
製品貸出:GMKtec
GMKtecのEVO-T1は、インテルのハイエンドCPU「Core Ultra 9 285H」を搭載した高性能ミニPCです。最大の特徴は、3基のNVMe SSDスロットとeGPU接続用のOculinkポートを備えた、コンパクトタイプとしては高い拡張性。将来のクリエイティブ作業からゲーミングまでを見据えた、ハイエンドミニPCを検討している人に向いています。

GMKtec EVO-T1

使用イメージ
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、外観や性能、実際の使い心地などをレビューします。

おことわり
このレビュー記事では、メーカー提供品を1週間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
スペック
発売日 | 2025年8月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | Core Ultra 9 285H(16コア、16スレッド) |
NPU性能 | 13 TOPS |
メモリー | DDR5-5600 64 / 64GB ※最大128GB |
SSD | 1 / 2TB M.2 PCIe 4.0×4 SSD |
グラフィックス | Intel Arc 140T(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.2、有線LAN(2.5Gb)×2 |
インターフェース | USB4×1、USB3.2 Gen2 Type-C(PD/DP)×1、USB3.2 Gen2 Type-A×3、USB2.0×2、HDMI×1、DisplayPort×1、Oculink、有線LAN×2、ヘッドホン端子 |
スロット | M.2スロット×4(ストレージ用×3、Wi-Fi用×1) |
付属品 | HDMIケーブル、電源アダプターなど |
サイズ | 幅154×奥行き151×高さ73.6mm(約1.71L) |
重量 | 約910g |
Windowsのラインセンス
テスト機では、個人利用が可能なOEMライセンスのWindows 11 Proが使われていました。日本国内(大手量販店 / アマゾン / 楽天など)で入手できるGMKtec製品については、Windowsのライセンスについて心配する必要はないと思います。

ライセンスのチェック結果
技適マークについて
無線通信機器に必要な技適マークは、本体底面部に記されています。

EVO-T1の技適マーク
上記番号は「総務省電波利用ホームページ」に登録されてはいるものの、「型式または名称」の項目に「T1」は登録されていませんでした。ただし検索結果はタイミングによっては表示されないことがあり、後日表示される可能性があります。
関連リンク
PSEマークについて
電源アダプターには「電気用品安全法」の基準に適合していることを表わすPSEマークがプリントされています。ただし届出事業者名は「株式会社hatano」という会社で、もしかすると登録を代行した会社名かもしれません。電源アダプターについては、別会社の製品を使っていると思われます。

電源アダプターにPSEマークを確認
システムのフルスキャン結果
検証前にWindows Defenderのフルスキャンを実施し、検知可能な脅威が存在しないことを確認しています。

Windows Defenderのフルスキャン結果
パッケージ

EVO-T1のパッケージ。いつものGMKtec製品よりもかなり大型です

箱の中身

VESA対応ディスプレイに設置するための取り付けマウンタ

付属のHDMIケーブル

電源アダプターは148.2W(19V/7.8A)の丸口タイプ
外観
高級感のあるデザイン
EVO-T1の外観は、非常に特徴的です。ブラックとブロンズゴールドの2色構成で、見た目は高級感のある仕上がり。ブロンズゴールドの部分はアルミ製で、樹脂製の本体とは別のパーツとして独立しています。おそらくデザイン性の向上と、空冷ファンからの保護を目的としたものでしょう。もしかするとエアフローの部分で多少の影響はあるかもしれませんが、その効果は限定的だと思います。

GMKtec EVO-T1の外観

ブロンズゴールドの部分はアルミ製の別パーツ。別パーツを使うことで、浮遊感のあるデザインを実現しています

電源を入れると天面側の空冷ファンのLEDが点灯しますが、アルミカバーで覆われているので見た目の変化はほとんどありません
ミニPCとしては大きめ
EVO-T1は製品カテゴリーとしてはミニPCではあるものの、一般的なミニPCと比べてだいぶ大きめです。コンパクトな激安タイプと比べると、体積比では3倍以上もあります。とは言え普通のデスクトップPCと比べればだいぶコンパクト。デスクに配置すれば、大きさが気になることはないでしょう。
ミニPCのサイズ比較
機種名 | サイズ | 体積 |
---|---|---|
GMKtec EVO-X2(Ryzen AI Max+ 395) | 193 × 185.8 × 77 mm | 約2.76L |
GMKtec EVO-T1 | 154 × 151 × 73.6 mm | 約1.71L |
GEEKOM A9 MAX(Ryzen AI 9 HX 370) | 135 × 132 × 46.9 mm | 約0.84L |
GMKtec EVO-X1(Ryzen AI 9 HX 370) | 110 × 107 × 68 mm | 約0.8L |
Mac mini 2024(M4) | 127 × 127 × 50 mm | 約0.8L |
GEEKOM AIR12(Intel N150) | 117 × 112 × 34.2 mm | 約0.45L |

サイズは幅154×奥行き151×高さ73.6mm

縦向きにも設置すれば、設置面積はだいぶ小さくすみます

手で持つとそれなりの大きさと重さを感じます

底面部のゴム足を含めた高さは78.5mm

だいぶ厚みを感じます

左からM4 Mac mini(0.8L)、EVO-T1(1.71L)、GEEKOM AIR12(0.45L)。設置面積は小さいものの、筐体サイズは一般的なミニPCよりもだいぶ大きめ

スマホ(Geegle Pixel 10 Pro XL)とのサイズ比較

設置イメージ
インターフェース構成
端子類は十分な構成
周辺機器用のインターフェースは数も種類も豊富です。Type-CがUSB4を2ポートではなく、USB4とUSB 3.2 Gen2の組み合わせなのは、製造コストの上昇を考慮した結果でしょう。eGPU接続用のOculinkとNVMe対応M.2スロット3基を用意することで高速な転送手段はある程度担保されたと判断し、USB4を1ポートに抑えていると思われます。
ちなみに前面のUSB Type-Aにサンディスク製のUSBメモリーとダイソー製ワイヤレスマウスのUSBレシーバーを接続するとマウスの動きが極端に遅くなる症状に遭遇しました。これがPC本体側によるものなのか、USB機器側によるものなのかは不明です。

前面には左からリセットボタン、電源ボタン、USB3.2 Type-A✕2、USB3.2 Gen2 Type-C、ヘッドホン端子

背面は電源コネクター、ヘッドホン端子、HDMI、DisplayPort、USB4、Oculink、USB2.0✕2、2.5Gb有線LAN✕2

右側面

左側面
Type-C端子は映像出力とデータ通信用
前面のUSB3.2 Gen2 Type-Cと背面のUSB4は、データ通信と映像出力に加え、USB PDにも対応しています。ただし、このUSB PD機能の利用には注意が必要です。
付属のACアダプターが148.2Wという高出力であることからわかるように、EVO-T1は高い電力を要求します。そのため、一般的に広く出回っているUSB PD充電器(30~100W)では電力不足で駆動させることはできません。
仮に140W以上の高出力なPD充電器を用意した場合でも、PC側との相性や電力供給のネゴシエーションがうまくいかず、正常に動作しない可能性があります。試しに筆者手持ちの140W充電器(Anker 717 Charger)を使ってみましたが、EVO-T1を起動させることができませんでした。
結論として、EVO-T1をUSB PDで駆動させることは想定せず、付属の電源アダプターを使用するのが賢明です。

PD 140W充電器(Anker 717 Charger)と240W対応Type-Cケーブルを使ってみましたが、起動しませんでした
改造・パーツ交換について
本体の分解方法
EVO-T1は、カバーを外すことでメモリーやSSDの交換・増設を行なえます。ふたつのカバーを外す必要があるのでちょっと手間がかかりますが、作業自体はそれほど難しくはありません。

まずは底面部の四隅に設置された突起部分を外します

突起を手で外せない場合は、ゴムをはがしてからドライバーを使えばOK

カバーを取り外した状態

さらに左右側面のネジを外します

本体カバーを外した状態

カバーとマザーボードがケーブルでつながっているので、引きちぎらないように注意しましょう

マザーボード全体

マザーボード四隅のネジを外し、インターフェース部分のシールをはがすと、マザーボードを取り外せます。アンテナ線を引きちぎらないよう注意
メモリーの増設方法
メモリーの規格はDDR5-5600 SO-DIMMで、最大128GBまで対応しています。

メモリースロットは2基。対応メモリーはDDR5-5600で最大容量は128GB

テスト機ではADATAの32GBメモリー✕2が使われていました

筆者手持ちの64GB✕2に交換

128GBでの動作を確認
SSDの増設・換装
EVO-T1は、3基のストレージ用M.2スロットを用意しています。すべてNVMe PCIe 4.0 x4で、各スロットの最大容量は8TB(合計最大24TB)。普通に使うぶんには、空きスロットに追加すればいいだけなので比較的簡単です。

PCIe 4.0 x4 Type-2280のM.2スロットを3基用意(うち空きは2基)
Wi-Fiまわりなど

Wi-FiカードはIntel AX201NGW

ボタン電池はマザーボードの裏側
エアフローについて
EVO-T1のエアフロー(冷却用の空気の流れ)は、天面&底面吸気の背面排気です。背面のケーブルで排気口をふさがないよう注意してください。

天面側の空冷ファンは、メモリーやSSDの冷却用

CPU冷却用のファンは底面部。ホコリを取るなどのメンテナンスはアルミカバーを外すだけで、比較的簡単です

背面の排気口。ケーブル等でふさがないようにしましょう
ベンチマーク結果
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、設定した上でテストを行なっています。また各テストはUEFI(BIOS設定)画面からパフォーマンス設定を「Quiet」(静音設定)と「Balance」(標準)、「Performance」(高出力設定)、に切り替えて実施しました。
電力設定
項目名 | 概要 | PL1 / PL2 |
---|---|---|
Quiet | 性能を抑えることで駆動音を低減する。消費電力が低い | 45W / 45W |
Balance ※標準 | 性能と静音性のバランスを考慮したモード | 54W / 54W |
Performance | もっとも高性能だが騒音も大きい | 70W / 80W |
ちなみにEVO-T1本体には「FAN-MODE」ボタンが用意されています。名称から察するにファンの強弱でパフォーマンスを調整できるのだと思いますが、今回はソフトウェア的な不具合が生じて一度クリーンインストールを行なったため、ボタンは利用しませんでした。

「FAN-MODE」と書かれたボタンがあるのですが、今回は使用しませんでした
補足:BIOS画面の開き方
電源オン直後にキーボードの「ESC」キーを押すと(連打すると確実)、UEFI(BIOS設定)画面が表示されます。

EVO-T1のUEFI(BIOS設定)画面
パフォーマンスの設定

「Main」タブの「Power Mode Select」でモードを変更後、状態を保存して再起動することでパフォーマンス設定を変更できます
メモリーの割り当てについて
EVO-T1では、標準で64GBまたは96GBのメモリーが搭載されています。今回試用したのは64GBメモリーモデルで、標準では64GB中63.5GBがシステムメモリーに割り当てられていました。

64GBメモリーのうち63.5GBがシステムに割り当てられており、専用ビデオメモリーはありません
UEFI(BIOS設定画面)では、メモリーの一部を専用GPUメモリーに割り当てることが可能です。ただし割り当てられるのは最大32GBまで。システムメモリーが128GBあっても、32GBより大きくすることはできませんでした。

「Adovanced」タブの「System Agent(SA) Configuration」→「Graphics Configuration」→「Igfx Gsm2」で専用ビデオメモリーを最大32GBまで割り当てられます

128GBメモリーに増設しても、専用GPUメモリーは最大32GBまで
統計データとの比較
※標準の「Balance」で計測
総合性能ではギリギリでハイエンド
ベンチマークテスト「PassMark PerformanceTest」の総合スコアを統計データと比較すると、上位「74パーセンタイル」とのこと。ゲーミングPCやモバイルノートPCなどPC全体で見た場合、EVO-T1の位置づけギリギリハイエンドクラスといったところでしょう。

総合性能では「ギリギリではハイエンドクラス」
CPU性能では「上の中」
CPU性能だけで見ると「87パーセンタイル」と、高めの結果です。ゲーミングPCやクリエイター向けPCなどの高性能機種を含めた統計でも、上位クラスに位置します。

CPU性能では「上の中」クラス
CPU性能は非常に優秀
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」の結果は以下のとおり。マルチコア性能ではRyzen AI 9 HX370にやや及びませんでしたが、シングルコア性能ではダントツの強さです。
ミニPCの性能比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
GEEKOM A9 MAX(Ryzen AI 9 HX370) |
2033
20823 |
GMKtec EVO-T1(Core Ultra 9 285H) ※Performance |
2171 20107
|
GMKtec EVO-T1(Core Ultra 9 285H) ※Balance |
2172 18282
|
GMKtec EVO-T1(Core Ultra 9 285H) ※Quiet |
2093 16832
|
GEEKOM A8 Max(Ryzen 9 8945HS) |
1830
16639 |
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
1788
16176 |
ACEMAGIC S3A(Ryzen 7 PRO 8845HS) |
1752
15217 |
ThinkCentre M75q Gen5(Ryzen 7 PRO 8700GE) |
1810
14957 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H) |
1558
13374 |
MINISFORUM UM773 Lite(Ryzen 7 7735HS) |
1571
12478 |
GMKtec NucBox G3 Plus(N150) |
793
2723 |
GMKtec NucBox G10(Ryzen 5 3500U) |
675
2190 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
高性能デスクトップPCにも匹敵する性能
EVO-T1で使われているCore Ultra 9 285Hは、本来はノートPC向けのCPUです。しかしCPUベンチマークテストでは、一般用途向けのスタンダードデスクトップPCで使われているCPUと同等クラスの結果が出ています。
デスクトップPC向けCPUとの比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core Ultra 7 265 |
49478
|
Core i7-14700 |
41157
|
GMKtec EVO-T1(Core Ultra 9 285H) ※Balance |
36423
|
Ryzen 7 7700X |
35622
|
Ryzen 7 8700G |
31626
|
Core Ultra 5 225 |
31176
|
Ryzen 5 7600X |
28320
|
Core i5-14400 |
25320
|
Ryzen 5 8600G |
25281
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のIntel Arc 140Tが使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストでは、ミニPCとしては非常に優秀な結果でした。AMD RyzenシリーズのRadeon系よりもベンチマークスコアが高く、ゲームやグラフィック処理の面での効果を期待できます。
ミニPCのグラフィックス性能
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050 Laptop平均値 |
4874
|
GMKtec EVO-T1(Arc 140T) ※Performance |
3950
|
GMKtec EVO-T1(Arc 140T) ※Balance |
3940
|
GMKtec EVO-T1(Arc 140T) ※Quiet |
3940
|
GTX 1060 Laptop平均値 |
3685
|
GEEKOM A9 MAX(Radeon 890M) |
3436
|
GMKtec NucBox K11(Radeon 780M) |
3036
|
MINISFORUM UM773 Lite(Radeon 680M) |
2363
|
NucBox M7(Radeon 680M) |
2358
|
Minisforum MS-01(Iris Xe) |
1779
|
NucBox M5 Plus(Radeon Vega) |
1104
|
NucBox G2 Plus(N150,Intel) |
431
|
※スコアは当サイト計測値、平均値はUL Solutionsのデータを参考にしました
ストレージ性能
テスト機では、ストレージにCrucial P3 Plus(CT1000P3PSSD8)が使われていました(出荷タイミングによっては別のSSDが使われている場合があります)。PCIe 4.0 x4としては最速クラスではないものの、実利用には十分な速度です。

テスト機の内蔵SSDのアクセス速度計測結果

内蔵SSDの詳細情報
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
テストではすべての項目で、目標値を大きく上回っています。なかでも特にコンテンツ制作のスコアが、ミニPCとしては優秀です。一般的な使い方であれば、問題なく利用できるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10646
10239
10720
7019
10414
10921
10699
10978 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10715
9038
10676
4645
8860
6840
10059
9761 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
11748
11832
12180
2751
8694
7429
9826
11280 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶NucBox G3 Plus | Intel N150 / 8GB / UHD |
---|---|
▶NucBox M7 | Ryzen 7 PRO 6850H / 16GB / Radeon |
▶GEEKOM GT13 Pro | Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe |
▶GEEKOM A8 Max | Ryzen 9 8945HS / 32GB / Radeon 780M |
▶GEEKOM A9 Max | Ryzen AI 9 HX 370 / 32GB / Radeon 890M |
クリエイティブ性能
「UL Procyon」は、世界的にも利用者が多く「デファクトスタンダード」とも言えるアドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測します。「PCMark 10」と比べて、より高度で実践的なテストを行なう点が特徴です。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Photo Editing | 「Photoshop」と「Lightroom Classic」を利用した、写真の加工・出力に関する総合評価 |
Video Editing | 「Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間からスコアが算出される |
テスト機とそのほかのミニPCの結果は、以下のグラフのとおりです。グラボを搭載したデスクトップPCには及ばないものの、ミニPCのなかでは非常に優秀だと思います。
クリエイティブ性能の比較
CPU | UL Procyon |
---|---|
ThinkCentre Neo Ultra(Core i7-14700, RTX4060) ※参考 |
7676
28145 |
GMKtec EVO-T1(Core Ultra 9 285H) ※Balance |
6264
9816
|
GEEKOM A9 Max(Ryzen AI 9 HX 370) |
7424
9669 |
GMKtec NucBox K11(Ryzen 9 8945HS) |
6401
9432 |
GMKtec NucBox K8 Plus(Ryzen 7 8845HS) |
6053
9484 |
GEEKOM A8 Max(Ryzen 9 8945HS) |
6557
9483 |
GMKtec NucBox M7(Ryzen 7 PRO 6850H, Radeon 680M) |
4614
7941 |
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS, Radeon 780M) |
5772
7195 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H, Iris Xe) |
4631
5491 |
※「Photo」はPhoto Editing、「Video」はVideo Editing。スコアは当サイトの実機計測結果
AI性能
推論性能
LM Studio(0.3.30)から「gpt-oss-20b」をロードして「ミニPCのメリットとデメリットを詳しく教えてください」と入力した際の出力結果は以下のグラフのとおり。「tok/sec(token per second)」が大きいほど、推論性能が高いことを表わします。
64GBメモリーと128GBメモリーの状態でテストを行ないましたが、結果に大きな差は現われませんでした。誤差の範囲と言えるでしょう。
推論性能
機種 | gpt-oss-20b token per second |
---|---|
GMKtec EVO-T1 64GB |
17.4
|
GMKtec EVO-T1 128GB(VRAM 32GB) |
16.9
|
GMKtec EVO-T1 128GB |
16.88
|
GEEKOM A9 Max |
14.34
|
IdeaPad Slim 5 Gen 10(Ryzen 7 8845HS / Radeon 780M / DDR5-5600 32GB) |
14.11
|
※スコアは当サイト計測値
比較機のスペック(ミニPC)
IdeaPad Slim 5 Gen 10 | Ryzen 7 8845HS / Radeon 780M / DDR5-5600 32GB |
---|---|
GEEKOM A9 Max | Ryzen AI 9 HX 370 / Radeon 890M / DDR5-5600 32GB |
画像生成性能
画像生成の検証には、UL Solutions「Procyon」の「AI Image Generation Benchmark」を利用しました。生成モデル「Stable Diffusion 1.5(FP16)」で512×512ドットの画像を出力するテストを行なっています。
1枚あたりの平均出力時間は18.99秒。デスクトップPC向けのGeForce RTX50シリーズでは1枚あたり2秒から数秒程度で出力できることを考えるとやや非力な気もしますが、内蔵GPUだけでこれほど動くのあれば健闘していると思います。
画像生成テストのスコア
検証機 | Procyon AI Image Generation Stable Diffusion 1.5(FP16) |
---|---|
GMKtec EVO-T1 |
329
|
GEEKOM A9 Max |
292
|
※スコアは当サイト計測値
画像1枚あたりの平均出力時間
検証機 | Procyon AI Image Generation Stable Diffusion 1.5(FP16) |
---|---|
GMKtec EVO-T1 |
18.99秒/枚
|
GEEKOM A9 Max |
21.37秒/枚
|
※スコアは当サイト計測値
より大きな1024×1024ドットの画像を生成する「Stable Diffusion XL(FP16)」のテストでは、1枚あたりの画像出力時間が約106秒と、だいぶ時間がかかっています。メモリーの一部を専用GPUメモリーに割り当てても、違いはありませんでした。大きな画像の出力については弱いものの、OCulinkやUSB4経由でeGPUを利用すれば、性能は大きく伸びるでしょう。
画像生成性能の比較
検証機 | Procyon AI Image Generation Stable Diffusion XL (FP16) |
---|---|
GMKtec EVO-T1 64GB |
354
|
GMKtec EVO-T1 64GB(VRAM32GB) |
354
|
GEEKOM A9 Max 32GB(VRAM16GB) |
294
|
※スコアは当サイト計測値
画像1枚あたりの平均出力時間
検証機 | Procyon AI Image Generation Stable Diffusion XL (FP16) |
---|---|
GMKtec EVO-T1 64GB |
105.91秒/枚
|
GMKtec EVO-T1 64GB(VRAM32GB) |
105.72秒/枚
|
GEEKOM A9 Max 32GB(VRAM16GB) |
21.21秒/枚
|
※スコアは当サイト計測値
ゲーム性能
※テストは電源モード「Balance」で行なっています
FF14ベンチ
FF14ベンチマークでは、ミニPCとしては非常に優秀なスコアを記録しました。標準画質で「平均ほぼ60 fps」は、内蔵グラフィックスにおけるひとつの「壁」を超えたと評していいでしょう。快適に遊べるかについては少々微妙なところもありますが、長年ベンチマークテストを行なってきたPCマニアとしては感慨深い結果です。
評価とフレームレート
フルHD 最低画質 | 8829(快適) 平均59.43 fps |
---|---|
フルHD 最高画質 | 4755(普通) 平均33.93 fps |
FF14ベンチの結果
機種 | FF14黄金のレガシーベンチマーク最高画質 |
---|---|
EVO-T1(Intel Arc 140T) ※Quiet |
4762
|
EVO-T1(Intel Arc 140T) ※Performance |
4759
|
EVO-T1(Intel Arc 140T) ※Balance |
4755
|
GEEKOM A9 Max(Radeon 890M) |
4299
|
NucBox K8 Plus(Radeon 780M) |
3923
|
NucBox K11(Radeon 780M) |
3898
|
GEEKOM A8 Max(Radeon 780M) |
3840
|
NucBox M7(Radeon 680M) |
3190
|
NucBox M5 Plus(Radeon Vega) |
1748
|
※スコアは当サイト計測値
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(やや軽い)
フレームレート
最低画質 | 概ね130 fps前後。ターゲットが多少粗く表示されるのが気にならないなら十分楽しめる |
---|---|
中画質 | 100 fps前後。普通に楽しめるレベル |
最高画質 | 数値的には60 fps前後だが、プレー中のカクつきが目立った |
サイバーパンク2077(超重い)
フレームレート
フレーム生成 | 最低画質 | ウルトラ画質 | レイトレ最高画質 |
---|---|---|---|
無効 | 45.91 fps | 30.51 fps | 5.87 fps |
有効 | 78.79 fps | 55.46 fps | 12.58 fps |
モンスターハンターワイルズ ベンチマーク(超重い)
フレームレート
フレーム生成 | 最低画質 | 中画質 |
---|---|---|
無効 | 9494(28.11 fps) | 7342(21.67 fps) |
有効 | 7702(45.67 fps) | 6127(36.06 fps) |
※最低画質はグラフィックスがとてもガビガビなのでおすすめしません。中画質から徐々に画質を下げるといいでしょう
マインクラフト 統合版(軽い)
フレームレート
標準画質 (フルスクリーン、チャンク50) |
フラットな地形では平均50~60fps程度。モブや構造物が増えると30fpsまで落ちる。スムーズでなくてもいいなら、なんとか遊べるレベル |
---|---|
ハイブランドビジュアルズ (フルスクリーン、チャンク16) |
フラットな地形では平均45fpsあたりまでいくものの、概ね30fps前後。動きはスムーズではないが、気にならないなら遊べるかも。高所から遠くのチャンクを読み込み際に30fpsを割ることもある |
熱と騒音について
※環境が変わると、結果が異なる場合があります
CPU温度はだいぶ高い
高負荷時におけるCPUの温度と消費電力のモニタリングデータは、以下のグラフのとおり。CPU温度は全体的に高めで、「Balance」時では平均84.8度、「Performance」時では平均98.7度、最大ではどちらも102度と出ています。「Quiet」時では平均79.3度 / 最大94度とやや抑えられていますが、それでもほかのミニPC(Ryzen系)の省電力設定と比べると温度は高めです。
センサーを確認すると、「Balance」時と「Performance」時でサーマルスロットリング(熱による性能低下)が発生していました。このあたりはインテルCPUの性質でもあり、ある程度は仕方がありません。極力風とおしのいい場所に設置して、内部に熱がこもらないよう心がけてください。
Core Ultra 9 285Hの概要
コア数 | 16コア(Pコア✕6+Eコア8+LP Eコア✕2) |
最大クロック | 5.4GHz(Pコア:5.4GHz, Eコア:4.5GHz, LP Eコア:2.5GHz) |
消費電力 | PBP:45W, MTP:115W |

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力、コアクロックの推移(パフォーマンス設定「Balance」時)

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力、コアクロックの推移(パフォーマンス設定「Performance」時)

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力、コアクロックの推移(パフォーマンス設定「Quiet」時)
モード別の平均値 / 最大値
Balance (PL1:54W/PL2:54W) |
Performance (PL1:70W/PL2:80W) |
Silent (PL1:45W/PL2:45W) |
|
---|---|---|---|
CPU温度 | 84.8度 / 102度 | 98.7度 / 102度 | 79.3度 / 94度 |
CPU消費電力 | 53.4W / 54.2W | 70.1W / 77W | 44.7W / 45.2W |
筐体温度は低い
高負荷時においても、本体の熱はほとんど感じられませんでした。ただし底面部の排気口からの温風で、背面がほんのり温まります。電源アダプターは少し温かい程度です。

高負荷時における筐体の表面温度と、排気口付近の温度

電源アダプターの表面温度
騒音はほどほど
騒音(空冷ファンのモーター音や排気口からの風切り音)は控えめですが、電源モードを「Performance」に設定するとけっこう大きく聞こえます。気になるようなら、置き場所を調整するといいでしょう。
駆動音の計測結果
Windows Update | 軽作業中 | 高負荷時 | |
電源オフ時 | 31.7dB | ||
Balance | 39dB(排気音がしっかり聞こえるが、うるさくはない) | 37~43dB(排気音がやや大きく聞こえることがときおりある) | 44dB(排気音は少し大きいが耳障りな音ではないので、普通にガマンできるレベル。静かな場所では気になるかも) |
Performance | 44dB(排気音が少し大きいが、短時間で静まる) | 38~45dB(排気音がやや大きく聞こえることがときおりある ) | 47dB(排気音がだいぶ大きく聞こえる。USB扇風機くらい) |
Quiet | 35.2dB(ファンのモーター音がわずかに聞こえる程度) | 35.5dB(ファンのモーター音がわずかに聞こえる程度。体感的には無音に近い) | 36.3dB(モーター音と排気音がわずかに聞こえる。体感的にはとても静か) |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dB前後 |
考察とまとめ
拡張性とグラフィックス性能の高さがポイント
GMKtec EVO-T1は、一般的なミニPCとは一線を画す拡張性を備えたユニークなモデルです。競合製品で広く採用されているAMDのRyzenシリーズではなく、インテルのCore Ultra 9 285Hを選んだ理由は、スペックやベンチマーク結果から感じ取ることができます。
最大のポイントは、CPUが提供するPCIeレーンの豊富さ(28レーン)にあるでしょう。これにより、3基のNVMe SSDスロットとeGPU接続用のOculinkポートという、高い拡張性を実現しています。ストレージやグラフィックス性能の将来的な強化を重視するユーザーのニーズに応えつつ、実用性とコストの両面でバランスの取れた構成です。
CPU性能はノートPC向けながら非常に高く、内蔵グラフィックスのIntel Arc 140Tもベンチマークテストでは良好な結果を示しました。ソフトウェアの互換性や安定性の面でインテル製CPUに信頼を置くユーザーにとっても安心感があります。
その一方で、高負荷時のCPU温度が高い点については、インテル製CPUでは仕方がないとは言え残念です。また筐体サイズもミニPCとしては大きく、設置に場所取ったり、見た目の面でそれなりの存在感があったりします。一般的なミニPCとは少し毛色が異なりますが、その尖ったコンセプト二共感できるのであれば、非常に面白い製品だと思います。
