レノボの『ThinkCentre neo 50q Tiny Gen 4 (第13世代Intel Core)』(以下、”ThinkCentre neo 50q Tiny Gen 4″)は、コンパクトサイズのデスクトップPCです。設置に場所を取らない上に、端子や機能も十分。事務作業や普段使い向けに適しています。
記事執筆時の価格
スペック | 価格 |
---|---|
Core i5-13420H / 16GB / 256GB | 6万4790円 |
※2023年10月27日時点
CPUは第13世代のCore i5-13420Hです。ハイエンドノートPC向けのCPUですが、CPUの熱による影響で、高負荷時のパフォーマンスが低下しているように見受けられました。動画エンコードなどの重い処理には向きませんが、ネットの調べ物やメールのやり取り、ちょっとした文書作成には問題なく利用できるでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
スペック
発売日 | 2023年5月9日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
CPU | Core i5-13420H(8コア/12スレッド) |
メモリー | 8GB×1 / 16GB×1(DDR4-3200、スロット×2、最大32GB) |
SSD | 256 / 512GB SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.1、有線LAN(1Gb) |
インターフェース | USB3.2 Gen2×3、USB2.0×2、USB3.2 Gen2 Type-C×1(データ通信のみ)、HDMI、DisplayPort、有線LAN、ヘッドホン端子 |
ドライブベイ | 2.5インチ×1 |
付属品 | USBマウス、USBキーボード、スタンド、電源アダプターなど |
サイズ / 重さ | 幅182.9×奥行き179×高さ36.5mm / 約1.11kg |
オフィス | なし ※付属モデルあり |
本体デザイン
外観
ほかのミニPCとの違い
インターフェース構成
メモリー/SSDの増設について
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-13420H(8コア/12スレッド) |
---|---|
メモリー | 16GB×1 DDR4-3200 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは一部のテストを除いて、Windows 11の電源プランを「バランス」に、標準収録ユーティリティ「Lenovo Vantage」の「電源プラン」を「Lenovo Default」に設定した上で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けのCore i5-13420H(8コア12スレッド)が使われています。本来はハイエンドノートPC / ゲーミングノートPC向けですが、一般作業用としてスリム型ノートPC向けCPUのベンチマークスコアと比較してみました。なおベンチマークテストは「Lenovo Vantage」のパフォーマンス設定を標準の「Lenovo Default」と高性能設定の「マックスパフォーマンス」の2パターンで行なっています。
ThinkCentre neo 50q Tiny Gen 4では、パフォーマンス設定を変えてもスコアはほとんど変わりませんでした。またCore i5-13420Hの平均スコアから18%程度低い結果が出ています。一般的なPCとしては中位クラスですが、おそらく熱による影響でスコアが伸び悩んでいるのでしょう。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21043
|
Core i5-1340P |
20760
|
Core i7-1360P |
19623
|
Ryzen 7 7730U |
18979
|
Core i5-13420H |
18826
|
Core i5-1335U |
18240
|
Ryzen 5 7535U |
17163
|
Ryzen 5 7530U |
16196
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,マックスパフォーマンス) |
15956
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,Lenovo Default) |
15942
|
Core i7-1355U |
15636
|
Core i3-1315U |
13033
|
Ryzen 3 7330U |
10909
|
Core i3-N305 |
10265
|
Ryzen 5 7520U |
9759
|
Ryzen 3 7320U |
9249
|
Intel N100 |
5620
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
一般用途用のスタンダードデスクトップPC向けCPUと比較すると、性能的にはやや低めの印象です。特に人気機種「ThinkCentre M75q Tiny」で使われているRyzen PRO 5000GEシリーズよりもスコアが大きく異なるのは気になります。
スタンダードデスクトップPC向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-13700 |
38993
|
Core i7-12700 |
31424
|
Core i5-13400 |
25877
|
Ryzen 7 PRO 5750GE |
22050
|
Core i5-13420H |
19950
|
Core i5-12400 |
19509
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
18517
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,マックスパフォーマンス) |
15956
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,Lenovo Default) |
15942
|
Core i3-13100 |
15130
|
Core i3-12100 |
14443
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
ミニPC向けCPUのなかでも、やや控えめな印象です。さすがに2~3万円台の格安機種よりは高性能ですが、4~6万円台の中華インディーズ系製品で使われているCPUよりも低いスコアが出ています。
ミニPC向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-13500H |
24011
|
Core i7-12650H |
23679
|
Ryzen 7 5800H |
21256
|
Ryzen 7 6800U |
20598
|
Ryzen 7 5800U |
18670
|
Ryzen 5 6600H |
19125
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 6600U |
17274
|
Ryzen 5 5600H |
17119
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,マックスパフォーマンス) |
15956
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,Lenovo Default) |
15942
|
Ryzen 5 5600U |
15462
|
Ryzen 5 5625U |
15181
|
Intel N100 |
5630
|
Intel N195 |
5463
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値で、実機の結果ではありません。また実機では熱対策により、平均値よりも低いスコアが出る場合があります
ただしシングルスレッド性能については、非常に高いスコアが出ています。薄型ノートPC向けCPUの上位クラスよりもスコアは上で、スタンダードデスクトップPC向けCPUと比較してもほぼ上位クラスの位置付けです。動画編集や高度なデータ処理などよりも、事務作業のような軽めの処理で威力を発揮するでしょう。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-13700 |
4168
|
Core i7-12700 |
3940
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,マックスパフォーマンス) |
3794
|
ThinkCentre(Core i5-13420H,Lenovo Default) |
3781
|
Core i7-11700 |
3158
|
Core i7-10700 |
2916
|
Core i7-9700 |
2765
|
Core i7-8700 |
2656
|
Core i7-7700 |
2464
|
Core i7-6700 |
2298
|
Core i7-4790 |
2229
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
ThinkCentre(UHD) |
838
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージは256 / 512GBのNVMe SSDで、試用機ではサムスンの「PM9B1(MZVL4256HBJD)」が使われていました。PCIe 4.0 x4接続としてはアクセス速度が遅いものの、公式スペックと変わりないため、熱による影響が出ているわけではありません。512GBモデルであれば、もう少しアクセス速度は向上する可能性があります。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
テストはパフォーマンスを標準設定(Lenovo Vantageの電源プランを「Lenovo Default」)と、最大設定(同「マックスパフォーマンス」)の2パターンで行ないました。目標値は大きくクリアーしているものの、スコアはどちらも同程度。4~6万円台の他機種と同程度かやや劣る程度の結果が出ています。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10225
10166
7142
10603
10299
10256 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7577
7490
4879
9709
7128
9930 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5379
5345
2515
6044
6586
5707 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶NucBox10 | Ryzen 7 5800U / 16GB / Radeon |
▶IdeaCentre Mini Gen 8 | Core i5-13500H / 8GB / UHD |
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
CPUの熱について
パフォーマンスを標準設定(Lenovo Vantageの電源プランを「Lenovo Default」)と、最大設定(同「マックスパフォーマンス」)の2パターンに変えて高負荷時のCPU温度を計測したところ、標準設定では平均96.3.4度、最大設定では平均96.2度でした。パフォーマンス設定を切り替えても、CPUの温度やクロック(性能)は変わりません。センサーのログを確認したところ、サーマルスロットリングの症状が発生していました。温度はかなり高めに出ているため、高負荷の処理を長時間続けるのは避けたほうがいいでしょう。
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)については、計測値を記したメモを紛失してしまったため掲載できません。
ただ検証で利用した限りでは、多少の駆動音が聞こえるものの、基本的には静かだと思います。高負荷時には排気音がやや大きくなるものの、うるさく感じるほどではありません。
安心感を求める人のための軽作業向きPC
筐体がスリムなのは魅力ですが、冷却性能が追いついていないようです。ベンチマーク結果を見る限りでは、CPUの発熱によって性能が低下しているように感じられます。駆動音が小さい、つまり冷却機能が弱い点もパフォーマンスに影響しているのでしょう。
とは言え、実生活でベンチマークテスト相当の処理を行なう場面は少ないはずです。日常的に動画をエンコードしている人でもない限り、大きな影響はないと思います。ネットの調べ物や文書作成、ファイルや写真の管理レベルなら、快適に利用できます。従来のミニタワー型やスリム型デスクトップPCを置き換えるものだと考えてください。
また激安ミニPCと比べて、大手メーカー製の安心感がある点もポイント。インディーズメーカー製品の品質が悪いわけではありませんが、出荷台数からの歩留まりや安定性の面では大手(しかも超大手)のほうが圧倒的に有利です。
性能やコスパの面ではやや不利な部分はあるものの、「レノボ」や「ThinkCentre」のブランドを重視するならアリだと思います。
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