「ACEMAGIC AX15」は、インテルプロセッサーN95を搭載するノートPCです。記事執筆時点のアマゾン販売価格は3万9998円と超激安。タイミングによっては、クーポンやポイント還元などでさらにお得に入手できるかもしれません。16GBメモリー搭載で、4万円前後の安さは魅力です。
主な特徴
発売 | 2023年12月 | 価格 | 3.99~4.3万円 |
---|---|---|---|
OS | Windows 11 Home | ライセンス | OEM版(問題なし) |
CPU | Intel プロセッサーN95(Alder Lale-N) | パネル | 格安タイプ(実測sRGB 59.1%) |
グラフィックス | Intel UHDグラフィックス(CPU内蔵) | テンキー | 3列構成(変則的) |
ディスプレイ | 15.6インチ フルHD IPS | Type-C | データ通信のみ |
メモリー | DDR4-2666 16GB×1 | 電力制限(標準時) | PL1:18W / PL2:28W |
ストレージ | 512GB M.2 SATA SSD | 騒音 | 小さい |
ただし、キーボードにちょっとクセがありました。日本語で入力できるのですが、キーボードを見ながら日本語配列として使うには、付属の「日本語フィルム」(配列がプリントされたキーボードカバー)を使う必要があります。
この記事ではメーカー提供の実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
おことわり
このレビュー記事では、筆者購入機材を1週間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
スペック
発売日 | 2023年12月 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 15.6インチ、1920×1080(フルHD)、IPS、非光沢 |
CPU | Intel N95 |
メモリー | DDR4-2666 16GB×1 SO-DIMM |
ストレージ | 512GB M.2 SATA SSD ※PCIe4.0サポート |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0 |
インターフェース | USB Type-C(データ通信のみ)×1、USB 3.2 Type-A×2、USB2.0×1、HDMI、microSDカードスロット、ヘッドホン端子 |
カメラ | 720p |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅357.4×奥行き228.6×高さ16.8mm / 1.7kg |
バッテリー | 待機時72時間(公称値) |
Windowsのラインセンス
OSはWindows 11 Homeで、ライセンスは通常のOEMライセンスです。Homeには個人利用不可のボリュームライセンス(VL)が存在しないので、一部のミニPCのようにライセンス周りを心配する必要はありません。
技適マークについて
無線通信機器に必要な技適マークは、本体底面部にシールとして貼られています。
上記番号は「総務省電波利用ホームページ」の検索結果で「AX15」のものとして登録されているのを確認しました。
関連リンク
PSEマークについて
電源アダプターには「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマークがプリントされています。届出事業者名は「XXXX株式会社」。表記ミスのような気もしますが、実在する会社なのかはわかりませんでした。本体底面には別の名義でPSEマークがプリントされているので、おそらく印刷ミスだと思われます。
システムのフルスキャン結果
検証中にWindows Defenderのフルスキャンを実施し、検知可能な脅威が存在しないことを確認しています。
ACEMAGIC AX15の価格
この機種は、公式サイトやアマゾン、楽天などで販売されています。公式サイトや楽天ではポイント還元がありますが、支払い金額を抑えられるのはアマゾンのようです。
価格
ショップ | 価格 |
---|---|
公式サイト | 4万2900円 ※ポイント還元あり |
アマゾン | 3万7998円 ※クーポン利用時 |
楽天 | 4万4640円 |
※2024年10月13日時点。価格はタイミングによって変わります
外観
ACEMAGIC AX15は4万円前後の安いノートPCですが、筐体はそれほど安っぽくありません。カバーの一部はアルミ製で、オール樹脂(プラスチック)製の大手メーカー製品よりも高級感があります。見た目については、なかなかの仕上がりと言っていいでしょう。
サイズと重量
ACEMAGIC AX15は、ノートPCとしてはもっともスタンダードな15.6インチタイプです。モバイルタイプよりも大きく、重量はやや重く感じます。持ち歩きよりも、デスクに据え置きで使うほうが向いているでしょう。
ディスプレイ
ディスプレイは、ノートPCとしてはスタンダードなスペックです。今回のテスト機では、画面がやや暗く感じました。格安ノートPCでよく使われるタイプのパネルだと思うのですが、このタイプは個体ごとの品質差が大きいため、同じ機種でも別の個体では違って見えるかもしれません。
キーボード
キーボードはちょっとクセがあります。見た目は英字配列なのですが、実際には日本語配列のキーとして入力されるので注意してください。数字やアルファベットは特に問題ないものの、記号キーがキートップのプリントと異なります。
要は「英字配列をソフトウェア上で日本語配列に変更している」わけですが、このままでは使いづらいかもしれません。そこで役立つのが、「日本語フィルム」と呼ばれる付属の日本語配列キーボードカバーです。
キーボードカバーには文字が、日本語配列仕様でプリントされています。かな入力派でも、(多少のクセはありますが)利用できるでしょう。ただしカバーを使うぶん、タイプ感が通常とはちょっと異なります。本体が汚れにくい、水こぼしの影響が少ない点については、メリットと言えるかもしれません。
配列の注意点(主に右側)
- 右Shiftがない
- カーソルキーがテンキーに食い込んでいる
- テンキーは3列構成(4列構成が一般的)
- テンキーにEnterがない
- 「¥」キーがない(変換で入力)
- 電源ボタンは押すと瞬時にスリープ
端子やカメラなど
周辺機器接続用のインターフェース類は、15.6インチタイプとしては標準的です。ただしType-C周りには注意してください。Type-C形状の電源コネクターは電源供給用のみで、データ通信には対応していません。USB PDによる充電が可能なのを確認しましたが、念のため付属の電源アダプターでのみ充電するほうが安全でしょう。また別のType-Cはデータ通信には対応しているものの、映像出力とUSB PDには非対応です。
ベンチマーク結果
検証機のスペック
CPU | インテルプロセッサー N95(Alder-Lake-N、4コア4スレッド、最大3.4GHz、15W) |
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メモリー | DDR4-2666 16GB×1 |
ストレージ | 512GB M.2 SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「バランス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています。
ストレージ性能
ストレージには、512GBの9M.2 SATA SSDが使われています。アクセス速度はSATA接続としては平均的ですが、一般的なNVMe SSDと比べるとちょっと物足りません。ただし規格的にはPCIe 4.0のNVMeに対応しているらしい(未確認)ので、高速なストレージを使いたいなら自分で換装するといいでしょう。
CPU性能
CPUとしては、Alder Lake-NのインテルプロセッサーN95(以下、”N95″)が使われています。人気のN97やN100と比べるとややマイナー感がありますが、実際にはスペック的にも性能的にも大きな違いはありません。
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」の結果は以下のとおり。比較用に挙げたAlder Lake-N機とスコアに多少の差はありますが、体感的にはあまり変わらないはずです。各CPUはTDP(消費電力の目安)が異なるものの、実際には機種固有の電力制限(PL1/PL2)が強く影響するため、CPUスペックの違いはほとんど現われません。大手メーカー製の「HP 15-fd」のスコアが極端に低いのは、PL1が6Wと非常に低く抑えられているためです(一般的には15~30Wが主流)。
Alder Lake-N搭載PCの性能比較
CPU | CINEBENCH R23 |
---|---|
ACEMAGIC AX15(N95) |
919
2774
|
HP 15-fd(N100) |
807
1813 |
CHUWI GemiBook Xpro(N100) |
712
2252 |
CHUWI MiniBook X(N100) |
918
2882 |
NucBox G5(N97) |
791
2877 |
Acemagic T8 Plus(N100) |
911
2883 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
Alder Lake-N世代のなかでは標準的ではあるものの、ノートPC全体で見れば性能はかなり低めです。PassMarkの統計データと比較すると、上位CPUとは大きな差があることがわかります。
とは言え最近のノートPCは「こんなに高性能でなにに使うの?」と疑問になるほどで、普通の使い方(ネットや動画視聴など)にはここまで必要ありません。ごく軽めの普段使いであれば、N95~N100あたりでも十分なほどです。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core Ultra 7 155H |
25038
|
Ryzen 7 7840U |
24935
|
Ryzen 7 8840U |
23817
|
Core Ultra 5 125H |
22383
|
Ryzen 7 7735U |
21220
|
Ryzen 5 8640U |
20772
|
Ryzen 7 7730U |
18653
|
Ryzen 5 8540U |
18147
|
Core Ultra 5 125U |
17690
|
Core Ultra 7 155U |
16810
|
Ryzen 5 7535U |
17053
|
Ryzen 5 7530U |
16071
|
Ryzen 3 7330U |
10978
|
N97 |
5771
|
検証機(N95) |
5706
|
N100 |
5509
|
N95 |
5368
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD Graphicsが使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストでは、最近の内蔵グラフィックスとしては非常に低い結果が出ました。ゲームについてはソリティアなどなら問題ありませんが、3D系はかなり厳しいと思います。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050(ノートPC)平均値 |
4874
|
GTX 1650(ノートPC)平均値 |
3444
|
Arc Graphics平均値 |
3340
|
Radeon 780M(RDNA3)平均値 |
2770
|
Radeon 680M(RDNA2)平均値 |
2343
|
Iris Xe平均値 |
1510
|
NiPoGi AK1PLUS(N97) |
459
|
HP 15-fd(N100) |
321
|
Acemagic T8 Plus(N100) |
314
|
検証機(N95) |
309
|
※スコアは当サイト計測値
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
一般利用とビジネス利用のテストでは目標値を上回った、コンテンツ制作のテストでは目標値を下回っています。ネットの調べ物やメールなど、軽めの作業中心で考えたほうがいいでしょう。
またミドルレンジ以上のノートPCと比べると、パフォーマンスがだいぶ低いことがわかります。とは言えこれらの機種は値段が倍以上しますし、価格とスコアのバランスで考えればACEMAGIC AX15もなかなか優秀です。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials 目標値:4100 |
6382
6763
11277
9902
9961
10649
10100 |
Productivity 目標値:4500 |
5206
5347
8283
9336
9878
11053
9964 |
Digital Contents Creation 目標値:3450 |
2523
2076
8866
5781
4833
8243
7374 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
HP 15-fd | Intel N100 / 16GB / UHD |
---|---|
Yoga 7i Gen 9 | Core Ultra 7 155H / 16GB / Intel Arc |
HP 245 G10 | Ryzen 7 7730U / 16GB / Radeon |
ThinkBook 16 Gen 6 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
Inspiron 14 5445 | Ryzen 7 8840U / 16GB / Radeon 780M |
HP Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 5 8640U / 16GB / Radeon 760M |
バッテリー性能
駆動時間
バッテリー駆動時間の公称値は、待機時で72時間とされています。実利用での駆動時間を計測するためにPCMark 10のバッテリーベンチマークテストを行なったところ、事務作業で5時間18分、動画再生で5時間39分でした。最近のノートPCとしては、なかなか短い結果です。ただ持ち歩き用のモバイルノートPCではないので、それほど気にする必要はないと思います。
バッテリー駆動時間の計測結果(Ryzen 7モデル)
テスト方法 | 駆動時間 |
---|---|
※公称値 | 待機時72時間 |
PCMark 10 Modern Office(ビジネス作業) | 5時間18分 |
PCMark 10 Video(動画再生) | 5時間39分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
バッテリー駆動時の性能
ノートPCを内蔵バッテリーで利用すると、電源接続時よりもパフォーマンスが低下します。機種によって異なりますが、バッテリー駆動時にはベンチマークスコアが2~3割程度下がるのが一般的です。
ACEMAGIC AX1でバッテリー駆動時のCPUベンチマークテストを行なったところ、シングルコア性能はやはり大きく下がったものの、マルチコア性能はあまり変わりませんでした。おそらく、そのようなチューニングが施されているのでしょう。軽めの作業をサッと終わらせたいときは、電源に接続した状態で行なったほうがいいかもしれません。
性能比較
CPU | CINEBENCH R23 |
---|---|
電源接続時 |
919
2774 |
バッテリー駆動時 |
633
2746 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
熱と騒音について
※計測時の室温は26度。室温が変わると、結果が異なる場合があります
CPUの熱について
高負荷な「CINEBENCH R23」実行中におけるCPUの状態を計測したとこと、温度については平均57.6度、最大でも60度と、かなり低いところを推移していました。熱によるパーツの劣化については、心配なさそうです。
電力は一貫してほぼ10W前後を推移しています。電力制限ではP1が18W、PL2が28Wと高めに設定されているのですが、実際にそこまで電力が消費されることはありませんでした。BIOS(UEFI)画面にも電力関係の機能が用意されていないので、熱対策としてそのようにチューニングされているのでしょう。熱を抑えた上で、ほかのN100機と変わらないベンチマークスコアであれば、優秀なチューニングです。
各項目の平均値と最大値
コアクロック | 平均2691MHz | 最大2694MHz |
---|---|---|
CPU温度 | 平均57.6度 | 最大60度 |
CPU消費電力 | 平均9.49W | 最大10.5W |
本体の熱と駆動音について
高負荷時には排気口付近で温度がやや高くなるものの、特に熱く感じる場所はありません。キーボード面は少し温かく感じましたが、日本語配列用のキーボードカバーを付けていると、熱の上昇は感じられませんでした。
騒音(空冷ファンの回転音や通気口からの風切り音)を計測したところ、音はハッキリと聞こえたものの気になるほどではありませんでした。
駆動音の計測結果
- | ||
待機中 | 37.2dB | ほぼ無音 |
軽作業時 (PCMark 10) |
39dB前後 | 断続的にファンの音がわずかに聞こえる。それ以外のときは、耳をすませばモーター音が聞こえる程度 |
高負荷時(CINEBENCH) | 39.6dB前後 | 排気音とファンの甲高い音がハッキリと聞こえるが、うるさく感じるほどではない |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
考察とまとめ
4万円前後でコスパはいいものの……
4万円前後の値段で、これだけの品質と性能を実現するノートPCはなかなかありません。いろいろとクセはありますが、4万円以内でパソコンをなんとかしたいなら、十分アリだと思います。
カバーを使った日本語配列については、好みがわかれるでしょう。もともとキーボードカバーを使っている人なら気にならないと思いますし、どうしても気になるようならいっそのこと英字配列で使うのも手だと思います。
全体的には、なかなかのコスパです。ただ現在は大手メーカー製でも安い機種があって、5万円台でRyzen 5+8GBメモリー、6万円台前半でRyzen 5+16GBメモリーの構成で買えることもあります。N95でも人によっては十分な性能ではあるものの、プラス1~2万円でさらに上位の機種が買えるとなると、そちらを選んだほうがいいケースがあるかもしれません。特にパソコンに詳しくない人なら、超大手メーカー製品のほうがなにかと安心できます。
その意味で、2台目以降のサブPCをとにかく安く入手したい人向きです。