GMKtecの『NucBox G1』は、コンパクトサイズのミニPCです。CPUには、IntelプロセッサーN95が使われています。

NucBox10 ※利用には別途キーボードとマウス、外付けディスプレイが必要です
価格は8GBメモリー / 512GB SSDモデルで2万円台前半、16GBメモリー / 1TB SSDモデルで2万円台後半。タイミングによってはクーポンやタイムセールなどで、非常に安く販売されていることがあります。
性能はそれほど高くはないものの、2万円台で入手できるPCとしては十分すぎるほど。できる限りPCを安く入手したい人に向いています。
この記事ではメーカー提供の実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ

ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年4月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | IntelプロセッサーN95(4コア/4スレッド) |
チップセット | ※CPUに内蔵 |
グラフィックス | UHD Graphics (CPU内蔵) |
メモリー | 8GB(8GB×1) / 16GB×1 DDR4-3200 ※スロット×1、最大16GB |
ストレージ | 512GB / 1TB PCIe Gen3 SSD |
インターフェース | USB3.2 ×4、3.5mmヘッドホン端子×1、HDMI(4K@60Hz)×2、有線LAN |
拡張スロット | M.2×3(ストレージ用×2、Wi-Fiカード用×1) |
ドライブベイ | なし |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、有線LAN(2.5Gbps) |
サイズ / 重量 | 幅114×奥行き106×高さ42.5mm / 約361g |
電源 | 48W アダプター |

Windows 11 Proのライセンスはメーカー向けのOEM版 ※※他メーカーでは一般利用できないボリュームライセンスが一時的に使われている場合があります
本体デザイン
NucBox G1の本体は、非常にコンパクトです。設置面積は一般的なCDケースよりもふた回り小さい程度。やや厚みはあるものの、設置に場所を取りません。非常に安いPCでありながら、安っぽさは感じられませんでした。

NucBox G1のパッケージ

同梱物。HDMIケーブルとVESAマウント用のブラケットが付属します。ブラケットはちょっと使いづらいので、個人的には使わないほうがいいかと思います

NucBox G1の外観。天板部分は光沢仕上げのピアノブラック。側面にはメタル素材が使われています

やや厚みがあるものの、筐体自体は非常にコンパクトです

本体前面にはUSB3.2 Type-A×2と電源ボタン

側面には排気口。空冷ファン内蔵ですが動作音は非常に静かで、耳を近づけなち聞こえない程度

背面には電源コネクター、HDMI×2、有線LAN、USB3.2 Type-A×2。Type-C端子やメモリーカードスロットには対応していません

天面部

底面部は樹脂製

重さは実測で357g

電源アダプターは48Wの丸口タイプ。重さは199g
メモリー/SSDの増設について
NucBox G1では、メモリーとSSDを交換可能です。ただしメモリーはCPUの仕様の影響で、最大容量は16GBまで。SSDはM.2スロットの空きがひとつ用意されていますが、もしかするとM.2 SATA用かもしれません。※作業にはプラスドライバーが必要です

底面カバーを外した状態

テスト機では8GB×1が使われていました。メモリースロットは1基のみ

SSDはType-2280が使われていました。SSDの下にコイン電池やWi-Fi用のM.2スロットがあるので、SSDを交換する場合は片面実装タイプがいいかもしれません

Type-2280 M.2スロットの隣に、Type-2242用のM.2スロットが配置されています。マザーボード上に「M.2 SATA」とプリントされているとおり、このスロットはSATA接続専用です。最大容量は2TB

マザーボードはテープやネジでケースに固定されていたため、今回は取り外せませんでした。CPUクーラーなどは未確認です
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN95(4コア/4スレッド、TDP15W) |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 256GB SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「高パフォーマンス」に設定した上で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、開発コード「Alder Lake-N」の第12世代IntelプロセッサーN95(以下、”Intel N95″)が使われています。最近ミニPCや格安ノートPCで注目されているIntelプロセッサーN100とはTDPやグラフィックス機能が異なる程度で、そのほかのスペックはほぼ同じ。数値的にはIntel N95のほうが上のはずですが、TDPは機種によって上下に調整されていることがあるので、誤差程度の違いでしかありません。

Intel N95とIntel N100のスペックの違い
Intel N95は本来格安ノートPC向けで、性能は高くはありません。同CPUの平均値は上回っているものの、現行世代のCPUのなかでは下位クラス。重い処理をバリバリ使いこなすための機種ではない点に注意してください。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21486
|
Core i7-1360P |
21213
|
Core i5-1340P |
20922
|
Ryzen 7 7730U |
19633
|
Core i5-1335U |
16573
|
Ryzen 5 7530U |
16444
|
Core i7-1355U |
16378
|
Core i3-1315U |
13893
|
Ryzen 3 7330U |
11856
|
Intel N305 |
10396
|
Ryzen 5 7520U |
9771
|
Ryzen 3 7320U |
9289
|
NucBox G1(Intel N95) |
5773
|
Intel N95 |
5515
|
Intel N100 |
5512
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
現行世代のCPUのなかでは下位クラスですが、旧世代のCPUと比較するとあなどれない性能です。たとえば軽作業での快適さに強く影響するシングルスレッド(シングルコア)の結果で比較すると、2017年ごろに使われていた第8世代Core i7-8550U相当。つまり6年前に10~15万円あたりだったハイエンドモデルと、2023年の格安モデルが同じレベルということです。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-10510U |
2326
|
Core i5-1035G1 |
2263
|
Core i5-10210U |
2198
|
Core i7-8565U |
2194
|
Core i5-8265U |
2097
|
NucBox G1(Intel N95) |
2081
|
Core i7-8550U |
2057
|
Core i7-7500U |
1928
|
Core i5-8250U |
1915
|
Core i7-6500U |
1700
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-6700 |
2298
|
Core i7-4790 |
2229
|
NucBox G1(Intel N95) |
2081
|
※スコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
現在は、CPU性能が非常に大きく伸びつつある状況です。Intel N95は現行世代で見ると下位クラスCPUですが、けっして使えないレベルではありません。むしろネットの調べ物やメール、動画視聴などの軽めの処理には十分。価格が安いぶん、非常にコスパの高いCPUだと言えます。
ストレージ性能
ストレージには、PCIe 3.0の256GB NVMe SSDが使われています。使用機で使われていたのは製造元不明のSSDで、おそらくPCIe 3.0 x2で動作しているのかもしれません。最近のPCとしてはあまり速くはありませんが、値段が安いことを考えれば仕方がないでしょう。
ただし品質面や信頼性がまったくわからないので、ガッツリ使う予定ならSSDを換装したほうがいいかもしれません。

256GB SSDのアクセス速度計測結果
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のUHD Graphicsが使われます。グラフィックス性能はごく控えめ。大作ゲームやグラフィックスソフトの利用には、かなり厳しいレベルだと考えてください。ソリティアクラスならなんとかなりますが、基本的にゲームのプレーは考えないほうがいいでしょう。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen 7 6800U) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Ryzen 7) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
NucBox G1(UHD) |
321
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストでは一般利用(ビデオ会議やWeb閲覧など)で目標値を大きく上回っているものの、ビジネス利用(表計算とワープロ)では目標値よりもちょっと上程度で、コンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。高いCPU性能とグラフィックス性能が要求される処理は苦手なようです。
ただほかの機種が3~6万円台であることを考えれば、2万円台のNucBox G1はなかなか健闘していると言っていいでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
7277
7162
8507
8958
9865
9254 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
5092
4938
9266
7178
9057
5842 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
2580
2410
3683
4795
4780
5405 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(格安PC)
▶GemiBook XPro | Intel N100 / 8GB |
---|---|
▶IdeaPad Slim 170 | Ryzen 5 7520U / 8GB |
▶CoreBox 4th | Core i3-1215U / 16GB |
▶Vostro 3425 | Ryzen 5 5500U / 8GB |
▶IdeaPad Slim 370i 14 | Core i5-1235U / 8GB |
軽作業用の激安PC
普通に使える性能のPCを、2万円台で買える点が驚きです。アマゾンではCeleron J4125あたりを搭載した機種が1万円台で販売されていることがありますが、正直なところ性能はかなりイマイチ。使えないことはありませんが、高速化チューニングなどの工夫が必要とされるでしょう。
しかしIntel N95を搭載したNucBox G1なら、難しい設定や面倒な工夫は必要ありません。使い始めから、極端な重さを感じることなく普通に使えます。処理によっては多少の「間」があるものの、個人的には気にならないレベルです。
ただこれをメインPCにできるかと言えば、性能面でちょっと微妙な気もします。普段からネットやオフィスぐらいしか使わないのであれば問題ありませんが、そのようなケースにはノートPCのほうが適しているはず。24インチ以上の大きな画面で事務作業をしたい、あるいは子供用のPCとして使いたい、もしくは安いからとにかくイジって遊びたいというニーズ向けです。

*
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