HPの「OMEN 27u 4K ゲーミングディスプレイ」(以下、”OMEN 27u 4K”)は、27インチ4K(3840×2160ドット)でリフレッシュレート144Hzのゲーミングディスプレイです。高精細かつ遅延や残像の少ない映像でゲームを楽しめる点が特徴。PS5やXboxなどゲーム機用の4K 120Hzディスプレイとしても利用できます。

PS5用の4K 120Hzディスプレイとしても利用可能
機能や映像品質的には、ミドルレンジクラスです。15万円あたりのハイエンドクラスほどではありませんが、7~8万円あたりのエントリークラスよりは高い品質を実現しています。またHPのゲーミングブランド「OMEN」シリーズとの相性がいい点もポイント。安いディスプレイを選んだばかりにあとで「う~ん」と唸るよりも、このくらいのスペックのものを選んでおいたほうがいいのではないでしょうか。
今回はメーカーからお借りした実機を使って、外観や映像品質、実際に使った感想などをレビューします。
スペック
画面サイズ | 27インチ |
---|---|
パネル | IPS Oxide |
解像度 | 3440×1440ドット (アスペクト比 21:9) |
リフレッシュレート | 最大144Hz(DP、HDMI2.1)、60Hz(HDMI2.0) |
最大表示色 | 1677万色 |
コントラスト比 | 1000:1 |
色域 / 輝度 | DCI-P3カバー率 95% / 450nit |
応答速度 | 1ms(GtG、OD時) |
映像入力 | HDMI 2.1×1 / HDMI 2.0×1 / DisplayPort 1.4 ×1 |
HDR | Display HDR 400 |
G-SYNC / FreeSync | FreeSync Premium Pro対応 |
スピーカー | あり |
チルト角度 | 前方5度~後方20度 |
ピボット / スイーベル | 非対応 |
高さ調節 | ±130mm |
VESAマウント | VESA100 |
サイズ / 重量 | 幅609.9mm 奥行き260.5mm 高さ513.8mm / 約7.82kg |
インターフェース | USB Type-C(データ通信のみ)、USB3.2 Gen2×2 |
付属品 | 電源アダプター / DPケーブル など |
パッケージと設置

OMEN 27u 4Kの外箱 ※貸出機のため、使用感があります

パネル以外の同梱物。ケーブルはDisplayPortとUSB Type-C to Type-Aが付いています

付属の六角レンチを使って、パネルにスタンドを取り付けます
ディスプレイアームの取り付け
OMEN 27u 4KはVESA100のマウントに対応しており、同規格対応のディスプレイスタンドやディスプレイアーム等を利用可能です。ただしマウントの利用は少々手間がかかる上に、使えるディスプレイアームが限られるので注意してください。

OMEN 27u 4KのVESAマウント。カバーとスタンド接続部をパネルから取り外す必要があります

背面のカバーを取り外し、ネジで固定された接続部を外せばOK

一般的なVESAマウントとは異なり、斜め45度に傾いた状態で設置されています。そのため、角度を調整できるディスプレイアームでしか利用できません
本体の外観
デザイン
前面からの見た目は普通ですが、背面はOMENのエンブレム(「◆」のような傾いた正方形)をモチーフにしているためちょっと独特です。またゲーミングディスプレイだけあって、RGBイルミネーションによるライティングにも対応しています。

OMEN 27u 4Kの前面

側面。スタンドが大きく、設置にはそれなりの場所が必要。奥行きは26.05cmですが、ケーブルのぶんを含めて30cm弱くらいと考えておいたほうがいいでしょう

背面はOMENのエンブレム(「◆」)をモチーフにしたデザイン

スタンド上部はヘッドホンスタンドとして利用可能。ただし置いたり取り出したりするために身を乗り出す必要があるので少し面倒です

27インチタイプとしては、ベゼルが細め。画面周りがスッキリとしているのですが、電源LEDの光が強いのが少し気になりました

パネル底面部にのLED

電源を入れるとLEDがスタンド付近を照らします

OSDでLEDのオン / オフを切り替えられるほか、色の変更も可能です

背面ユニットにもARGBのLEDを配置。光の点灯パターンや色を変えられます

PCソフト「OMEN Gaming Hub」を使えば、背面LEDの点灯パターンをより細かく設定可能。さらにOMENシリーズのデバイスがあれば、LEDの光を同期することもできます(PCとのUSB Type-C接続が必要)
可動範囲
可動範囲はあまり多くありません。フレキシブルな運用を想定しているなら、ディスプレイアームの利用をおすすめします。

高さ調節は最大130mm

前後のチルト角度は+20~-5度

左右のスイーベルト画面回転のピボットには対応していません。向きを変える場合はスタンドごと動かす必要があります
インターフェース
映像入力はHDMI2.1×1、HDMI2.0×1、DisplayPort 1.4の3系統。USB Type-Cによる映像出力やPD充電には対応していません。またUSB端子を利用する場合は、PCとUSB Type-Cで接続する必要があります。多くはないものの、価格的にもとりあえずは十分な構成と言っていいでしょう。

背面左側にはヘッドホン端子、HDMI2.0、HDMI2.1、DisplayPort、電源コネクター。ユニット部分が斜めに傾いているため、下をのぞき込まなくても端子の位置がわかるのは便利です

背面右側にはUSB Type-C(データ通信のみ)とUSB Type-A×2

パネル背面にはOSD操作用のコントローラー
スピーカー
スピーカーはとりあえず付いているレベルで、音質はあまりよくありません。しかし、あるのとないのでは大きく違うのも事実。ちょっとした操作や、なにかの確認用には便利です。ゲームを楽しむ際は、ヘッドセットかスピーカーの利用をおすすめします。

スピーカーは背面のユニット部分に組み込まれています。音質はよくありません

スピーカーのボリュームは、OSDで調節可能
OSD
OSDを利用することで画質を変更したり、ゲーム向けの特殊な機能を使ったりできます。なお一部の機能については、Type-Cで接続したPCから「OMEN Gamingu Hub」経由でも利用可能です。

背面のコントローラーを使うと表示されるOSD

PC用の設定ソフト「OMEN Gaming Hub」でも一部の機能を利用可能 ※要Type-C接続
※一部の機能はHDR、Adptive-Syncの有効/無効やリフレッシュレート設定の組み合わせしだいでは利用できない場合があります。Adptive-Syncが有効の場合はMPRTが効かないのは確認できましたが、そのほかの機能の組み合わせについては把握できませんでした
Edge Precision

エッジプレジションは、物体の輪郭をよりクリアーに映し出す機能
十時型カーソル

ディスプレイに照準(クロスヘア)を表示する機能。照準の形や色、場所を調整できます
メッセージタイマー

画面上にタイマーを表示する機能。ディスプレイのオンオフを制御するタイマーではありません
イメージ

明るさや輝度などを調節します
色

ディスプレイの色合いをプリセットから調整します
プリセットの種類
ゲーム | 高い輝度と短い応答時間を組み合わせたゲーム向けのモード |
---|---|
Game Remaster | 低い解像度にしか対応していないゲームの解像度と画質を向上させる |
標準 | PC向けの一般的な画質 |
暖色 | 色温度が高い(黄色が強い)モード。35mmプロジェクターで使用される映像に似ているとのこと |
寒色 | 色温度が低く、より青みの強い映像 |
ECO | 輝度を低くすることで、電力消費を抑える |
ネイティブ | パネルのネイティブ色温度 |
夜間モード | 輝度とブルーライトを抑えることで、眼への刺激を低減する |
HP Enhanceモード | 動画やゲーム、静止画像の鮮やかさを高めるために調整された独自のモード |
PbP

「Picture by Picture」の略で、2画面並列モードのこと。並べる方向は横2画面のみ

PbPを有効にした際の映像
Shadow Vision

暗い画面を明るく映し出す機能。60Hzのときのみ有効です

Shadow Visionが無効(上)ときと有効(下)のときの違い
映像品質
画面サイズと解像度

画面サイズは27インチ。個人的には映像の精細さと画面の迫力、視界への収まりやすさなどの面でバランスが取れた、4Kには最適な画面サイズだと思います

ただし4K 144Hzでゲームをプレーするには、それなりのGPUパワーが必要です。軽量級のタイトルでも、最低RTX 3060あたりは欲しいところ
映像の色合いと明るさ

色域はDCI-P3カバー率95%で、輝度は450nit。PC向けのディスプレイとしては、非常に色鮮やかです。sRGB換算だと100~120%あたり(換算方法がいくつかあるので正確ではありませんが、目安として)

最低輝度の白画面(上)と最高輝度の黒画面(下)。バックライトについては気になるほどのムラや光漏れは感じられません

HDR有効時(左)とHDR無効時(右)の映像。無効時は画面全体でバックライトが点灯しているのに対し、有効時は映像の周辺だけ縦方向にバックライトが点灯しているように見えました。おそらくローカルディミングに対応しているものと思われます
ゲームでの使用感
リフレッシュレート

リフレッシュレートは最大144Hz。ガチのFPSプレーヤーなら最近は240Hz以上を選ぶ人が増えており、144~165Hzはどちらかと言えばエントリークラスです。しかし27インチ 4Kは映像の美しさを楽しみたい人向けで、現時点ではこのくらいでも十分でしょう

144Hzでも4Kの映像は高精細なぶんリアリティが増し、ゲームへの没入感が高まります
映像の残像について

OSDの「ゲーム」→「応答時間」で応答時間を調整し、映像の残像を減らせます。標準では「レベル1」に設定されていました

応答時間が「レベル1」の映像。グレーのエリアで2フレーム目がギリギリ確認できる程度。これでも残像は少なめです

中間の「レベル3」。「レベル1」に比べて、残像は減っています

最高速の「レベル5」。オーバーシュートがかなり目立ちます。「レベル4」でも若干生じているので、実用的には「レベル3」あたりを使うことになるでしょう

「ゲーム」→「MPRT」でレベルを設定すると(Adptive-Syncを無効化する必要あり)、さらに残像が弱まりました。ただし非常に短い間隔で黒い画面が挿入されており、映像が全体的にやや暗くなります。このあたりは好みで利用することになるでしょう
HDR

HDRはVESA Display HDR 400に対応。無効の状態(上)と有効の状態(下)は、上記写真のとおり。白と黒の階調表現が向上することで、白飛びや黒つぶれのない、より自然な空気感のある映像を楽しめます

4K ULTRA HD Blu-rayの映像も、そこそこ鮮やかに映し出されます
ゲーム機での利用

PS5などのゲーム機でも利用可能

PS5ではVRR(可変リフレッシュレート)に対応しています

PS5やXboxでは、4K 120Hzでのプレーが可能。ただし対応タイトルのみで、多くのタイトルは4K 60Hzどまりです
ミドルレンジクラスの手堅い機種
4K 144Hzディスプレイは品質で分類すると「上」「中」「下」にわかれるのですが、OMEN 27u 4Kは機能の多さと映像品質の面で「中」クラスだと思います。最高クラスではないもののそこそこの映像/ゲーム品質でそこそこのHDR、そしてそこそこの機能。実売7~8万円クラスの「下」クラスよりは満足感が高いでしょう。「上」クラスだと15万円あたりなので、そこまではちょっと……という人に向いています。
ただし、同じHP製品との相性は抜群です。OMENシリーズのゲーミングPCやゲーミングデバイスとはデザインの統一感があり、RGBイルミネーションの同期も可能。OMENユーザーで10万円前後の4K 144Hzディスプレイを検討しているなら、他社製品よりも同じOMENシリーズで揃えるほうが「揃ったときの見た目がカッコイイ」という点でおすすめです。
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