通販でノートPCを買ったら、キーボードが残念仕様だった、なんて経験はないでしょうか。たとえばこんな風に。
リーズナブルな海外メーカー製ノートPCでは、配列にクセのある日本語キーボードが採用されていることがよくあります。キー同士が隣接していたり、一部のキーがやたら小さかったり、変なところに使わないキーがあったり、などなど。慣れればなんとか使えるようにはなりますが、そこそこの金額を払ったのになにも知らされないまま、違和感のあるキーボードの製品が送られてくれば、納得したくない気分の場合もあるでしょう。
そんな人はまず、HPのミドルレンジ以上の機種をチェックしてみてください。エントリークラスにはクセのある配列の機種もありますが、最近は中級クラス以上の機種だと標準的な日本語配列が採用されています(一部機種をのぞく)。
『HP ProBook 445 G11』も、標準的な日本語配列キーボードを採用する14インチノートPCです。価格と性能&機能のバランスを重視したミドルレンジ(中級)クラスのビジネス向けモデルで、個人向けモデルよりも高い堅牢性と手厚いサポートがポイント。文章をガッツリ入力したい人に向いています。
CPUはZen3+世代のRyzen 7035Uシリーズで、一般用途向けノートPCとしては上位クラスのパフォーマンスです。物理的にもセキュリティー的にも強固な上に、標準でWindows 11 Proを搭載。値段は11~13万円台あたりと特別安いわけではありませんが、性能と機能を考えれば十分納得できる金額だと思います。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。パソコンに安心感を求める人は、ぜひチェックしてみてください。
HP ProBook 445 G11
おことわり
このレビュー記事では、メーカー貸し出し機材を1週間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
スペック
発売日 | 2024年5月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
ディスプレイ | 14インチ、1920×1200(WUXGA)、非光沢、300nit |
CPU | Ryzen 5 7535U / Ryzen 7 7735U |
メモリー | 8 / 16GB DDR5-4800(スロット×2、最大32GB) |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 660M(Ryzen 5) / Radeon 680M(Ryzen 7)(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、有線LAN(1Gb)、4G LTE(オプション) |
インターフェース | USB Gen2 Type-C(PD/DP対応)×2、USB Type-A Gen1×2、HDMI2.1、ヘッドホン端子、nanoSIMスロット(LTE対応モデル) |
生体認証 | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅318.6×奥行き224.4×高さ10.9~17mm / 約1.44kg |
バッテリー | 最大 約10時間(JEITA3.0) |
価格(記事執筆時)
スペック | 価格 |
---|---|
Ryzen 5 7535U / 8GB / 256GB | 10万8689円 |
Ryzen 5 7535U / 16GB / 512GB | 11万9249円 |
Ryzen 7 7735U / 16GB / 512GB | 13万5089円 |
Ryzen 5 7535U / 16GB / 512GB / LTE | 18万7889円 |
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外観
HP ProBook 445 G11の見た目は、普通のノートPCといった印象です。特別薄いわけでも小さいわけでもなく、シルバーの筐体はよくある雰囲気といった印象を受けます。
しかしビジネス向けノートPCは一般的に黒くてゴツいものが多いことを考えると、軽やかなスタンダードデザインは、それだけでも十分満足できるものかもしれません。いい意味で標準的です。
サイズと重量
HP ProBook 445 G11は、14インチのややコンパクトなディスプレイを搭載しています。一般的な15.6インチタイプよりも小さいため、設置面積が小さくてすむ点がポイントです。
重さは公称値で約1.44kg。持ち運べない重さではないものの、モバイル利用に快適というほどでもありません。これくらいの重さならガマンできるなら、外出先への持ち歩きに利用するのもアリでしょう。
ディスプレイ
画面は、ミドルレンジクラスの14インチとしては一般的なスペックです。ただ格安モデルで使われているような、低品質のパネルではないと思います。高級機ほどの鮮やかさはありませんが、文字中心の作業向けであれば問題ないはずです。
キーボード
海外メーカー製の14インチノートPCで、キーボードの日本語配列がちゃんとしているものはなかなかありません。筆者が把握する限りでは、HPのミドルレンジ~ハイエンドクラスだけです。日本語キーボードで違和感なく入力したいなら、HP製品を選ぶといいでしょう。
ただし評価が高いのは配列についてで、全体的な品質が高いわけではありません。タイプ感や仕上がりについては標準レベルです。
端子類
端子類は十分な構成です。有線LANやHDMIなども用意されており、据え置き用としても問題ありません。メモリーカードスロットやThunderbolt 4には非対応ですが、ミドルレンジクラスであればこんなところでしょう。
堅牢性とセキュリティー
MIL-STD-810Hクリアーの頑丈設計
HP ProBook 445 G11は、米国国防総省制定の耐久基準「MIL-STD-810H」(通称「MILスペック」)の19項目の試験をクリアーしているとのこと。試験のl内容は、以下のとおり。
これだけだとちょっとわかりづらいのですが、たとえばほかのメーカーだと試験項目が8~10種類だけだったりするので、そのぶん安心感はあるかなと思います。
またさらに「HP Total Test Process」と呼ばれる独自の試験も行なわれています。試験内容は電気・通信・電力・信頼性・熱・音響・性能、落下や温度変化などなど。満員電車での圧力を想定した圧縮荷重試験なども行なわれています。
HP製品で堅牢性(壊れにくさ)がアピールされているイメージはないのですが、テストを自体はしっかり行なわれているようです。それも一部では、他社製品よりも厳しいテスト内容かもしれません。某社なら安心とか◯◯じゃなきゃダメなんて声もありますが、これだけの試験が行なわれているのであれば、安心して使えるのではないでしょうか。
充実のセキュリティー機能
HP ProBook 445 G11はHPのセキュリティー保護機能「HP Wolf Security for Business」に対応しています。BIOS / ファームウェアレベルからメールやWebサイトへのアクセスまで、さまざまな場面で悪意ある攻撃からパソコンを保護することが可能です。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 7735U(Zen3+、8コア16スレッド) |
---|---|
メモリー | DDR5-4800 16GB(8GB×2) |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon 680M(RDNA2) ※CPU内蔵 |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「バランス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています。専用ソフトなどを使ったパフォーマンス調整は行なっていません。
CPU性能
CPUとしては、AMD Zen3+世代のRyzen 5 7535UまたはRyzen 7 7735Uが使われています。世代的には最新ではないものの、現在の水準でも十分高性能です。
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」を試したところ、優秀な結果が出ました。最新世代のハイエンドCPUには及ばないものの、十分な結果です。電源接続時とバッテリー駆動時では、マルチコア性能については大きな差は出ていません。ただしシングルコア性能では、17%程度落ち込みました。全体的に見て問題のない結果ですが、Ryzen 7000シリーズの弱点であるシングル性能の弱さがちょっと出ているかなという印象です。
最近のノートPCとの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
HP ProBook 465 G11(Ryzen 7 7735U) 電源接続時 |
1532
10132 |
HP ProBook 465 G11(Ryzen 7 7735U) バッテリー接続時 |
1272
10254 |
Yoga 7i Gen 9(Core Ultra 7 155H) |
1751
8704 |
HP 245 G10(Ryzen 7 7730U) |
1443
9521 |
ThinkBook 16(Ryzen 5 7530U) |
1458
7683 |
Inspiron 14 5445(Ryzen 7 8840U) |
1707
10666 |
HP Pavilion Aero 13-bg(Ryzen 5 8640U) |
1677
9317 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果
CPU性能を計測する「PassMark CPU Mark」の統計データを参照すると、性能的には上位グループに位置していることがわかります。「最強レベルではないものの、それでも非常に優秀」と考えていいでしょう。電源駆動時とバッテリー駆動時の性能差もわずかです。
ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7840U |
24988
|
Core Ultra 7 155H |
24944
|
Ryzen 7 8840U |
24588
|
テスト機(Ryzen 7 7735U) 電源接続時 |
21744
|
Core Ultra 5 125H |
21813
|
Ryzen 7 7735U |
21341
|
テスト機(Ryzen 7 7735U) バッテリー駆動時 |
20683
|
Ryzen 5 8640U |
19266
|
Ryzen 7 7730U |
18651
|
Core Ultra 5 125U |
17935
|
Core 5 120U |
17471
|
Core Ultra 7 155U |
16624
|
Ryzen 5 7535U |
16371
|
Ryzen 5 7530U |
16190
|
Core 7 150U |
13990
|
Core 3 100U |
11885
|
Ryzen 3 7330U |
10874
|
Ryzen 5 7520U |
9301
|
Ryzen 3 7320U |
9001
|
N100 |
5549
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon 660M(Ryzen 5)またはRadeon 680M(Ryzen 7)が使われています。RDNA2世代で旧世代のCPUよりもグラフィックス性能が向上している点がポイント。ただしAMD製品に関して言えば現在はRDNA3に対応するCPUもリリースされており、現時点で最上位クラスというわけではありません。
3Dベンチマークテストの結果は以下のとおり。同じGPUの平均値を下回る結果でした。このくらいになると誤差レベルではなく、なんらかの制限がかかっていると思われます。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050 |
4874
|
Intel Arc Graphics(Meteor Lake) |
3759
|
GTX 1650 |
3444
|
Radeon 780M(RDNA3) |
2727
|
Radeon 680M(RDNA2) |
2350
|
Radeon 760M(RDNA3) |
2282
|
テスト機(Radeon 680M) |
1865
|
Iris Xe |
1522
|
Radeon 660M(RDNA2) |
1189
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値
とは言え、今回のHP ProBook 445 G11はビジネス向けの機種であり、ゲームや動画編集などを行なわないのであれば特に問題はありません。逆に言えば、ゲームや動画編集なども行ないたいのであれば、もっとグラフィックス性能が高い機種を選ぶといいでしょう。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
今回は電源接続時とバッテリー駆動時とで、同じテストを2回行ないました。どちらも目標値は大きく上回っており、一般的な作業であれば快適に利用できるでしょう。ただしバッテリー駆動時は電源接続時よりもパフォーマンスが下がります。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials 目標値:4100 |
9352
7754
11277
9902
9961
10649
10100 |
Productivity 目標値:4500 |
9213
6224
8283
9336
9878
11053
9964 |
Digital Contents Creation 目標値:3450 |
7209
6608
8866
5781
4833
8243
7374 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
Yoga 7i Gen 9 | Core Ultra 7 155H / 16GB / Intel Arc |
---|---|
HP 245 G10 | Ryzen 7 7730U / 16GB / Radeon |
ThinkBook 16 Gen 6 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
Inspiron 14 5445 | Ryzen 7 8840U / 16GB / Radeon 780M |
HP Pavilion Aero 13-bg | Ryzen 5 8640U / 16GB / Radeon 760M |
バッテリー性能
バッテリーの駆動時間は、公称値で最大 約10時間(JEITA3.0)とされています。しかしこれは消費電力を抑えた状態の結果で、実際の利用を想定した測定結果ではありません。実際の利用では、駆動時間が短くなりがちです。
そこで各種バッテリーベンチマークテストを行なったところ、概ね11時間前後でバッテリー切れとなりました。画面を明るくして重い作業をガッツリ行なえばもっと短くなるはずですが、これだけもてば十分な結果だと思います。
バッテリー駆動時間の計測結果(Ryzen 7モデル)
テスト方法 | 駆動時間 |
---|---|
※公称値 | 最大 約10時間(JEITA3.0) / 最大 約14時間(MobileMark 25) |
PCMark 10 Modern Office (ビジネス作業) | 10時間44分 |
PCMark 10 Video (動画再生) | 11時間39分 |
50%充電までにかかった時間 | 37分 |
フル充電までにかかった時間 | 1時間55分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
他機種との比較
同じHPから14インチのビジネス向けモデルとして、「HP 245 G10」が販売されています。HP ProBook 445 G11がミドルレンジクラスであるのに対して、HP 245 G10はよりランク低いエントリー(入門)向け。どちらも用途的には同じなので、どちらを購入するべきか迷う人もいるでしょう。
関連リンク
サイズは似ていても、使われているパーツの種類や仕上がりがまったく異なります。ここまで異なるのは、ちょっと珍しいくらいです。そのぶん値段の差もありますが、これくらいであれば値段が高いHP ProBook 445 G11を選んでもいいのではないでしょうか。個人的には、HP ProBook 445 G11のほうが満足度が高いと思います。
HP ProBook 445 G11とHP 245 G10の比較
HP ProBook 445 G11 | HP 245 G10 |
---|---|
Windows 11 Pro | Windows 11 Home |
14インチ1920×1200ドット | 14インチ1920×1080ドット |
Ryzen 5 7535U Ryzen 7 7735U |
Ryzen 5 7530U Ryzen 7 7730U |
DDR5-4800 8 / 16GB | DDR4-3200 8 / 16GB |
256GB SSD または 512GB SSD | |
512GB SSD | 256GB SSD または 512GB SSD |
Type-C PD/DP対応 | Type-C データ通信のみ |
最大9時間18分(JEITA3.0) | 最大14時間48分(JEITA2.0) |
アルミ製ボディ ※一部プラスチック |
プラスチック製ボディ |
違和感のない日本語配列 | キーボード右端に特殊キーあり |
約1.44kg | 約1.36kg |
最厚部 17mm | 最薄部 17.9mm |
11~13.7万円 | 11.5万円(Ryzen 7) ※在庫処分価格 |
考察とまとめ
まともな日本語配列
個人的に最大の魅力は、違和感のない「まともな日本語配列」を採用している点だと思います。
国内大手メーカーの製品であれば標準的な配列の機種はあるものの、値段の高さがネックです。そこそこリーズナブルな海外メーカー製でちゃんとした日本語配列のキーボードを実現しているのは、HP以外にはなかなかないでしょう。デルのLatitudeシリーズもわりとまともですが、キーボード内にある電源ボタンを軽く押すとスリープ状態へ移行したり、安い機種はかなりチープだったりするのでやや難あり。ThinkPadシリーズは20万円以上もするのに、サイズの小さなキーを直そうともしません。ビジネス向けモデルで日本語キーボードを重視するなら、まずはHPの製品をチェックしてみてください。
セキュリティー機能がお得
HP ProBookシリーズはハードウェアレベルのセキュリティー保護機能に加え、セキュリティー対策ソフトのようなマルウェアやメール、Webページのスキャン・隔離機能が付いています。セキュリティー対策ソフトは別に買うとけっこうな値段がしますし、これらを更新なく使えるのは大きなメリットではないでしょうか。なにより某ソフトのように、しつこい通知が何度も表示されることがないのは好印象です。
最近はWindows Defenderだけでも十分という声もあり実際のところ筆者もそう思うのですが、なにか起きたときに「ちゃんと標準以上の対策をしています」と言える状態は大切だと思います。追加料金なしで一式そろえられるのは、HP製ビジネスPCの強みだと言えるでしょう。
トータルの品質で見ればお得
4%オフクーポン利用時の価格は、Ryzen 5 7535U + 16GBで約12万円、Ryzen 7 7735U+16GBで13.5万円。スペックと値段だけで見れば、特別安いわけでもありません。
しかしセキュリティー機能 / ソフトが付いている点やWindowsのエディションがHomeではなくPro(アップグレード料金は1万円以上)である点を考えれば、値段的には悪くないでしょう。そしてなにより、まともな日本語配列を採用しているビジネス向けノートPCのなかでは、圧倒的にリーズナブルです。キーボードの(タイプ感ではなく)配列を重視したい人は、ぜひチェックしてみてください。
HP ProBook 445 G11