マイクロソフトのSurface Proには、CPUやメモリー/ストレージ容量の異なる8種類のモデルが用意されています。今回はそのなかから、CPUにCore m3/i5を搭載したモデル3機種について、実機を使ったベンチマークテストの結果を紹介します。
この記事の目次
Surface Pro(2017年モデル)
https://komameblog.jp/review/surface-go/
https://komameblog.jp/surface/
Surface Proのラインナップ
Surface Proのラインナップは、以下の8機種です。それぞれCPUの種類やメモリー/ストレージ容量が異なります。基本的に値段の高いモデルほど性能に優れていますが、本体デザインや液晶ディスプレイの品質などは変わりません。
Surface Lapotopのラインナップ
Core m3モデル | |
---|---|
税込11万4264円 | |
Core i5+4GBメモリーモデル | |
税込13万6944円 | |
Core i5+128GB SSDモデル | |
税込13万6944円 | |
Core i5+256GB SSDモデル | |
税込15万8544円 | |
LTEモデル | |
税込17万4744円 | |
Core i7+256 SSDモデル | |
税込20万6064円 | |
Core i7+512 SSDモデル | |
税込28万0584円 | |
Core i7+1TB SSDモデル | |
税込34万1064円 |
※2018年6月5日時点
ペン入力用のSurfaceペンと、キーボードとしても使えるタイプカバーは別売りです。Surface Proを活用するには必須ですので、まとめて購入することをおすすめします。
基本性能のベンチマーク結果
今回は、Core m3(128GB/Intel Core m3/4GB RAM)モデルとCore i5モデル(128GB/Intel Core i5/4GB RAMと256GB/Intel Core i5/8GB RAM)の3機種でテストを行ないました。なおベンチマーク結果についてはスペックや環境、タイミングなどによって大きく変わることがあります。
Windows 10の快適さ
Windows 10の快適さを計測する「Windowsシステム評価ツール(WinSAT.exe)」の結果は以下のとおり。Core m3モデルとCore i5モデル(メモリー4GB)ではあまり差が出ていませんが、Core i5(8GBメモリー)ではメモリーとグラフィックスのテストでスコアが大きく伸びています。
Windowsエクスペリエンスインデックス(システム評価ツールの結果)
Core m3 | Core i5(メモリー4GB) | Core i5(メモリー8GB) | |
---|---|---|---|
プロセッサ | 7.4 | 7.6 | 7.7 |
メモリ | 5.9 | 5.9 | 7.9 |
グラフィックス | 5.9 | 5.6 | 6.8 |
プライマリハードディスク | 8.65 | 8.6 | 8.9 |
CPUの性能
CPUの計算性能を計測する「CINEBENCH R15」では、マルチコア性能でCore i5モデルがCore m3モデルを25%程度上回っています。ただしシングルコア性能では、両CPUに大きな違いはありません。Core i5モデルで4GBメモリーと8GBメモリーの差が出ているのは、誤差のためだと思われます。
CPUの性能比較 その1
CPU | CINEBENCH R15のCPUスコア |
---|---|
Core i5(4GBメモリー) |
|
Core i5(8GBメモリー) |
|
Core m3 |
|
総合的なCPU性能を計測するPassMark PerformanceTest 9.0のCPU Markでは、なぜかCore i5(4GBメモリー)のスコアがCore m3よりも低くなりました。もしかするとベンチマーク中にバックグランドで、ほかのプロセスが動いていたのかもしれません。今回はこのような結果となりましたが、おそらくCore i5(8GBメモリー)と同程度のスコアになるはずです。
CPUの性能比較 その2
CPU | PassMark PerformanceTest 9.0のCPU Markスコア |
---|---|
Core i5(8GBメモリー) |
|
Core m3 |
|
Core i5(4GBメモリー) |
|
ベンチマーク結果では、Core i5のほうがCore m3を上回る結果が出ました。しかしスコアの差は25~37%程度で、劇的に変わるというわけではありません。軽めの作業であれば、おそらくCPU性能の差はあまり感じられないはずです。
ストレージのアクセス速度
ストレージのアクセス速度を計測したところ、128GB SSDについてはCore m3とCore i5でほぼ同じ結果となりました。しかしCore i5モデルの256GB SSDではシーケンシャルライトの速度が向上しています。これはSSDは容量が大きくなるほど、アクセス速度が向上するため。CPUの性能は直接的には関係ありません。
テスト機ではストレージにサムスン製の「PM961(KUS020203M)」が使われていました。Surface Proでのアクセス速度はSSD本来の速度よりもやや低めです。なお出荷タイミングによっては、異なるメーカー/型番のSSDが使われているかもしれません。
PM961のアクセス速度(公称値)
シーケンシャルリード | シーケンシャルライト | |
---|---|---|
128GBモデル | 2,800MB/秒 | 600MB/秒 |
256GBモデル | 2,800MB/秒 | 1,100MB/秒 |
512GBモデル | 2,800MB/秒 | 1,600MB/秒 |
1TBモデル | 3,000MB/秒 | 1,700MB/秒 |
参考リンク
- Client SSD(サムスン)
PCとしての総合性能
総合的なパフォーマンスを計測する「PCMark 10」では、やはりCore i5+8GBメモリーモデルで優れた結果となりました。Core m3モデルは、かなり控えめな結果です。
PCMark 10の結果
Core m3 | Core i5(4GB) | Core i5(8GB) | |
---|---|---|---|
App Start-up Score | 6014 | 7620 | 8038 |
Video Conferencing Score | 5852 | 6457 | 6806 |
Web Browsing Score | 5322 | 5898 | 6368 |
Spreadsheets Score | 4696 | 6009 | 6615 |
Wiriting Score | 3498 | 4504 | 4903 |
Photo Editing Score | 2178 | 2911 | 2859 |
Rendering and Visualizetion Score | 1130 | 1354 | 1235 |
Video Editing Score | 2509 | 3297 | 3260 |
ゲーム性能のベンチマーク結果
3DMarkベンチマーク結果
3Dゲームの快適さを計測する「3DMark」をテストしたところ、Core m3モデル/Core i5モデルともに低めの結果となりました。
3DMarkベンチマーク結果 | |||
Core m3 | Core i5(4GB) | Core i5(8GB) | |
---|---|---|---|
Fire Strike | 688 | 770 | 718 |
Sky Diver | 3129 | 3418 | 1977 |
Cloud Gate | 4814 | 4792 | 6335 |
Ice Storm | 44633 | 39302 | 51568 |
ドラクエ10ベンチ
「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」の快適さを計測する「ドラゴンクエストXベンチマークソフト」では、メモリー容量が4GBだと1280×720ドット、8GBメモリーだと1920×1080ドットでなら、画質を落とすことも問題なく遊べるでしょう。高いグラフィックス性能を必要としない軽めのゲームであれば、ある程度はプレー可能です。
Core m3 | Core i5(4GB) | Core i5(8GB) | |
---|---|---|---|
1280×720ドット、標準品質 | 6580(快適) | 7743(とても快適) | ※未計測 |
1280×720ドット、最高品質 | 5243(快適) | 6135(快適) | ※未計測 |
1920×1080ドット、標準品質 | 3601(普通) | 2098(やや重い) | 5585(快適) |
1920×1080ドット、最高品質 | 2545(やや重い) | 2487(やや重い) | 8393(普通) |
FF14ベンチ
「ファイナルファンタジーXIV:紅蓮のリベレーター ベンチマーク」では、解像度1280×720ドットの標準品質で「設定変更を推奨」という評価です。ベンチマークのプリセットでは事実上この設定が最低ですので、プレーは諦めたほうがいいでしょう。グラフィックス重視のゲームについて、かなり厳しいと言えます。
Core m3 | Core i5(4GB) | Core i5(8GB) | |
---|---|---|---|
1280×720ドット、標準品質 | 1543(設定変更を推奨)※平均9.57 FPS | 1549(設定変更を推奨)※平均9.66 FPS | 1780(設定変更を推奨)※平均11.36 FPS |
発熱について
Core m3モデルとCore i5モデルは、CPUクーラーのないファンレス仕様です。動作音がまったくない点は快適なのですが、内部の発熱が気になるところ。そこで高い負荷がかかった状態での温度を調べてみました。
Core m3モデルの発熱
Core m3モデルでは3DMark実行時のCPU温度しか確認できませんでした。ベンチマーク中の最高温度は60度で、最大限界温度(100度)までにはまだ余裕があります。
表面の温度については放射温度計を利用して計測してみたところ、最大で46度でした。背面を触ってみると確かに熱を感じますが、Surface Pro使用中は背面に触れる機会がないので、特に問題ないかもしれません。
Core i5モデルの発熱
Core i5モデルではPCMark 8実行時に、CPU/GPU温度が最大73度にまで達しています。Core m3よりも高い温度ですが、こちらも最大温度は100度ですので、特に問題はない範囲です。CPUの動作周波数を確認しても、熱によるパフォーマンスの低下は見られませんでした。
内部の熱が高いだけあって、表面の温度もCore m3モデルよりも若干高く感じました。正確な温度については現在計測中ですが、こちらも体が触れる部分は温度が低いので、問題ないと思われます。
Core m3モデルの使用感
ここからは、Surface ProのCore m3モデルを使い続けた感想について紹介します。
まずWindows 10の操作自体は非常に快適で、特にストレスは感じません。確かにCore i5のほうが速く感じますが、Core m3でも十分です。他社製PCのようにドライバーや常駐アプリが必要以上に組み込まれないので、動きが軽いのではないでしょうか。
ただし負荷の高いソフトの利用はおすすめしません。たとえばPhotoshopで3000×2000ドットの画像を開くと、カーソルやプレビュー表示の動きが鈍くなります。またペン入力も遅延気味。お絵かき程度なら問題はありませんが、サイズの大きい画像を扱うならCPUとメモリー容量にはこだわるべきでしょう。
CLIP STUDIO PAINTの試用版も試してみましたが、Photoshopよりも軽く動作する印象です。簡単な線画であれば問題なく使えるかもしれません。ただし3Dオブジェクトや高度なフィルターは動きが重くなってしまいました。やはり本格的にイラストを描くのであれば、高性能なCPUと大容量メモリーが必要となるようです。
Core m3モデルの評価
- Windows 10は快適(Core i5が有利)
- ファイル操作もスムーズ(若干Core i5が有利)
- Webの閲覧や文書作成、動画視聴は問題なし
- イラスト制作は「お絵かき」程度
- 写真加工や動画編集には向かない
- 軽めの3Dゲームなら低解像度でOK
Surface Proの選び方
Core m3モデルは軽めの作業中心の人におすすめです。「Surface Proが欲しいけど、本格的に絵を書くわけじゃないし……」という人は検討してみてはいかがでしょうか。
逆に本格的にイラストを描きたい人には、16GBメモリーのモデルをおすすめします。画像ファイルのサイズが大きくなるほど、メモリー容量が大きいほうが有利だからです。そこまで本格的ではないけど、ちょっとした画像や動画を扱うという人は、8GBメモリーのモデルを選ぶといいでしょう。
用途別の選び方
- ネットや文書作成中心 → Core m3
- 高度なソフトを利用する → メモリー容量は8GB以上
- イラストや動画を本格的に制作 → メモリー容量は16GB
- RAW現像に利用 → Core i7+1TB SSDモデル