レノボのThinkPad X1 Carbonは、14インチの16:10ディスプレイを搭載する軽量ノートPCです。値段はやや高いものの、そのぶん品質が高くて頑丈。持ち歩き用にも向いています。
主なラインナップ
パフォーマンス | |
---|---|
16万8080円 | |
プレミアム マルチタッチ対応 | |
19万7780円 | |
プレミアム ※vPro | |
21万5600円 | |
プレミアム WQUXGA搭載 ※vPro | |
21万5600円 |
※2021年7月28時点
ThinkPad X1 Carbon Gen9のスペック
OS | ・Windows 10 Home ・Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 14インチ |
解像度 | ・1920×1200 ・3840×2400 ※アスペクト比 16:10 |
CPU | ・Core i5-1135G7 ・Core i5-1145G7 ・Core i7-1165G7 ・Core i7-1185G7 |
メモリー | ・8GB ・16GB ・32GB ※オンボード、LPDDDR4 x4266 |
SSD | 256~2TB |
HDD | なし |
グラフィックス | Iris Xe |
リフレッシュレート | 60Hz |
モバイル通信 | 4G / 5G |
堅牢性テスト | MIL-STD-810H準拠 |
色域 / 輝度 | ・100% sRGB ・100% DCI-P3 |
幅×奥行き | 314.5×221.6mm |
厚さ | 14.9mm |
重量 | 1.13kg~ |
バッテリー | 約26時間 |
※2021年7月28日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ブラック |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | IPS |
タッチ / ペン | ・非対応 ・対応 |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | - |
無線LAN | Wi-Fi 6 |
Bluetooth | 5 |
USB3.2 | 2(Gen1) |
USB3.0 | - |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 2(USB4) |
Thunderbolt | 2 (USB兼用) |
メモリーカード | - |
HDMI | 1 |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
Webカメラ | 720p(92万画素) |
顔認証カメラ | オプション |
指紋センサー | 搭載 |
付属品 | ACアダプターなど |
オフィス | なし ※オプションで追加可能 |
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ
※2021年7月28日時点
デザインと使いやすさ
外観について
ThinkPad X1 Carbon Gen 9は軽量スリムで、スタイリッシュな外観です。カーボンやマグネシウムを使ったボディには高級感があり、細部を見ても非常に丁寧に作られていることがわかります。
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは14インチ。モバイルノートPCで主流の13.3インチよりも、わずかに大きめです。解像度は1920×1200ドット(WUXGA)と、3840×2400ドット(WQUXGA)の2種類。さらに1920×1200ドットには、タッチ対応とタッチ非対応のパネルが用意されています。カスタマイズ対応モデルであれば、好きな組み合わせを選択可能です。
画面比率は16:10で、16:9の旧モデルよりも縦長です。そのぶん画面あたりの情報量が増えるので、作業効率がアップするでしょう。
映像は自然な色合いです。公式スペックによると1920×1200ドットのパネルは100% sRGB、3840×2400ドットのパネルは100% DCI-P3とのこと。1920×1200ドットの試用機で色域を計測したところ、sRGBカバー率は99.7%でした。一般的なIPSパネルよりも1~2ランク上の映像品質です。
色域測定結果
sRGBカバー率 | 99.7% |
---|---|
Adobe RGBカバー率 | 78.4% |
DCI-P3カバー率 | 79.2% |
キーボードについて
キーボードはテンキーなしで、バックライト対応。購入時に日本語配列か英字配列かを選べます(カスタマイズ対応モデルのみ、英字配列は有料オプション)。キーピッチは19mmと標準的なサイズですが、Enterキー周辺が若干窮屈です。
ちなみにここ数年のThinkPad X1 Carbonでは、一部でも変則的なキーピッチが採用されることはありませんでした。筆者の把握する限りでは2016年モデル2020年モデルまで、すべて19mmで統一されています。使い勝手のいいキーボードがThinkPad X1 Carbonのひとつの魅力だっただけに、この変更は非常に残念です。
またタッチパッドのボタンについても、クリック感が軽くなっています。以前のモデルではカチッとしたクリック感が感じられたのですが、新モデルでは手応えが弱く感じました。
キーストロークは実測で平均1.56mmでした。実際にキーを打つと、ノートPCの標準値である1.5mmと同程度かやや深めに感じます。指を押し戻す力もしっかりあり、反動を利用した高速なタイピングが可能です。指へのフィット感もよく、たわみや軸のブレもありません。ThinkPad X1 Carbonならではの素晴らしいタイプ感ですが、それだけにEnterキー周辺のキーピッチが残念です。
タイプ音は比較的静かですが、軽い力でもカタカタと聞こえます。静かな場所では、周囲への配慮が必要かもしれません。特にスペースキーとEnterキーは音が響くので、軽めのタッチを意識したほうがいいでしょう。
インターフェース/機能について
インターフェースは、Thunderbolt4対応のUSB 4 Type-C×2とフルサイズのUSB3.2×2、HDMI、ヘッドホン端子の構成です。数も種類も多くはないものの、モバイルノートPCとしては十分な構成と言っていいでしょう。
Thunderbolt 4は複数の外付けディスプレイに映像を出力したり、GPUボックスを使ってグラフィックス性能を上げるといった使い方も可能です。今回実機では試していませんが、おそらく可能なはず。もちろん、普通のUSB端子としても利用できます。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | △ ※低速充電 |
---|---|
USB PD 30W充電 | △ ※低速充電 |
USB PD 45W充電 | ○ |
USB PD 65W充電 | ○ |
USB PD 100W充電 | ○ |
映像出力 | ○ |
生体認証は指紋センサーが標準搭載で、顔認証用のIRカメラ(赤外線カメラ)は有料オプションです。両方使う必要はないので、どちらか使いやすいほうを選んでください。
スピーカーは底面に配置されています。音が出る部分が接地面でふさがれているので、音はややこもり気味。しかし音質はそれほど悪くはなく、特に低音域の厚みや解像感が感じられました。ヘッドホンや外付けスピーカーほどではありませんが、一般的なノートPCのスピーカーよりも優れた音質だと思います。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-1165G7 |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
※各ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」に設定した上で、電源モードを「最も高いパフォーマンス」に変更して実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、第11世代(Tiger Lake)のCore i5-1135G7またはCore i7-1165G7が使われています。Core i7-1165G7搭載の試用機では、同CPUの平均値を上回る優れた結果が出ました。モバイルノートPC / スタンダードノートPC向けとしては、非常に優秀な結果です。
CPUの性能差(総合性能)
CPU | PassMark 9.0 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 5700U |
18449
|
Ryzen 5 5500U |
14737
|
ThinkPad X1 Carbon Gen9(Core i7-1165G7) |
13139
|
Core i7-1165G7 |
12643
|
Core i5-1135G7 |
11434
|
Ryzen 3 5300U |
9550
|
Core i3-1115G4 |
7398
|
Ryzen 3 3250U |
5202
|
Athlon Silver 3050U |
3851
|
Celeron N4120 |
2771
|
Celeron N4500 |
2010
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 5700U |
3512
|
Ryzen 5 5500U |
2817
|
ThinkPad X1 Carbon Gen9(Core i7-1165G7) |
2151
|
Core i5-1135G7 |
2063
|
Ryzen 3 5300U |
2010
|
Core i7-1165G7 |
1963
|
Core i3-1115G4 |
1314
|
Ryzen 3 3250U |
818
|
Athlon Silver 3050U |
624
|
Celeron N4120 |
435
|
Celeron N4500 |
426
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
3D性能を計測するベンチマークテストでは非常に優秀な結果が出ました。第11世代CoreプロセッサではLPDDR4Xの16GBメモリーが使われていると異様に高いスコアが出るので、おそらくその点が影響しているのでしょう。さすがにゲーム用のGTX / RTXシリーズには及びませんが、内蔵タイプとしてはかなり高性能です。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
MX450 |
1996
|
ThinkPad X1 Carbon(Core i7) |
1551
|
MX350 |
1382
|
Iris Xe (Core i7) |
1250
|
Iris Xe (Core i5) |
1066
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Plus |
812
|
Radeon (Ryzen 5) |
784
|
Radeon (Ryzen 3) |
619
|
UHD |
407
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能差(DirectX 11)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8513
|
ThinkPad X1 Carbon(Core i7) |
5186
|
MX450 |
4900
|
Iris Xe (Core i7) |
4561
|
MX350 |
3931
|
Iris Xe (Core i5) |
3478
|
Radeon (Ryzen 7) |
3384
|
Iris Plus |
2880
|
Radeon (Ryzen 5) |
2652
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
UHD |
1335
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。テスト結果の比較用にCore i7-1165G7+16GBメモリー搭載機(比較機①)と、Core i5-1135G7+16GBメモリー搭載機(比較機②)の結果もまとめました。
ベンチマーク結果では、非常に優秀な結果が出ています。快適に使える目安の目標値を大きく上回り、さらに同一スペックの他機種の結果も上回りました。ただしPCMark 10のテストはやや軽めの傾向があるので、あくまでも軽めの作業であればとの条件付きです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10193
9547
7562 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7072
6824
6250 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5203
4702
4714 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
ストレージのアクセス速度
ストレージは256GB~2TB SSDです。256GB SSD搭載のテスト機ではPCIe 3.0 x4接続の超高速タイプが使われており、アクセス速度も十分高速でした。ただし負荷の高いテストを連続して行なうとシーケンシャルライトの速度が若干低下するので、サーマルスロットリングの影響があるかもしれません。
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で、約26時間とされています。しかし公称値は実際の利用を想定した結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、12時間49分で休止状態へ移行しました。公称値の約半分程度の結果ですが、実際のところガッツリ使えばこの程度でしょう。処理によっては短くなったり長くなったりすることもあります。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i7モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約26時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 12時間49分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 29分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 1時間23分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
ゲーム系ベンチマーク結果
ThinkPad X1 CarbonのCore i7モデルでゲーム系ベンチマークテストを試したところ、ごく軽いドラクエ10ベンチではフルHDの最高画質でも快適に楽しめるとの評価でした。軽めのゲームであれば、解像度や画質の調整で問題なくプレーできるはずです。ただし少し重めのゲームでは急に動きが鈍くなることがあり、快適に遊べる目安をクリアーしていてもカクカクするかもしれません。基本的にはゲームのプレーは考えないほうが無難です。
※テストはすべてフルHDで実施
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 1315 / 動作困難 |
標準品質 | 2249 / 重い |
軽量品質 | 2717 / やや重い |
※1920×1080ドットの結果。スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 2966 / 20.7 FPS |
高品質 | 4143 / 29.3 FPS |
標準品質 | 4687 / 35.4 FPS |
※1920×1080ドットの結果。平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
PSO2 ニュージェネシスベンチ(やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
ウルトラ | 1548 |
中 | 4144 |
最低 | 14655 |
※1920×1080ドットの結果。5000以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 11056 / すごく快適 |
標準品質 | 12999 / すごく快適 |
低品質 | 15784 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
本体の熱と騒音について
FF15ベンチを10分間実行し続けた際のCPUの温度とクロックを計測したところ、CPUは平均83.4度でクロックは平均GPUは平均2.85GHzでした。推移をグラフで見ると、温度もクロックも激しく上下していることがわかります。CPU温度は101度にまで達することがあり、かなり激しいサーマルスロットリングが発生しているようです。
キーボード面の熱も高めです。キー自体はそれほど熱くないものの、排気口に近いキーボード上部が60度近くにまで達しました。
ただし駆動音(排気音やファンの回転音)はどれほど大きくありません。高い負荷がかかっている状態でも、サーと聞こえる程度です。音ははっきりと聞こえますが、うるさく感じるほどではありませんでした。
仕上がりは抜群。しかし先進性は失われた
よかった点
スタイリッシュな外観と高いパフォーマンスが魅力です。仕上がりの良さは抜群で、さすがのクオリティーと言えるでしょう。機能も豊富で使いやすく、万人に広くおすすめできます。
気になる点
細かい部分では、キーボードの配列と本体の熱が気になります。しかしそれよりも、以前ほどの先進性が感じられない点が気になりました。より軽量で小さくスタイリッシュな機種が増えたいまとなっては、あえて悪く言うなら「代わり映えのない機種」のように感じられます。画面比率は16:9から16:10に変わりましたが、大きな違いではないでしょう。
レノボのThinkPadシリーズで見ても、2021年には13.5インチのThinkPad X1 Titaniumと13インチで1kg切りのThinkPad X1 Nanoが登場しました。さらに同じ14インチの軽量タイプであるThinkPad T14sなども存在します。これら1インチ / 200g以内の差でしかないThinkPadがいくつもあるなかで、ThinkPad X1 Carbonは以前と同じ位置付けであり続けるべきなのでしょうか。
筆者は以前からThinkPad X1 Carbonに触れていますし、これまでのモデルと新モデルを含めて素晴らしい機種だと認識しています。ただ時代の先端を行くノートPC市場全体のフラグシップモデルであったThinkPad X1 Carbonの役割が大きな変化のない定番機種へと変わってしまったのなら、それは残念なことです。
※2021年7月28日時点
*
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