『ThinkPad X13 Gen 4(第13世代Intel vPro®)』(以下、”ThinkPad X13 Gen 4″)は、ハイエンドタイプのビジネス向けモバイルノートPCです。CPUは第13世代CoreプロセッサUシリーズで、ディスプレイは13.3インチ、重量は1.1kg前後。バッテリー駆動時間も長く、外出先で作業を行なうのに向いています。
このモデルでは本体デザインが刷新され、従来モデルよりも薄く&コンパクトになりました。持ち歩きやすさは向上しているものの、そのぶんキーボードのタイプ感が軽くなったり、熱の影響でCPU性能がやや低下しているような様子も見られます。自分の使い方に合っているか、十分検討する必要があるでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
発売日 | 2023年4月25日 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
ディスプレイ | 13.3インチ 非光沢 |
パネル | 2880×1800ドット OLED 100%DCI-P3 / 1920×1200ドットIPS 100%sRGB/ 1920×1200ドットIPS 100%sRGB タッチ対応 |
CPU | Core i3-1315U / Core i5-1335U / Core i5-1345U / Core i7-1355U / Core i7-1365U |
メモリー | 8 / 16 / 32GB LPDDR5-4800 ※オンボード(増設非対応) |
ストレージ | 256GB~2TB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD(Core i3) / Iris Xe(Core i5 / i7) ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth5.3、4G / 5G(オプション) |
インターフェース | USB4 / Thunderbolt 4(PD / DP対応)×2、USB3.2 Gen1×2、HDMI2.1(4K/60Hz)、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー(オプション) |
サイズ / 重量 | 幅301.7mm、奥行き214.8mm、高さ16mm / 約1.09kg(OLEDモデル) または約1.12kg |
バッテリー | 4セル54.7Whr / 3セル41Whr ※最大 約22.9時間 |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-1335U(10コア12スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 16GB(DDR5-4800) |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはまずWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定。標準収録ユーティリティー『Lenovo Commercial Vantage』の「電源スマート設定」にて「インテリジェント・クーリング」を有効にした状態(パフォーマンス・モード)であることを確認した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
ストレージ性能
ストレージには、256GB~2TBのSSDが使われています。試用機で使われていたのはSKHynix製で、アクセス速度はかなり優秀。ハイエンドなビジネスモバイルだけあって、高速なSSDが使われていました。
CPU性能
CPUとしては、インテル第13世代のUシリーズ(低消費電力タイプ)が使われています。Core i5-1335U搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、現行世代のCPUとしては中位クラスの結果でした。とは言え現行世代のCPUは性能が非常に高く、中位クラスでも十分パワフルです。
しかし同じCore i5-1335Uの平均値よりも、12%程度低い結果が出ています。Core i3やCore i7についても、同様の結果となるかもしれません。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21043
|
Core i5-1340P |
20760
|
Core i7-1360P |
19623
|
Ryzen 7 7730U |
18979
|
Core i5-1335U |
18240
|
Ryzen 5 7535U |
17163
|
Ryzen 5 7530U |
16196
|
ThinkPad X13(Core i5-1335U) |
16109
|
Core i7-1355U |
15636
|
Core i3-1315U |
13033
|
Ryzen 3 7330U |
10909
|
Core i3-N305 |
10265
|
Ryzen 5 7520U |
9759
|
Ryzen 3 7320U |
9249
|
Intel N100 |
5638
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
その一方で、軽めの作業に強く影響するシングルスレッド(シングルコア)性能のテストでは、非常に優秀な結果でした。日常的な作業では、快適に利用できるでしょう。重いソフトをいくつも使った複雑な作業よりも、少数のソフトでちょっとした作業を行なうのに向いています。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
ThinkPad X13(Core i5-1335U) |
3702
|
Core i7-1360P |
3670
|
Core i5-1335U |
3665
|
Core i7-1355U |
3606
|
Core i3-1315U |
3573
|
Ryzen 7 7735U |
3289
|
Ryzen 7 7730U |
3228
|
Ryzen 5 7530U |
3136
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3089
|
Ryzen 5 7520U |
2573
|
Ryzen 3 7320U |
2485
|
Core i3-N305 |
2279
|
Intel N100 |
1971
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
マルチスレッド(マルチコア)性能を含む総合性能のテストでスコアが低いのは、もしかするとCPUの発熱が影響しているのかもしれません。本体内部の熱が上昇しすぎるのを防ぐために、あえてパフォーマンスを抑えている可能性があります。
グラフィックス性能
グラフィックス機能には、CPU内蔵のUHD Graphics(Core i3モデル)またはIris Xe Graphics(Core i5 / Core i7モデル)が使われます。Core i5搭載の試用機で3Dベンチマークテストを行なったところ、LPDDRメモリーとの組み合わせとしては妥当な結果でした。内蔵グラフィックスとしてはそこそこ優秀ではあるものの、ゲームや動画編集などでの効果を期待できるほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Zen3+) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
ThinkPad X13(Core i5+LPDDR5) |
1318
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
Radeon (Zen3) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Zen2+) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は大きく上回っているものの、CPUの高い負荷のかかるマルチコア系の処理は苦手なようです。ビジネスPCでビジネス利用のスコアが低いのは致命的にも思えますが、外出先でデータをガッツリ編集するような使い方ではなく、資料の確認やちょっとした文書の作成程度で考えたほうがいいでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10338
10616
10917
9869
10258
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6644
10003
9572
8854
7417
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5768
6018
6536
8298
6026
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は最大で約22.9時間とされています。しかしこれはバッテリーの消費量をグッと抑えた場合の結果。このような状態では、パフォーマンスが大きく低下する可能性があります。公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から12時間45分でバッテリー残量が3%に達し、休止状態へ移行しました。公称値よりはだいぶ少ないのですが、それでも十分な結果と言っていいでしょう。
PCMark 10バッテリーテスト検証結果
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大 約22.9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 12時間45分 |
充電率50%までの時間 | - | 29分 |
満充電になるまでの時間 | - | 1時間24分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
新デザインで使い勝手も大きく変わった
ThinkPad X13シリーズは当サイトでも何度か取り上げましたが、今回のThinkPad X13 Gen 4では本体デザインが大きく変わりました。従来モデルよりも薄くなり、ディスプレイのベゼルも細身でスッキリとしています。コミュニケーションバーの出っ張りは賛否両論あると思いますが、いろんな面でいまの流行を取り入れた外観です。
ただ個人的には、キーボードのタイプ感がだいぶ軽くなってしまったのは残念です。ThinkPadシリーズと言えばしっかりとしたキーボードのタイプ感が特徴でもあったのですが、最近は本体の薄型に伴い、キーストロークもどんどん浅くなっています。これも時代の流れでしょうか。いまや以前のタイプ感を感じられるのは、ThinkPad Eシリーズのみという状況です。タイプ感についてあれこれ言うよりも、今後は浅いストロークに慣れるべきなんでしょうね。
と、このようにいろんな部分が変わっているので、これまでThinkPadシリーズを使っていた人はそれなりの心構えが必要です。
パフォーマンス的には十分ではあるものの、重い処理でパフォーマンスが低下する部分が気になりました。第13世代の性能は非常に優秀なのですが、どうも発熱量が増えているようで、ベンチマークのスコアがいまひとつ伸びない機種をよく見かけます。値段高めのハイエンドビジネスモバイルなわけですから、そのあたりはもうちょっとなんとかしてほしいところ。軽めの作業には問題ありませんが、ガッツリ作業したい人は第13世代Pシリーズ搭載機を検討したほうがいいでしょう。
*
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