのUDIMMに対応しています。

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

メモリースロットは2基。対応規格はDDR5-4400で、最大容量は64GB

SSDの増設

テスト機ではストレージ用のSSDとして、Type-2230のM.2タイプが使われていました。大容量タイプへの換装は可能ですが、ストレージのクローン(コピー)やウィンドウズのクリーンインストールが必要なので注意してください。3.5インチストレージの追加なら、比較的手間がかかりません。

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

SSD用のM.2スロットはこの部分(マザーボード上に①と書かれた部分)。テスト機ではType-2230が使われていましたが、Type-2280にも対応しています

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

ケージ部分には3.5インチ HDDを収納可能。2.5インチ用の取り付けブラケットを使えば、2.5インチのSATA SSDを使えるでしょう

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

SATA用のケーブルは1組だけ

そのほかのパーツ

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

CPU部分には大きめのファン エアフローカバー。Core i5-1440搭載のテスト機では、トップフロー型のCPUクーラーが使われていました。Core i7-14700搭載モデルでも同様だと思われます

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

電源は180W BRONZE。大きさが独自規格っぽいため、交換は難しいかもしれません

Inspiron スモールデスクトップ(3030S)

PCIe x16スロットを搭載していますが、ロープロファイル用のちょっとした拡張ボード向けです。グラボの利用には向いていません

 

ベンチマーク結果

パフォーマンス設定

各種ベンチマークテストはまずWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」に設定。さらに標準収録ソフト「MyDell」の「電源」→「温度管理」を「最適化」にした状態(これが標準設定)で実施しています。

試用機のスペック

CPU Core i5-14400
メモリー 16GB
ストレージ 512GB SSD
グラフィックス UHD Graphics 730(CPU内蔵)

※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります

CPU性能

CPUとしては、第14世代のスタンダードデスクトップPC向けであるCore i3-14100 / Core i5-14400 / Core i7-14700、第12世代のCore i5-12400 / Core i7-12700の計5種類が使われています。

 

Core i5-14400搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、旧世代のCPUを搭載したミニタワー型デスクトップ(IdeaCentre 5i Gen 8とInspiron 3020)と変わらないあるいは低いスコアが出ました。またノートPC向けのCore i9-13900Hを搭載したミニPC(GEEKOM NUC GT13 PRO)ともあまり変わりません。

 

デスクトップPC向けCPU性能比較

CPU CINEBENCH R23
Iテスト機(Core i5-14400)
S1700
M11873
IdeaCentre 5i Gen 8(Core i5-13400)
S1772
M11826
Inspiron 3020(Core i5-13400)
S1762
M13666
GEEKOM NUC GT13 PRO(Core i9-13900H)
S1723
M11651

※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果

 

おそらくですが、スリム型のInspiron 3030Sでは熱対策によってパフォーマンスが若干抑えられているのかもしれません。CPUのパフォーマンスを極限まで使うことが目的の機種ではないため、この点については問題ないと思います。

 

スコアの統計データが公開されているPassMarkの結果を、スタンダードデスクトップPC向けCPUと比較したのが以下のグラフです。

 

デスクトップPC向けCPUの性能比較

CPU PassMark CPU Marks
Core i7-14700
S4183
T45031
Core i7-13700
S4142
T37224
Core i7-12700
S3913
T30793
Core i5-14400
S3783
T26260
テスト機(Core i5-14400)
S3816
T25421
Core i5-13400
S3692
T24885
Core i5-12400
S3527
T19388
Core i3-13100
S3660
T14951
Core i3-13100
S3645
T14651

※「S」はシングル、「T」は総合性能。そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksを参考にしました

このテストでは総合性能のスコアにシングルスレッドのスコアが含まれるため、マルチスレッド時の性能差が若干弱めに現われます。そのためCore i5-1440の平均値と、あまり変わらない結果が出ました。結果としては普通ですが、やはり「最強を目指すPCではない」ので、特に問題はありません。

グラフィックス性能

グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD 730 / 770が使われます。3Dベンチマークテスト結果はかなり低く、ゲームや動画編集での効果は期待できません。基本的に文字や数値データを扱うための機種です。

 

デスクトップPC向けGPU性能(DirectX 12,WQHD)

GPU 3DMark Time Spy Graphics
RTX 3050
6204
GTX 1650
3555
Inspiron 3030S(UHD 730)
637

※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値

PCを使った作業の快適さ

PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。

 

テスト結果の見方

テスト名 概要
Essentials
(一般利用)
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する
Productivity
(ビジネス利用)
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい
Digital Contents Creation
(コンテンツ制作)
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する

 

テストでは、目標値は大きくクリアーしました。ですが、特に比較機よりも優秀というわけでもありません。このあたりは、手堅い性能と考えていいでしょう。

 

ミニPCに関しては、10万円クラスのGEEKOM NUC GT13 PRO(Core i9-13900H搭載)でようやく同じくらいといったところです。

 

PCMark 10ベンチマーク結果

テスト スコア
Essentials
目標値:4100
テスト機10801
GT13P10921
Ins302010496
IdeaCentre10295
M75q10256
Productivity
目標値:4500
テスト機7338
GT13P6840
Ins30207704
IdeaCentre7574
M75q9930
Digital Contents Creation
目標値:3450
テスト機5936
GT13P7429
Ins30205456
IdeaCentre5392
M75q5707

※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの

比較機のスペック(ミニPC)

GEEKOM NUC GT13 PRO Core i9-13900H / 32GB / UHD
Inspiron 3020 Core i5-13400 / 8GB / UHD
IdeaCentre 5i Gen 8 Core i5-13400 / 8GB / UHD
ThinkCentre M75q Gen2 Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon

考察とまとめ

普通の人のための手堅い機種

ザックリと触ってみても、特に目立った部分はありませんでした。しかし、そんな奇をてらわない手堅さが、この機種における最大の魅力と言えるかもしれません。見た目も普通、性能も普通、機能も普通。でも安定動作で信頼感はバツグン。何の問題もなく、確実に使える機種です。それこそが、最近のスリム型PCに求められる要素でしょう。

また「デスクトップPC向けのCPUが使われている」という安心感もあります。ミニPCで使われているのは、ノートPC向けCPUが中心。Core i7やRyzen 7が使われていたとしても、一般的なデスクトップPCよりもCPUパワーで劣る場合があるでしょう。そこまでの性能が必要かどうかは別として、「強いCPUを使っている」という意識は精神衛生的にも大切なことです。

改造には不向き

スリム型だけあって、拡張性に乏しい点は残念です。せいぜいメモリーを32GBにしたり、3.5インチシャドウベイにHDDかSSDを追加するのが関の山でしょう。拡張スロットには、グラボ以外のボードを使うことになりそうです。とは言えそもそもスリム型PCはガッツリ改造するためのものではありませんから、その点をあらかじめ意識しておけば問題ないと思います。

Inspiron 3030S

Inspironスモールデスクトップ(3030S)

公式サイトを見る

#デル #DELL #デスクトップパソコン #スリム型PC

記事を書いた人
こまめ(タカハシリョウ)

お買い得パソコン評論家。毎日各メーカー・各ショップのWebページを500p以上チェックして、安くてお得なパソコンを探しています。元雑誌・書籍編集者で、PC系フリーライターでもあるオジサン。文章に関わる仕事を始めてから25年以上。最高195万PV/月

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