MSIのPrestige 14 A11は、軽量タイプの14インチモバイルノートPCです。最大の特徴は重量が約1.29kgで厚さ15.9mmと軽量スリムであるにも関わらず、専用GPUとしてGeForce GTX 1650 / 1650 Ti with Max-Qに対応している点。グラフィックス性能が高いモバイルノートPCとして、主にクリエイティブな用途に向いています。
Prestige 14 A11のスペック
OS | ・Windows 10 Home (標準) ・Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 14インチ |
解像度 | ・1920×1080 ・3840×2160 |
CPU | ・Core i7-1185G7 ・Core i7-1195G7 |
メモリー | ・16GB ・32GB ※LPDDR4X |
SSD | ・512GB ・1TB |
HDD | なし |
グラフィックス | ・GTX 1650 Max-Q ・GTX 1650 Ti Max-Q ・MX450 |
リフレッシュレート | 60Hz |
モバイル通信 | - |
堅牢性テスト | MIL-STD-810G準拠 |
色域 / 輝度 | ・sRGB相当(フルHD) ・Adobe RGB相当(4K) |
幅×奥行き | 319×219mm |
厚さ | 15.9mm |
重量 | 1.29kg |
バッテリー | 最大10時間 |
※2021年8月28日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | ・カーボングレイ ・ローズピンク |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | 表記なし ※IPS相当 |
タッチ / ペン | - |
光学ドライブ | - |
テンキー | - |
有線LAN | - |
無線LAN | 11a/b/g/ac/ax |
Bluetooth | ・5.2 ・5.1 |
USB3.2 | ・なし ・1(Gen1) |
USB3.0 | - |
USB2.0 | ・なし ・1 |
USB Type-C | 2 |
Thunderbolt | 2(USB Type-C兼用) |
メモリーカード | microSD |
HDMI | - |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | - |
Webカメラ | 92万画素 |
顔認証カメラ | 標準搭載 |
指紋センサー | 標準搭載 |
付属品 | ACアダプターなど |
オフィス | なし |
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ
※2021年8月30日時点
デザインと使いやすさ
外観について
Prestige 14 A11はMSI製品のなかで、ビジネス・クリエイター向けノートに位置づけられています。本体はシュッとした細身のデザインで、スタイリッシュな印象。ムダのないシンプルな外観で、シーンを選ばず利用できるでしょう。
さらに、米国防総省制定の耐久基準「MIL-STD-810G」をクリアーするほどの高い堅牢性(壊れにくさ)を確保。14インチとしては軽量で、持ち歩き用にも使えます。
本体は軽量コンパクトです。一般的な14インチタイプと比べると、やや薄くて少し軽い程度。しかし高性能な外部GPU(GeForce GTX 1650 Max-Q)搭載と考えると、驚くほどの軽さと薄さと言っていいでしょう。
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは14インチ。解像度は1920×1080ドットのフルHDと、3840×2160ドットの4Kの2種類が用意されています。表面は光沢なしのノングレア仕上げ。眼精疲労や集中力低下の原因と言われる”映り込み”が抑えられています。長時間の作業に適したディスプレイです。
映像は概ね自然な色合いで、違和感はありません。色域はフルHDモデルが「sRGB相当」、4Kモデルが「Adobe RGB相当」とされています。フルHDモデルで色域を計測したところ、sRGBカバー率は98.9%でした。パネルとしては高品質ではあるものの、画面がやや暗い印象を受けます。計測器度は197nitで、数値的にもやや暗め。そのぶん、鮮やかさが抑えられているように感じました。色が重視される作業には、より色域が広くて高精細な4Kモデルを選んだほうがいいかもしれません。
色域測定結果
sRGBカバー率 | 98.9% |
---|---|
Adobe RGBカバー率 | 73.4% |
DCI-P3カバー率 | 75.5% |
キーボードについて
キーボードはテンキーなしの日本語配列で、バックライト対応です。キーボード左側は標準的ですが、右側の配列がやや特殊。Enterキー周辺で一部のキーが小さいほか、右端に特殊キーが縦に並んでいます。
特に縦並びのキー配置が不安に感じるかもしれませんが、実際に使ってみるとそれほど悪くはありません。手の動きを抑えた軽めのタッチの人なら、使っているうちに慣れるでしょう。とは言え、正直なところこの配列は改善していただきたいところです。
キーピッチは実測で19mmと標準的な広さ。キーストロークはやや浅めの平均1.39mmでした。キーを押した瞬間のクリック感はやや固く、カツカツとしたタイプ感です。底打ち感はなく指への負担が少ないのですが、キーを押した際にわずかなグラつきを感じます。また指を押し戻す力が弱いので、キートップをなでるように軽い力で入力する人向きです。指を打ち下ろすようにして入力する人には、物足りないかもしれません。
タイプ音タクタクという音で静かではありますが、低音域が少し響きます。底面部の空きで、タイプ音が反響しているのでしょう。静かな場所では、少し気になるかもしれません。打ち下ろすようにして入力するとタンタンと響くので、軽めのタッチ推奨です。
インターフェース/機能について
周辺機器接続用のインターフェースはUSB端子が3ポートで、うち2ポートがType-C。あとはヘッドホン端子とmicroSDカードスロットが用意されており、有線LANや映像出力用のHDMIなどはありません。端子の数と種類は多くないものの、モバイル用であれば問題ないでしょう。Thunderbolt 4を2ポート備えているので、端子類が足りない場合はThuderbolt 4ドック / Type-Cドックを利用すればOKです。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | × |
---|---|
USB PD 30W充電 | △ ※低速充電 |
USB PD 45W充電 | △ ※低速充電 |
USB PD 65W充電 | ○ |
USB PD 100W充電 | ○ |
映像出力 | ○ |
ベンチマーク結果
※この部分は非常にマニアックなので、よくわからない人は「▶起動時間の計測結果」まで読み飛ばしてください。
試用機のスペック
CPU | Core i7-1185G7 |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | GeForce GTX 1650 with Max-Q (4GB) |
※各ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」に設定した上で電源オプションを「最も高いパフォーマンス」に変更し、さらに標準収録ソフト「MSI Center Pro」の「Performance Optimizer」で動作モードを「ハイパフォーマンス」に設定、「ファンスピード」を「クーラーブースト」に変更した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第11世代のCore i7-1185G7とCore i7-1195G7が使われています。標準TDPが28Wで薄型ノートPC向きのいわゆる「Tiger Lake UP3」シリーズで、Core i7-1185G7は2020年リリースのvPro対応版、Core i7-1195G7は2021年リリースの高クロック版です。
CPU性能を計測するベンチマークテストを試したところ、Core i7-1185G7搭載の試用機では非常に優秀な結果でした。AMDのRyzenシリーズにはやや劣るものの、スタンダードノートPC向けCPUのなかでは上位クラスの性能です。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 9.0 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 5800U |
18795
|
Ryzen 7 5700U |
18449
|
Ryzen 5 5500U |
14737
|
Prestige 14 A11(Core i7-1185G7) |
13772
|
Core i7-1165G7 |
12690
|
Core i5-1135G7 |
11434
|
Ryzen 3 5300U |
9550
|
Core i3-1115G4 |
7398
|
Ryzen 3 3250U |
5202
|
Athlon Silver 3050U |
3851
|
Celeron N4500 |
2010
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、専用グラフィックス(GPU)のGeForce GTX 1650 with Max-QまたはGeForce GTX 1650 Ti with Max-Q、GeForce MX 450が使われます。GTX 1650 Max-Q搭載の試用機で3Dベンチマークテストを行なったところ、ゲーム用やクリエイター用PCで使われているGPUよりも低い結果が出ました。しかしこれは使われているGPUがエントリー向けのためで、スコア的には妥当なところです。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 |
11914
|
RTX 2080 |
9599
|
RTX 3070 |
8831
|
RTX 3060 |
8262
|
RTX 2070 |
7660
|
RTX 2060 |
5860
|
GTX 1660 Ti |
5626
|
RTX 3050 Ti |
5166
|
GTX 1650 Ti |
3686
|
GTX 1650 |
3178
|
Prestige 14 A11(GTX 1650 Max-Q) |
2825
|
Iris Xe (Core i7) |
1250
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (DirectX 11、フルHD)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 |
28566
|
RTX 2080 |
25078
|
RTX 3070 |
24153
|
RTX 3060 |
21620
|
RTX 2070 |
20037
|
RTX 2060 |
15685
|
GTX 1660 Ti |
14451
|
RTX 3050 Ti |
13385
|
GTX 1650 Ti |
10123
|
GTX 1650 |
8758
|
Prestige 14 A11(GTX 1650 Max-Q) |
8678
|
Iris Xe (Core i7) |
4486
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ゲーミングノートPCやクリエイーター向けノートPCで使われているGPUと比較すると結果はイマイチのように見えますが、スタンダードノートPCと比較するとパフォーマンスが高いことがわかります。Prestige 14 A11は外観的にはスタンダードノートPC / モバイルノートPCなので、本来はこのあたりと比較するべきでしょう。Iris Xe搭載のCore i7搭載ノートPCと比べると、およそ1.8倍程度のパフォーマンス。気軽に持ち歩けるPCとしては、素晴らしい性能です。
GPUの性能差(DirectX 11)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
Prestige 14 A11(GTX 1650 Max-Q) |
8678
|
GTX 1650 |
8513
|
MX450 |
4900
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
4734
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
4059
|
MX350 |
3931
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
3420
|
Radeon (Ryzen 7) |
3384
|
Iris Plus |
2880
|
Radeon (Ryzen 5) |
2652
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
2474
|
Radeon (Ryzen 3) |
2324
|
UHD |
1335
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージのアクセス速度
ストレージは512GBまたは1TBのSSDです。試用機ではPCIe 4.0 x4接続の超高速タイプが使われており、アクセス速度は非常に高速でした。
ただし負荷の高いテストを連続して行なうと、アクセス速度がわずかに低下します。サーマルスロットリングが発生しているものと思われますが、よほど大容量のデータを扱わない限り体感的には問題ないでしょう。
ゲーム系ベンチマーク結果
ゲーム系ベンチマークテストを試したところ、少し重めのFF14ベンチでもフルHDの画質調整で快適との評価でした。GPUなしのPCでは最低画質のFF14ベンチでも厳しいことを考えると、Prestige 14 A11は薄型モバイルノートPCとしてはかなり高いパフォーマンスを発揮できると考えていいでしょう。
※テストはすべてフルHDで実施
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 2216 / 重い |
標準品質 | 3475 / 普通 |
軽量品質 | 4746 / やや快適 |
※1920×1080ドットの結果。スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 6720 / 47.2 FPS |
高品質 | 9114 / 63.3 FPS |
標準品質 | 12078 / 87.4 FPS |
※1920×1080ドットの結果。平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 18460 / すごく快適 |
標準品質 | 19095 / すごく快適 |
低品質 | 20819 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
起動時間
ウィンドウズの起動時間(バッテリー駆動時)は平均12.72秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動はやや高速です。待たされている感はほとんどありません。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 12.2秒 |
---|---|
2回目 | 11.5秒 |
3回目 | 11.3秒 |
4回目 | 13.4秒 |
5回目 | 15.2秒 |
平均 | 12.72秒 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で、最大10時間とされています。しかしこれはGPUを無効化した上でバッテリー消費量をグッと落とした上での結果で、実際の利用を想定した測定結果ではありません。実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、公称値よりもかなり短い3時間13分で休止状態へ移行しました。消費電力の高いGPUを有効にした上で計測したため、この結果は仕方がないでしょう。外出先で長時間作業するのであれば、GPUを無効化したり電源プランや動作モードを変更する必要がありそうです。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i7+GTX1650モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大10時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 3時間13分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 29分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間28分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
GTX 1650搭載機としては驚異的な軽さと薄さ
よかった点
GTX 1650クラスのエントリーGPU搭載で軽量スリムな点が魅力です。見た目は普通のモバイルノートPCなのに、性能はちょっとしたゲーミングノートPC並み。使われているGPUは薄型ノートPC向けのMax-Qデザインタイプなのでパフォーマンスはやや劣りますが、それでもGPUなしのノートPCよりもはるかに高性能です。
外出先でガッツリとクリエイティブワークを行なうにはバッテリー的に厳しいのですが、電源につなげさえすれば、GPUなしのノートPCよりも快適に作業できるでしょう。フルHDクラスの動画編集やRAW現像、ちょっとしたイラスト制作などに向いています。もしくは外出先でのプレゼンやデータ確認などにもおすすめ。高いグラフィックス性能が魅力のモバイルノートPCです。
気になる点
個人的には、キーボードの配列が気になります。慣れれば問題なく使えるかもしれませんが、それでもプログラミングなどで記号を多用する人だと、少し使いづらく感じるかもしれません。タイプ感や配列を重視するなら、外付けキーボードを利用するのはアリです。
※2021年8月30日時点
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