2019年5月27日にNVIDIAは、クリエイター用ソフト開発者 / クリエイター向けの支援プラットフォームとして「NVIDIA Studio」を発表しました。またその発表のなかで、「RTX Studio ノートPC」というものについても触れています。
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NVIDIAプレスリリース
NVIDIA Studio公式ページ
詳しくは下記の記事にまとめられています。PCWatchの記事には概要が、4Gamerの記事には詳細が掲載されているので、PCWatch → 4Gamerの順で読むことをおすすめします。
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【イベントレポート】簡単にGPU機能が使えるクリエイター向けのノートPCプラットフォーム「NVIDIA Studio」 (PCWatch)
西川善司の3DGE:COMPUTEX 2019 NVIDIAプレスカンファレンスで発表された不思議なブランディングキーワード「NVIDIA Studio」と「RTX Studio」ってなに? (4Gamer)
超ざっくりと説明すると、NVIDIA Studioは「クリエイター向けソフトを高速化&安定性向上化させるために特別なドライバや開発キットを提供する仕組み」であり、RTX Studioは「NVIDIA Studio対応のNVIDIA製dGPU (専用グラフィックスチップ)を搭載したPC / 周辺機器に対するブランド名」です。
NVIDIA StudioとRTX Studioの違い
NVIDIA Studio | RTX Studio |
---|---|
開発 / 制作支援プラットフォームの総称 | NVIDA Studio対応PCに対するブランド名 |
NVIDIA Studioは開発者支援プラットフォーム
本来NVIDIA Studioは動画編集やグラフィックス制作、3D制作などクリエイター向けソフトの開発者を支援することが目的です。SDKやフレームワーク、ライブラリといった開発に必要なソフトのほかソフトを適切に動作させるためのドライバーを含めた「NVIDIA Studio Stack」と、RTX GPU (GeForce RTXシリーズ / Quadro RTXシリーズ)の組み合わせで構成されています。さらにNVIDIA Studio対応ハードウェアおよびソフトウェアは、NVIDIAが定めた品質テストをクリアーしている点が特徴です。
NVIDIA Studio対応ハードウェアおよびソフトウェアによって開発されたクリエイター向けソフトは、RTX GPUの性能を活かすことでより高いパフォーマンスを発揮できるようになり、さらにソフトの安定性も向上します。そのため本来は開発者向けではあるものの、ソフト利用者である一般ユーザーにも恩恵があるのです。
では実際の制作作業にどのくらいの効果があるのかというと、NVIDIAは次のように公表しています。
NVIDIA Studio対応によるパフォーマンス
- Premier Proのビデオ編集が最大11倍高速化
- Autodesk Arnoldのレンダリングが最大14倍高速化
- DaVinci Resolveのビデオ編集が最大12倍高速化
- Lightroomが最高4倍高速化
- REDCINE-X PROによるRAW動画の編集が20倍高速化
※RTX 2080 Max-Q搭載ノートPCとdGPU非搭載のCore i7-8750H搭載ノートPCを比較した場合
さらにRTX GPUのレイトレーシング機能を利用して超リアルな3Dグラフィックスを迅速に制作したり、オンライン経由でAIを利用することでグラフィックス制作 (特に現像やフォトレタッチなど)を効率化したり、8K動画をリアルタイムでデコード (レンダリング)したりできるようになるとのこと。
このようにNVIDIA Studio対応のハードウェアおよびソフトウェアを利用することで、一般ユーザーでも制作作業を高速化&効率化することができます。
RTX Studioは対応機器のブランド名
もう一方のRTX Studioは前述のとおり、NVIDIA Studio対応ハードウェア (ノートPCやグラフィックボードなど)に対するブランド名です。一種の認証プログラムのようなものと考えてもいいでしょう。たとえばRTX Studio対応ノートPCでNVIDIA Studio対応ソフトを使えば、前述のような高いパフォーマンスと安定性を得られます。
RTX Studio対応PCには開発キットであるNVIDIA Studio Stackがプリインストールされているほか、NVIDIAが定めた品質テストをクリアーしている点が特徴です。さらに以下のスペックを満たしていることが条件として定められています。
RTX Studio対応ノートPCのスペック
GPU | RTX2060以上、QuadroRTX3000以上 |
---|---|
CPU | Core i7(Hシリーズ)以上 |
メモリー | 16GB以上 |
ストレージ | 512GB SSD以上 |
ディスプレイ | フルHD または 4K |
上記の条件にはいまのところ、色域 (sRGBやAdobeRGBなど)は含まれていません。そのあたりは各メーカーの裁量に任せているといったところでしょうか。極端な話、色域が狭いTNパネルでもRTX Studioの条件を満たせるかもしれないので(NVIDIAのテスト内容は不明ですが)、色にこだわる作業のために購入する際は注意する必要がありそうです。
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RTX Studio非対応PCでもOK
RTX Studio対応ノートPCでないとNVIDIA Studioによる高速化&安定性向上化の恩恵を得られないのかというと、そんなことはありません。RTX GPUを搭載したPCであれば、NVIDIA Studio Driverをインストールすることで対応ソフトをより快適に扱えるようになります。
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ノートPCだけでなく、RTXシリーズを搭載したデスクトップPCでも利用可能です。RTX StudioはあくまでもNVIDIAが認証したPCということであって、必要条件ではありません。RTX Studio対応PCであれば自分でドライバーをインストールする必要がなく、ある程度のパフォーマンスをNVIDIAが保証しているから安心というだけです。諸々の作業が面倒であればRTX Studio対応PCを購入すればいいですし、わざわざPCを買い替えたくないのであればドライバー (および必要ならRTX GPU搭載グラフィックボード)を追加すればOKです。
これからはGTXではなくRTX
NVIDIAは2019年1月に、クリエイター向けソフトのパフォーマンスを向上させる「Creator Ready ドライバ」を公開しました。
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よりクリエイティブな作業を、より少ない待ち時間で: NVIDIA RTX GPU と Creator Ready ドライバが、クリエイター向けアプリケーションを強化 (NVIDIA公式サイト)
Creator Ready ドライバ ダウンロードページ
Creator Ready ドライバによるパフォーマンス向上の目安を確認すると、NVIDIA Studio (NVIDIA Studio Driver)による恩恵とあまり変わらないように感じられます。どちらもGeForce 10 / 16シリーズにも対応していますし、もしかすると中身はあまり変わっていないのかもしれません。
とは言えパフォーマンスが高いのは断然RTXシリーズですし、さまざまな機能に対応しているのもRTXシリーズです。たとえばもしかするとPhotoshopが将来的にレイトレーシングに対応するかもしれません。今後の制作作業を効率化するという意味では、GTXシリーズよりもRTXシリーズを選ぶべきでしょう。
ただ、無理にRTX Studio対応PCを選ぶ必要はないと思います (あくまでも”いまのところは”)。あれこれの手間が面倒であり、さらに万が一の確実性を重視するならRTX Studio対応PCを選ぶべきではないでしょうか。もしくは同じ価格帯 / スペックの候補がいくつかあるなかで、決め手として選択するならアリだと思います。