SkyBariumの『SkyBarium MN22』(以下、”SkyBarium N100″)は、人気のIntelプロセッサーN100を搭載するミニPCです。機能や外観はシンプルですが、価格が2万1000円前後と非常に安く販売されています。
記事執筆時の価格
モデル | 価格 |
---|---|
N100 / 8GB / 256GB | 2万1400円前後 |
※2023年11月14日時点
製品は(この手のものとしては)普通です。ただし電源を入れるとWindowsの初期設定は行なわれずに、いきなりデスクトップ画面が表示されました。出荷時のロットのよって異なるかもしれませんが、もし購入直後の状態でデスクトップ画面が表示されたら直ちにクリーンインストールを行なうことをおすすめします。
ポイント
- ✅初期設定の有無に注意
- ✅USB周りが貧弱
- ✅デュアルLAN
- ✅メモリー増設非対応
- ✅
公式サイトがない
※追記:公式サイトは「SkyBarium」名義ではなく、「T-bao」名義で存在しました。前者は日本向けのブランドで、後者のほうが本来のブランドのようです
関連リンク
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
SkyBarium MN22
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年春 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア4スレッド) |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
メモリー | LPDDR5 8GB ※オンボード増設非対応 |
ストレージ | 256GB SATA SSD ※M.2 Type-2280 |
インターフェース | USB3.0×1、USB2.0×3、HDMI×1、3.5mmステレオジャック、microSDカードスロット、有線LAN(1Gb)×2 |
拡張スロット | なし |
ドライブベイ | 2.5インチ×1 |
通信 | Wi-Fi 5 + BT 4.2 + 有線LAN(1Gbps)×2 |
サイズ / 重量 ※実測値 | 幅125mm、奥行き113mm、高さ45mm / 0.28kg |
付属品 | 電源ケーブル、HDMIケーブル×1、取り付けマウンタなど |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
SkyBarium N100では、個人利用が可能なOEM版のライセンスが使われています。中華系ミニPCのなかには個人利用不可のボリュームライセンスが使われているものがありますが、この機種については問題ありません。
認証マークについて
無線機器の利用に必要な「技適マーク」は、マザーボード上のモジュールにプリントされています。おそらくこれで、問題ないのかもしれません。
「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わす「PSEマーク」は、電源アダプターではなく、本体に表示されていました。通常は電源アダプターに表示するのですが、本体での表示が認められているかどうかはわかりませんでした。
本体デザイン
パッケージ
外観
インターフェース構成
メモリー/SSDの増設について
本体の分解方法
メモリーの増設方法
メモリーはオンボードのため、増設や換装には非対応です
ストレージの増設・換装
M.2 SSD
2.5インチストレージ
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
---|---|
メモリー | 8GB LPDDR5 |
ストレージ | 256GB SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に設定した上で実施しています。ちなみに電源プランを「高パフォーマンス」に変更しても、ほとんど差は出ません
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けでAlder Lake-N世代のIntelプロセッサーN100が使われています。4コア4スレッドで動作するCPUで、TDP(消費電力量の目安)は標準で6W。ただし6W前後で動作するのは待機時だけで、高負荷時には15W前後で動作します。
検証機でCPUベンチマークテストを行なったところ、同CPU搭載の他社製品よりも優秀な結果が出ました。ただしその差はごくわずかで、体感できるほどではありません。正直なところ、どの機種を選んでも性能的には変わらないでしょう。
激安ミニPCの性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
SkyBarium Mini PC(N100) |
6274
|
LarkBox X 2023(N100) |
6235
|
Beelink S12 Pro(N100) |
6188
|
HeroBox 2023(N100) |
6165
|
TRIGKEY GREEN G4(N95) |
5787
|
Intel N100 PassMark平均 |
5620
|
Intel N95 PassMark平均 |
5425
|
※PassMark平均はPassMark CPU Benchmarksによる集計値、そのほかは当サイトの計測値
低価格なミニPCで使われているCPUと比較すると、わりと性能が低いことがわかります。ただ実際に使ってみるとわかりますが、ネットの調べものやメール、ちょっとしたメモなどを行なうには十分です。
ミニPC向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-13500H |
24011
|
Ryzen 7 5800H |
21256
|
Ryzen 7 6800U |
20598
|
Ryzen 7 5800U |
18670
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
18517
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 5600H |
17119
|
Ryzen 5 5600U |
15462
|
Intel N305 |
10050
|
検証機(N100) |
6274
|
Intel N100 |
5630
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
ミニPC向けCPUの性能比較(シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Single Threaded |
---|---|
Core i5-13500H |
3538
|
Core i5-12450H |
3473
|
Ryzen 7 6800U |
3208
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
3180
|
Ryzen 7 5800H |
3060
|
Ryzen 7 5800U |
3048
|
Ryzen 5 5600H |
2964
|
Ryzen 5 5600U |
2916
|
Intel N305 |
2252
|
検証機(N100) |
2096
|
Intel N100 |
1971
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
検証機 |
330
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
SSDはM.2 SATAタイプで、アクセス速度はPCIe NVMeタイプよりも低速です。しかし値段の安いミニPCではよくあるタイプなので、特に気にする必要はないでしょう。ただし、積極的に選ぶ材料にもなりません。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)はなんとかクリアーした程度、コンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。ごく軽い作業向けです。
ちなみに総合的には、DDR4 16GBメモリー+500GB NVMe SSD搭載機よりも高いスコアが出ています。軽い作業(ベンチマーク)ではメモリー容量やSSDの種類よりも、DDR4かLPDDR5かが(多少は)関係するのかもしれません。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
7342
7142
7957
10603
10299
10256 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
5060
4879
5300
9709
7128
9930 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
2441
2515
3962
6044
6586
5707 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶MINISFORUM UN305 | Core i3-N305 / 8GB / UHD |
▶NucBox10 | Ryzen 7 5800U / 16GB / Radeon |
▶IdeaCentre Mini Gen 8 | Core i5-13500H / 8GB / UHD |
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
CPUの発熱について
※計測時の室温は21度。室温が変わると、結果が異なる場合があります
高負荷時におけるCPU温度を計測したところ、最大温度は84度で平均温度は81.8度とわずかに高めでした。消費電力は最大でも14.4Wと、ほかのN100搭載機(18~20W前後)よりも低く抑えられています。
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、実作業中はあまり聞こえません。ただし高負荷な処理では、ちょっと高めの回転音が聞こえます。
駆動音の計測結果
電源オフ | 36.5dB | - |
---|---|---|
電源オン時 | 39.9dB前後 | 高いファンの回転音が聞こえるが3~4秒程度 |
待機中 | 37dB前後 | 耳を近づければファンの回転音は聞こえるが、ほぼ無音 |
高負荷時 | 40.2dB前後 | 排気音とファンの甲高い回転音がハッキリと聞こえる。うるさくはないが、少し気になるかも |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dB前後 | - |
他社製品のほうがおすすめ
正直なところ、特に大きな魅力は感じられませんでした。高評価ポイントは「デュアルLAN」と「microSDカードスロット」の2点程度、低評価ポイントは「USB構成がイマイチ」「メモリー増設非対応の8GB」「メーカー(ブランド)としての所在が不明」といったところ。特に最後の点に関しては、SkyBariumの公式サイトがない時点でアヤシサ満点です。パッケージに製造が「TianBei Technology」とあるので、アマゾンの販売業者である「Shenzhen tianbei Technology Co., Ltd」と同じなのでしょう。企業としてはちゃんと活動しているのだとは思いますが、他社製品がそのあたりをしっかりしていることを考えれば、わざわざしっかりしていないところを選ぶ必要はありません。
※追記:公式サイトは「SkyBarium」名義ではなく、「T-bao」名義で存在しました。前者は日本向けのブランドで、後者のほうが本来のブランドのようです
関連リンク
筆者の購入機では、初期設定済みであった点も非常に気になります。おそらくボリュームインストールのイメージをそのように作ったと思うのですが、悪意のあるソフトが混入している可能性を考えると、怖くてそのままでは使う気になれません。現在は「初期設定済みではない」との話も出ていますが、過去にそのような事例があったことは認識しておくべきです。
以上の点から、特にこの機種を選ぶ必要はないと考えます。よっぽど価格が安いとか、外観や中身やインターフェース構成にシビれたとかならアリですが、いろんなリスクを考慮に入れたほうがいいでしょう。
SkyBarium MN22
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