10万円切りのゲーミングノートPCを検証
デルのInspiron 15 5000(5576)ゲーミングは、15.6型フルHD(1920×1080ドット)の液晶ディスプレイと専用グラフィックス(dGPU)としてAMD Radeon RX560(4GB)を搭載したゲーミングノートPCです。
最大の特徴は、税込価格が9万円台からとゲーム用ノートパソコンとしては格安である点。標準的なゲーミングノートPCと比べて1~2万円程度安く購入できます。
今回はメーカーからお借りしたInspiron 15 5000ゲーミング プラチナモデルについて、ゲーム系ベンチマークやFPS計測結果、本体デザインなどをレビューします。
この記事の目次
Inspiron 15 5000 ゲーミング
税込み9万円台から
Inspiron 15 5000ゲーミングのスペック
Inspiron 15 5000ゲーミングには、パーツ構成の異なる2種類のモデルが用意されています。CPUとdGPUはどちらも同じ。メモリー容量とストレージ構成が異なります。
CPU | プラチナ・RX560搭載 | プラチナ・大容量メモリ・RX560搭載 |
---|---|---|
CPU | AMD FX 9830P | |
グラフィックス | AMD Radeon RX560(4GB) | |
メモリー | DDR4 PC4-19200(2400MHz) 8GB(最大32GB) | DDR4 PC4-19200(2400MHz) 16GB(最大32GB) |
ストレージ | 256GB SSD | 256GB SSD+1TB HDD |
光学ドライブ | なし | |
ディスプレイ | 15.6型、1920×1080ドット、TNパネル、非光沢 | |
無線機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac対応無線LAN(11ac時最大433Mbps)、Bluetooth 4.1 | |
インターフェース | USB3.0×3、HDMI、有線LAN、SD/SDHC/SDXC対応メモリーカードスロット、ヘッドホン出力 | |
バッテリー | 74Whr | |
サイズ/重量 | 幅383×奥行き265×高さ25.3mm/約2.47kg~ | |
実売価格 | 9万円台 | 10万円台 |
※2017年8月30日時点。タイミングによっては変更される場合があります
AMD製CPUとdGPUを搭載
Inspiron 15 5000 ゲーミングのポイントは、AMD製のCPU「FX 9830P」と同じくAMD製のdGPU「Radeon RX 560」(モバイル版)を搭載している点です。AMD製のCPUおよびGPUは、ほかのメーカー(インテルやNVIDIA)のパーツに比べてコストパフォーマンスが高い、つまり安い点が魅力。実際、Inspiron 15 5000 ゲーミングの価格はインテル+NVIDIA搭載のゲーミングノートPCよりも低く設定されています。
なお内蔵グラフィックス機能を搭載するAMDのCPUは本来「APU」と呼ばれますが、わかりづらいので今回は「CPU」と表記しています。
処理に応じてGPUを自動切り替え
CPUのAMD FX 9830Pは内蔵グラフィックス機能(iGPU)としてAMD Radeon R7を搭載しています。インテル製CPUのIntel HD Graphicsのようなものです。処理に応じてGPUが自動的に切り替わるようになっており、ゲームなど高負荷の処理ではdGPUであるRadeon RX 560が、ネット閲覧時などの低負荷時にはiGPUのRadeon R7が使われます。
ただしゲームによっては高性能なdGPUではなく、性能の低いiGPUが自動選択されることがあります。このような場合だと、ゲーム中のパフォーマンスが向上しません。その解決策として、ユーザー自身がGPUの選択をある程度コントロールできるユーティリティーが用意されています。
パーツの交換が可能
Inspiron 15 5000 ゲーミングの底面カバーを開くと、メモリーやストレージ用のスロットが現われます。別途用意したパーツを追加/交換することで、スペックをパワーアップさせることが可能です。
ただしユーザー自身がパーツを追加/交換すると、メーカー保証のサポート外となる可能性があります。くれぐれも自己責任の上でお願いします。
国内タイトルならフルHDでも快適
3DMarkベンチマーク結果
総合的な3D性能を計測する「3DMark」を試したところ、以下のような結果となりました。
3DMarkベンチマーク結果 | |
Time Spy(DX12) | 1,484 |
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Fire Strike(DX11,FHD) | 3,948 |
Sky Diver(DX10) | 10,207 |
Cloud Gate(DX10) | 9,817 |
Ice Storm(DX9) | 56,515 |
過去に当サイトで計測したデータと比べたところ、ひと世代前のGTX 960Mとほぼ同程というレベルです。
当サイトでの計測結果
GPU | Fire Strikeスコア(実測値) |
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GeForce GTX 1060 |
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GeForce GTX 1050 Ti |
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GeForce GTX 965M |
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GeForce GTX 1050 |
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GeForce GTX 960M |
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Radeon RX 560 |
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ドラクエ10ベンチ
「ドラゴンクエストXベンチマークソフト」では、1920×1080ドットで「快適」という評価です。このゲームについては、問題なくプレーできると考えられます。
ドラクエ10ベンチの結果 | |
1920×1080ドット、標準品質 | 6656(快適) |
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1920×1080ドット、最高品質 | 6428(快適) |
FF14ベンチ
「ファイナルファンタジーXIV(FF14)」のベンチマークでは、DirectX 9モードの標準品質で最高評価が出ています。この結果であれば、大きな問題はないでしょう。
そのほかの結果でも「快適」と出ていますが、平均FPSが理想とされる60FPSを下回っているので、シーンによっては画面のカクつきが目立つかもしれません。
FF14ベンチの結果 | ||
蒼天のイシュガルド(DirectX 9) | 紅蓮のリベレーター(DirectX 11) | |
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1920×1080ドット、標準品質(ノートPC) | 7092(非常に快適)※平均62.3 FPS | 5106(とても快適)※平均36.4 FPS |
1920×1080ドット、高品質(ノートPC) | 5966(とても快適)※平均51.5 FPS | 4007(快適)※平均27.2 FPS |
1920×1080ドット、最高品質 | 3859(快適)※平均31.3 FPS | 2793(やや快適)※平均18.4 FPS |
海外タイトルは厳しい
解像度や画質を変えても60FPS超えならず
海外ゲームのゲーム内ベンチマーク機能を試した結果は、以下の表のとおりです。各テストは解像度1920×1080ドットの最高画質で行なっています。
Ghost Recon Wildlands | |||
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Inspiron 15 | GTX 1050 | GTX 1050 Ti | |
9.61 FPS(最小2.78 FPS) | 17.78 FPS(最小13.36 FPS) | ※未計測 | |
Rise of the Tomb Raider | |||
Inspiron 15(DX11) | GTX 1050(DX12) | GTX 1050 Ti(DX12) | |
18.90 FPS(最小0.45 FPS) | 33.79 FPS(最小1.04 FPS) | 37.65 FPS | |
Tom Clancy’s The Division(DX11) | |||
Inspiron 15 | GTX 1050 | GTX 1050 Ti | |
23.6 FPS | 28.5 FPS | 33.8 FPS | |
Far Cry Primal(DX11) | |||
Inspiron 15 | GTX 1050 | GTX 1050 Ti | |
24 FPS(最小18 FPS) | 39 FPS(最小25 FPS) | 37 FPS | |
GRID Autosport | |||
Inspiron 15 | GTX 1050 | GTX 1050 Ti | |
42.65 FPS(最小32.83 FPS) | 75.5 FPS(最小58.9 FPS) | ※未計測 |
フルHDの最高画質でのプレーは厳しいことがわかりましたので、解像度や画質を変えてテストを行ないました。しかしグラフィックスの品質を大きく落としても、FPSが理想とされる60を超えることはありませんでした。
Rise of the Tomb Raider(DirectX 11)のベンチマーク結果 | ||||
解像度 | 画質 | 平均FPS | 最小FPS | 最高FPS |
---|---|---|---|---|
1920×1080ドット | 最高 | 18.90 | 0.45 | 65.02 |
高 | 27.34 | 3.33 | 57.46 | |
中 | 28.03 | 2.39 | 53.97 | |
低 | 41.10 | 5.79 | 88.67 | |
最低 | 47.29 | 4.21 | 99.73 | |
1280×720ドット | 最高 | 27.50 | 2.27 | 62.43 |
高 | 32.03 | 2.14 | 62.46 | |
中 | 34.56 | 2.51 | 69.53 | |
低 | 41.28 | 3.05 | 102.24 | |
最低 | 47.06 | 2.27 | 99.46 |
Ghost Recon Wildlandsのベンチマーク結果 | ||||
解像度 | 画質 | 平均FPS | 最小FPS | 最高FPS |
---|---|---|---|---|
1920×1080ドット | ウルトラ | 9.61 | 2.78 | 15.75 |
非常に高い | 17.02 | 14.15 | 21.11 | |
高 | 18.63 | 15.50 | 22.18 | |
中 | 20.07 | 17.21 | 23.67 | |
低 | 25.43 | 21.89 | 30.60 | |
1280×720ドット | ウルトラ | 13.61 | 7.57 | 16.16 |
非常に高い | 17.24 | 14.26 | 20.90 | |
高 | 18.93 | 16.08 | 23.44 | |
中 | 20.23 | 16.70 | 23.72 | |
低 | 25.92 | 22.22 | 32.64 |
解像度を低く設定すれば、ベンチマーク結果は向上するのが普通です。しかしInspiron 15 5000 ゲーミングでは、1920×1080ドットと1280×720ドットでFPSの差がなぜか見られません。ちなみに前述のRadeon追加設定では、どの場面でも最大パフォーマンスを発揮するように設定しています。
詳しい原因は不明なのですが、もしかすると解像度や画質(もしくはビデオメモリー容量)によって使われるGPUが決まってしまうのかもしれません。1280×720ドットでもベンチマーク結果が向上しないのは、高性能なRadeon RX560ではなくCPU内蔵のRadeon R7が使われているためという可能性があります。もしくは、ほかの原因があるのでしょうか。
実際のゲームを試してみた
上記のテストで試したゲームは、重量級の大作タイトルです。軽めのゲームであれば、いい結果が出るのかもしれません。そこで処理が比較的軽いとされる「Overwatch」と「QUAKE Champions」の2本を試してみました。
OverwatchのFPS計測結果 | |
1600×900ドット、NORMAL画質 | 平均48.46 FPS、最小4.03 FPS、最大94.04 FPS |
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Quake ChampionsのFPS計測結果 | |
1920×1080ドット、Medium画質 | 平均15.76 FPS、最小11 FPS、最大20 FPS |
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Overwatchのほうは1600×900ドットで遊べないわけではありませんが、理想とされる60 FPSには届いていません。60 FPS超えを狙うなら解像度や画質をさらに下げる必要がありますが、前述のテストのように効果が出ない可能性があります。
Quake Championsでは、かなり画面の動きがカクつきました。ほかのPCでなら平均6キルぐらい(ヘタなのはご勘弁)なのですが、Inspiron 15 5000 ゲーミングでは0キルという結果に。正直なところ、プレーはかなり厳しいです。
国内ゲームをFHDの標準画質で楽しみたい人向け
各種ベンチマーク結果から考えると、Inspiron 15 5000 ゲーミングでゲームを高解像度&高画質で楽しむのは厳しいと言わざるを得ません。ドラクエ10やFF14クラスなど、DirectX 9を利用した国内向けゲームを標準画質でプレーしたい人向けです。DirectX 11以上でより美しいグラフィックスを堪能したい人は、GeForce GTX 1000シリーズ搭載のモデルを選ぶべきでしょう。たとえばデルでは、GeForce GTX 1050/1050 Tiを搭載したモデルが販売されています。
じゃあInspiron 15 5000 ゲーミングで海外ゲームは遊べないのかというと、かならずしもそういうわけではありません。
実は筆者はさらにスペックの低い「Inspiron 15 5000 ゲーミング プレミアムモデル」(すでに販売は終了)を所有しておりまして、けっこう頻繁に活用しています。具体的にはこんな↓感じ。
ダイエット環境できた! pic.twitter.com/z0Zn6UVht2
— こまめブログ(広告を含みます) (@littlebeansinfo) July 27, 2017
いまは「FarCry Primal」を解像度1280×1080ドットの中画質でプレーしているのですが、やはり画面がカクつく場面はあるものの、超なめらかな動きにこだわらないなら普通に遊べます。現時点でのプレー時間は15時間ぐらいで、これからイジラ族と本格的に戦うあたり(わかる人にしかわかりませんね)。
まあ筆者のケースは非常に特殊ではありますが、低解像度でもたまにカクつく程度なら許容範囲内という人であれば問題ないかもしれません。もっとも、最初から性能の高いゲーミングノートPCを買ったほうがいいのですが。
本体デザインについて
続いて、Inspiron 15 5000ゲーミングの外観についてレビューします。
ベンチマーク結果について
最後に、Inspiron 15 5000 ゲーミング プラチナモデルのベンチマーク結果を紹介します。
Windows 10の快適さ
Windowsエクスペリエンスインデックス(システム評価ツールの結果) | |
dynabook AZ15/D | |
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プロセッサ | 7.6 |
メモリ | 7.6 |
グラフィックス | 5.9 |
プライマリハードディスク | 8.1 |
CPUの性能
CINEBENCH R15ベンチマーク結果 | |
CPU(マルチコア性能) | CPU(シングルコア性能) |
---|---|
296cb | 86cb |
■CPUの性能差
名称 | 開発コード | コア数 | CINEBENCH R15スコア(平均値) |
---|---|---|---|
Core i5-7200U | Kaby Lake | 2/4 |
|
FX 9830P | Bristol Ridge | 4/4 |
|
Core i3-7100U | Kaby Lake | 2/4 |
|
Celeron 3865U | Kaby Lake | 2/2 |
|
SSDのアクセス速度
パソコンとしての総合性能
PCMark 8 Home acceleratedの結果 | |
総合スコア | 3277 |
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Web Browsing – JunglePin | 0.410 s |
Web Browsing – Amazonia | 0.157 s |
Writing | 4.85 s |
Photo Editing v2 | 0.301 s |
Video Chat v2 / Video Chat playback 1 v2 | 30.0 fps |
Video Chat v2 / Video Chat encoding v2 | 34.0 ms |
Casual Gaming | 41.6 fps |
PCMark 8 Home acceleratedの結果 | |
総合スコア | 4521 |
---|---|
Web Browsing – JunglePin | 0.415 s |
Web Browsing – Amazonia | 0.157 s |
Video Chat v2 / Video Chat playback 1 v2 | 30.0 fps |
Video Chat v2 / Video Chat playback 2 v2 | 30.0 fps |
Video Chat v2 / Video Chat playback 3 v2 | 30.0 fps |
Video Chat v2 / Video Chat encoding v2 | 34.0 ms |
Photo Editing v2 | 0.302 s |
Batch Photo Editing v2 | 22.4 s |
Video Editing part 1 v2 | 11.1 s |
Video Editing part 2 v2 | 23.5 s |
Mainstream Gaming part 1 | 44.5 FPS |
Mainstream Gaming part 2 | 22.6 FPS |
Video To Go part 1 | 9.8 s |
Video To Go part 2 | 11.0 s |
Music To Go | 19.50 s |
PassMark PerformanceTest 9.0の結果 | |
Pass Mark(総合スコア) | 2073.6 |
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CPU Mark | 4966.9 |
2D Graphics Mark | 431.0 |
3D Graphics Mark | 931.8 |
Memory Mark | 1038.1 |
Disk Mark | 2989.9 |
ゲーム以外にも使えるモデル
ということで、今回はInspiron 15 5000 ゲーミングについてレビューしました。ゲーミングノートPCとしての性能はエントリー(初心者)向けですが、ノートパソコンとしての性能は比較的高めです。総合性能系のベンチマーク結果を見ても、写真加工や動画編集にも使えるパフォーマンスであることがわかります。ゲーミングノートPCとしては落ち着いたデザインなので、ゲームや普段の作業に使える安いノートパソコンとして選ぶのはアリでしょう。
ゲームにもビジネスにも使えるコンボタイプとしては、より高性能なモデルもあります。ただしInspiron 15 5000 ゲーミングは、256GBのSSDを搭載しているにも関わらず実売価格が10万円切りという点が魅力。他社製モデルではHDD搭載で10万円以上することもあります。
ただしゲームをより本格的に楽しみたいなら、GeForce GTX 1000シリーズ搭載モデルがおすすめです。
https://komameblog.jp/review/ins15-7567-gaming/