HPの『HP Pavilion Plus 14-eh』は、高性能CPUと高画質ディスプレイを搭載したハイエンドクラスのノートPCです。CPUはゲーミングノートPCで使われる、第12世代CoreプロセッサのHシリーズ。2.8KのOLEDディスプレイは、息をのむほど美しい映像を堪能できます。
ポイントは、普通のノートPCとほぼ同じ外観ながら、非常に高性能である点です。ゲーミングノートPC用のCPUを使っているだけあって、CPU性能では一般的な薄型ノートPCを軽く上回ります。基本的には据え置き用ですが、約1.33kgの重量は持ち歩けないほどではありません。
しかし軽くて薄いぶん、CPU本来の性能はわずかに抑えられています。それでも並のノートPCより高性能なのですが、さすがにゲーミングノートPCにはかないません。また専用グラフィックス(dGPU、グラボ)非搭載で、重いゲームや動画編集には不向き。わりとマニアックなニーズに向けた機種なので、人によっては中途半端に感じることもあるでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
HP Pavilion Plus 14-eh
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 2880×1800ドット OLED 光沢 DCI-P3 100% 400nit 90Hz |
パネル | 45% NTSC / 100% sRGB |
CPU | Core i5-12500H /Core i7-12700H |
メモリー | 16GB DDR4-3200 ※オンボード |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3 |
インターフェース | USB Type-C(USB PD / 映像出力対応)、 USB Type-A×2、HDMI2.1、microSDカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅314mm、奥行き225mm、高さ16.9mm / 約1.33kg |
バッテリー | 最大8時間 |
本体デザイン
HP Pavilion Plus 14-ehの見た目は、普通の14インチノートPCとまったく同じ。ゲーミングノートPC用のCPUを搭載した高性能モデルとは思えません。本体は明るい色合いですが、シーンを選ばずに利用できるでしょう。
サイズと重量
前述のとおり、HP Pavilion Plus 14-ehは14インチノートPCとしては標準的な大きさです。重さもけっこう軽量な部類に入ります。ただしゲーミングノートPC向けの高性能なCPUを搭載していることを考えれば、わりと驚きの薄さと軽さと言っていいでしょう。
ディスプレイについて
ディスプレイは非常に高品質です。ノートPCで一般的なIPSパネルよりも色鮮やかなOLEDパネルで、解像度は2.8K。さらにリフレッシュレートは90Hzで、一般的な60Hzの1.5倍です。動画や写真を美しい映像で楽しめるでしょう。
キーボードについて
キーボードは配列にややクセがあります。最初は打ち間違いがあるかもしれませんが、使い続ければ慣れるでしょう。タイプ感は、可もなく不可もなくといったところ。HPのほかのノートPCと変わらない、標準的な仕上がりです。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i7-12700H(Pコア×6+Eコア×8、45W) |
---|---|
メモリー | 16GB(8GB×2) DDR-3200 |
ストレージ | 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ソフト『HP Command Center』の「システムコントロール」から「デバイスモード」を「パフォーマンス」に設定。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCore i5-12500H(12コア16スレッド)またはCore i7-12700H(14コア20スレッド)が使われています。ゲーミングノートPCでよく使われるCPUですが、HP Pavilion Plus 14-ehには専用グラフィックス(dGPU、グラボ)がなく、位置づけ的には「高性能なスタンダードノートPC」です。
CPUベンチマークテストの結果は優秀ではあったものの、同じCPUの平均値よりも低い結果が出ています。おそらくCPUの発熱を抑えるために、あえてパフォーマンスを落としているのでしょう。性能を抑えてはいても、一般的なスタンダードノートPCよりもはるかに高性能です。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
16039
|
Core i5-12500H |
14202
|
Ryzen 7 6800H |
13673
|
HP Pavilion Plus 14(Core i7-12700H) |
13106
|
Ryzen 5 6600H |
10237
|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Ryzen 7 7730U |
9293
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8376
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7664
|
Core i3-1215U |
6216
|
Ryzen 3 7330U |
5108
|
Ryzen 5 7520U |
5029
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
1804
|
HP Pavilion Plus 14(Core i7-12700H) |
1750
|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i5-12500H |
1715
|
Core i7-1260P |
1680
|
Core i3-1215U |
1623
|
Core i5-1240P |
1606
|
Core i5-1235U |
1589
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Ryzen 5 6600H |
1477
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 7730U |
1441
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Ryzen 5 5625U |
1390
|
Ryzen 3 7330U |
1369
|
Ryzen 5 7520U |
1176
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ストレージ性能
ストレージには、512GBまたは1TBのSSDが使われています。試用機で使われていたのはWDのSN530シリーズ。PCIe 3.0 x4接続としてはアクセス速度が低速ですが、SSDの公称スペックとほぼ同じ結果で、熱などによる性能低下は見られませんでした。
おそらく本体内部の熱を抑えるために、あえて低速なSSDを選んでいるのでしょう。しかし高性能タイプのPCでストレージの性能を下げるのは、あまりいい策ではないように感じます。
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。Core i7モデルで3Dベンチマークテストを行なったところ、DDR4タイプとしては優秀な結果が出ました。ゲームやグラフィックス関係のソフトなので多少の効果を期待できますが、専用グラフィックス(dGPU、グラボ)を搭載するゲーミングノートPCほどではありません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen 7 6800U) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
HP Pavilion Plus 14(Iris,Core i7,DDR4) |
1465
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Ryzen 7) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
テストの結果は優秀ではあるものの、薄型ノートPCのスコアを大きく上回るほどではありませんでした。ただしこれはPCMark 10のテスト内容が「比較的軽め」であるためで、重い処理のほうがHP Pavilion Plus 14-ehの性能が発揮されるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10901
9984
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7429
9266
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
6936
5987
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
薄い高性能ノートPCが欲しい人向け
ゲーミングノートPC向けのCPUを搭載しながらも薄型のHP Pavilion Plus 14-ehは、高性能なスタンダードノートPCが欲しい人に向いています。dGPU非搭載のため大作ゲームや高度な動画編集用ではなく、ちょっと規模の大きなデータ処理や数値演算などに適しているでしょう。個人的には32GBメモリーを利用できない点が残念ですが、これだけ高性能であれば比較的長いあいだ処理の遅さを実感することなく快適に使えるはずです。
ただし薄さを重視しないのであれば、より高いパフォーマンスを発揮できるゲーミングPCのほうが高コスパです。また持ち運びやすさを重視するなら、HP Pavilion Plus 14-ehよりも軽い機種はいくらでもあります。ある意味で中途半端な位置づけかもしれませんが、見方を変えれば細かなニーズをピンポイントで攻めているとも考えられるはずです。
「A4サイズよりちょっと大きい程度で、普通に持ち運べるほど薄くて軽いCore i7-12700H搭載ノートPC」というわりとニッチな嗜好にズキュンとくるならアリだと思います。
HP Pavilion Plus 14-eh
*
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