レノボの『IdeaPad Slim 570(14型 AMD) 』(以下、”IdeaPad Slim 570″)は、14インチのフルHDディスプレイを搭載するスタンダードタイプのノートPCです。CPUには高性能なAMD Zen3世代のモバイルRyzen 5000シリーズが使われています。同価格帯のインテルCPU搭載機よりも、性能面で優れる点がポイント。
品質面は標準的な仕上がりで、コスパは良くもなく悪くもなくといった印象です。ただRyzen 5モデルは8GBメモリー固定で、Ryzen 7モデルは上位シリーズであるThinkBookシリーズに届きそうな値段。これといった強いヒキに欠ける機種でもあります。いま(2022年12月時点)よりも値段が下がれば、魅力的な機種となるでしょう。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
IdeaPad Slim 570(14型 AMD)
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スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 1920×1080ドット IPS 非光沢 300nit 45% NTSC |
CPU | Ryzen 5 5625U / Ryzen 7 5825U |
メモリー | 8GB / 16GB DDR4-3200 ※オンボード、デュアルチャネル |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth5.1 |
インターフェース | USB3.2 Gen1 Type-C(USB PD / 映像出力対応)、USB3.2 Gen1×2、HDMI1.4b、SDカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 指紋センサー |
サイズ / 重量 | 幅321.7mm、奥行き211.8mm、高さ17.9mm / 約1.38kg |
バッテリー | 約15.9時間 |
本体デザイン
IdeaPad Slim 570の本体デザインは、ノートPCとしては標準的な仕上がりです。ボディの一部は樹脂(プラスチック)製ですが、塗装の影響で安っぽさは感じられません。
サイズと重量
本体は比較的コンパクトです。モバイル向けではありませんが、持ち歩けないこともないでしょう。
ディスプレイについて
ディスプレイは良くも悪くも普通です。最近はフルHD以上の高解像度やアスペクト比16:10の機種が増えており、16:9のフルHDに目新しさはありません。とは言えフルHDはノートPCでは定番で、問題なく利用できます。
キーボードについて
キーボードはキーストロークが浅く、タイプ感は軽めです。打ち抜くように入力するのではなく、指をあまり上げ下ろしせずに軽い力で入力する人に向いています。配列に違和感はそれほどありませんが、Enterキー周辺ではやや慣れが必要かもしれません。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 5 5625U(6コア12スレッド、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB(DDR4-3200、デュアルチャネル) |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | Radeon Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Lenovo Vantage」の「電源およびパフォーマンス」を最高設定の「エクストリーム・パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUは、AMD Zen3世代のRyzen 5 5625UまたはRyzen 7 5825Uです。現在はZen3+世代のモバイルRyzen 6000シリーズがリリースされており、位置付け的にはひと世代前のものに相当します。
Ryzen 5 5625UU搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、マルチコア性能のテストでは非常に優秀な結果でした。ただしRyzen 5モデルはメモリーが8GB(増設非対応)で、重いデータやソフトを利用するのには向いていません。逆に軽い作業を行なうには、CPU性能が高すぎます。
値段が安いならRyzen 5モデルの購入はアリですが、しっかり使うことを考えるなら16GBメモリー搭載のRyzen 7モデルをおすすめします。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
8984
|
IdeaPad Slim 570(Ryzen 5 5625U) |
8953
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1250U |
7552
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6086
|
Ryzen 3 5400U |
5693
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1250U |
1726
|
Core i5-1235U |
1616
|
Core i7-1260P |
1636
|
Core i3-1215U |
1622
|
Core i5-1240P |
1606
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Core i7-1165G7 |
1423
|
Ryzen 5 5625U |
1394
|
IdeaPad Slim 570(Ryzen 5 5625U) |
1383
|
Core i5-1135G7 |
1349
|
Core i3-1115G4 |
1329
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能には、CPU内蔵のRadeon Graphicsを使用します。Ryzen 5モデルで3Dベンチマークテストを行なったところ、Ryzenシリーズとしては比較的優秀な結果でした。ただしIris Xeを使用するインテル系CPUほどではありません。とは言えゲームやグラフィックス系のソフトにおいて、多少の効果は見込めるはずです。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
IdeaPad Slim 570(Ryzen 5) |
1089
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
Iris Plus |
812
|
Radeon (Ryzen 5) |
784
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。ただしコンテンツ制作系は、若干弱い印象を受けます。文字や数値中心の作業、ネットの調べ物などの作業に向いています。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9984
9477
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9266
6534
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5987
5363
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリー駆動時間は、公称値で約15.9時間とされています。ただしこれはパフォーマンスをグッと落とした状態での計測結果で、実際の駆動時間は公称値よりも短いのが一般的です。
そこで最大パフォーマンスの状態でビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、11時間36分でバッテリー切れとなりました。公称値よりも短い結果ですが、これだけもてば十分でしょう。
ただし、バッテリー駆動時はパフォーマンスが抑えられている可能性があるので注意してください。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i3モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約15.9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 11時間36分 |
充電率50%までの時間 | - | 2時間15分 |
満充電になるまでの時間 | - | 4時間29分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
狙い目はRyzen 7モデル
記事執筆時点でのIdeaPad Slim 570の価格はRyzen 5モデルで7万円台後半、Ryzen 7モデルで10万円ちょっと。安くはないものの、値上がりが続くPC市場においては標準的な価格です。
ただCPUベンチマーク結果の解説でも触れましたが、Ryzen 5モデルはメモリーが8GB固定で16GBにアップグレードできません。せっかくの高性能CPUでも、真価を十分に発揮できない可能性があります。かと言って、ネットの調べ物や文書作成中心で使うにはオーバースペック。安く買えるならアリですが、8万円近く払って使うには、もったいない気がします。8GBメモリーで使うなら、もっとCPUグレードの低い別の機種を選んでもいいでしょう。
長期間ガッツリ使うなら、16GBメモリーを搭載したRyzen 7モデルがおすすめです。本体やディスプレイに多少安っぽい部分は見られますが、性能と価格のバランスは悪くありません(お買い得というほどでもありませんが)。
しかしこのくらいの値段になると、メモリー増設が可能で本体品質に優れるThinkBookシリーズやThinkPadシリーズの値段にかなり近づきます。用途や好みによっては、上位シリーズを検討したほうがいいかもしれません。いまよりも値段が下がれば、おすすめです。
IdeaPad Slim 570(14型 AMD)
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