富士通の「FMV Chromebook WM1/F3(FMV Chromebook 14F)」は、14インチサイズのChrome OS搭載ノートPCです。大手国内ブランドの製品でありながら価格は高くはなく、どちらかと言えば標準的。使い勝手を重視した作りで、長時間作業する人に向いています。
ポイント
- 😄 大手ブランドの安心感
- 😄 長文入力向きのキーボード
- 😄 Celeronモデルは高コスパ
- 🙄 なんとなく地味
今回は実機に触れる機会がありましたので、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
FMV Chromebook WM1/F3のスペック
OS | Chrome OS |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ、1920×1080、非光沢、タッチ対応 または タッチ非対応 |
CPU | Core i3-1115G4 または Celeron 6305 |
メモリー | 8GB または 4GB |
ストレージ | 128GB SSD または 64GB eMMC |
通信 | Wi-Fi 6 + Bluetooth 5.1 |
キーボード | 日本語配列 |
インターフェース | USB 3.2 Gen2 Type-C×2、USB3.2 Gen2×2、microSDカードリーダー、HDMI、ヘッドホン端子 |
生体認証 | なし |
カメラ | 92万画素 |
サイズ / 重量 | 幅323.8×奥行き216×高さ19.9mm / 約1.29kg |
バッテリー | 約10時間 |
自動更新ポリシー | 2029年6月 |
付属品 | 電源アダプターなど |
※2021年11月28日時点。構成は変更される場合があります
ラインナップ
FMV Chromebook WM1/F3(FMV Chromebook 14F)には、合計4種類のモデルが用意されています。最上位モデルは量販店向けですが、公式サイトでも入手可能。価格の安いCeleronモデルは、アマゾンで販売されています。
なお今回の記事では、Core i3 / 4GB / 64GB eMMC構成のWM1/F3(FCBWF3M13T)を使用しました。
ラインナップ
14F(FCB143FB)※量販店向け | |
---|---|
Core i3-1115G4 / 8GB / 128GB SSD | 7~8万円台 |
WM1/F3(FCBWF3M13T) | |
Core i3-1115G4 / 4GB / 64GB eMMC | 6万4800円 |
WM1/F3(FCBWF3M11T)※アマゾン限定 | |
Celeron 6305 / 4GB / 64GB eMMC | 5万4800円 |
WM1/F3(FCBWF3M111)※アマゾン限定 | |
Celeron 6305 / 4GB / 64GB eMMC ※タッチ非対応 | 4万9800円 |
※2021年11月17日時点
本体デザイン
外観部分の仕上がりは悪くはありませんが、特別優れているわけでもありません。個人的には、値段を抑えるためにがんばっているなという印象を受けます。7~8万円台としては「まあ、こんなものかな」という印象。しかし4~5万円台なら、なかなかお買い得の高い仕上がりです。
サイズと重量
14インチタイプとしては軽量で、設置面積はややコンパクトです。ただ全体的に厚みがあり、角ばった印象を受けます。おそらく構造部分で強度を出すためでしょう。富士通内部では厳しい耐久テストが行なわれているはずなので、そのあたりはもっとアピールしてもいいのではないかと思います。
ディスプレイについて
ディスプレイの映像はいい意味で標準的です。スマホやタブレットに比べると明るさや鮮やかさでは劣りますが、長時間作業するのには適しています。格安機種で見られる発色の弱さや見づらさはありません。
キーボードについて
国内の大手ブランドが手がけただけあって、日本語キーボードの仕上がりは最高レベルです。配列に違和感がまったくなく、使い始めからサクサク快適に入力できます。ストロークが深い点は人によって好みはあると思いますが、昔から長文入力する人にはしっくりくるはず。筆者としても、Chromebookのなかではもっとも好みのタイプ感です。
ベンチマーク結果
テスト機のスペック
CPU | Core i3-1115G4 |
---|---|
メモリー | 4GB |
ストレージ | 64GB eMMC |
グラフィックス | UHD Graphics (CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
Octane 2.0
FMV Chromebook WM1/F3で使われているCore i3-1115G4は、2021年11月時点では現行世代のCPUです。インテル第11世代Coreプロセッサのなかでは、薄型ノートPC向けの「Tiger Lake-UP3」にカテゴライズされます。WindowsノートPCではエントリー向けノートPCで使われていますが、ChromebookではCore i3はミドルレンジあたりの位置付けです。
ところがブラウザーによるJavaScritの処理速度を計測する「Google Octane 2.0」では、従来のハイエンド機種を大きく上回る結果が出ました。この結果だけでハイエンドクラス相当とは言えませんが、従来のミドルレンジクラスよりも性能面で大きく上回ると考えていいでしょう。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Octane 2.0スコア |
---|---|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
55846
|
HP x360 13c (Core i7-10510U) |
48847
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
43914
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
29424
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
23518
|
HP 14a(Pentium N5030) |
21124
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
19455
|
CB314(Celeron N4020) |
17922
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
16810
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
16471
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
11585
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
10490
|
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) |
9676
|
CrXPRT 2
「CrXPRT 2」はChrome OS機器の総合性能の計測する、HTML 5ベースのベンチマークテストです。Core i5 / i7搭載機種のデータがないためハイエンド機種とは比較できませんが、従来のミドルレンジクラスからはスコアが30%程度アップしています。従来のハイエンドクラスに迫るほどと考えてもいいでしょう。非常に優秀な結果です。
ベンチマークスコアの比較
CPU | CrXPRT 2 Performanceスコア |
---|---|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
141
|
Acer 712 C871T-A38N (Core i3-10110U) |
110
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
96
|
HP 14a(Pentium N5030) |
70
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
70
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
66
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
61
|
CB314(Celeron N4020) |
59
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
55
|
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) |
54
|
ASUS CM3 (MediaTek MT8183) |
39
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
37
|
GeekBench 5
Core i3-1115G4は、2コア4スレッドで動作します。マルチコアのテストでは4コア8スレッドのCore i7にはかないませんでしたが、それでも十分な性能です。シングルコアのテストはCore i5 / i7のデータがないため比較できませんが、エントリークラスを大きく上回る性能と言っていいでしょう。
ベンチマークスコアの比較
CPU | Geekbench 5 マルチコアスコア |
---|---|
HP x360 13c (Core i7-10510U) |
3146
|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
2187
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
2209
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
1769
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
1503
|
HP 14a(Pentium N5030) |
1428
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
1422
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
1393
|
CB314(Celeron N4020) |
910
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
880
|
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) |
792
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
696
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
514
|
ベンチマークスコアの比較
CPU | Geekbench 5 シングルコアスコア |
---|---|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
1143
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
1015
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
726
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
558
|
HP 14a(Pentium N5030) |
511
|
CB314(Celeron N4020) |
483
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
461
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
447
|
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) |
426
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
397
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
301
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
270
|
PCMark / 3DMark
アプリによる軽めの作業の快適さを計測するPCMarkではそこそこ優秀な結果ではあったものの、8GBメモリー搭載機種を下回りました。しかし3Dグラフィックス性能を計測する3DMarkでは、トップクラスのスコアです。ゲーミングスマホのように重いゲームを快適に楽しめるほどではありませんが、優秀な結果です。
ベンチマークスコアの比較
CPU | PCMark Work 2.0スコア |
---|---|
ASUS Flip C436FA (Core i7-10510U) |
11966
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
11792
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
11179
|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
11135
|
HP 14a(Pentium N5030) |
9455
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
9364
|
CB314(Celeron N4020) |
9052
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
8714
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
8249
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
8191
|
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) |
8011
|
IdeaPad Duet (MediaTek Helio P60T) |
6686
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
6655
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
5195
|
ベンチマークスコアの比較
CPU | 3DMakr Sling Shotスコア |
---|---|
FMV WM1/F3(Core i3-1115G4) |
7374
|
HP x360 13c (Core i7-10510U) |
5522
|
HP x360 14b(Pentium N6000) |
4704
|
HP x360 14c (Core i3-10110U) |
4172
|
HP x360 14b (Pentium N5000) |
2780
|
Acer Spin512 (Celeron N4100) |
2636
|
IdeaPad Flex550i (Celeron 5205U) |
2538
|
Acer 512 C851T-H14N (Celeron N4000) |
2247
|
Lenovo 14e Gen2(3015Ce) |
2245
|
HP 14a(Pentium N5030) |
2203
|
CB314(Celeron N4020) |
2095
|
ASUS Detachable CM3 (MediaTek MT8183) |
1796
|
IdeaPad Slim 360 (MediaTek MT8183) |
1789
|
ASUS C223NA (Celeron N3350) |
1445
|
ブラウザーの使用感
Google Chromeでアマゾンのページを20ページ同時に開いたところ、はじめの一瞬だけ動作がカクとしたものの、あとは普通にページを利用できました。GoogleドキュメントなどのWebアプリ系だと20ページ同時に開くと少しカクカクする場面がありますが、全体的に普通に使えそうです(扱うデータ量や回線速度によって変わります)。Core i3 + 4GBメモリーモデルでも、ブラウザーのタブを複数使った作業には問題なく使えると思います。
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で約10時間とされています。画面の明るさを最大にした状態でCrXPRT2のバッテリーテストで駆動時間を計測したところ、6時間50分でバッテリー切れとなりました。画面の明るさや処理の内容によっては駆動時間は延びるでしょう。
バッテリー駆動時間の比較
CPU | CrXPRT2バッテリーテスト |
---|---|
HP x360 14b |
8時間48分
|
Lenovo 14e Gen2 |
7時間27分
|
FMV WM1/F3 |
6時間50分
|
ASUS Detachable CM3 |
6時間13分
|
実用性重視の良機種
富士通の個人向けChromebook第1弾ということで、気合いを入れて作られている印象を受けました。価格帯にしても仕上がりや使い勝手にしても、他社製品をかなり研究しているのでしょう。
海外メーカーの製品は外装に力を入れる傾向ですが、FMV Chromebook WM1/F3はディスプレイの映像やキーボードのタイプ感、筐体の強度など、実用性が重視されています。全体的な品質としては、ミドルレンジとしては十分な仕上がりです。
しかしCeleron搭載のエントリーモデルでも同様であるならば、お買い得感はグンと跳ね上がります。5万円前後でここまで仕上がりのいい機種は、なかなかありません。いまの価格でも十分お買い得ですが、なんらかのセールで値引きされれば買わなきゃ損レベルにまで達します。
このように開発陣の並々ならぬ意気込みが感じられる良機種なのですが、最大の欠点は「華がない」ところです。価格が非常に安いわけでもなく特別薄いわけでもなく、性能や機能がぶっ飛んでいるわけでもありません。玄人受けはするけれども、エントリー層にはピンとこない可能性があります。デスクトップ版のオフィスが使えない時点で候補から外す人もいるでしょう。
この記事を読んでいるあなたがChromebook初心者でこれからWindows / Mac代わりに使いこなしたいと考えているなら、アマゾン限定のタッチ対応モデルをおすすめします。大手国内ブランドの安心感もあり、5万円前後としては仕上がりは十分過ぎるほどです。ガッツリ使いたい人には、Core i3搭載モデルをおすすめします。
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