『MINISFORUM Venus Series UN305C』(以下、”MINISFORUM UN305C”)は、コンパクトサイズのデスクトップPC(ミニPC)です。いまミニPC界隈で人気のIntelプロセッサーN100より高性能なIntel i3-N305を搭載しています。
末尾の「C」がない『MINISFORUM UN305』というモデルも用意されていますが、こちらは日本の代理店であるリンクスインターナショナルが販売しているようです。UN305C(メーカー直販モデル)とUN305(代理店モデル)はどちらも同型でほぼ同スペック(バリエーションあり)。性能もほとんど変わらないでしょう。
記事執筆時の価格
スペック | 価格 |
---|---|
Core i3-N305 / 8GB / 128GB | 3万5180円 |
Core i3-N305 / 8GB / 256GB | 3万5980円 |
Core i3-N305 / 16GB / 512GB | 4万0480円 |
※2023年11月2日時点
実際にザックリと検証したところ、CPU性能を計測するベンチマークテストではIntel N100よりも優秀な結果が出ました。しかし総合性能を計測するベンチマークテストでは、2~3万円台の格安機とあまり変わりません。また検証中に何度か動作音が大きく聞こえた点も気になりました。
ポイント
- ✅高級感のあるケース
- ✅端子類は豊富
- ✅拡張性は低め
- ✅コスパはイマイチ
- ✅駆動音が大きい
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年5月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Core i3-N305(8コア/8スレッド) |
メモリー | LPDDR5 8GB / 16GB ※オンボードのため増設非対応 |
SSD | 128 / 256 / 512GB M.2 SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 5、Bluetooth4.2、有線LAN(1Gb) |
インターフェース | USB3.2 Gen2×2(前面)、USB3.2 Gen1×2(背面)、USB3.2 Gen2 Type-C×1(DP/PD)、HDMI2.0×2、有線LAN×2、ヘッドホン端子 |
ドライブベイ | 2.5インチ×1 |
付属品 | VESAマウンタ、HDMIケーブル、電源アダプターなど |
サイズ / 重さ | 幅136×奥行き121×高さ39mm / 約440g |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
格安PCのなかには、個人利用不可のボリュームライセンス(VL)が使われていることがあります。しかしMINISFORUM UN305Cでは、正規版のOEMライセンスが使われていました。
認証マークについて
技適マークやPSEマークについても、ちゃんと掲載されています。正式な手続きが行なわれた機種です。
本体デザイン
パッケージ
外観
ほかのミニPCとの違い
インターフェース構成
メモリー/SSDの増設について
本体の分解方法
メモリーの増設には非対応
SSDの増設・換装
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i3-N305(8コア/8スレッド) |
---|---|
メモリー | LPDDR5-4800 8GB |
ストレージ | 256GB M.2 SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」または「最適なパフォーマンス」に設定した上で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けのCore i3-N305(8コア8スレッド)が使われています。いまミニPCで人気のIntelプロセッサーN100(4コア4スレッド)よりも、スペック上は高性能です。
Windows 11の電源モードを「バランス」(標準設定)と「最適なパフォーマンス」(高性能設定)に変えてCPUベンチマークテストを行なったところ、Intel N100搭載機よりもはるかに高いスコアが出ました。2倍とまではいかなくても、1.7~1.8倍と、かなり大きな差が出ています。
ただ性能が高いはずの「最適なパフォーマンス」で、標準設定の「バランス」よりも低いスコアが出ているのが気になりました。もしかするとCPUの発熱によって、パフォーマンスが落ちているのかもしれません。
激安ミニPC(1~3万円台)の性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
MINISFORUM UN305C(N305,バランス) |
11019
|
MINISFORUM UN305C(N305,最適なパフォーマンス) |
10808
|
Intel N305 PassMark平均 |
10053
|
LarkBox X 2023(N100) |
6235
|
SkyBarium Mini PC(N100) |
6219
|
Beelink S12 Pro(N100) |
6134
|
HeroBox 2023(N100) |
6165
|
TRIGKEY GREEN G4(N95) |
5787
|
Intel N100 PassMark平均 |
5616
|
Intel N95 PassMark平均 |
5426
|
※PassMark平均ははPassMark CPU Benchmarksによる集計値。そのほかは当サイトの計測値
価格帯を6万円台まで広げると、性能は低めの部類に入ります。とは言え、重い処理を行なわなければ特に問題はありません。ネットの調べ物や事務作業など、軽い作業向きです。
ミニPC(1~6万円台)向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-13500H |
24011
|
Core i7-12650H |
23679
|
Ryzen 7 PRO 5750GE |
22050
|
Ryzen 7 5800H |
21256
|
Ryzen 7 6800U |
20598
|
Core i5-13420H |
19950
|
Ryzen 5 6600H |
19125
|
Ryzen 7 5800U |
18670
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
18517
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 6600U |
17274
|
Ryzen 5 5600H |
17119
|
Ryzen 5 5600U |
15462
|
Ryzen 5 5625U |
15181
|
MINISFORUM UN305C(N305) |
11019
|
MINISFORUM UN305C(N305,最適なパフォーマンス) |
10808
|
Intel N305 |
10050
|
Intel N100 |
5630
|
Intel N95 |
5463
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値で、実機の結果ではありません。また実機では熱対策により、平均値よりも低いスコアが出る場合があります
ミニPC(1~6万円台)向けCPUの性能比較(シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Single Threaded |
---|---|
Core i7-12650H |
3688
|
Core i5-13500H |
3538
|
Core i5-12450H |
3473
|
Core i5-13420H |
3438
|
Ryzen 7 PRO 5750GE |
3301
|
Ryzen 5 6600H |
3217
|
Ryzen 7 6800U |
3208
|
Ryzen 5 6600U |
3206
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
3180
|
Ryzen 7 5800H |
3060
|
Ryzen 7 5800U |
3048
|
Ryzen 5 5600H |
2964
|
Ryzen 5 5600U |
2916
|
Ryzen 5 5625U |
2915
|
MINISFORUM UN305C(N305,バランス) |
2328
|
MINISFORUM UN305C(N305,最適なパフォーマンス) |
2323
|
Intel N305 |
2252
|
Intel N100 |
1971
|
Intel N95 |
1967
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値で、実機の結果ではありません。また実機では熱対策により、平均値よりも低いスコアが出る場合があります
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
MINISFORUM UN305C(UHD) |
607
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージは128 / 256 / 512GBのM.2 SATA SSDが使われています。アクセス速度の計測結果はSATA SSDとしては標準的ですが、最近のNVMe SSD搭載PCと比べるとかなり低速。1/6~1/10程度でしかありません。とは言え、価格が安いことを考えれば仕方がないでしょう。1~3万円台の激安ミニPCでは、よく見られる結果です。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)のテストでは目標値よりわずかに上、コンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値ギリギリといったところ。Intel N100搭載機よりもスコアは上ですが、多少マシな程度でしかありません。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
7758
7957
7142
10603
10299
10256 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
4832
5300
4879
9709
7128
9930 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
3930
3962
2515
6044
6586
5707 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶NucBox10 | Ryzen 7 5800U / 16GB / Radeon |
▶IdeaCentre Mini Gen 8 | Core i5-13500H / 8GB / UHD |
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
CPUの熱について
※計測時の室温は24度。室温が変わると、結果が異なる場合があります
高負荷時におけるCPU温度を計測したところ、標準設定(電源モード「バランス」)では平均80.18度、最大設定(電源モード「最適なパフォーマンス」)では80.89度でした。どちらも最大温度は96度とやや高めです。
標準の「バランス」では、テスト開始から20秒あたりまで消費電力が25Wの高出力状態が続き、その後は15Wに制限されています。消費電力を抑えるとパフォーマンスも低下するのですが、おそらくCPUの熱が上がりすぎるのを抑えているのでしょう。
電源モード「最適なパフォーマンス」では高出力状態の立ち上がりが「バランス」よりも早いのですが、15Wの電力制限が早く始まりました。その結果、わずかに「バランス」よりもベンチマークスコアが低い結果になっているのだと思います。
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、高負荷の作業時にかなり大きく聞こえました。軽めの作業中でも、ときおり排気音が大きく聞こえます。音の大きさにムラがあるので、常時気になるというわけではありません。しかし完全に静かというわけでもない点に注意してください。
ちなみに今回は、室温が24度の環境でテストを行なった結果です。夏に気温が上がるとうるさく聞こえる頻度が上がる可能性があります。
駆動音の計測結果
電源オフ | 36.8dB | - |
---|---|---|
待機中 | 36.8dB | ほぼ無音。ただし不定期で43dBまで上がることがある。短時間なので「おや?」と思う程度 |
軽作業中 | 38~45dB | たまにファンの音が大きく聞こえる。作業内容によっては音が大きくなったり小さくなったり |
高負荷時 「バランス」 |
50.6dB | 排気音がかなり目立つ。高周波っぽい回転音もわずかに聞こえる。うるさすぎるほどではないが、常時聞こえるとストレスを感じるレベル |
高負荷時 「最適なパフォーマンス」 |
48.3dB | 排気音はけっこう目立つが、「バランス」時ほどではない |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
悪くはないが値下がり待ち
記事執筆時の価格は8GBメモリーモデルで3万円台半ば、16GBメモリーモデルで4万円前後。Intel N100搭載機が16GBメモリーで2万円台前半であることを考えると、それ以上の価値があるかはちょっと微妙なところです。同じような使い道ですし、2~3万円台の格安ミニPCからなにかが劇的に変わるわけでもありません。
また現在はワンランク上のRyzen 5搭載機が3~4万円台で買えるため、それより劣るCore i3-N305を選ぶ理由はないでしょう。
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加えて、駆動音も少し大きめです。静かな場面も多いのですが、ちょっとした作業を行なうときに音が大きくなるのが気になりました。個人的には、静音性についてはイマイチです。
ただ、現在よりも値段が下がればアリではないかと思います。ほかの機種とのバランスを考えれば、16GBメモリー搭載で3万円ちょっとといったところではないでしょうか。2023年11月時点では、まだ様子見が吉です。
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