レノボのIdeaPad Slim 5i Gen 8は、14インチ1920×1200ドットディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。見た目は普通のノートPCと変わりませんが、非常に高性能なCPUを採用することで、高いパフォーマンスを実現しています。
筆者が行なったCPUベンチマークテストでは、薄型ノートPCとしてはとんでもなく優秀な結果が出ています(Core i7-1360Pモデル使用)。それでいて値段は最安モデルで7万9860円(Core i5-12450H搭載)からと、お手頃で高コスパな点が魅力です。しかしキーボードの軽いタイプ感やThunderbolt 4に非対応な点など、微妙な作りの安さが気になりました。
ポイント
- 😄 薄型ノートPCとしては高性能
- 😄 OLEDモデルあり
- 🙄 ペチペチとしたタイプ感
- 🙄 Thunderbolet4非対応
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
発売日 | 2023年2月 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
ディスプレイ | 14インチ 1920×1200ドット |
パネル | IPS(45% NTSC、300nit、非光沢 ) / OLED(100% DCI-P3、400nit、HDR500、光沢) |
CPU | Core i5-1340P / Core i7-1360P / Core i5-12450H / Core i5-13500H / Core i7-13620H |
メモリー | 16GB LPDDR5-4800 ※オンボード増設不可 |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics ※CPU内蔵 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(映像出力 / USB PD対応)×2、USB3.2 Gen1×2、HDMI1.4b、microSDメモリーカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | ※生体認証なし |
サイズ / 重量 | 幅312mm、奥行き221mm、高さ17.9mm / 約1.46kg |
バッテリー | 約14~15時間 |
本体デザイン
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-1360P |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Lenovo Vantage」の「電源およびパフォーマンス」-「スマートパワー」を最高設定の「エクストリーム・パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては Core i5-1340P(12コア、PBP28W) / Core i7-1360P(12コア、PBP28W)、Core i5-12450H(8コア、PBP45W) / Core i5-13500H(12コア、PBP45W) / Core i7-13620H(10コア、PBP45W)の4種類が使われています。
Core i7-1360P搭載の試用機でCPUベンチマークを行なったところ、平均値を大きく上回る非常に優秀な結果が出ました。薄型ノートPC向けCPUとしては、最高クラスのパフォーマンスです。個体差はあると思いますが、ほかのCPUでも高いパフォーマンスを期待していいかもしれません。ただし熱による性能低下の可能性も考えられます。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-13620H |
27313
|
Core i5-13500H |
24011
|
IdeaPad Slim 5i(Core i7-1360P) |
22542
|
Ryzen 7 7735U |
21237
|
Core i5-1340P |
20974
|
Core i7-1360P |
19702
|
Ryzen 7 7730U |
19245
|
Core i5-1335U |
18795
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 7535U |
16856
|
Ryzen 5 7530U |
16265
|
Core i7-1355U |
15938
|
Core i3-1315U |
13813
|
Ryzen 3 7330U |
11013
|
Intel N305 |
10374
|
Ryzen 5 7520U |
9802
|
Ryzen 3 7320U |
9258
|
Intel N100 |
5651
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
IdeaPad Slim 5i(Core i7-1360P) |
3994
|
Core i7-13620H |
3919
|
Core i7-1360P |
3785
|
Core i7-1355U |
3781
|
Core i5-1335U |
3771
|
Core i5-13500H |
3678
|
Core i5-1340P |
3610
|
Core i3-1315U |
3600
|
Core i5-12450H |
3527
|
Ryzen 7 7730U |
3254
|
Ryzen 7 7735U |
3241
|
Ryzen 5 7530U |
3213
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3053
|
Ryzen 5 7520U |
2586
|
Ryzen 3 7320U |
2486
|
Intel N305 |
2280
|
Intel N100 |
1982
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のIris Xe Graphicsが使われます。Core i7-1360P搭載の試用機で3Dベンチマークを行なったところ、CPU内蔵タイプとしてはなかなか優秀な結果が出ました。ゲームやグラフィックスソフトで多少の効果が見込めますが、大作ゲームや高度な動画編集を行なえるほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M |
2211
|
IdeaPad Slim 5i(Iris Xe, Core i7+LPDDR5) |
1752
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
Radeon |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージには、512GB / 1TBのSSDが使われています。テスト機の256GB SSDはPCIe 4.0 x4タイプで、使われていたのはWDの「SN740」シリーズ。アクセス速度の計測では、SSDの公称スペックに近い結果が出ました。最近の薄型ノートPCでは発熱を抑えるためにあえて低速(2000~3000MB/秒台)なSSDが使われることもありますが、IdeaPad Slim 5i Gen 8ではそこそこ高速なSSDが使われているようです。
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は、大きくクリアーしています。最新のRyzenシリーズ搭載機にはスコアでやや劣る場合もありますが、第12世代Coreプロセッサ搭載機のパフォーマンスは上回ると考えていいでしょう。ただCPUベンチマークの結果が非常に良かったのに対して、こちらはほどほどの結果が出ています。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10454
10616
10917
9869
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7669
10003
9572
8854
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
7061
6018
6536
8298
5997
6342 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公称値で約14~15時間とされています。しかしこれはバッテリー消費量をかなり抑えた状態での結果。実際の利用とは、結果が大きくかけ離れている場合があります。
そこで標準収録ソフト「Lenovo Vantage」の電源設定を標準である「インテリジェント・クーリング」に変更してビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から5時間14分で休止状態へ移行しました。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
最近の薄型ノートPCとしては、かなり短い結果です。持ち歩きよりも据え置き利用、あるいは電源アダプターと合わせた持ち歩きに向いています。PBPが高いCore i5-12450H / Core i5-13500Hモデルでは、駆動時間はさらに短くなるかもしれません。
バッテリー駆動時間の計測結果(Core i7-1360Pモデル)
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | ※非公開 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 5時間14分 |
50%充電までにかかった時間 | - | 31分 |
フル充電までにかかった時間 | - | 1時間37分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
狙い目はOLEDモデル
CPUベンチマークテストでは、薄型ノートPCとは思えないほど優秀な結果が出ました。なんらかの調整が意図的に行なわれていない限り、この手の薄型ノートPCとしては非常に優秀です。
しかし今回の検証で使ったCore i7-1360Pモデルはしばらく品切れ中で、現在販売されているのはCore i5-12450H / Core i5-13500H / Core i7-13620Hモデルのみ。CPUのカテゴリーが異なるHシリーズなので、使用感が微妙に異なるかもしれません。
それでもコスパは非常に優秀です。特に狙い目なのはCore i5-13500H / 16GBメモリー / 512GB SSD / 14インチ OLEDのモデル。CPU本来の性能は非常に高い上に、OLEDパネルはIPSパネルよりも色鮮やかに映し出されるでしょう。それでいて価格は9万4820円(2023年6月末時点)と、パフォーマンスと品質を考えれば高コスパだと思います。ただしOLEDモデルはディスプレイの表面が光沢ありのグレアタイプなので注意してください。
正直なところ、これだけ高性能でいったいなにに使うのか疑問に感じる部分はあります。しかし、性能が低いよりは高いほうがいいのもまた真実。作業を快適にこなしたい人は、ぜひ検討してみてください。
*
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