デルの『Inspiron 15 ノートパソコン(3535)』(以下、”Inspiron 15 3535″)は、15.6インチディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。普通に使える性能で、最安モデルは5万円台半ば(記事執筆時)と価格が安い点が特徴。PC購入のコストを抑えたい人に向いています。
もっとも安いのはRyzen 3モデルですが、値段と性能の差を考慮するならRyzen 5以上のモデルを選んだほうがいいでしょう。ただし外観や機能の面で安っぽさがあるので、割り切って使える人向きです。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Inspiron 15 3535
スペック
発売日 | 2023年2月21日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
ディスプレイ | 15.6インチ、1920×1080ドット、WVA(広視野角パネル)、250nit、45% NTSC、非光沢、120Hz |
CPU | Ryzen 3 7320 / Ryzen 5 7530U / Ryzen 7 7730U |
メモリー | 8GB LPDDR5-4800 ※オンボード増設不可 または16GB(8GB×2) DDR-3200 |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fi 5、Bluetooth 5.0 |
インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(データ通信のみ)×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×1、HDMI1.4(最大1920×1080@60Hz)、SDメモリーカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | ※生体認証なし |
サイズ / 重量 | 幅358.5mm、奥行き235.56mm、高さ16.96~18.99mm / 約1.63kg |
バッテリー | 3セル51Wh ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 3 7320U |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、Zen2世代のRyzen 3 7320U(4コア、TDP15W)またはZen3世代のRyzen 5 7530U(6コア、TDP15W)およびRyzen 7 7730U(8コア、TDP15W)が使われています。この3種類のなかではRyzen 3がもっとも性能が低く、Ryzen 7がもっとも高性能です。
今回はRyzen 3 7320U搭載の試用機でテストを行ないました。CPUベンチマークテストでは、かなり低めの結果が出ています。ただし最近のCPUはムダに高性能なので、性能が低く見えても軽めの作業には十分使えます。ネットの調べ物やメールのやり取り、オフィスを使った文書作成であればRyzen 3モデルでも普通に使えるでしょう。
ただしガッツリ作業したい人には、Ryzen 5 / Ryzen 7モデルのほうがおすすめです。大作ゲームや高度な動画編集には向きませんが、おおよその作業については快適にこなせます。
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21043
|
Core i5-1340P |
20760
|
Core i7-1360P |
19623
|
Ryzen 7 7730U |
18979
|
Core i5-1335U |
18240
|
Ryzen 5 7535U |
17163
|
Ryzen 5 7530U |
16196
|
Core i7-1355U |
15636
|
Core i3-1315U |
13033
|
Ryzen 3 7330U |
10909
|
Core i3-N305 |
10265
|
Ryzen 5 7520U |
9759
|
Inspiron 15 (Ryzen 3 7320U) |
9490
|
Ryzen 3 7320U |
9249
|
Intel N100 |
5638
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
薄型ノートPC向けCPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-1360P |
3670
|
Core i5-1335U |
3665
|
Core i7-1355U |
3606
|
Core i3-1315U |
3573
|
Ryzen 7 7735U |
3289
|
Ryzen 7 7730U |
3228
|
Ryzen 5 7530U |
3136
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3089
|
Ryzen 5 7520U |
2573
|
Inspiron 15 (Ryzen 3 7320U) |
2510
|
Ryzen 3 7320U |
2485
|
Core i3-N305 |
2279
|
Intel N100 |
1971
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphicsが使われます。Ryzen 3モデルで3Dグラフィックステストを実施したところ、内蔵グラフィックス機能としては最低レベルの結果でした。グラフィックス周りの処理(ゲームやグラフィック関連ソフトなど)はかなり苦手と考えてください。
Ryzen 5 / Ryzen 7モデルであれば多少スコアは向上しますが、基本的には「Radeon(Zen3)」と同程度の結果となるでしょう。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(Zen3+) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
Radeon (Zen3) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Zen2+) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
Inspiron 15(Zen2,Ryzen 3) |
497
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージには、256~512GBのSSDが使われています。試用機で使われていたのはWDのSN740シリーズで、PCIe 3.0 x2接続の低速タイプ。PCIe 4.0 x4が主流の最近の機種と比べると、アクセス速度は1/2以下程度しかありません。このあたりが安さの理由なのでしょう。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値はコンテンツ制作のテストでかろうじて上回った程度でしたが、そのほかのいテストでは大きく上回っています。とは言え、主流のCore i5 / Core i7またはRyzen 5 / Ryzen 7と比べると、かなり見劣りする結果です。軽めの作業中心ならRyzen 3モデルでも問題ありませんが、ガッツリ使うならRyzen 5以上のモデルを選んでください。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
8052
10616
10917
9869
10258
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7166
10003
9572
8854
7417
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
3585
6018
6536
8298
6026
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公開されていません。そこでPCMark 10のバッテリーベンチ機能を使ってビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から7時間35分で休止状態へ移行しました。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。長いわけではないものの、本来は据え置き用の機種であることを考えれば十分な結果です。
バッテリー駆動時間の計測結果(Ryzen 3モデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | ※非公開 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 7時間35分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 56分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 2時間19分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
安さを最重要視するならアリ
今回はRyzen 3 7320Uモデルを試用したのですが、作業中にちょっとした「間」を感じることが何度もありました。値段が安いとは言え、性能面で少し不安があります。しっかり使うなら、Ryzen 5以上のモデルを選んでください。
記事執筆時点ではRyzen 5+16GBメモリーモデルが6万3900円、Ryzen 7+16GBメモリーモデルは9万4000円で販売されています。Ryzen 7モデルはそれほどでもありませんが、Ryzen 5モデルは業界最安クラスと言っていいでしょう。
しかしそのぶん、機能面や外観面で安っぽさを感じます。筐体はチープでタイプ感もイマイチ、特にいまどきType-Cがデータ通信のみなのはいかがなものでしょうか。またSSDのアクセス速度も遅く、パフォーマンスにも影響するかもしれません。
それでも、PCとしての安さを最重要視するならアリです。同程度の値段でもっと性能が低い機種はいくらでもありますし、価格と性能の面だけで見れば非常に高コスパ。割り切って使える人に向いています。
Inspiron 15 3535
*
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