機材貸し出し:株式会社日本HP
日本HPの「HP Stream 11」は、税込価格2万7864円で購入できる格安なノートパソコンです。価格が安いぶんパソコンとしての基本性能はそれほど高くはないため、メールのやり取りやネットでの調べ物、文書の作成などが主な使い道となるでしょう。しかしたまには息抜きでゲームを遊びたいもの。特に最近人気の「マインクラフト」を試してみたいと思っている人は多いのではないでしょうか。そこで今回はメーカーからお借りした「HP Stream 11-d012TU ブルーモデル」を使って、実際にマインクラフトがどれだけ快適にプレーできるのかを検証しました。
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必要環境は満たしているけど、推奨環境には届かず
マインクラフトのサポートサイトでは、とりあえず起動するための必要環境と、快適なプレーが見込める推奨環境が公開されています。それぞれのスペックは以下のとおりです。
マインクラフトのシステム要件 | ||
必要環境 | 推奨環境 | |
---|---|---|
CPU | Intel Pentium DシリーズまたはAMD Athlon 64 (K8)シリーズ以上 | Intel Core i3シリーズまたはAMD Athlon II (K10) 以上 |
メモリー | 2GB | 4GB |
GPU(内蔵の場合) | Intel HD GraphicsシリーズまたはAMD Radeon HD Graphicsシリーズ、OpenGL 2.1対応 | – |
GPU(外付けの場合) | NVIDIA GeForce 9600 GTまたはAMD Radeon HD 2400以上、OpenGL 3.1対応 | GeForce 200シリーズまたはAMD Radeon HD 5000シリーズ(内蔵GPUを除く)以上、OpenGL 3.3対応 |
ストレージ容量 | 200MB | 1GB |
Javaランタイム | Java 6 Release 45 | Java 8最新版ランタイム |
最低限の動作に必要なCPUとして指定されているPentium Dシリーズは、2005~2007年にかけてリリースされたデスクトップ向けのデュアルコアCPUです。もっとも性能が高い最上位モデルはPentium D 960(3.40GHz)で、2006年に登場しました。
さまざまなCPUのベンチマーク結果を掲載している「PassMark CPU Benchmarks」によると、Pentium D 960のスコアは「836」とのこと。当サイトでHP Stream 11のベンチマークを行なったところ、同じテストで「1071」という結果が出ています。またCeleron N2840の内蔵GPUであるIntel HD Graphicsは第7世代で、OpenGL4.0にまで対応しています。必要環境については軽々とクリアーしていると言っていいでしょう。
では、推奨環境についてはどうでしょうか。快適に遊ぶために必要なCPUは、Core i3シリーズかAMD Athlon II (K10) 以上とのこと。まずCore i3シリーズのなかで一番最初に登場し、もっとも性能が低いのは2010年に発売されたCore i3-530(2.93GHz)です。もう一方のAMD Athlon II (K10)とは、AMDのK10アーキテクチャーで製造されたAthlon IIシリーズという意味で、このシリーズでもっとも性能が低いのは2011年に発売されたデュアルコアのAthlon II X2 245e(2.9GHz)です。これらのCPUと比べると、HP Stream 11が採用しているCeleron N2840は性能がだいぶ劣っていることがわかります。
また推奨環境では外付けGPUの使用を前提としており、内蔵GPUでのプレーは推奨されていません。さらにメモリー容量も4GBとされていますが、HP Stream 11では半分の2GBとなっています。このことから、HP Stream 11は最低限プレーできる性能ではあるけれど、快適にプレーできるレベルではないことがわかります。
またマインクラフトはOpenGLと呼ばれる3D機能(API)を利用しますが、その性能もあまり高くはありません。OpenGL性能を計測できる「CINEBENCH」の結果を見ると、HP Stream 11では6FPS未満となっています。最低でも30FPSは欲しいところですが、その1/5程度の性能しかないということになります。
ちなみに「FPS」とは画面がどれだけスムーズに動くかを表わす目安で、この数値が高いほどゲームを快適にプレーできることを表わします。どの程度が「快適」なのかは人によって異なりますが、筆者としてはFPSの目安を以下のように考えています。
FPSの目安(個人的な目安) | ||
60以上 | ストレスなく快適にプレーできる | |
---|---|---|
59~45 | 処理の重い場面ではやや動きが遅くなるが、全体的には快適 | |
44~30 | 問題なくプレーできるレベル。ときおりカクつくことがある | |
29~15 | カクつきが見られるが、そこそこ遊べる | |
14以下 | 動きがかなり重くなり、ストレスを感じるレベル |
ただしゲームを実際にプレーしてみると、案外普通に遊べることも少なくありません。スペックやベンチマーク上では厳しいという判断ですが、実際のところはどうなのでしょうか。そこでHP Stream 11でマインクラフトをプレーしてみました。
標準のビデオ設定で20~30FPS前後
ここからは、実際にマインクラフトを動かしてみた結果を紹介します。なおほぼ初期状態でプレーしていますので、設定を変えると結果が異なる場合があります。
テスト時のプレー環境
- マインクラフトのバージョン:1.8.5
- Javaランタイム:1.8.0_25(64bit)
- ビデオ設定:初期設定のまま
- MOD:なし(いわゆる「バニラ」と呼ばれる状態)
- 画面サイズ:854×480ドットのウィンドウモード
スタート直後はブロックの読み込みでFPSがガクッと下がりますが、その後は徐々に上昇していきます。HP Stream 11では始め9FPSまで落ち込みましたが、その後は20~30FPS前後で落ち着きました。前述のFPSの目安で言えば「そこそこ遊べる」レベルです。ただし、ところどころでカクつきが見られます。
標準設定ではchunk(表示範囲を表わす目安)は12に設定されており、比較的遠くの景色まで表示されます。そのため、場所によってはブロックの描画が追いつかないこともありました。
ビデオ設定を変えるとFPSは微増
標準のビデオ設定で遊べないことはないのですが、表示がカクつくことが何度かあり、ちょっと厳しいかなという感じです。クリエイティブモードでは高い場所から落ちてもダメージを受けませんが、サバイバルモードではカクつきが原因で足を踏み外したりすると、取り返しのつかないことにもなりかねません。そこでビデオ設定を変更して、できるだけ動きが軽くなるように調整してみました。
ビデオ設定を調整することで多少は軽くなるかと思ったのですが、実際には5FPS程度向上する程度で、それほど改善されませんでした。建物を複数立てたり土木工事で地形を変えたりすると負荷が高くなりますので、やり込むほどプレーが厳しくなってくるものと思われます。
海上に地面を作ってなにもない場所(つまりCPUへの負荷が低い状況)で村人を配置してみたところ、10~20人程度では25FPS前後でしたが、30人を超えたあたりからFPSがガクッと低下し始めます。50人程度配置したところ、10FPSまで落ち込む場面もありました。村が発展するほど、処理が重くなってくるようです。
大量の爆弾を使ったTNTベンチを実行
続いては1万個の爆弾を使ったTNTベンチマークです。チート機能のコマンドを使って1万個のTNTを配置し、いっせいに爆発させてみました。
TNTの大量爆発は高性能なパソコンでも、FPSがひと桁台にまで落ち込むことがあります。とりあえずフリーズしないで動いただけでも良し、というところでしょうか。
マインクラフトのプレーは相当厳しい
とりあえずHP Stream 11でマインクラフトを動かすことはできましたが、地形が複雑化したりキャラクターが増えるとFPSが大きく低下しました。ガッツリとやり込むのは厳しいと言えます。しかし、やり込みこそがマインクラフトの醍醐味であることを考えると、HP Stream 11でのプレーはあまりおすすめできません。マインクラフトをとことん楽しみたいなら、外付けGPUを搭載したパソコンを選ぶべきでしょう。