
※機材貸し出し:レノボ・ジャパン合同会社
レノボの『Lenovo LOQ 16IRH8』は、エントリー(入門)向けのゲーミングノートPCです。CPUは第13世代Coreプロセッサのなかでも、ゲーミングノートPC向けのHシリーズ。GPU(専用グラフィックス)はエントリー向けのRTX 3050 / RTX 4050、ミドルレンジ向きのRTX 4060が使われています。

Lenovo LOQ 16IRH8
記事執筆時の価格
スペック | 価格 |
---|---|
RTX 3050 / Core i5-13420H / 16GB | 11万9790円 |
RTX 4050 / Core i7-13620H / 16GB | 14万9820円 |
RTX 4060 / Core i7-13620H / 16GB | 16万9840円 |
※2023年11月7日時点
実際にザックリと検証したところ、エントリー向けとしては十分なパフォーマンスでした。また価格が安いシリーズであるにも関わらず、キーの複数同時押しをちゃんと認識できるゲーマー向けのキーボードを採用している点に好感を持てます。珍しいところでは、専用チップ「Lenovo LA1」を利用したパフォーマンス最適化機能「Lenovo AI Engine+」に対応している点も特徴です。
ただ、ゲームプレー時の駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)が大きい点が残念。ヘッドセットを着用してプレーすることになるでしょう。
ポイント
- ✅キーボード品質が高い
- ✅AIチップで処理を最適化
- ✅駆動音が大きい
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
発売日 | 2023年5月16日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 16インチ、1920×1200、IPS、非光沢、144Hz、350nit、45% NTSC |
CPU | Core i5-13420H(8C12T) / Core i5-13500H(12C16T) / Core i7-13620H(10C16T) / Core i7-13700H(14C20T) |
メモリー | 16GB(8GB×2) ※DDR5-5200、スロット×2 |
ストレージ | 512GB / 1TB PCIe Gen4 TLC NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(6GB) /RTX 4050(6GB) / RTX 4060(8GB) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(DP/PD)×1、USB3.2 Gen2×2、USB3.2 Gen1×1、HDMI2.1、有線LAN、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅359×奥行き277.6×高さ21~25.9mm / 約2.6kg |
バッテリー | 約7~8時間 ※ゲームプレー時は極端に短くなります |
本体デザイン

Lenovo LOQ 16IRH8の外観。本体カラーはストームグレーで、排気部分にアクセントとしてライトブルーが使われています

見た目はメタリックですが、ボディは樹脂(プラスチック)製。しかし安っぽくは感じられません。指紋の跡は少し残ります

本体の大きさは幅359mm、奥行き277.6mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。B4サイズよりもひと回り大きい程度

iPhone 14とのサイズ比較

厚さは実測で25.7mm(突起部を除く)

底面部のゴム足(突起部)を含めた高さは31.3mm。設置するとけっこうな厚みを感じます

重さは実測で2.556kg

16インチタイプのゲーミングノートPCとしては、やや大きくて重めです

ディスプレイを開いた状態

キーボード面

ディスプレイのベゼル(枠)は、16インチタイプのゲーミングノートPCとしては細く作られています

ディスプレイ上部のカメラは1080p 30fpsの動画撮影に対応。本体右側面のスイッチを切り替えることで、カメラのオン / オフを切り替えられます

インターフェース構成。左側面のType-Cは65Wでの充電を確認しました。ただしゲームのプレーする場合は、付属の電源アダプターを利用したほうがいいでしょう

付属の電源アダプターは170Wの角口タイプ。重さは547g

スピーカーは底面部の左右に配置されています。左右の音はほんのり聞き分けられるものの、排気音が大きいため音がよく聞こえないシーンが多々ありました。動画やビデオ会議には十分な品質

排気口は背面と左右側面

底面部の吸気口
ディスプレイについて

画面サイズは16インチで、解像度は1920×1200ドット

発色に優れるIPSパネルが使われていますが、色域は45% NTSCと格安クラス。ランクが低いパネルは個体差が大きく、ハズレを引くと色に違和感があるかもしれません

HDRには非対応

リフレッシュレートは144Hz。クオリティーとしてはエントリー(入門)向けですが、一般的なノートPCよりもなめらかな動きでゲームを楽しめます

シャッタースピード1/1600で撮影した画面の動き。最大で3フレーム目まで残像を確認できました。多少の残像感がありますが、エントリークラスとしては優秀なほうです
キーボードについて

キーボードはテンキー付きの日本語配列

左側の配列

右側の配列。Enterキーの周辺で一部のキーが小さく作られています

バックライトの色は白のみ

キーのタイプ感はゲーミングとしては軽め。ストロークはノートPCとしては標準的ですが、押した瞬間のクリック感が軽く感じます。普通のノートPCであれば違和感はないのですが、ゲーミングとしてはやや物足りなさを感じました。とは言え、普段からタイプ感の軽いキーボードを使っているなら違和感は少ないでしょう

キーの同時押しを検証している様子。すべてのキーを押しているわけではありませんが、このパターンならnキーロールオーバーに近い作りのはずです。複雑な操作にも対応できる、ゲーマー向けのキーボードを採用しています
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-13420H(8コア12スレッド) |
---|---|
メモリー | DDR5 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(6GB) |
最大グラフィックスパワー | 95W |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを標準の「Legion Balance Mode」、電源モードを「バランス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
標準収録の設定ユーティリティ『Lenovo Vantage』を使えば、パフォーマンスの調整が可能です。今回のテストでは各ベンチマークテストを、以下のモードで実施しています。
ベンチマーク時の設定
記事中の表記 | サーマル・モード設定 | 概要 |
---|---|---|
最大 | パフォーマンス | 最大出力設定 |
標準 | バランス | 標準設定 |
AI | 「Legion AI Engine+」有効化 | AIチップを利用した最適化設定 |
静音 | 静音 | 動作音を抑えた低出力設定 |

標準収録の「Lenovo Vantage」でパフォーマンス設定を行なえます
CPU性能
CPUとしてはインテル第13世代のCore i5-13420H(8コア12スレッド) / Core i5-13500H(12コア16スレッド) / Core i7-13620H(10コア16スレッド) / Core i7-13700H(14コア20スレッド)が使われています。もっとも高性能なCore i7-13700Hは、カスタマイズモデルでのみ選択可能。残りのCPUを比較すると、スペック的にはCore i5-13420H→Core i5-13500H→Core i7-13620Hの順で高性能です。

第13世代CoreプロセッサH / HXシリーズの主なモデル
Core i5-13420H搭載機でCPUベンチマークテストを行なったところ、現行のゲーミングノートPC向けCPUとしてはやや低めの結果が出ました。検証機はエントリー向けシリーズの下位モデルということで、この結果は仕方がないでしょう。とは言え、シリーズの位置づけを考えればこれでも十分です。より性能が高いほうがいいのであれば、中上位モデルを選んでください。
ゲーミングノートPC向けCPUのマルチコア性能
CPU | 3DMark CPU Profile Max threads |
---|---|
Core i7-13700HX |
8890
|
Core i7-13700H |
7838
|
Core i7-12700H |
7563
|
Core i7-13620H |
7335
|
Ryzen 7 7735HS |
6826
|
Core i7-12650H |
6667
|
Core i5-13500H |
6386
|
Core i5-12500H |
6369
|
Core i5-13420H |
5789
|
Legion(Core i5-13420H, 最大) |
5493
|
Ryzen 5 7535HS |
5447
|
Legion(Core i5-13420H, 標準) |
5319
|
Legion(Core i5-13420H, 静音) |
5280
|
Core i5-12450H |
5259
|
Legion(Core i5-13420H, AI) |
5219
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
ゲーミングノートPC向けCPUのシングルコア性能
CPU | 3DMark CPU Profile 1 thread |
---|---|
Core i7-13700HX |
1029
|
Core i7-13700H |
1022
|
Core i7-13620H |
1015
|
Core i5-13500H |
991
|
Core i7-12650H |
976
|
Legion(Core i5-13420H, 最大) |
971
|
Core i7-12700H |
967
|
Core i5-13420H |
947
|
Core i5-12500H |
937
|
Core i5-12450H |
923
|
Ryzen 7 7735HS |
920
|
Legion(Core i5-13420H, 標準) |
906
|
Legion(Core i5-13420H, AI) |
902
|
Legion(Core i5-13420H, 静音) |
896
|
Ryzen 5 7535HS |
878
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値で、実機の結果ではありません
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはNVIDIA GeForce RTX 3050(6GB) / RTX 4050(6GB) / RTX 4060(8GB)が使われています。RTX 3050は旧世代のエントリーGPUで、RTX 4050は現行世代のエントリークラス。RTX 4060は現行世代のミドルレンジです。
RTX 3050モデル(最大グラフィックスパワー95W)で3Dベンチマークテストを行なったところ、同GPUの平均値を大きく上回る結果が出ました。CPUベンチマークではやや振るいませんでしたが、グラフィックス性能は優秀なようです。
そのほかのモデルでは最大グラフィックスパワーがRTX 4050モデルで95W、RTX 4060で115Wに設定されています。どちらもそれほど高い値ではないため、もしかすると同じGPUの平均値を少し下回るかもしれません。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 4090 |
21665
|
RTX 4080 |
18891
|
RTX 3080 Ti |
13004
|
RTX 4070 |
12053
|
RTX 3080 |
12032
|
RTX 3070 Ti |
11398
|
RTX 3070 |
10497
|
RTX 4060 |
10463
|
RTX 3060 |
8350
|
RTX 4050 |
8341
|
Legion(RTX3050, 最大) |
5631
|
Legion(RTX3050, AI) |
5562
|
Legion(RTX3050, 標準) |
5494
|
RTX 3050 Ti |
5345
|
Legion(RTX3050, 静音) |
5288
|
RTX 3050 |
4852
|
GTX 1650 |
3445
|
※スコアはUL Solutionsによる平均値
熱と騒音について
※室温25度の環境で計測しています。室温の異なる環境では違う結果が出る場合があるので、あらかじめご了承ください
表面温度
ゲームプレー時にはキーボードの上部で熱を感じますが、触れないほどではありません。ゲーム中によく触れるWASDキー周りは、特に温かさを感じませんでした。ただし排気口付近はかなり熱くなるため、周辺に物を置かないほうがいいでしょう。

高負荷時には、背面の排気口付近が熱くなっていました。この周辺に、熱に弱い機器を置くのは控えてください
CPU温度
高負荷時のCPU温度を計測したところ、標準設定では平均70.6度とやや低めであったのに対し、最大設定は95.6度、AI設定では平均94.7度とかなり高めでした。このふたつのモードはベンチマークテストで高いパフォーマンスが出ているものの、高温状態が常時続くことを考えると、熱による影響が心配です。PC本体をいたわりながら使うのであれば基本的には標準設定、多少パフォーマンスが落ちてもいいなら静音設定で利用するといいでしょう。

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度の推移 ※静音設定は未計測
GPU温度
3Dベンチマーク時におけるGPU温度については、問題のない範囲です。平均温度はどれも74~77度の範囲内で、温度がもっとも高い最大設定でもテスト後半に80度前後を推移する程度。別センサーのGPUホットスポット温度も80~91度で、十分許容範囲内でしょう。

DMark Speed Wayストレステストを10分間行なった際のGPU温度の推移
駆動音
駆動音はだいぶ大きく聞こえます。スピーカーからでは音が聞き取りづらいので、ゲーミングヘッドセットなどを着用してプレーすることになるでしょう。最大パフォーマンス設定では音がかなり大きいので、周囲への配慮が必要です。
駆動音の計測結果(Core i5+RTX 3050モデル)
電源オフ | 36.6dB | - |
---|---|---|
待機中 | 37.1~38.2dB | ときどき大きくなるが、基本的には排気音がうっすらと聞こえる程度 |
高負荷時 ※静音 |
40.6dB前後 | 排気音がハッキリと聞こえる。うるさくはないが、常時聞き続けると、ストレスを感じるかもしれない |
高負荷時 ※バランス |
47.6dB前後 | 排気音がだいぶ大きい。スピーカーでのプレーに支障が出るほど |
高負荷時 ※AI |
47.6dB前後 | 同上 |
高負荷時 ※最大 |
50.1dB前後 | 排気音がかなり大きい。ヘッドホンをしても、うっすらと聞こえるほど。部屋の外でも音がわずかに聞こえる |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
熱と騒音についてのまとめ
今回はもっとも性能が低い(消費電力が低くて熱が上がりににくい)Core i5-13420Hモデルを使いましたが、駆動音はかなり大きく聞こえました。上位CPUとなると、より高い熱が生じる可能性があります。駆動音は変わらないかもしれませんが、その場合は内部の熱が上がるので注意してください。
ただより高性能なCPU / GPUを搭載したモデルで、あえてパフォーマンスを抑えれば、熱や駆動音も抑えられる可能性があります。Lenovo LOQ 16IRH8についてはフルパワーで利用するのではなく、余裕のあるスペックとパフォーマンス設定で利用するのがいいでしょう。
ゲーム性能
今回検証したRTX 3050搭載機は、もっとも性能が低いモデルです。重いゲームは画質をかなり落としてなんとか平均60 fpsに近づける程度でした。中量級~軽量クラスのタイトルに限定したほうがいいでしょう。
重いゲームをプレーするなら、RTX 4050 / RTX 4060モデルを選んでください。特にRTX 4060であれば、重いゲームも快適にプレーできます。軽めのシューター系(FPS / TPS)で割り切って遊ぶなら、RTX 4050あたりでもOKです。
RTX3050モデル検証結果まとめ
- ・フルHDなら重量級もなんとか
- ・レイトレはムリ
- ・シューター系は低画質で144 fps超
※計測結果はパフォーマンス設定を「バランス(AIなし)」に設定したときのものです
サイバーパンク2077 (重い / DX12)

※フルレイトレーシング対応 / DLSS3対応
画質 ※DLSS:自動 | 平均FPS / 最低FPS |
レイトレーシング:オーバードライブ | 6.58 / 2.91 |
レイトレーシング:ウルトラ | 30.29 / 17.69 |
ウルトラ | 50.86 / 38.25 |
Portal with RTX(激重)

※フルレイトレーシング対応 / DLSS3対応
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 25.1 / 20.5 |
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)

※DLSS非対応
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 124.1 / 90 |
最低画質 | 226 / 149.5 |
※射撃訓練場で計測
Counter Strike 2(中量級)

※DLSS非対応
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高 | 108.5 / 54.4 |
低 | 207.5 / 92.1 |
※マップ「Dust II」で計測
アサシンクリード ミラージュ(激重)

※DLSS非対応
画質 | 平均FPS / 低位1% |
高 | 59 / 11 |
低 | 77 / 23 |
※解像度スケール:100%、ゲーム内ベンチマークを使用
スターフィールド(重い)

※DLSS非対応
画質 | 平均FPS / 低位1% |
ウルトラ | 26.7 / 16.9 |
低 | 58.4 / 41.8 |
※ニューアトランティスMAST地区屋外で計測
Forza Motorsport(重い)

※DLSS対応、レイトレーシング対応
画質 | 平均FPS / 最小FPS |
ウルトラ | 26.1 / 17.8 |
低 | 57.6 / 40.1 |
※解像度スケール:100%、DLSS:オート、
上位モデルを低出力で利用するのがおすすめ
記事中で何度も触れていますが、やはり気になるのは駆動音の大きさです。ヘッドセットを着用すればあまり気にならないとは言え、できれば静かな状態で使いたいもの。第13世代Coreプロセッサはパフォーマンスが向上したものの発熱が高く、以前の機種に比べて駆動音が大きくなっているように感じます。
ただし駆動音が大きいのは、フルパワーでぶん回すから。パフォーマンスを抑えて使えば、駆動音もある程度は抑えられます。そのためLenovo LOQ 16IRH8は下位モデルよりも、上位モデルのほうがおすすめ。もともと高いパフォーマンスであれば、パワーをある程度抑えてもゲームをそこそこ快適に楽しめるはずです。このあたりはエントリー向けのシリーズなので仕方がないでしょう。より静かに使いたいのであれば、さらに上位のハイエンドブランドを選ぶ必要があります。

低画質・低負荷に設定すれば、より静かに遊べるはず
そのほかのポイントとしては、ちゃんとゲーマー向けのキーボードが使われている点が上げられます。エントリー向けのシリーズでは「リーン」などの特殊操作に対応していない場合があるのですが、Lenovo LOQ 16IRH8であればその点は問題ありません。エントリー向けのゲーミングノートPCとしては、比較的品質が高いシリーズです。
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