レノボのThinkPad X1 Nanoは、コンパクトサイズの軽量ノートPCです。大きさはA4用紙程度で、重さは900g台(構成によって異なります)。頑丈で使いやすく、持ち歩き用に向いています。
主なラインナップ
パフォーマンス | |
---|---|
18万3700円 | |
プレミアム | |
22万6666円 |
※価格は税込
ThinkPad X1 Nanoのスペック
OS | ・Windows 10 Home ・Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 13インチ |
解像度 | 2160×1350(アスペクト比 16:10) |
CPU | ・Core i5-1130G7 ・Core i5-1140G7 ・Core i7-1160G7 ・Core i7-1180G7 |
メモリー | ・8GB ・16GB ※オンボード |
SSD | 256~1TB |
HDD | なし |
グラフィックス | Iris Xe |
リフレッシュレート | 60Hz |
モバイル通信 | 4G / 5G |
堅牢性テスト | MIL-STD-810H準拠 |
色域 / 輝度 | 100% sRGB |
幅×奥行き | 292.8×207.7mm |
厚さ | 13.87mm |
重量 | ・907g(タッチ非対応、Wi-Fi) ・939g(タッチ非対応、WWAN) ・969g(タッチ対応、Wi-Fi) ・1001g(タッチ対応、WWAN) |
バッテリー | 最大 約22時間 |
※2021年6月16日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ブラック |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | IPS |
タッチ / ペン | ・非対応 ・対応 |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | - |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | 5.2 |
USB3.1 | - |
USB3.0 | - |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 2(3.1 Gen2) |
Thunderbolt | 2 (USB兼用) |
メモリーカード | - |
HDMI | - |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
Webカメラ | 720p(92万画素) |
顔認証カメラ | 搭載 |
指紋センサー | 搭載 |
付属品 | ACアダプターなど |
オフィス | なし ※オプションで追加可能 |
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ
※2021年6月16日時点
デザインと使いやすさ
外観について
ThinkPad X1 Nanoは非常に軽量かつコンパクトです。ThinkPadのモバイル機としてはX1 Carbonが人気ですが、14インチってやっぱりそれなりに大きくて重いんですね。しかしThinkPad X1 Nanoは13インチで900gちょっと。実際に持ってみるとわかるのですが、X1 Carbonよりもワンランク上の持ち運びやすさです。もしかすると2ランクくらい上かもしれません。
あとThinkPad X1 Nanoは、なんかちょっと”かわいい”んです。単に小さいだけっていうのもありますが、ほかのThinkPadに比べると「小さくてもがんばってる」感があります。小動物的なかわいさとい言いますか。ぶっちゃけ普通のThinkPadって黒くてゴツくてかわいさ皆無なんですが、ThinkPad X1 Nanoは愛(め)でたくるなるかわいさがあるんですよね。これで本体カラーがホワイトのモデルがあればいいのに。
そんなかわいらしさのあるThinkPad X1 Nanoですが、お約束の「ThinkPadらしさ」はしっかりカバーしています。シリーズの象徴とも言うべきトラックポイントやMIL-STD-810H準拠の高い堅牢性、そして特にキーボード周りに見られる使いやすさなど、ちゃんとThinkPad的です。
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは13インチ。モバイルノートPCとして一般的な13.3インチよりも小さいのですが、体感的にはそれほどの違いは感じません。
解像度は2160×1350ドットで、「フルHD」や「WQHD」などの通称はありません。製品ページでは「2K」と表記されていますが、ピクセル比ではフルHDの1.4倍程度。横が2000ドットを超えているから、2Kと称しているのだと思います。でもそれだと4Kは横3840ドットなので正確には「3.8K」なのでは? とかいろいろありますが、そのあたりはノリで言ってるだけでしょう。
映像はとてもキレイで、明るく感じます。公式スペックによると100% sRGBで輝度は450nitとのこと。ほとんどの人は「なんのこっちゃ」と感じると思うので詳しくは説明しませんが、要はキレイで明るいとだけ意識してください。ただ色味を重視するクリエイティブワークには向きません。趣味レベルなら特に意識する必要もないでしょう。この点もわかる人だけでOKです。
アスペクト比(画面の縦横比率)は16:10です。一般的な16:9に比べて縦に長いぶん、情報がより多く表示されます。と言っても、体感的には文章が2行増える程度。その場その場で改善される作業効率はわずかですが、つもり重なると大きな数字になったりするので意外にバカにできません。
ただしスケーリング(デスクトップの拡大率)が150%に設定されているので、そこまで多くの文字が映し出されるわけではありませんでした。デスクトップの文字の大きさは1.8~2.6mm程度。文字はわずかにドット感がありますが、非常になめらかです。
ちなみにスケーリングを100%に設定すると、デスクトップの文字は1.3~1.7mm程度まで縮小されます。読めなくはないのですが、とても読みづらいので注意してください。
キーボードについて
キーボードはテンキーなしで、バックライト対応。購入時に日本語配列か英字配列かを選べます(カスタマイズ対応モデルのみ、英字配列は有料オプション)。キーピッチは実測で18.2mmで、標準的な19mmよりもわずかに狭め。実際に使ってみると確かにやや窮屈に感じますが、本体がコンパクトなので仕方がないでしょう。使い続けるうちに慣れるはずです。
キーストロークは実測で平均1.41mmでした。ノートPCの標準値である1.5mmよりも浅く、1.5~1.8mmあたりが多いThinkPadシリーズのなかでも浅めに作られています。とは言え最近は1.2mm程度のモバイルノートPCが増えてきており、なかには1.0mm前後のものもあることを考えれば、これでもかなり意識してストロークを深くしているなという印象です。
タイプ感はしっかりと感じられます。入力した瞬間にカクッとした手応えがあり、キーを押し込む力もやや重め。そのぶん指を押し戻す力も感じられました。このクラスの大きさとしては、だいぶタイプ感にこだわっているなという印象です。ただスイッチ部分にややグラつきを感じるのは残念。
タイプ感がしっかりしているぶん、タイプ音はハッキリと聞こえます。軽い力で入力してもカチカチと聞こえました。メカニカルスイッチほどうるさくはありませんが、静かでもありません。静かな場所で使う際は、周囲への配慮が必要です。
あと個人的に感心したのは、タッチパッドの反応がいい点です。サラサラとした手触りで、カーソルの反応は良好。止めたいところでビタッと止まります。パッドクリックにも対応していますが、左右の分離ボタンを使ったほうが押し間違いが少なく、クリック感も軽いのでおすすめ。
インターフェース/機能について
インターフェースは少なく、Thunderbolt4対応のUSB Type-C×2とヘッドホン端子しかありません。せめてフルサイズのUSB端子を! とも思うのですが、よく考えればマウスやら外付けストレージ(NAS)は無線でつながりますし、USBメモリーもあまり使う機会はないですよね。モバイル中心ならこれでアリかもしれません。
ただしレノボ製PCのリカバリーメディアはUSBメモリーを使って作るので、やっぱりフルサイズのUSB端子は必要かもしれません。Type-C / Thunderboltドックを用意したほうがいいでしょう。Type-C接続のUSBメモリーを使う手もありますが、いまはまだやや割高な印象です。
Thunderbolt 4であれば複数の外付けディスプレイに映像を出力したり、GPUボックスを使ってグラフィックス性能を上げるといった使い方も可能です。今回実機では試していませんが、おそらく可能なはずです。もちろん、普通のUSB端子とても利用できます。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | △ ※低速充電 |
---|---|
USB PD 30W充電 | △ ※低速充電 |
USB PD 45W充電 | ○ |
USB PD 65W充電 | ○ |
USB PD 100W充電 | ○ |
映像出力 | ○ |
生体認証はIRカメラによる顔認証と、指紋センサーを使う指紋認証に対応しています。両方使う必要はありませんので、どちらか使いやすいほうを選ぶといいでしょう。屋内でマスクをする必要がないなら手軽で速い顔認証がおすすめです。
スピーカーは底面に配置されています。音が出る部分が接地面でふさがれているので、音はややこもり気味。しかし音質はそれほど悪くはなく、特に低音域の厚みや解像感が感じられました。これだけ本体が小さいと音質は悪くなりがりなのですが、予想以上に高音質でビックリです。さすがにヘッドホンや外付けスピーカーほどではありませんが、一般的なノートPCのスピーカーよりも優れた音質だと思います。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-1160G7 |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
※各ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」に設定した上で、電源モードを「最も高いパフォーマンス」に変更して実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、第11世代(Tiger Lake)Coreプロセッサが使われています。ただし一般的によく使われているcTDP(消費電力の目安)28Wタイプではなく、cTDP 15Wの低電圧版。省電力性能には優れるものの、普通のノートPCでよく使われるCore i5-1135G7やCore i7-1165G7よりもパフォーマンスは控えめです。
現在製品ページにはCore i7-1160G7搭載モデルはなく、上位CPUにはCore i7-1180G7が使われています。またカスタマイズオプションでは、Core i5-1140G7を選択可能です。
Core i5-1140G7とCore i7-1180G7は企業向けのvProに対応するCPUで、BYODなどで企業内システムに接続する際に必要です。なんのことかわからない人は、わざわざ選ぶ必要はありません。
さてCore i7-1160G7搭載の仕様機でCPU性能を計測するベンチマークテストを行なったところ、一般的なノートPCでよく使われるCore i5-1135G7と同程度のスコアでした。Core i7-1180G7のほうが最大動作周波数がやや上なのでもう少しスコアが伸びると思いますが、それでも大きくは変わらないはずです。下位のCore i5-1130G7なら、この結果よりもスコアが低くなるでしょう。
ノートPC全体で見れば、かなり高性能なほうです。普段使いやビジネスには十分で、サクサクと利用できるでしょう。ただし一般的なCore i5 / Core i7よりも性能はワンランク下である点に注意してください。重めの画像処理や動画編集などは、避けたほうが無難だと思われます。
グラフィックス性能
CPU性能はそこそこ高め程度でしたが、3D性能を計測するベンチマークテストでは非常に優秀な結果が出ました。第11世代CoreプロセッサではLPDDR4Xの16GBメモリーが使われていると異様に高いスコアが出るので、おそらくその点が影響しているのでしょう。さすがにゲーム用のGTX / RTXシリーズには及びませんが、内蔵タイプとしてはかなり高性能です。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。ThinkPad X1 NanoのCore i7モデルでテストを実施したところ、すべてのテストで快適に使える目安の目標値を上回りました。おそらくCore i5モデルでも同様の結果だと思われます。
CPUベンチマークテストではやや低めの結果が出ましたが、実利用を想定したテストではよく使われるCore i5 / i7とあまり変わりません。ただしPCMark 10のテストはやや軽めの傾向があるので、あくまでも軽めの作業であればとの条件付きです。
ストレージのアクセス速度
ストレージは256GB~1TB SSDです。512GB SSD搭載のテスト機ではPCIe 3.0 x4接続の超高速タイプが使われていましたが、速度はそこそこのレベルでした。負荷の高いテストを連続して行なっても速度はあまり変わらないので、サーマルスロットリングの影響は少ないのかもしれません。
起動時間
ウィンドウズの起動時間(バッテリー駆動時)は平均17.52秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動はやや遅めです。とは言え、実際のところ待たされている感はほぼありませんでした。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 17.2秒 |
---|---|
2回目 | 16.7秒 |
3回目 | 16.8秒 |
4回目 | 18.2秒 |
5回目 | 18.7秒 |
平均 | 17.52秒 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で、最大約22時間とされています。しかし公称値は実際の利用を想定した結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、9時間33分で休止状態へ移行しました。公称値の22時間よりはだいぶ短いのですが、実際のところ普通に使えばこの程度でしょう。処理によっては短くなったり長くなったりすることもあります。
ただし連続駆動で9時間半であれば、丸1日は問題なく使えるはずです。1日1回は充電する、もしくは45W以上のUSB PD対応モバイルバッテリーを持ち歩くなどしてください。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i7モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大 約22時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 9時間33分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 33分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間5分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム系ベンチマーク結果
ThinkPad X1 NanoのCore i7モデルでゲーム系ベンチマークテストを試したところ、ごく軽いドラクエ10ベンチではフルHDの最高画質でも快適に楽しめるとの評価でした。軽めのゲームであれば、像度や画質の調整で問題なくプレーできるはずです。重いゲームは解像度や画質を変えても、かなり厳しいでしょう。基本的にはゲーム向けの機種ではないので、ごく軽めのタイトルを息抜き程度と考えてください。
なおFF14ベンチは起動しなかったため、今回は計測できませんでした。第11世代Coreプロセッサではたまにこういうことがあるのですが、もしかするとWindows Updateやドライバーなどが影響しているのかもしれません。
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 1211 / 動作困難 |
標準品質 | 1961 / 動作困難 |
軽量品質 | 2533 / やや重い |
※1920×1080ドットの結果。スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | ※計測不能 |
高品質 | ※計測不能 |
標準品質 | ※計測不能 |
※1920×1080ドットの結果。平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 9814 / とても快適 |
標準品質 | 13545 / すごく快適 |
低品質 | 15123 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
かわいいモバイル向けThinkPad(個人の感想です)
よかった点
なんと言っても軽量スリムでコンパクトな点が最大の魅力です。キーの大きさや端子類の少なさなど気になる部分もいくつかありますが、軽-薄-小の三拍子そろったThinkPad X1 Nanoの前では些細な問題に過ぎません。このサイズ感は個人的にすごくかわいいと感じるのですが、もしかして筆者だけでしょうか? 別に変な性癖があるわけではないのですが。
またベンチマーク結果が意外に優秀な点もポイント。最高クラスのパフォーマンスではありませんが、普段使いやビジネスには十分使えるレベルです。加えて高い堅牢性やキーボードの使いやすさなど、ThinkPadらしさを備えている点も見逃せません。高い総合力で判断するなら十分検討に値する機種です。
気になる点
些細な問題は気にならないとは言いましたが、一点だけ無視できないのは値段の高さです。Core i5の8GBで約18万円~は、かなりお高めと言っていいでしょう。「いいモノは高い」の原則からすると仕方がないのですが、個人的にはコスパ超重視派なので「欲しいけど買えない」というのが正直な感想。値段が障壁でなく、極端に重い作業をしないのなら買うべきだと思います。
※2021年6月16日時点
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