※検証機は筆者が購入しました
Xiaomi(シャオミ)の『Xiaomiゲーミングモニター G27i』は、27インチフルHD(1920×1080ドット)でリフレッシュレート165Hzのゲーミングディスプレイです。標準価格は1万9980円。同クラス製品の相場が2~3万円台であることを考えると、標準価格(定価)で2万円切り相当な安さと言っていいでしょう。
PS5では27インチフルHD 120Hzで利用可能
この手の格安機種にはたいてい「安かろう悪かろう」的な部分があるのですが、XiaomiゲーミングモニターG27iには特に悪く感じる部分はありませんでした。多少の安っぽさや27インチならではの「大きさ」はあるものの、むしろ同価格帯の他社製品よりしっかり作られている印象です。エントリー(入門)からミドルレンジ(中級)向けには十分な性能だと思います。
ポイント
- ✅異様に安い
- ✅グローバルメーカーの安心感
- ✅実用応答速度は推定3~4ms台
- ✅HDR10対応
- ✅可動範囲が狭い
- ✅端子が少ない
- ✅ドット感が目立つ
今回は筆者が購入した実機を使って、外観や映像品質、実際に使った感想などをレビューします。
スペック
画面サイズ |
27インチ |
パネル |
Fast IPS |
解像度 |
1920×1080ドット (フルHD) |
リフレッシュレート |
最大165Hz(DP、HDMI) |
応答速度 |
1ms(標準値) |
色域 / 輝度 |
sRGB 99% / 250nit(標準値) |
映像入力 |
HDMI 2.0×1 / DisplayPort×1 |
HDR |
HDR10 |
VRR |
FreeSync Premium |
スピーカー |
なし |
チルト角度 |
前方5度~後方15度 |
ピボット / スイーベル |
非対応 |
高さ調節 |
非対応 |
VESAマウント |
VESA75 |
サイズ / 重量
※スタンド含む |
幅612.3mm 奥行き170mm 高さ451.7mm / 約3.6kg |
インターフェース |
ヘッドホン端子 |
付属品 |
電源ケーブル、HDMIケーブル など |
パッケージと設置
パッケージ
Xiaomi ゲーミングモニター G27iのパッケージ
パネル以外の同梱物
出荷時に行なわれた色検査のファクトリーレポート。高級タイプではよく見られますが、1万円台の格安タイプで付いてくるのははじめて見ました
付属のケーブルはHDMIのみ
スタンドはだいぶ安っぽい作り
台座はほぼ板。通常は歪みが出ないようにいろいろ工夫されているのですが、ここまでシンプルなのははじめてです。検証機では歪みはありませんでしたが、個体差がないのかやや不安(出荷前にチェックされていると思いますが)
電源はアダプタータイプ
「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマークもちゃんと付いています
付属のネジとドライバー
設置方法
まずは台座にブラケット(スタンド)を取り付けます。ドライバーが付属するので工具は不要ですが、最近のディスプレイはドライバーを使わないタイプが多いのでちょっと面倒……
スタンド部分。非常にシンプルな作りで、高さ調節やピボットには対応していません。このあたりも安さの理由なのでしょう
パネル背面の溝にはめ込めばOK。外すときはボタンを押しながら引っこ抜きます。若干差し込みづらいので注意
スタンドの取り付け完了
ディスプレイアームの取り付け
VESA75対応。最近のディスプレイアームは複数のサイズに対応しているものも多いので、普通に取り付けられる場合も多いでしょう。ただしVESA100のみのアームやスタンドは使えないので注意してください
本体の外観
デザイン
Xiaomi ゲーミングモニター G27iの前面。ボディのカラーはブラックで、シンプルな作りです ※スタンド部分が斜めに見えますが、これは写真の撮影・現像による影響です。実際には斜めになっていません
側面。スタンド込みでも奥行きが狭く、設置に場所を取りません
パネル部分は極薄
背面。ボディの素材は樹脂(プラスチック)
電源オン時のロゴは控えめな大きさ
ベゼル(枠)はけっこう細めですが、極細というほどではありません。27インチサイズかつ値段が安いことを考えれば十分でしょう
可動範囲
スタンド利用時の可動範囲は、前後のチルトのみ。高さ調整や左右のスイーベル、90度回転のピボット等には対応していません。設置時の自由度が狭まるので残念ですが、角度を自由に動かしたいならディスプレイアームを使ってね、ということなのでしょう
インターフェース
映像入力はHDMI2.0×1とDisplayPortのみで、あとはヘッドホン用の出力端子が付いています。格安タイプであることを考えれば、端子の少なさは仕方がないでしょう。左端にはOSD操作用のジョイスティック(電源ボタン兼用)
スピーカーは非搭載
Xiaomi ゲーミングモニター G27iにはスピーカーがありません。PCやゲーム機側にヘッドホンやスピーカーを接続したり、Xiaomi ゲーミングモニター G27i背面のヘッドホン端子にサウンド機器をつなぐなどして音声を再生してください。
OSD
背面のジョイスティックを操作することで、OSDからさまざまな機能を利用できます。機能のショートカットもありますが、今回は割愛
映像系の機能
映像の色合いに関する機能。ゲームモード / FreeSync Premium / HDR有効時は利用できません
主な機能
モードの選択 |
プリセットの変更。用途に応じて画面の色合いが変わる |
応答速度 |
画面の色が変化するまでにかかる時間。短いほど残像が少ない |
ダークシーンブースト |
暗い部分を明るく表示する |
ゲーム系機能
ゲーム向けの機能をまとめたモード。HDR有効時は利用できません
主な機能
モードの選択 |
映像プリセットを「FPS」「RPG」「MOBA」の3種類から選択 |
ガンマ |
ガンマ値を変更することで、画面の明るさを部分的に変えられる |
応答速度 |
画面の色が変化するまでにかかる時間。短いほど残像が少ない |
ダークシーンブースト |
暗い部分を明るく表示する |
十字型カーソル |
画面中央にクロスヘア(照準)を表示 |
そのほかの機能
FreeSync Premium(ゲーム画面のチラつきやズレを補正する機能)とHDR(対応規格はHDR10)の切り替え
「リフレッシュレート」は、ディスプレイ側の対応値を表示します
「リフレッシュレート」機能で表示した数値。ディスプレイ側の現在の数値が表示されるだけで、ゲームのフレームレートが表示されるわけではありません
メニューには「音量」の項目がありますが、スピーカーは搭載されていません
映像品質
画面サイズと解像度
画面サイズは27インチで、解像度は1920×1080ドット
21.5インチ/23.8インチ/27インチの比較。27インチはゲームで一般的な24インチ前後と比べてひと回り強大きめです ※写真は別の機種
27インチが画面が大きくなるぶん見やすいのですが、文字や映像のドット感を感じるかもしれません
一般的には24インチ前後のほうが、普通の人には視野に納まりやすいと言われています。27インチは映像の迫力が増すものの、画面の端にまで目が行き届かない場合があるかもしれません。ただしパネルから目を離せば、視野の問題はある程度解決するでしょう
映像の色合いと明るさ
パッと見たところでは、映像の色合いに違和感はありません。色域は公称値でsRGB 99%。スマホやタブレットほど鮮やかではないものの、PC用の外付けディスプレイとしては十分なクオリティーだと思います
「i1Display Pro」で色域を調査したところ、sRGBカバー率は98.3%でした。公称値とは多少の差がありますが、誤差の範囲内です
色域測定結果(プリセット:ゲーム)
sRGBカバー率 98.3% |
sRGB比 109.1% |
DCI-P3カバー率 80.2% |
DCI-P3比 80.5% |
キャリブレーション前後の映像の比較。調整前はやや暗く沈んだ色合いです
ディスプレイのガンマカーブ。途中まではバランスがいいものの、後半(右側)になるにつれて青が強く出ています。色味を重視する機種でもないので特に問題ありませんが、気になるようなら自分で色合いを微調整するといいでしょう
輝度は公称値で250nit(標準値)とのこと。標準状態は「ゲームモード」の「明るさ」が「100」で、その際の輝度は274nitでした。特別明るいわけではありませんが、ゲーム用であれば十分な品質です
視野角はIPSとしては一般的な178度。ただし映像を斜めらから見たときの明るさの落ち具合が、ちょっと大きいかもしれません。とは言え、普通はあまり気になるレベルではないはず
正面からの映像(比較用)
プリセットの映像
今回はゲーミングディスプレイなので、ゲーム用のプリセットのみ確認しています。ゲームモードで標準の「FPS」はほかのモードに比べてガンマ値が低く、画面がやや明るめ
「RPG」は応答速度がやや遅く設定されています
「MOVA」ではシャープネスがやや強めに設定されています
プリセットの設定値
|
FPS |
RPG |
MOBA |
彩度 |
50 |
50 |
50 |
ガンマ |
2.0 |
2.4 |
2.4 |
応答速度 |
やや速い |
標準 |
やや速い |
シャープネス |
50 |
50 |
60 |
ダークシーンブースト |
50 |
50 |
50 |
ゲームでの使用感
リフレッシュレートは165Hz
リフレッシュレートは最大165Hz。ガチのFPS / TPSプレーヤーのなかには240Hz以上を選ぶ人が増えており、165Hzはどちらかと言えばエントリー(入門)~ミドルレンジ(中級)クラスです
実際にゲームをプレーしたところ、(あくまでも筆者の眼では)残像や遅延などは感じられませんでした。ただしコンマミリ秒を競うeスポーツ級のプレーヤーには、スペック的に物足りないかもしれません
残像はかなり控えめ
映像の残像に影響する「応答速度」は、ゲームモードで調整できます。デフォルトでは「標準」または「やや速い」に設定されていました
「標準」時の画面の動きをシャッタースピード1/1600で画面を撮影したところ、3フレーム目までの残像をギリギリ確認できました。過去の計測結果から雑に推測するなら、おそらく4~5ms台あたりだと思われます
「やや速い」では3フレーム目が見えるか見えないかあたり。これで3~4ms台だと思われます。ここが常用利用のベストでしょう
「高速」に設定すると「やや速い」よりも残像がほんのわずかに強調されました。もしかすると逆残像(オーバーシュート)が出ているのかもしれません
「最速」では逆残像がハッキリと現われています。ここで1msだと思われますが、この状態では常用には向いていません
ダークシーンブーストは効きが強い
「ダークシーンブースト」とは、暗い部分を明るく表示する機能。標準で「50」に設定されており、すでに効果がほんのりと効いています
「75」あたりで、十分なレベル
最大値に設定すると、かなり効かせすぎな感じですが、これはこれで使い道があるかもしれません
PCのHDRは効果的
Windows 11の設定とディスプレイのOSD設定、ゲーム側の設定を有効にすることで、ゲームをHDR化できます。試したタイトルでは明暗部分の階調表現が豊かになりかなりの効果がありましたが、タイトルによるかもしれません
SDR(非HDR)だと黒つぶれや白飛びが多く、全体的に地味な印象です
スイッチは60Hz フルHDで使える
ニンテンドースイッチでは、60Hz フルHDのディスプレイとして利用できます。ディスプレイにスピーカーがないので、スイッチ側から音声を再生してください
PS5は120Hz HDR対応
PS5はフルHDの120Hzで利用可能です
ただしタイトル側が120Hzに対応している必要があります。現時点で対応タイトルはあまり多くありません
PS5のHDRは、ややくすんだ印象を受けました
SDR(非HDR)のほうが発色が良く感じられます
4K UHDディスクを再生しているところ。やはりHDRではくすんだ印象です
SDR(非HDR)のほうが色が濃く出ています
他機種との比較
「安いフルHD 165Hz」の点に注目するなら、『OMEN by HP 24 165Hz FHD ゲーミングディスプレイ』(以下、”OMEN 24″)が対抗機種として挙げられます。こちらは23.8インチですが、価格帯も同程度です。
23.8インチ フルHD 165Hzで2万円切りの『OMEN 24』
OMEN 24 165Hz FHD ゲーミングディスプレイレビュー:安心感のある大手メーカー製格安タイプ
...
Xiaomi G27iとOMEN 24の比較
Xiaomi G27i |
OMEN 24 |
|
|
27インチ フルHD |
23.8インチ フルHD |
Fast IPS |
IPS |
最大165Hz(DP、HDMI) |
応答速度 1ms |
色域 sRGB 99% |
輝度 250nit |
輝度 300nit |
暗部補正 |
暗部補正、MPRT(黒挿入) |
HDR10 対応 |
HDR 非対応 |
チルト |
チルト、ピボット、スイーベル、高さ調節 |
VESA75 |
VESA100 |
ゲーミングディスプレイとしてのパネルの品質は、どちらも同程度です。27インチの大きさとHDRを重視するならXiaomi ゲーミングモニター G27i、設置しやすさやMPRTにこだわるならOMEN 24を選ぶといいでしょう。
予算を安く抑えたいならアリ
今回の検証で使用したXiaomi ゲーミングモニター G27iを、筆者は1万6980円で購入しました。Xiaomiは情報家電分野のグローバルメーカーではあるものの、ゲーミングディスプレイでは実績がありません。しかも値段があまりにも安すぎます。そのため「実機はたいしたことはないだろう」を思っていたのですが、実際に触ってみてビックリ。思っていた以上にしっかり作られていました。
スタンドが安っぽすぎる点と端子類が少ない点は気になりますが、パネル部分は「そこらの格安機よりもよっぽど優秀」です。MPRTには非対応ではあるものの、実利用の速度(推定で3~4ms台)であれば、エントリー~ミドルレンジ向けとしては十分でしょう。
スタンドと端子類が貧弱ですが、それ以外は十分なレベル
唯一の懸念点は、「27インチのフルHD」であること。一般的な24インチ前後よりも画面が大きく、映像のドット感がちょっと目立ちます。画面から眼を離せば多少は改善されるものの、「端から端まで見渡せないと勝てないゲーム」ではちょっとツライかもしれません。
ただ、ゲームをなめらかな動きでカジュアルに楽しむのには向いています。画面が大きいぶん、映像の迫力も増すでしょう。さすがに3~4万円台あるいはそれ以上の機種にはいろんな面でかないませんが、ゲーミングディスプレイの予算を安く抑えたいならアリです。