ポイント
- ノートPCとしては最高クラスの性能
- 使いやすいキーボード
- MILスタンダードクリアーの高い堅牢性
ThinkPad T14 Gen 1 (AMD)のスペック
画面サイズ | 14インチ |
---|---|
解像度 | ・1366×768 ・1920×1080 |
CPU | ・Ryzen 5 PRO 4650U ・Ryzen 7 PRO 4750U |
メモリー | ・8GB ・16GB ※最大32GB、スロット1 |
SSD | ・128GB ・256GB ・512GB ・1TB |
HDD | なし |
グラフィックス | Radeon |
LTE | 対応 |
MILスペックテスト | MIL-STD-810Gクリアー |
幅×奥行き | 329×227mm |
厚さ | 17.9mm |
重量 | 1.57kg~ |
バッテリー | 最大 約15.9時間 |
※2020年7月14日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ブラック |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | ・TN ・IPS |
タッチ / ペン | ・タッチ非対応 ・タッチ対応 |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | 1000Mbps |
無線LAN | Wi-Fi 6 (11a/b/g/n/ac/ax) |
Bluetooth | 5.0 |
USB3.1 | 2 (Gen1×1+Gen2×1) |
USB3.0 | - |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 2 (USB3.1 Gen2) |
Thunderbolt 3 | - |
メモリーカード | microSD |
HDMI | 1 |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
Webカメラ | HD 720p (92万画素) |
顔認証カメラ | オプション |
指紋センサー | オプション |
付属品 | ACアダプターなど |
オフィス | ※オプションで追加可能 |
この記事では筆者が購入した実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
デザインと使いやすさ
重厚感のあるボディ
ThinkPad T14 Gen 1 (AMD) ではボディの素材に、ガラス繊維強化PPSまたはガラス繊維強化PAと呼ばれる一種の樹脂素材が使われています。ThinkPad X1 Carbonなどで使われているカーボン素材ほどの質感はないものの、安っぽさは感じられません。むしろ重厚感のあるデザインです。
MILスタンダード準拠の高い堅牢性
ThinkPadシリーズは、使いやすさと壊れにくさで人気のモデルです。ThinkPad T14 Gen 1 (AMD)は「MIL-STD-810G」、通称「MILスタンダード」と呼ばれる米国国防総省の調達基準テストをクリアーしており、さらに落下テストやディスプレイの開閉テストなどさまざまな品質テストにも合格しています。優れた堅牢性 (壊れにくさ)が魅力です。
据え置き用としてはコンパクト
フットプリント (接地面積)は幅329×奥行き227mmで、A4サイズ (幅297×奥行き210mm)よりもひと回り強大きい程度です。サイズ的にはThinkPad X1 Carbon (幅323×奥行217mm)よりもわずかに大きめですが、14インチとしては小さいと言っていいでしょう。ただし基本的には据え置き用なのでやや厚く、重みも感じます。
高さは公称値で17.9mmですが、実測では19.3mmありました。底面部のゴム足を含めると20.3mmです。フットプリントが小さいぶん、数値以上に厚みがあるように感じました。
見やすい14インチ
液晶ディスプレイの大きさは14インチです。もっともスタンダードな15.6インチよりもひと回り小さいものの、画面はそれほど小さくは感じません。比較的大きくて見やすい画面です。
解像度は1366×768ドットのHDと、1920×1080ドットのフルHDの2種類。今回試用したのはフルHDで、デスクトップの文字の大きさは2~2.8mm程度 (スケーリング150%)でした。新聞よりも文字が小さいのですが、読みづらくは感じません。
IPSパネルなら自然な色合い
解像度1366×768ドットのディスプレイでは、青みの強いTNパネルが使われています、文書作成には問題ありませんが、写真や動画での鮮やかさはいまひとつです。
解像度1920×1080ドットのディスプレイはIPSパネルで、映像は自然な色合い。コントラストが高く文字がクッキリ見えます。見やすさの点では、IPSパネルのほうが優れています。
試用機はIPSパネルで、色に違和感は感じませんでした。ただし画面がやや暗く、鮮やかさはほどほどと言ったところ。写真や動画を楽しむよりも、文書作成やデータを扱う作業に向いています。
色域測定結果
sRGBカバー率 | 61% |
---|---|
sRGB比 | 61.1% |
Adobe RGBカバー率 | 45.3% |
Adobe RGB比 | 45.3% |
違和感のないキーボード
キーボードはテンキーなしです。標準では日本語配列ですが、購入時のオプションで英字配列に変更できます。またバックライトも有料オプションです。防滴仕様で水のしずくがこぼれる程度なら問題ありませんが、防水ではないため水をこぼさないよう注意してください。
キーピッチ (キーとキーの間隔)は実測18.8mm。理想とされる19mmよりもほんのわずかに狭いのですが、窮屈さはまったく感じません。配列にも変わった部分はなく、違和感なく利用できます。
なお標準ではF1~F12キーにメディアキー (ホットキー)が割り当てられています。かな変換などでファンクションキーとして利用する場合は、Fnキー + ESCキーの同時押しでFnロックを有効にしてください。
便利なトラックポイント
ThinkPadシリーズと言えば、キーボード中央の赤いトラックポイントが特徴です。マウスパッドと異なるのは、キーボードを利用している最中でも手を大きく動かすことなくカーソルを操作できる点。慣れると手放せなくなる人もいるほど便利な機能です。
心地よいタイプ感
キーストローク (キーを押し込む深さ)は実測で平均1.8mmでした。ノートPCの標準である1.5mmよりも深く作られています。キーを押した瞬間のクリック感は固めですが、押し込む力は軽め。カクカクとした確かな手応えを感じられます。指を打ち下ろすようにして打つ人には、心地よく感じられるでしょう。
ただしタイプ感がしっかりしているぶん、軽いタッチでもタイプ音がカタカタと聞こえます。うるさくはないのですが、静かな場所では少し気になるかもしれません。打ち下ろすようにしてタイプするとタンタンと響くので注意してください。
インターフェースは充実
基本のインターフェース類は十分な構成です。USB端子は合計4ポートで、うち2ポートがType-C。あとは映像出力用のHDMIと有線LAN、ヘッドホン端子、microSDカードスロットが用意されています。
また有料オプションでセキュリティー認証用のスマートカードリーダーや、SIMフリーのLTE通信を追加可能。同じ14インチでもモバイル向けのThinkPad X1 CarbonやThinkPad T14sに比べて、機能が充実している点がポイントです。
生体認証はオプション
生体認証機能は顔認証用のIRカメラと、指紋センサーに対応しています。どちらも有料オプションなので、必要に応じて追加してください。モデルによっては、あらかじめ対応している場合もあります。
Type-Cは映像出力と充電に対応
USB PD 18W充電 | △ ※低速充電 |
---|---|
USB PD 30W充電 | △ ※低速充電 |
USB PD 45W充電 | ◯ |
USB PD 65W充電 | ◯ |
映像出力 | ◯ |
左側面にあるふたつのType-C端子は、どちらも映像出力とUSB PDによる充電が可能です。ただしワット数の低い充電器では充電できない、もしくは充電に時間がかかる場合がありました。標準の充電器が65Wなので、65W以上の充電器やモバイルバッテリーを利用するといいでしょう。
スピーカーは動画視聴・ビデオ会議向き
スピーカーはキーボード上部に配置されています。音の厚みはやや弱いものの、サウンドはクリアーで解像感も高め。サラウンド感も上々で、ノートPCとしては高音質です。ビデオ会議や音声通話はもちろん、音楽をBGMとしてカジュアルに楽しむのにも向いています。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
モデル名 | プレミアム |
---|---|
CPU | Ryzen 7 PRO 4750U |
メモリー | 8GB ※16GBからダウングレード |
ストレージ | 256GB SSD ※512GBからダウングレード |
グラフィックス | Radeon Graphics (CPU内蔵) |
※グラフィックス機能内蔵のAMD製プロセッサーは本来「APU」と呼ばれますが、ここではわかりやすさ優先で「CPU」と表記します。ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
Ryzen 7 PROは驚異のパフォーマンス
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Markスコア |
---|---|
Core i7-10875H |
18892
|
Core i9-9880H |
18515
|
Core i9-9980HK |
17991
|
Core i7-10750H |
15694
|
Ryzen 7 4700U |
14686
|
Core i7-9750H |
14822
|
ThinkPad T14 (Ryzen 7 PRO 4750U) |
14336
|
Core i7-10710U |
13685
|
Core i7-1065G7 |
12016
|
Core i5-1035G4 |
10844
|
Core i7-10510U |
10257
|
Core i5-1035G1 |
9667
|
Core i5-10210U |
9584
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
試用機で使われていたRyzen 7 PRO 4750Uは、8コア16スレッドで動作します。CPUの総合性能を計測する「PassMark」では、インテルのゲーミングノートPC向けCPUに迫るほどの結果が出ました。コンパクトなボディでしかもTDP (消費電力量の目安)が15Wであることを考えると、この結果は驚異的です。
ただし8コア8スレッドで動作するRyzen 7 4700Uより、低いスコアが出ています。もしかすると試用機のメモリーがシングルチャネルの8GBだったからかもしれません。このあたりは後日検証します。
負荷の高い処理で求められるマルチコア性能についても、非常に優秀な結果が出ています。インテルのCore i7-10875Hと同等レベルですが、Core i7-10875Hは20万円以上のデカくてゴツいゲーミングノートPC向け。ThinkPad T14 Gen 1 (AMD)が11~14万円程度でスリムなことを考えれば、驚くべき結果です。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i9-9980HK |
3558
|
Core i9-9880H |
3402
|
Core i7-10875H |
3293
|
ThinkPad T14 (Ryzen 7 PRO 4750U) |
3289
|
Core i7-10750H |
2861
|
Core i7-9750H |
2684
|
Ryzen 7 4700U |
2661
|
Ryzen 5 4500U |
2458
|
Core i7-10710U |
2214
|
Core i7-1065G7 |
1625
|
Core i7-10510U |
1486
|
Core i5-1035G4 |
1480
|
Core i5-1035G1 |
1456
|
Core i5-10210U |
1435
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
なおほかのモデルで使われているRyzen 5 PRO 4650Uについては未検証ですが、それなりに高いパフォーマンスを期待していいでしょう。CPU性能は異様なほど優秀です。
グラフィックス性能はそこそこ優秀
GPUの性能差
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
GTX 1050 |
5912
|
Radeon (Ryzen 7 16GB) |
3612
|
MX250 |
3400
|
Iris Plus(Core i7) |
2880
|
Radeon (Ryzen 7 8GB) |
2364
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
ThinkPad T14 (Ryzen 7 8GB) |
2322
|
Iris Plus(Core i5) |
2236
|
UHD (Comet Lake Core i7) |
1335
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphicsを利用します。試用機でベンチマークテストを行なったところ、CPU内蔵タイプとしてはそこそこ優秀な結果が出ました。
ただしほかのRyzen搭載機では、16GBメモリー搭載時にグラフィックス性能が大きく伸びています。ThinkPad T14 Gen 1 (AMD)でも、16GBメモリーを搭載していればスコアが大幅アップするかもしれません。この点についても検証予定で、結果がわかりしだいレビューを更新します。
幅広いシーンで活用できる高い汎用性
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) |
目安:4100
8777
|
Productivity (ビジネス利用) |
目安:4500
6846
|
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
目安:3450
4652
|
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
PCを使った作業の快適さを計測するPCMark 10のテストでは、すべてのテストで快適に使える目安のスコアを上回りました。基本的にはさまざまな用途で快適に利用できます。
ただし16GBメモリーとRyzen 7 4700Uを搭載したThinkPad E15のほうが全体的に高いスコアが出ており、もしかするとメモリーが大きく影響しているのかもしれません。この点についても後日検証結果をまとめる予定です。
SSDは超高速タイプ
ストレージはSSDのみ。容量としては128GBから1TBまで用意されています。標準のSSDはPCIe 3.0 x4接続の超高速タイプ。ファイルのアクセスやウィンドウズの起動が速く、全体的にサクサクと動きます。
ちなみに内部的にはM.2スロットが2ポート用意されています。標準のストレージはType 2280でPCIe 3.0 x4対応、未使用のもうひとつはType 2242でPCIe 3.0 x2対応です。SSDを追加すれば、デュアルストレージで利用できるかもしれません。
高パフォーマンスで11時間駆動
バッテリー駆動時間の公称値は最大15.9時間です。最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、11時間22分でバッテリー残量が5%に達し休止状態へ移行しました。
実駆動時間は公称値よりも短いのですが、それでも11時間以上もてば十分優秀です。そもそも持ち歩き向けの機種ではありませんが、優れたバッテリー性能だと言えます。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Ryzen 7モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大15.9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 11時間22分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 31分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 1時間49分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム性能について
ゲーム系ベンチマークを試したところ、動作がごくごく軽いドラクエ10では快適に楽しめるとの評価でした。リーグ・オブ・レジェンド (LoL)など2D描画主体の軽めゲームであれば、画質を調整することで楽しめるでしょう。FF14など少し重めのゲームでは、解像度と画質を落としても厳しいかもしれません。
ただしこれはメモリーが8GBのときの結果です。Ryzen 7 PRO 4750U+16GBメモリーであれば、多少は改善されるかもしれません。この点についても後日検証する予定です。
※テストはフルHDで実施。テスト機は8GBメモリー搭載
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 525 / 動作困難 |
標準品質 | 1137 / 動作困難 |
軽量品質 | 1474 / 動作困難 |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (中量級 / DX11)
画質 | スコア / 評価 / 平均FPS |
最高品質 | 1706 / 11 FPS |
高品質 | 2248 / 14.9 FPS |
標準品質 | 2767 / 18.6 FPS |
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽量級 / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 5881 / 快適 |
標準品質 | 8015 / とても快適 |
低品質 | 8736 / とても快適 |
クリエイティブ性能について
Photoshopベンチ
Photoshopベンチマーク「PugetBench for Photoshop」では、ややイマイチな結果が出ました。CPU性能は高いはずなのに、どのテストでもスコアが伸びていません。もしかするとほかのテストと同様、メモリー性能が影響している可能性があります。後日メモリーを16GBに増設した上でテストを行なう予定です。
Lightroomベンチ
RAW現像ソフト「Lightroom Classic」のベンチマーク「PugetBench for Lightroom Classic」でもPhotoshopと同様、イマイチな結果でした。とりあえず暫定的な結果として掲載しますが、後日16GBに増設した結果をまとめる予定です。
価格について
ThinkPad T14 Gen 1 (AMD)には、パーツ構成の異なる複数のモデルが用意されています。それぞれのパーツ構成と価格は以下のとおり。タイミングによっては新たなモデルが追加されたり、パーツ構成が変わったりすることもあります。
なお公式サイトではRyzen 7モデルのメモリー容量が8GBと書かれていますが。実際には16GBです。またメモリースロットは1スロットのみで、オンボードメモリーとして8GBまたは16GBを選択できます。
ラインナップ
パフォーマンス | |
---|---|
9万7240円 | |
プレミアム | |
13万4420円 |
※2020年7月14日時点
超高性能CPU搭載スタンダードノートPC
よかった点
とにかくCPU性能の高さに驚きです。ThinkPad T14 Gen1にはインテル製CPUを搭載したモデルもありますが、価格が高い上にCPU性能もイマイチ。CPUパフォーマンスで選ぶなら、断然AMDモデルを選ぶべきでしょう。
気になる点
グラフィックス性能がいまいちな点が気になります。CPU内蔵タイプとしては高性能とは言え、やはり外付けGPUにはかないません。CPUがゲーミングノートPC並みに高性能でも、動画編集やゲームに活かせない点が残念です。
インテル製CPU搭載モデルであればThunderbolt 3に対応しているため、VGAボックスなどを使えばグラフィックス機能を強化できます。しかしAMDモデルはThunderbolt 3には非対応で、これ以上は強化できません。高いグラフィックス性能が不要な人向けのモデルです。