『HP Pavilion 15-eg3000』は、15.6インチディスプレイ搭載の据え置き向けスタンダードノートPCです。CPUは第13世代Coreプロセッサで、日常的な作業をこなすのには十分な性能を実現しています。

HP Pavilion 15-eg3000
本体デザインは高品質で、据え置き向けとしてはスリムな点がポイント。しかしいまの外観は初代モデルからの流用で、最近のトレンドから乗り遅れつつある印象を受けます。またベンチマークテストでは熱による影響で、パフォーマンスが低下しているように見受けられました。とは言っても軽めの作業には十分なので、週末セールなどで安く買えるならアリです。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 15.6インチ 1920×1080 IPS 光沢 タッチ対応 |
CPU | Core i5-1335U / Core i7-1355U |
メモリー | 8GB(4GB×2) / 16GB(8GB×2) DDR4-3200 ※最大16GB |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.3 |
インターフェース | USB Gen2 Type-C×1(PD / DP対応)、USB Type-A×2、HDMI2.1(最大3840×2160)、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅360mm、奥行き234mm、高さ17.9~20mm / 約1.71kg |
バッテリー | 最大 7時間30分 |
本体デザイン

HP Pavilion 15-egの外観。写真はフォグブルーのカラーで、落ち着いた印象ながらもメタリック感が先進的な印象を与えています

セラミックホワイトのカラーは、透き通るような清潔感のある白が印象的。キズや汚れが目立ちにくい点もポイントです ※写真は同型の旧モデル

フォグブルーモデルのキーボード面

セラミックホワイトのモデルはキーボード面がシルバー。キーボードバックライトを点灯すると、キートップの文字がやや見づらく感じます ※写真は同型の旧モデル

天板はアルミ製。表面はツヤ消しのサラサラとした手触りで、高級感のある仕上がりです。指紋の跡はあまり目立ちません

ディスプレイを開いた状態

カメラは1280×720ドット30 fpsの動画撮影に対応。画角は広めで、ビデオ会議などでは背景が大きく映り込みます。格安タイプのノートPCでは一般的なカメラです

キーボード右下には指紋センサー

スピーカーは底面配置。音の解像感はやや高めですが、音の出る場所が底面でふさがれているため、低~中音域がややわずかに聞こえます。低音は軽めですが、ビデオ会議には問題なく使えるでしょう

ベゼルは標準的な太さ。いまどきの機種としては、上下がやや太く感じます。旧モデルからサイズがほぼ変わっていないので、このあたりは仕方がないでしょう

インターフェース構成は少なめ。特にメモリーカードスロットに対応していない点が残念です。最近はThunderboltに対応する機種が増えていますが、HP Pavilion 15-egは非対応

電源アダプターは丸口タイプの65W。重さは267g

排気口はこの部分

底面は樹脂(プラスチック)製
サイズと重量

本体サイズは幅360mm、奥行き234mm。B4サイズよりもわずかに小さい程度で、15.6インチタイプとしては標準的な大きさです

高さは公称値で17.9~20mm

底面部のゴム足を含めた高さは20mm前後。設置時でもそれほど厚くは感じません

重さは実測で1.706kg。最近の15.6インチスリムノートPCとしては標準的な重さです
ディスプレイについて

画面サイズは15.6インチで、解像度は1920×1080ドット。いまでももっともスタンダードなスペックですが、16:10が増えてきた最近のノートPCと比べるとやや古くささを感じてしまいます

ディスプレイは広い視野角と自然な発色が特徴のIPSパネルが使われています。ただし色の鮮やかさはほどほど。おそらくNTSC 45%相当の格安パネルと変わらないでしょう

ディスプレイの明るさはほどほど。作業には十分ですが、鮮やかさを感じるほどではありません

ディスプレイはタッチ操作に対応

表面は光沢ありのグレア仕上げ。ディスプレイの角度によっては映り込みが気になるかもしれません
キーボードについて

キーボードは日本語配列でバックライト対応。数値入力に便利なテンキーが付いています

配列に特殊な部分はなく、いい意味で標準的。ただしキーピッチがやや狭く、少し窮屈に感じるかもしれません

タイプ感は軽め。押した瞬間の手応えは感じられるものの、基本的には指先で軽く打つ人向けです

軽い力で入力しても、タイプ音は聞こえます。普段はうるさくないものの、静かな場所では少し気になるかもしれません。軽めのタッチ推奨です
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-1355U(10コア12スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 16GB(DDR4-3200) |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
ストレージ性能
ストレージには、256GB / 512GBのSSDが使われています。試用機で使われていたのはインテルSSD 660pシリーズ(SSDPEKNU512GZH)で、アクセス速度はやや低速。PCIe Gen3 x4接続だからというのもありますが、そもそも低速なSSDが使われているようです。内部の熱が高くなりすぎないよう、あえて低速なSSDを使っているのかもしれません。

512GB SSDのアクセス速度計測結果
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCore i5-1335UまたはCore i7-1355Uが使われています。Core i7-1355U搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、現行世代のCPUとしては中位クラスの結果でした。悪くはないものの、上位のCore i7ということを考えるとやや物足りません。
また前モデル『HP Pavilion 15-eg2000』で使われていたCore i7-1260Pよりも、低いスコアが出ています。これはCore i7-1260Pが12コア / 16スレッド / PBP28Wであるのに対し、Core i7-1355Uは10コア / 12スレッド / PBP15Wと省電力性能重視のCPUであるためです。
かと言って、バッテリー駆動時間が大きく伸びているわけではありません。公称値では前モデルの7時間から30分延長された程度です。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21237
|
Pavilion 15-eg2000(Core i7-1260P) |
21047
|
Core i5-1340P |
20974
|
Core i7-1360P |
19702
|
Ryzen 7 7730U |
19245
|
Core i5-1335U |
19074
|
Ryzen 5 7535U |
16856
|
Pavilion 15-eg3000(Core i7-1355U) |
16814
|
Ryzen 5 7530U |
16265
|
Core i7-1355U |
16048
|
Core i3-1315U |
13813
|
Ryzen 3 7330U |
11013
|
Intel N305 |
10374
|
Ryzen 5 7520U |
9802
|
Ryzen 3 7320U |
9258
|
Intel N100 |
5651
|
Athlon Silver 7120U |
2558
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
その一方で、軽めの作業に強く影響するシングルスレッド(シングルコア)性能のテストでは、Core i7-1355U搭載モデルのスコアが大きく伸びています。日常的な作業では、快適に利用できるでしょう。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Pavilion 15-eg3000(Core i7-1355U) |
4071
|
Core i7-1360P |
3785
|
Pavilion 15-eg2000(Core i7-1260P) |
3738
|
Core i7-1355U |
3736
|
Core i5-1335U |
3771
|
Core i7-1355U |
3736
|
Core i3-1315U |
3600
|
Ryzen 7 7730U |
3254
|
Ryzen 7 7735U |
3241
|
Ryzen 5 7530U |
3213
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3053
|
Ryzen 3 7320U |
2486
|
Intel N305 |
2280
|
Intel N100 |
1982
|
※そのほかスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
マルチスレッド(マルチコア)性能を含む総合性能のテストでスコアが低いのは、もしかするとCPUの発熱が影響しているのかもしれません。本体内部の熱が上昇しすぎるのを防ぐために、あえてパフォーマンスを抑えている可能性があります。前述のSSDのテストでも発熱対策としてアクセス速度の低いSSDを選んでいるように見受けられましたから、意外とこの説はあるような気がします。
グラフィックス性能
グラフィックス機能には、CPU内蔵のIris Xe Graphicsが使われます。Core i7搭載の試用機で3Dベンチマークテストを行なったところ、DDR4メモリーとの組み合わせとしてはちょっと優秀な結果が出ました。ただしゲームや動画編集などでの効果を期待できるほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Zen3+) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
HP Pavilion 15-eg(Iris Xe, Core i7+DDR4) |
1278
|
Radeon (Zen3) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Zen2+) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は、大きくクリアーしています。マルチコア性能が強く関わるテストのスコアが低めなので、発熱による影響が出ているのかもしれません。やはり軽めの作業向きです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10258
10616
10917
9869
10010
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7417
10003
9572
8854
7014
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
6026
6018
6536
8298
5702
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶Inspiron 14 5430 | Core i5-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
そろそろ最適化が必要では?
初代HP Pavilion 15-eg0000が発売されたのは2022年。そのモデルでは、第11世代Coreプロセッサが使われていました。現在のHP Pavilion 15-eg3000は3代目ですが、本体デザインはほとんど変わっていません。筐体を新しくするにはコストがかかるため以前のデザインを流用するのは仕方がないものの、ノートPCのトレンドから離れつつある感が出てきています。
またベンチマーク結果を見ると、第13世代Coreプロセッサの発熱を処理し切れていない印象です。普段使いには十分ではあるものの、パフォーマンスが落ちているように見られるのは残念。新プラットフォーム向けの最適化が望まれますが、基板レベルで新たに作るとなるとコストが上昇するため、値上がりする可能性があるのが悩ましいところです。

最近のトレンドから離れつつある本体デザイン
記事執筆時点での価格はCore i5-1335U / 8GBメモリーモデルで10万円ちょっと、Core i5-1335U / 16GBメモリーモデルで約11万円、Core i7-1355U / 16GBメモリーモデルで約13万円。2023年7月末時点での相場で考えると、かなり高めに設定されています。週末セールで安く販売されることもありますが、熱でパフォーマンスが低下しているような様子のことを考えると高コスパとは断言できません。
ただ8GBメモリーの最安モデルで7万円以下、16GBメモリーモデル7~8万円台まで下がるのであればアリだとは思います。激安セールのタイミングをうまく活用して入手してください。
*
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