
機材貸し出し:レノボ・ジャパン合同会社
個人的に「おもしろそうだな~」と思っていたレノボの一体型パソコン「Lenovo A100」を借りて試してみました。
これ本当にパソコン?
なにがおもしろそうかっていうと、「パソコンなのに、外付けディスプレイにしか見えない」点です。事前に商品画像から把握していましたが、実物を前にすると本当に外付けディスプレイにしか見えません。一体型PC特有のゴツさとか出っ張りが、まったく見当たらないんですよね。

ディスプレイ付きの一体型パソコン「Lenovo A100 」

背面はこんな感じ

ほかの薄型ディスプレイとの比較。パネル部分は超スリムというわけではありませんが、このくらいの厚さのディスプレイはよくあります
激安PC向けのIntel N100やN97は超小型PCとかスティック型PCに収まるわけですから、ディスプレイのちょっとしたスキマに収まるのも当然と言えば当然。ですが、見た目はディスプレイそのもので格安な一体型PCって、なかなかありませんでしたよね。
まあ2コアのCore i5に無理矢理Windows 11をインストールして、その上サポート期限切れのオフィスまで付けちゃってさらに面倒な初期設定は不要! 的な「絶対に近寄っちゃダメ」な商品は各所で販売されていますけれども、超大手メーカーでライセンス的にも問題なくて見た目がスタイリッシュな製品ってiMac(最新モデルは約20万円)ぐらいしかなかったわけです。
今回取り上げた「Lenovo A100」は、2025年3月の記事執筆時点で価格は5万9840円。N100パソコンとして考えると微妙な値段ですが、スタイリッシュな一体型PCとしてならリーズナブルと言っていいでしょう。誰でも考えつくけれども誰も手を出さなかった領域に、業界最大手メーカーが乗り込んできたカタチです。

記事執筆時点の直販価格は5万9840円
設置が簡単!
本体とディスプレイが分離したタイプのPCは、設置が意外に面倒です。電源ケーブル2本や本体とディスプレイをつなぐ映像用ケーブルなど、いろいろつなぐ必要が必要があります。しかし「Lenovo A100」なら、設置はスタンドを取り付けて電源アダプターをつなぐだけ。なにをどこにつなげばいいのか、迷う場面は少ないでしょう。

スタンド部分にベースを取り付ければ、本体の組み立ては完了

付属の電源アダプターをつなげばOK
ただ、電源ケーブルがディスプレイ下部からぶら下がっているので、見た目がよくありません。気にならないならこのまま使ってもいいのですが、見た目をスッキリさせたいなら配線を工夫するといいでしょう。
とりあえあず電源ケーブルに関しては、背面にテープかなにかで留めればいいと思います。

ケーブルがぶら下がって見えるのがイヤだったので、ケーブルが見えないようにテープで固定しました

ケーブルを回して留めるだけでも、印象が変わります

さらに、ケーブルがスタンドに隠れるように調整した状態
スタンド周りは比較的コンパクトなので、設置スペースはあまり大きく取りません。ただスタンド部分が貧弱なため、画面の向きや角度を変えるのに工夫する必要がありそうです。VESAマウント対応であれば、もう少し柔軟に設置できるんですけどね……。

側面から見た様子。スタンド部分は奥行きが比較的短く、設置に大きな場所が必要ありません

スタンドの可動範囲は、前後のチルトだけ。高さ調節や左右の向き調整には非対応です
付属のマウス&キーボードのケーブルがジャマ
「Lenovo A100」では、周辺機器接続用の端子類がパネル底面部に配置されています。各種ケーブルを接続する際に底面部をのぞき込む必要があり、実際に使っていてここがとても面倒に感じました。せめて背面側であれば、端子の位置を把握しづらいことはなかったでしょう。

パネル底面部。ケーブルを挿すときは底面側からのぞき込む必要があります
さらに、底面からぶら下がったケーブルで画面下がゴチャつくのが非常に残念です。またUSB端子同士の間隔が狭く、たとえばUSB接続のカードリーダーが大きさしだいでは使えないかもしれません。ここはもう少し扱いやすくまとめるべきだったと思います。

電源アダプターと付属のUSBマウス&USBキーボードを接続した状態

せっかくのスタイリッシュな外観が、ぶら下がったケーブルで台なし

ワイヤレスマウスやワイヤレスキーボードを別途用意して使いましょう
HDMI端子は映像入力要ではなく、映像出力用です。ほかの外付けディスプレイを接続するためのもので、デュアルディスプレイで使いたい人向け。映像入力対応であれば、ゲーム機や動画再生デバイスなどでも使えたんですけどね。ここはコスト的に仕方がないところなのでしょうか。

ほかの外付けディスプレイをHDMIで接続した状態
映像は普通のディスプレイ相当
「Lenovo A100」のディスプレイは、画面サイズが23.8インチで解像度が1920×1080ドットのフルHD、色域は99% sRGBで輝度が最大250nit、リフレッシュレートは100Hzで応答速度は14ms。さらに2W×2スピーカー付き。スペック的には、1万円台後半で販売されているディスプレイ専用機と変わりません。ディスプレイ上部に720p Webカメラが付いているのは、パソコンならではといったところ。

画面サイズは23.8インチで、解像度は1920×1080ドットのフルHD
映像の色合いは、やはり1万円台の外付けディスプレイと同等レベルです。特別色が鮮やかとか明るいとかいったことはありません。肯定的に言うなら、スタンダードな映像品質だと思います。とは言え、格安タイプのノートPCよりは鮮やかな色あいです。

sRGB 99%のパネル。外付けディスプレイとしては標準的な映像品質です
23.8インチのフルHDは、デスクトップPC用ディスプレイとしてはもっともスタンダードな仕様です。ただフルHDはそれほど情報量が多くはないため、効率的な情報収集には向いていません。デュアルディスプレイ化すれば効率はアップするものの、基本的にはライトな使い方向けだと思います。

23.8インチのフルHDは、ちょっとした文書作成やメールなどの軽い作業向き
N100としては性能低め
CPUとして使われているIntel N100は、安いのにそこそこ使えることで人気です。「Lenovo A100」でもファイル操作やネットの調べ物などには普通に使えましたが、やや処理が遅く感じる場面が何度かありました。軽めの操作ではそれほど気にならないはずですが、「なんでもできる」的な過度の期待は禁物。特にゲームや動画編集などは避けたほうがいいでしょう。
CPU性能を計測するベンチマークテストを試したところ、同じIntel N100を搭載するミニPCよりもだいぶ低いスコアが出ました。
Alder Lake-N搭載ミニPCの性能比較
CPU | CINEBENCH R23 |
---|---|
CHUWI LarkBox X 2023(N100) |
933
2996 |
Acemagic T8 Plus(N100) |
911
2883 |
NucBox G5(N97) |
791
2877 |
NucBox G3(N100) |
796
2865 |
TRIGKEY GREEN G4(N95) |
936
2797 |
CHUWI HeroBox 2023(N100) |
926
2753 |
NucBox G3 Plus(N150) |
793
2723 |
NiPoGi AK1PLUS(N97) |
969
2656 |
SkyBarium MN22(N100) |
944
2643 |
NucBox G2 Plus(N150) |
790
2579 |
Lenovo A100(N100) |
568
2044
|
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
システム系ツール上では電力制限(PL1とPL2)が「25W」とされているのですが、実際のCPU消費電力を確認すると、最大でも14W程度しか上がっていません。レノボ製品は「インテリジェント・クーリング」と呼ばれる熱とパフォーマンスの自動調整機能が用意されているのですが、もしかするとそれが影響している可能性があります。

ベンチマークテストの結果に大きく影響する「PL1」と「PL2」は「25W」に設定。ほかのN100搭載ミニPCと比べて高い数値が設定されているので、普通は高いスコアが出るはずです

しかし実際には、ベンチマーク中でもCPUの消費電力が13.833Wまでしか上がりませんでした

CPUの発熱に関しては最大で55度と、だいぶ低く抑えられています

内部からの排気音は底面部両脇の排気口から聞こえます。うるさくはないものの、音はハッキリと聞こえました。静かとは言えないレベルです
ゲームに関しては、「ソリティア」などのごくごく軽いタイトルだけにとどめておいたほうがいいでしょう。少しでも重いゲームは動かないわけではありませんが、満足して楽しめるレベルに達していません。

「FF14ベンチ」はフルHDの標準画質で、「1431」の「設定変更が必要」※平均フレームレートは9.12fps

「マインクラフト」は概ね20~30 fps前後ですが、モブや建物が増えると15 fps程度まで下がります。遊べないほどではないものの、動きはかなりカクカクです
考察とまとめ
ワイヤレスのマウスとキーボードを付けてほしい
なにはなくとも、とりあえずはコレ。せっかくスリムでスタイリッシュな筐体なのに、付属の有線マウスと有線キーボードのケーブルでおかげで台無しです。自分でワイヤレスデバイスを追加すれば解決しますが、この機種を選ぶ人が追加購入するかどうか……。どうせなら最初からワイヤレスデバイスを付属しておいて、最初からペアリング済みぐらいまでしておいたほうがスマートではないでしょうか。たとえ予算が少し増えたとしても。

いくらなんでもこれはあんまりです。また端子類もぶら下がって見える底面ではなく、多少は隠れる背面側のほうがよかったかと
「たった6万円」?
個人的には、「Lenovo A100」のキャッチフレーズである「たった6万円で、ひととおりのことができるパソコン」に違和感があります。一体型パソコンとしては確かに安いものの、Intel N100と23.8インチディスプレイの組み合わせで考えるなら、6万円は安くはないでしょう。すべて格安機でそろえるなら3万円程度で済むかもしれません。
とは言え最大手メーカー・レノボのブランド力や安心感、品質保証などを考えれば、約6万円で済むなら十分アリですよ。十分アリだとは思うのですが、「たった6万円」って言っちゃうのはどうかなと。そりゃ20~30万円の最新ノートPCと比べれば「たった」かもしれませんが、6万円は普通の人にとっては安い金額ではないですし、価格面から見ても激安と言えるほどではないと思うんですよね。

メーカーだからこそ、買いあおりしない姿勢でいてほしかったと思います
格安でスタイリッシュな一体型はイイ
ほかにも「VESAマウンtのがあればよかった」とか「HDMI入力があったらいいね」、「USB端子を別の場所にも欲しい」など細かい部分はあるものの、「格安でスタイリッシュな一体型PC」のコンセプトは大いにアリだと思います。扱いも楽ですし、軽めの作業をサッとこなしたいエントリー(入門)クラスの人にはピッタリではないでしょうか。
たとえば高齢者の親向けであったり、簡単な事務作業用だったり、ガッツリとPCゲームをさせたくない学習用だったり、いろんな使い方が考えられます。パソコンに手間とお金をかけたく人向けです。
余談ですが、製品名が「Lenovo A100(Intel)」ということは、「Lenovo A100(AMD)」や「Lenovo A100(ARM)」なんて機種も出たりするんでしょうか……。