アイリスオーヤマのLUCA Note PC IPC-AA1401-HM(以下、”IPC-AA1401-HM”)は、14インチのフルHDディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。定価は税込5万4780円で、現在の販売価格は4万3000円前後。照明器具や家電製品を発売するアイリスオーヤマ初のPCとして、いろんな意味で話題になりました。

LUCA Note PC IPC-AA1401-HM
筆者としてはIPC-AA1401-HMのコンセプトはナシではないものの、実際に触ったところ品質面で大いに不満を感じました。単に低スペックなのに高いというだけでなく、アイリスオーヤマの方針に大きな間違いがあると感じたのです。
IPC-AA1401-HMのスペック
OS | Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 14インチ |
解像度 | 1920×1080 |
CPU | Celeron N4100 |
メモリー | 4GB ※LPDDR4 2133、オンボード |
SSD | 64GB eMMC |
HDD | なし |
グラフィックス | UHD 600 |
リフレッシュレート | 60Hz |
モバイル通信 | - |
堅牢性テスト | - |
色域 / 輝度 | - |
幅×奥行き | 約323×219mm |
厚さ | 約19mm(突起部除く) |
重量 | 約1.3kg |
バッテリー | 5750mAh、約9時間駆動 |
※2021年8月19日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | グレー |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | ※表記なし(IPS相当) |
タッチ / ペン | - |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | - |
無線LAN | Wi-Fi 5 |
Bluetooth | 4.2 |
USB3.2 | 2(Gen1) |
USB3.0 | - |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 2(USB3.2 Gen1) |
Thunderbolt | 2(USB兼用) |
メモリーカード | microSD |
HDMI | 1(mini、2.0) |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
Webカメラ | 100万画素 |
顔認証カメラ | - |
指紋センサー | - |
付属品 | ACアダプターなど |
オフィス | ※オフィス互換ソフト付き |
この記事では筆者が購入した実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。ネット、特にYouTubeではさんざん酷評されていますが、この記事ではできる限り冷静かつフラットな視点で解説するつもりです。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶価格と購入経緯について
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶分解とパーツ増設
- ▶サポートについて
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ

※2021年8月19日時点
価格と購入経緯について
IPC-AA1401-HMは2021年3月に、税込5万4780円で発売されました。価格.comの価格推移グラフを確認すると、その3日後には販売価格が4万3780円まで下がっています。もしかすると景表法の二重価格対策として、あえて定価販売の期間を設けたのかもしれません。4ヵ月以上たった現在でも、最安価格は4万3780円とされています。
リンク
UCA Note PC IPC-AA1401-HM の価格推移グラフ(価格.com)
筆者は2021年6月26日にひかりTVショッピングの限定メルマガクーポンを使って、IPC-AA1401-HMを2万9800円で購入しました。その買い物により2980ポイントをもらっているので、実質的には2万6820円です。

限定クーポン&ポイント還元により実質2万6820円で入手 ※クーポンの配布は終了しています
定価の半額以下で入手しているため、そのぶん製品に対するマイナスの感情はほかの人よりも薄いはずです。そのようなバイアスのかかった状態でこの記事を執筆していることを、あらかじめご了承ください。
デザインと使いやすさ
パッケージについて
パッケージは標準的な内容です。国内向け大手ブランドPCよりも多少安っぽさがあるものの、2~3万円台の激安PCよりは親切かつ丁寧に感じます。画像付きで解説されている日本語のマニュアルを見れば、安心感を覚える人も多いのでしょう。

箱の中身

マニュアルと保証書

マニュアルでは手順が比較的詳しく説明されています。国内大手ブランドPCを意識しているように思えます

オフィス互換ソフト「WPS Office 2」のライセンスカードが付属
外観について
IPC-AA1401-HMの本体デザインは、悪くありません。ただこれで5万円台と言われると、正直なところ微妙な印象です。中国のインディーズメーカーであれば、3万円台で総アルミボディの機種もあります。とは言え国内向け大手ブランド製品のなかにはIPC-AA1401-HMよりも厚くて安っぽいのに7~8万円台の機種もありますから、実売4万円台と考えればギリギリ納得できる範囲と言っていいかもしれません。

IPC-AA1401-HMの外観。本体カラーはメタリックなグレー

天板は樹脂(プラスチック)製。表面はツヤ消しでややザラつきのある手触り。指紋の跡はあまり目立ちません

パームレストはグレーで、キーの部分はブラック。3~4年前のBTOメーカー製ノートPCでよく見られたデザインです

ディスプレイの最大角度はこれくらい

ベゼル幅は左右7.3mm、上部10.3mm、下部25.6mm。下部は太いものの、全体的には狭額縁なデザインです

底面部もグレーの樹脂製。空冷ファンのないファンレス仕様ですが、通気口が設けられています

設置面積は幅(横方向)323mm×奥行き(縦方向)219mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。14インチとしてはそこそこ小さく、筆者所有のThinkPad X1 Carbon(2019)と同程度でした

厚さは公称値で19mm、実測では19.4mm

本体背面。底面部のゴム足(突起部)を含めた設置時の高さは23.1mm

ノートPCとしては標準的な薄さ。ただ本体がコンパクトなので、実際に手で持つと数値以上に厚く感じます

重さは実測で1.355kg。14インチタイプとしては軽め

軽々というほどではありませんが、問題なく持ち歩ける軽さ

付属の電源アダプターは丸口タイプ。重さは224g
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは14インチで、解像度は1920×1080ドットのフルHDです。2~3万円台の海外メーカー製格安ノートPCでは、1366×768ドットが主流。国内大手ブランド製品では、6~8万円台でも1366×768ドットの製品が存在します。実売4~5万円台の機種としては、妥当なスペックでしょう。

デスクトップの文字の大きさは2~2.8mm(スケーリング150%)
映像を見てまず感じるのは、画面が暗いという点です。「少し暗いかな」ではなく、見た瞬間明らかに暗く感じます。テスト機での計測輝度は140nit。標準的なノートPCでは暗くても200nit前後、通常の明るさなら250~300nit程度なので、だいぶ暗いことがわかるでしょう。照明が暗い場所であれば違和感は少ししかありませんが、明るい場所だと見づらく感じました。ただパネルは個体差の影響が大きいので、テスト機だけで見られる症状かもしれません。

画面が暗く、細かな文字が見づらく感じます
ディスプレイには格安機種でよく使われるTNパネルではなく、IPS相当のパネルが使われているようです。視野角は広いのですが、画面が暗いため映像がかなり青みがかって見えました。キャリブレーター(i1Display Pro)で色域を計測したところ、sRGBカバー率は63.3%。安いIPSパネルとして使われることが多い、いわゆる”NTSC 45%”のパネルと変わりません。やはり画面の明るさがかなり影響しているようです。

視野角はそこそこ広く、画面を斜めから見ても色や明るさが大きく変わりません

画面が暗いため、映像が青みがかって見えます

TNパネルとIPSパネルの色合いの違い ※写真は別の機種

別の機種で使われているNTSC 45%のパネル。おそらく発色はこのように出ているはずですが、画面が暗いためTNパネルのような色味に見えます
色域測定結果
sRGBカバー率 | 63.3% |
---|---|
Adobe RGBカバー率 | 47.0% |
DCI-P3カバー率 | 46.8% |
キーボードについて
キーボードはテンキーなしの日本語配列で、バックライトには対応していません。配列はキーボード左側は標準的ですが、右側が変則的。一部のキーが無理にサイズを合わせたかのように大きく作られています。

Enterキー周辺の配列が変則的
このような配列は3~4年前まで、中国のOEM製品を利用したBTOメーカー製ノートPCでよく見られました。最近は見かけなくなったのですが、「まだあったのか」というのが正直な感想です。

2018年発売のマウスコンピューター製▶m-Book E410のキーボード
少し謎なのが、タッチパッド無効化のキーがふたつ用意されている点です。右側(BackSpaceキーの上)は本来ではあればInsertキーが割り当てられると思うのですが、なにか理由があるのでしょうか。打ち間違いでタッチパッドが無効化されるので、ここに配置しないほうがいいと思います。

タッチパッド無効化のホットキーと専用キー。どちらも同じ機能が働きます
キートップはかなり大きめの16.7mmで、キーピッチは19.5mm。一般的なノートPCの19mmよりもかなり大きく作られており、指を大きく広げたり指をいつもより大きく動かすなどを意識する必要があります。

標準的なノートPCよりも、個々のキーが大きめに作られています
キーのタイプ感はガタガタとした印象です。キーストロークは実測で平均1.41mmとやや浅め程度(標準値は1.5mm)。押しこむ力の強さは全体的に軽めですが、キーによってバラつきがあるように感じます。入力時にスイッチ部分にブレがあり、キーを押した際のたわみも生じました。ちょっと前の中華OEMベースのPCにかなり似ており、個人的には懐かしい感じです。

ストローク感はありますが、入力時に指がややグラつきます
タイプ音は、なでるような軽い力で入力すれば気になりません。ただし指を打ち下ろすようにして入力すると、音が響くので注意してください。特にEnterキーはサイズが大きいため、音も響きます。

ごく軽いタッチならタイプ音はうるさく感じませんが、Enterキーはチャキッと響きます

タッチパッドは特に問題なく、普通に使えます
インターフェース/機能について
USB端子は合計3ポートで、うち1ポートがType-Cです。そのほかのインターフェースは映像出力用のminiHDMIとmicroSDカードスロット、ヘッドホン端子の構成。HDMIが一般的なサイズではなく、miniサイズである点に注意してください。中国のインディーズメーカー製PCでよく見られる特徴です。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | × |
---|---|
USB PD 30W充電 | ○ |
USB PD 45W充電 | ○ |
USB PD 65W充電 | ○ |
USB PD 100W充電 | ○ |
映像出力 | × |

ディスプレイ上部には100万画素のWebカメラ

microSDカードを利用可能

スピーカーはキーボード上部に配置。音は厚みがなく、こもり気味。最近のノートPCとしては、音質はあまりよくありません
分解とパーツ増設
IPC-AA1401-HMは底面部の小さなカバーを外すだけで、M.2 SSDを追加できます。利用できるSSDはSATA接続のType-2280またはType-2242。テスト機でType-2280のSSDをセットしようとしたところ、ネジを留めるパーツがジャマでSSDが湾曲してしまいました。筆者が試したときはパーツを取り除けなかったのですが、もしかするとなんらかの手段で取り除くことができるのかもしれません。

底面部にはSSD増設用のM.2スロット

Type-2242用のネジを留める黒いパーツが内部にセットされています

そのままType-2280のSSDをセットしたところ、SSDが湾曲してしまいました。黒いパーツを取り除く手段があるのかもしれません
メモリー用のスロットがないため、メモリーの増設には非対応です。またSSD以外の増設や交換にも対応していません。

IPC-AA1401-HMの本体内部

マザーボードを覆う銅板には、指紋の跡が付いていました。組み立て時は素手で作業しているものと思われます

マザーボードは非常にコンパクト。グリスが塗られている部分がCPUです

底面カバーで使われていたネジは全部で12本。一般的なノートPCよりも多く使われているのは、構造部分で補強する必要があるからかもしれません
サポートについて
調査のために、アイリスオーヤマのサポートを利用してみました。
まず製品ページのメニューから「サポート」の「お問い合わせ」を開くと、24時間365日対応のチャットボットが表示されます。

サポートページではチャットボットによる自動回答が可能
リンク
個人的にPCは家電製品ではないと考えていたので「この中にない。家電製品ではない。」を選ぶと、メールか電話でのサポートを促されました。商品の種類によってかける電話番号が異なるのですがPCに該当する番号がなかったため、総合窓口と思われる「アイリスコール」を利用。フリーダイヤルなので電話料金はかかりませんが、受付時間が決められているので注意が必要です。

総合窓口に電話をかけてみました
電話をかけてから担当の方につながるまでにかかった時間は7分48秒です。特別遅いわけではありませんが、かと言って早いわけでもありません。電話口で少し専門的なことを尋ねたところ、詳しい人から折り返し電話するとのことでした。総合窓口だったためか、すぐに応えられるというわけではないようです。
折り返し電話がかかってきたのは1時間後です。先方で動作を確認した上でその結果を教えてくれたのですが、より正確な情報については開発担当者がつかまらなかったので、もう少し待って欲しいとのことでした。それから40分たって再び電話がかかってきて、開発担当の方の裏付けを取れた情報を教えてもらいました。
電話の対応は非常に丁寧で、対応された方は日本の名字を名乗っていました。電話の発信は宮城県からで、サポートセンターの拠点は国内にあるものと思われます。ただ最終回答に少し時間がかかったことから、自社PCについて詳しい人が常駐しているわけではなさそうです。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Celeron N4100 |
---|---|
メモリー | 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
グラフィックス | UHD Graphics 600(CPU内蔵) |
※各ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」に設定した上で、電源オプションを「最も高いパフォーマンス」に変更して実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、4コア4スレッドのCeleron N4100が使われています。CPU性能を計測するベンチマークテストを試したところ、なぜかかなり低めの結果が出ました。CPU的には同程度のスペックであるCeleron N4120とあまり変わらないはずです。
ベンチマークテストを何度か繰り返すと、そのたびにスコアが低下しました。底面部に触れると排気口のある部分が熱くなっていたので、熱による性能低下が発生しているのかもしれません。Celeron N4100はファンレスでも大丈夫なはずですが、おそらく熱対策がうまく働いていないのでしょう。テスト機固有の症状である可能性もあります。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 10 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 5800U |
19202
|
Ryzen 7 5700U |
18089
|
Ryzen 5 5500U |
12362
|
Core i7-1165G7 |
11380
|
Core i5-1135G7 |
11249
|
Ryzen 3 5300U |
9527
|
Core i3-1115G4 |
6750
|
Ryzen 3 3250U |
4441
|
Athlon Silver 3050U |
3351
|
Celeron N4120 |
3148
|
Celeron 6305 |
2302
|
Celeron N4500 |
2284
|
Celeron N4020 |
1817
|
IPC-AA1401-HM (Celeron N4100) |
1703
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD Graphics 600が使われます。3Dベンチマークテストの結果は異様に低く、ありえないほどのスコアでした。初期不良を疑うレベルです。
GPUの性能差(DirectX 11)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
MX450 |
4900
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
4734
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
4059
|
MX350 |
3931
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
3420
|
Radeon (Ryzen 7) |
3384
|
Iris Plus |
2880
|
Radeon (Ryzen 5) |
2652
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
2474
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
UHD |
1335
|
IPC-AA1401-HM (Celeron N4100) |
303
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージのアクセス速度
ストレージは64GBのeMMCです。アクセス速度は低速ですが、HDDよりも高速。2~3万円台の低価格機種なら標準的な結果ですが、4~5万円台の機種としては微妙な結果です。

64GB eMMCのアクセス速度
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で、約9時間とされています。しかし公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、公称値よりもやや短い8時間30分で休止状態へ移行しました。長くはありませんが、十分な結果と言えるでしょう。
ただ満充電までに時間がかかる点が気になります。標準的なノートPCであれば1時間半から2時間半で終わるのですが、IPC-AA1401-HMではだいぶ時間がかかりました。満充電を繰り返すとバッテリーの劣化が早いと言われているので、適当なところで充電を止めたほうがいいかもしれません。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i5モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 8時間30分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 40分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 3時間47分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
起動時間
ウィンドウズの起動時間は平均で25.18秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動はやや遅めです。2~3万円台のeMMC搭載格安ノートPCであれば、こんなものでしょう。待たされている感は、それほどありません。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 25.8秒 |
---|---|
2回目 | 24.8秒 |
3回目 | 25.6秒 |
4回目 | 24.9秒 |
5回目 | 24.8秒 |
平均 | 25.18秒 |
照明や家電と同じ手法は通用しないのでは?
パッと見たところでは悪くないかもしれませんが、じっくり検証するといろいろ品質の低さが目立ちます。いまどき風なのは、ベゼルが細い点だけ。中国メーカーのOEMをはじめて自社ブランド製品として仕上げたのであれば、まあこんなものでしょうというのが正直な感想です。
これがドン・キホーテの「MUGAストイックPC」のように2~3万円台で販売されていたら、また印象は違っていたでしょう。筆者はこれまで低価格PCを何台も検証してきましたが、IPC-AA1401-HMのクオリティーは3万円台レベルです。5万4780円の定価販売はともかく、現在の実売価格である4万円台でも高いと感じます。
価格設定の是非についてはいろいろ意見があると思いますが、筆者としては値段よりも「PCを照明器具や家電と同様に捉えた」点にそもそもの誤りがあるのではないかと考えます。中国で安く作れば、富士通やNEC、Dynabookの高い機種よりも――そんな風に考えたかどうかはわかりませんが、ほかのジャンルの製品を見る限りではそれがアイリスオーヤマの手法のように思えます。少なくともターゲットとしては、国内大手ブランドPCの購入層を意識していたはずです。
しかし国内大手ブランドPCを購入する層は、安さではなく安心感で選ぶのではないでしょうか。照明や家電に比べて、特にPCではその傾向は強いはずです。実際これらの国内大手ブランドPCを検証すると、スペックは低くても中身はしっかりと作られています。キー配列はしっかりしていますし、画面が暗くて見づらいことはありません。もちろん、内部に指紋を残すようなこともないでしょう。キーボードがグラついたりディスプレイがTNパネルだったりもしますが、付属ソフトやマニュアル、サポートがしっかりしているメリットもあります。
アイリスオーヤマのIPC-AA1401-HMから感じられるのは、ひと世代前の中国製OEM PCっぽさばかりです。とにかく安く仕上げようという意識ばかりで、国内大手ブランドPCを選ぶ人たちへの配慮が感じられません。サポートも一般的な家電と同様で、特にPCに特化したものではないようです。
かと言って安さやコスパでは、グローバルメーカーや中国のインディーズメーカーにかなうわけがありません。スペックが低くても売れるのは業界大手だからであって、それ以外のメーカーは別の部分で攻めるべきです。たとえば逆にスペックを上げたりとか、ボディの品質を改善したりとか、サポートをあり得ないくらい丁寧にするとか。値段を中途半端に下げた中華OEMで、FND3社に対抗できるはずはないのです。
と言いながらも実際のところ、IPC-AA1401-HMが売れているかどうかはわかりません。しかし筆者のネットにおける観測範囲では、まだ4万3000円台で販売されているショップが多いようです。そのうち3万円台、あるいは2万円台に突入するかもしれません。3万円前後までくれば、割り切って使うならアリだと思います。

※2021年8月19日時点
*
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