「GEEKOM NUC AE7」は、CPUとしてRyzen 9 7940HSを搭載したミニPCです。さらにメモリーは32GBで、ストレージは1TB SDD。性能を計測するベンチマークテストでは、デスクトップPC向けのCore i5よりも優れた結果が出ています。これだけ小さいのに超高性能な、ロマンあふれる機種です。
ただし本体内部の熱が上がりすぎないよう、いろいろとチューニングされているような部分が見受けられました。特に騒音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)が大きく、人によっては機になるかもしれません。高性能なミニPCにある程度の音は避けられませんので、ここをどう判断するかが評価の分かれ目だと思います。
この記事ではメーカーから提供された実機を使って、外観や性能、実際の使い心地などをレビューします。
クーポンで割引中
下記のクーポンを利用すると公式サイトで5000円、アマゾンでは5%値引きされます。クーポンの有効期間は8/10まで。
公式サイト:AE7KMMB5000
アマゾン:AE7KMMB5off
おことわり
このレビュー記事では、メーカー提供品を10日間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売日 | 2024年6月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Ryzen 9 7940HS |
メモリー | DDR5-5600 32GB ※SO-DIMM、スロット×2、最大64GB |
SSD | 1TB PCIe SSD 最大2TB |
グラフィックス | Radeon 780M(RDNA3、CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth、有線LAN(2.5Gb) |
インターフェース | USB4×1(背面、PD/DP対応)、USB3.2 Gen2 Type-C(背面、PD/DP対応)、USB3.2 Gen2×2(前面×1+背面×1)、USB2.0(背面)、HDMI(4K@60Hz)×2、有線LAN×1、SDカードスロット、ヘッドホン端子 |
ドライブベイ | なし |
スロット | M.2スロット×2(ストレージ用×1、Wi-Fi用×1) |
付属品 | VESAマウンタ、HDMIケーブル、電源アダプターなど |
サイズ | 幅117×奥行き112×高さ49.2mm |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
標準搭載のWindows 11 Proは、正規版のOEM(プリインストール版)ライセンスです。ミニPCのなかには個人利用不可のボリュームライセンス(VL)が使われている場合がありますが、GEEKOM AE7では問題なく利用できます。
技適マークについて
無線通信機器に必要な技適マークは、本体底面部にシールとして貼られています。
上記番号は「総務省電波利用ホームページ」の検索結果で「AE7」のものとして登録されているのを確認しました。余談ですが「AE8」や「AE9」など、将来使うであろう型番も登録されています。
関連リンク
PSEマークについて
電源アダプターには「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマークがプリントされています。ただしマークとの併記が必要な事業者名は表示されていないように見えました。
価格(記事執筆時)
スペック | 価格 |
---|---|
Ryzen 9 7940HS / 32GB / 1TB | 9万4990円 |
※2024年7月21日時点、公式サイトの価格(5000円オフクーポン利用時)
パッケージ
外観
GEEKOM NUC AE7の本体は、非常にコンパクトです。大きさは一般的なミニPCとほぼ同じ。このなかにRyzen 9のハイエンドCPUが収められているとは思えません。見た目では高級感があるものの、実際に手にすると若干のチープさを感じました。
インターフェース構成
端子類は十分な構成です。個人的には前面にもType-C端子があったほうがよかったとは思いますが、特に問題はないでしょう。またRyzen搭載PCはあまりUSB4に対応していないのですが、GEEKOM NUC AE7では1ポート用意されていました。
改造・パーツ交換について
本体の分解方法
GEEKOM NUC AE7に分解は比較的簡単です。ただし途中でケーブルが内部のツメに引っかけられていたりするので、無理矢理こじ開けようとしないでください。あくまでも様子を見ながら、慎重に作業することをおすすめします。
メモリーの増設方法
SSDの増設・換装
ベンチマーク結果
検証機のスペック
CPU | Ryzen 9 7940HS(Zen4、8コア16スレッド、最大5.2GHz、35~54W) |
---|---|
メモリー | DDR5-5600 32GB(16GB×2) |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 780M ※CPU内蔵 |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」に設定した上でテストを行なっています。電源アダプターは接続した状態です。
CPU性能
CPUとしては、AMDのRyzen 9 7940HSが使われています。本来はゲーミングノートPC向けの消費電力をやや抑えたシリーズですが、それでも十分高性能です。
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」では、とても優秀な結果が出ました。最近のミニPCと比較しても、なかなか高性能です。
最近のミニPCの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
検証機(Ryzen 9 7940HS) |
1781
14483
|
MINISFORUM UM773 Lite(Ryzen 7 7735HS) |
1571
12478 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H) |
1723
11651 |
MINISFORUM MS-01(Core i9-12900H) |
1720
14156 |
GMKtec NucBox G3(Intel N100) |
796
2882 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
一般用途向けのスタンダードデスクトップPCと比べても、CPU性能では上回っています。
デスクトップPCとの比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
検証機(Ryzen 9 7940HS) |
1781
14483
|
Inspiron 3030S(Core i5-14400) |
1700
11873 |
IdeaCentre 5i Gen 8(Core i5-13400) |
1772
11826 |
Inspiron 3020(Core i5-13400) |
1723
11651 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
GEEKOM NUC AE7には、パフォーマンス調整用のユーティリティーソフトは用意されていません。Windows 11の「設定」で「電源モード」を変更することで、ある程度のパフォーマンスを調整できます。ただし性能を向上させるために「最適なパフォーマンス」を選んでも、6%程度しか変わりません。普段使いでは、「バランス」を選べばいいでしょう。
最近のミニPCの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
バランス |
1781
14483 |
トップクラスの電力効率 |
1100
11857 |
最適なパフォーマンス |
1781
15357 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
電源モードの違い
トップクラスの電力効率 | 消費電力が低く騒音も少ないが、パフォーマンスが低い |
---|---|
バランス | 消費電力と性能のバランスを取った設定。標準設定 |
最適なパフォーマンス | もっとも高性能なモード。騒音が大きくなる |
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon Graphics(Radeon 780M)が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストでは、最近の内蔵グラフィックスとしては優秀な結果でした。とは言え、大作ゲームや高度な動画編集を行なうほどではありません。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050 |
4874
|
Intel Arc Graphics(Meteor Lake) |
3759
|
GTX 1650 |
3444
|
検証機(Radeon 780M) |
2940
|
Radeon 780M(RDNA3) |
2727
|
Radeon 680M(RDNA2) |
2350
|
Radeon 760M(RDNA3) |
2282
|
Iris Xe |
1522
|
Radeon 660M(RDNA2) |
1189
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
目標値は大きく上回っており、一般的な作業であれば快適に利用できるでしょう。ほかのミニPCよりも高いスコアが出ており、快適な操作を期待できます。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
11205
7142
10256
10783
10921
10849 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10332
4879
9930
9785
6840
7023 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
9899
2515
5707
8695
7429
7978 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
▶UM773 Lite | Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M |
▶GEEKOM GT13 Pro | Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe |
MS-01 | Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe |
クリエイティブ性能
「UL Procyon」は、世界的にも利用者が多く「デファクトスタンダード」とも言えるアドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測します。「PCMark 10」と比べて、より高度で実践的なテストを行なう点が特徴です。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Photo Editing | 「Photoshop」と「Lightroom Classic」を利用した、写真の加工・出力に関する総合評価 |
Video Editing | 「Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間からスコアが算出される |
検証機とそのほかのミニPCの結果は、以下のグラフのとおり。検証機では全体的にやや低めの結果が出ました。インテルCPUはPremierに強いのですが、そのメリットもあまり出ていないようです。とは言え、軽めの作業であれば問題ない範囲でしょう。
クリエイティブ性能の比較
CPU | UL Procyon |
---|---|
検証機 |
5772
7195
|
MINISFORUM UM773 Lite |
※エラー
7234 |
GEEKOM GT13 Pro |
4631
5491 |
MINISFORUM MS-01 |
5349
7755 |
※「P」は「Photo Editing」、「V」は「Video Editing」。スコアは当サイトの実機計測結果
比較機のスペック(ミニPC)
▶UM773 Lite | Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M |
---|---|
GEEKOM AE7 | Ryzen 9 7940HS / 32GB / Radeon 780M |
MS-01 | Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe |
ゲーム性能について
ゲーム系ベンチマークテストやプレー中のフレームレート計測を行なったところ、軽めのタイトルであれば、画質をかなり落とすことでそこそこ遊べそうな結果が出ています(平均60 fps超)。
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(やや軽い)
フルHDの最低画質で、65~90fpsあたり。平均値としては普通に遊べるレベルですが、ときおり画面のカクつきを感じました。カジュアルプレーならなんとか。
原神(軽い)
フルHDの最低画質でほぼ60fps前後。ただし派手なエフェクトやオブジェクトが多いシーンではフレームレートが落ちるかもしれません。とりあえずは遊べるレベル。
FF14ベンチ(やや重い)
フルHDのデスクトップ向け標準品質(最低プリセット)で「5485」の「普通」。平均フレームレートは38.3fps。ゲーム機なら30fpsで想定して作られた作品であれば問題ありませんが、PC向けの高フレームレート向けに作られた作品だと、たとえば「普通」という評価でも厳しいでしょう。「遊べないことはないけどね」的なレベルだと思います。
SF6ベンチ(軽い)
フルHDの最低画質で「快適にプレーできます」。とりあえずは普通に遊べるレベルだと思います
ブループロトコルベンチ(軽い)
フルHDの低画質で「14216」の「極めて快適」
サイバーパンク2077(超重い)
フルHDの最低画質で平均17.01fps。動きはカックカクでゲームになりません
熱と騒音について
CPUの熱について
※計測時の室温は28度前後。室温が変わると、結果が異なる場合があります
CPUに高い負荷がかかる「CINEBENCH R23」実行時の温度と商品電力を調べたところ、温度はほぼ一定で92度を維持しており、消費電力は多少の波があるものの45W前後を推移していました。このグラフを見ると、CPU温度が92度を超えないように調整されていることがわかります。温度としては低くありませんが、ベンチマークテストでもいい結果が出ていますし、なかなか優秀なチューニングではないでしょうか。
本体の熱と駆動音について
高負荷時には、天板丈夫がやや温かく感じました。とは言えデスクに据え置きで使うものなので、熱さが不快に感じる場面は少ないでしょう。
騒音(ファンの回転音や通気口からの風切り音)を計測したところ、軽作業時は「耳を澄ませば聞こえる」程度で基本的には静かです。しかし高い負荷がかかると、50dB以上のかなり大きい音が聞こえました。フルパワーで使うには、大きな音をガマンして使うことになりそうです。
駆動音の計測結果
- | ||
待機中 | 38.7dB | ほぼ無音 |
軽作業時 | 39.3dB | 耳を近づけるとファンの回転音がわずかに聞こえる |
高負荷時(CINEBENCH) | 52dB前後 | 排気音が大きく聞こえる。置き場所によっては多少小さくなるものの、音はかなり目立つ |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dBA前後 | - |
USBファンを使った強制冷却について
GEEKOM NUC AE7が天板が外れるので、外した部分にUSBファンを設置して、内部を強制的に冷やしてみました。その際のCPU温度・CPU消費電力の推移が下のグラフです。平均温度は92度から91.7度にまで下がりましたが、個人的にはあまり効果がないように感じました。
しかしグラフをよく見ると、消費電力の平均値が微妙に上がっていることがわかります。通常時は平均45Wあたりでしたが、ファンによる強制冷却時は50W程度でした。もしかすると、そのぶん性能が向上しているのかもしれません。
そこでファンのあり/なしを切り替えてCPUベンチマークを行なったところ、ファンありのほうがスコアは上でした。しかしその差はわずか2%程度で、誤差のようなものでしかありません。今回のUSBファンによる強制冷却については、気休め程度と考えていいでしょう。
ファンの有無によるCPU性能の違い(CINEBENCH R23マルチ)
ファンなし | ファンあり | |
---|---|---|
1回目 | 13795 | 14385 |
2回目 | 14125 | 14473 |
3回目 | 14095 | 14156 |
平均 | 14005 | 14338 |
考察とまとめ
大手メーカー製PCよりも高コスパ
ベンチマーク結果はなかなか優秀です。これだけ小さい筐体でありながら、デスクトップPC向けCore i5を搭載したスタンダードデスクトップPCよりも優れたベンチマークスコアが出ています。値段もそれほど変わらない場合もありますし、コスパ優先ならこれでいいんじゃないでしょうか。大手メーカーほどの有償サポートや安心感はありませんが、その点が気にならない人にはいいと思います。
音の大きさが気にならないならアリ
ただ個人的には、駆動音の大きさが気になりました。うるさくて仕方がないというほどではないものの、常時聞こえるとストレスを感じる人もいるかもしれません。設置場所によっては多少軽減されるものの、ある程度の大きさはあると考えてください。
ただこの音の大きさは、本体内部をしっかり冷やしている結果と言えるでしょう。またCPU温度は上がりすぎないように調整されていますし、SSDの熱は底面カバーをも使って対策されています。こういった対策がちゃんと施されている点には好感が持てます。
クーポンで割引中
下記のクーポンを利用すると公式サイトで5000円、アマゾンでは5%値引きされます。クーポンの有効期間は8/10まで。
公式サイト:AE7KMMB5000
アマゾン:AE7KMMB5off