NECのLAVIE Direct DT Slimは、非常にコンパクトなデスクトップPCです。PCとしての性能や拡張性は十分でありながら、片手で楽々と持ち運べるサイズと大きさが魅力。デスクの上に配置してもジャマになりません。
PCへの関心が高い人なら、このサイズと形状をどこかで見たことがあるかもしれません。実はレノボの小型PC「ThinkCentre Mシリーズ Tiny」と外観はほぼ同じ。同じグループ会社であるNECとレノボで部品を共有しているのです。
レノボのPCは驚くほど安い点が特徴ですが、NECは逆に値段が驚くほど高く設定されています。LAVIE Direct DT Slimも当初は「Celeron+4GBメモリー+500GB HDDで税別9万9800円から」と発表されたため、悪い意味で話題となりました。現在は割引クーポンを使えば多少値引きされますが、それでも同構成で税込8万8880円は割高です。
しかし、実はNECのPCをとんでもなく安く買える方法がふたつあります。ひとつは型落ちのアウトレット品を購入する方法。そしてもうひとつが、「価格.com限定」と呼ばれるモデルを買う方法です。
LAVIE Direct DT Slimは後者の価格.comモデルが、公式サイトで非常に安く販売されています。値段はCore i5-10400T+8GBメモリー+256GB SSDの構成で、税込6万1800円から。普通に買うと15万0480円なので、なんと59%オフです。
価格com限定モデルの値段
CPU/メモリー/ストレージ/オフィス | 税込価格 |
---|---|
Core i5 / 8GB / 256GB SSD / なし | 5万9800円 |
Core i5 / 8GB / 256GB SSD + 1TBHDD / なし | 6万8800円 |
Core i5 / 8GB / 256GB SSD / H&B | 7万9600円 |
Core i5 / 8GB / 256GB SSD + 1TBHDD / H&B | 8万8600円 |
※2020年12月14日時点、パーツカスタマイズ非対応
筆者が価格com限定モデルを購入したところ、注文から1週間で商品が到着しました。レノボの同型機種は2週間以上かかることを考えれば、早く入手できると言っていいでしょう。またソフトや紙のマニュアルが付いている点や、大手国内ブランドならではの手厚いサポートも魅力です。
ただし限定モデルは、パーツカスタマイズ非対応である点に注意してください。標準モデルならメモリーやストレージの容量などを変更できますが、限定モデルはスペック固定です。なかでも特に注意したい点が、無線LANとBluetoothに対応していない点。これらの機能を使う場合、別途アダプターや無線カードを自分で取り付ける必要があります。
とは言え、大手国内ブランドでしっかり使えるスペックのPCが6万円台の安い価格で入手できるのは大きな魅力です。普段使いやビジネスには問題なく使える性能で、しかも場所を取らないコンパクト設計。テレワーク等で自宅で作業する人や、大きなディスプレイで作業したい人におすすめします。
LAVIE Direct DT Slimのスペック
OS | ・Windows 10 Home ・Windows 10 Pro |
---|---|
APU | ・Core i7-10700T ・Core i5-10500T ・Core i3-10100T ・Celeron G5905T |
メモリー | ・4GB×1 ・8GB×1 ・8GB×2 ※スロット2基、最大16GB ※Core i7はPC4-23400、それ以外はPC4-21300 |
ストレージ | ・HDD ・HDD+Optane ・SSD ・SSD + HDD |
グラフィックス | ・UHD 630(Core i) ・UHD 610(Celeron) |
サイズ | 幅34.5mm 奥行き182.9mm 高さ179mm |
重量 | 1.28kg |
※2020年12月2日時点。構成は変更される場合があります
フォームファクター | ※独自仕様 |
---|---|
SATAポート | -(フラットケーブル用コネクターあり) |
M.2スロット | 2 (Wi-Fi用、ストレージ用) |
光学ドライブ | ・なし ・専用外付けドライブ(オプション追加時) |
ドライブベイ | 2.5インチ×1(HDD搭載時) |
拡張スロット | - |
有線LAN | 1000Mbps×1 |
無線LAN | ・なし ・Wi-Fi 5 |
Bluetooth | ・なし ・5 |
USB3.1 | 2 (前面1、背面1) |
USB3.0 | 3 |
USB2.0 | - |
USB Type-C | 1 (USB3.0) |
Thunderbolt 3 | - |
メモリーカード | - |
HDMI | ・1 ・2(オプション追加時) |
VGA (D-sub15) | ・なし ・1(オプション追加時) |
DisplayPort | ・1 ・2(オプション追加時) |
DVI | - |
シリアルポート | ・なし ・1(オプション追加時) |
PS/2 | - |
付属品 | 電源アダプター、USBキーボード、USBマウス、スタンドなど |
オフィス | ※オプション |
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
※2020年12月2日時点
本体の外観
サイズについて
LAVIE Direct DT Slimは18×18cm程度の大きさで、とてもコンパクトです。Lサイズピザの箱を1/4に縮小したぐらいのサイズ感で、机に配置してもジャマに感じません。横置き/縦置きのどちらにも対応しています。
インターフェースについて
周辺機器接続用のインターフェースは、USB端子が6ポートでうち1ポートがType-C。映像出力はHDMIとDisplayPort、そのほかヘッドホン端子や有線LAN端子が用意されています。SDカードスロットは非対応なので注意してください。
価格.com限定モデル以外の標準モデルでは、購入時の注文画面でオプションを追加できます。追加できる端子はVGA(D-sub15ピン)、HDMI、DisplayPort、シリアルポート(9ピン)、無線LAN+Bluetoothなど。必要に応じて追加してください。
なお映像出力はDisplayPortが4K 60Hzに対応していますが、HDMIは4K 30Hzまでです。実際に手持ちのディスプレイ(ベンキュー EW3270U)で確認したところ、確かに30Hz(RGB)で動作していました。ThinkCentre M75q-2 TinyはYCbCrで60Hzで動作したので、仕様は微妙に異なるのかもしれません。
付属品と付属ソフト
LAVIE Direct DT Slimには標準で縦置き用のスタンド(バーティカルスタンド)と、USBキーボード/USBマウスが付属します。キーボードとマウスはかなり安っぽいので、操作感を重視したい人は別に用意するといいでしょう。なお価格.com限定モデルではBluetoothに対応していないため、有線タイプからUSBレシーバー付きのワイヤレスタイプを選ぶ必要があります。
LAVIE Direct DT Slimの前面にあるUSB Type-C端子はデータ通信もしくは外部への給電のみで、電源アダプターとしては利用できません。しかしレノボで販売されている「USB Type-C – スリムチップアダプター」を使えば、Type-C機器から電源を取ることができます。
リンク
Lenovo USB Type-C – スリムチップアダプター販売ページ
付属ソフトについては「LAVIEアプリナビ」や「インフォボード」、「LAVIEかんたん設定」などの設定/情報アプリが標準でプリインストールされています。購入時に「標準ソフトウェアパック」を追加すると、はがき作成ソフトやバックアップソフトなどを利用可能です。
標準ソフトウェアパック(有料)に含まれるソフトの例
ソフト名 | 概要 |
---|---|
ファイナルパソコンデータ引越し for NEC | 旧PC→新PCへのデータ移行ツール |
おてがるバックアップ | バックアップを簡単に作成可能 |
Corel PhotoMirage Express for NEC | 写真からアニメを作成 |
筆ぐるめ for NEC | はがきを作成できるソフト |
パソコンのいろは | PCの基礎知識学習ソフト |
※2020年12月2日時点。価格.com限定モデルには標準ソフトウェアパックが含まれます
分解方法とパーツ交換について
LAVIE Direct DT Slimは、比較的簡単にパーツの交換/増設が可能です。メモリーは標準で8GBなので、もう少し快適に使いたい場合は増設するといいでしょう。ただし改造の程度によっては、メーカー保証のサポート外となる可能性があるので注意してください。
LAVIE Direct DT Slimのベンチマーク結果
試用機のスペック(価格.com限定モデル)
テスト機 1 | |
---|---|
CPU | Core i5-10500T |
メモリー | 8GB×1 |
ストレージ | 256GB SSD |
グラフィックス | UHD 630(CPU内蔵) |
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
ストレージ性能
ストレージは128GB~1TB SSD(機種によっては最小256GB)で、オプションでHDDを追加できます。テスト機で使われていた256GB SSDはキオクシア(旧東芝メモリー)のXG6シリーズ(KXG6AZNV256G)で、公式スペックではシーケンシャルリードが3050MB/秒、シーケンシャルライトが1550MB/秒。ベンチマークテストでは公称値以上の結果が出ていることから、サーマルスロットリングは発生していないと思われます。
CPU性能
LAVIE Direct DT Slimでは、インテル第10世代の省電力版CPUである「Tシリーズ」が使われています。「T」のない通常版(「S」シリーズ)に比べて性能はやや控えめ。特にCore i3以下のCPUでは動作が遅く感じるかもしれません。
Core i5-10500T(6コア12スレッド)搭載の価格.com限定モデルでCPU性能を計測するベンチマークテストを実施したところ、CPU全体としては中位クラスの結果でした。とは言えPCとしての性能は高く、ノートPCで言えばゲーミングPCやクリエイター向けPCで使われる高性能CPUと同等レベルです。普段使いやビジネスはもちろん、ちょっとした重めの作業にも活用できるでしょう。
CPUの性能比較
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Core i7-10700 |
4177
|
Ryzen 7 PRO 4750GE |
4093
|
Ryzen 5 PRO 4650G |
3509
|
Ryzen 5 PRO 4650GE |
3291
|
Core i7-9700 |
3190
|
Core i5-10400 |
3170
|
LAVIE Direct DT Slim (Core i5-10500T) |
2785
|
Core i5-9400 |
2357
|
Core i3-9100 |
1592
|
Celeron G4930 |
535
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUNHD Graphics 630を使用します。標準型の内蔵グラフィックス(iGPU)ということで、性能はごく控えめ。ゲームやクリエイター向けソフトでの効果期待できません。基本的にグラフィックス処理向けではなく、数値演算やテキスト主体の作業向きです。
GPUの性能比較
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
8893
|
Radeon (Ryzen 7) |
4237
|
GT 1030 |
3509
|
Radeon (Ryzen 5) |
2441
|
UHD 630 (Core i7) |
1298
|
LAVIE Direct DT Slim (Core i5-10500T) |
1152
|
UHD 630 (Core i5) |
1102
|
UHD 610 |
636
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCとしての汎用性
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) |
4100
8735 |
Productivity (ビジネス利用) |
4500
6588 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
3450
3251 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
PCMark 10は、PCを使った各種作業の快適さを計測するベンチマークテストです。Core 5搭載の価格.com限定モデルでは、一般的な作業(Web利用やビデオチャット)やビジネス利用(表計算やワープロ)には問題なく使えるもののの、コンテンツ制作(動画編集や3D制作)にはやや厳しい結果がでました。事務処理や文書作成などの使い方に向いています。
ゲーム系ベンチマーク結果
各種ゲームの快適さを調べたところ、ごく軽めのドラクエ10では画質を落として快適に遊べるとの評価でした。しかし少し重いソフトはかなり厳しく、まともにプレーできないと考えたほうがいいでしょう。基本的にゲームのプレーは考えないほうが無難です。
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 399 / 動作困難 |
標準品質 | 582 / 動作困難 |
軽量品質 | 762 / 動作困難 |
※1920×1080ドットの結果。スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 883 / 5.1 FPS |
高品質 | 999 / 5.9 FPS |
標準品質 | 1670 / 10.4 FPS |
※1920×1080ドットの結果。平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 4954 / 普通 |
標準品質 | 6593 / 快適 |
低品質 | 7675 / とても快適 |
※1920×1080ドットの結果
NECのCore i5で6万1800円は激安
よかった点
NECと言えば大手国内ブランドのひとつで、知名度と安心感の高さは折り紙付き。そのNECのCore i5搭載PCが限定モデルで税込6万1800円というのは、かなり破格の値段です。パフォーマンスもいいですし、拡張性やメンテナンス性も悪くありません。PCをガッツリ使うヘビーユーザーでも、意外に満足できる仕上がりではないでしょうか。
ただし個人的には、いま標準モデルを買うのはおすすめしません。Core i7モデルを狙うのであれば、しばらく時間がたって値下がりしたアウトレットモデルを購入するのがいいでしょう。性能的にはCore i5モデルと大きく変わらないはずなので、やはり値段の安い価格.com限定モデルがおすすめです。
気になる点
パーツカスタマイズに対応していないのは仕方がないのですが、Wi-FiとBluetoothを内蔵していないのは残念です。個人的にははがき作成ソフトよりも、Wi-Fi機能を搭載しているほうがありがたいと思います。パーツの改造や工作が得意であれば、Wi-Fiカードを増設するといいかもしれません。
※2020年12月2日時点
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