デルのPrecision(プレシジョン) 15 5000 (5530)は、専用グラフィックスとしてQuadro P1000/2000に対応するモバイルワークステーションです。ミドルレンジクラスのdGPUを搭載しながらも、本体がスリム&コンパクトでしかも軽量。外出先で3D CGやCAD/CAMのプレゼンやデモ、あるいはデータ修正などを行なう人に向いています。
Precision 15 5000 (5530)の注目ポイント
最薄&最小クラスのボディ
高さは最厚部でも16.82mm。ミドルレンジクラスQuadroシリーズを搭載したモデルとしては最薄クラスです。本体も15.6インチタイプでありながら非常にコンパクト。この持ち運びやすさは大きな武器となるでしょう。
色域の広いディスプレイ
4KディスプレイならAdobeRGBカバー率は100%(公称値)。色域が広く、映像本来の色が正しく映し出されます。
Precision 15 5000 (5530)の評価
総合評価: 4.6/5.0
(評者:こまめブログ)
デザイン | アルミ素材を使ったボディは高品質。さらに薄くてコンパクトでデザインは文句なしの出来栄え |
---|---|
性能 | 4~6コアの高性能CPUを搭載可能。dGPUはミドルレンジクラスのQuadro P1000/2000 |
使いやすさ | 端子類は少なめ。キーボードのタイプ感が軽い |
軽さ | タッチ非対応モデルなら重量は約1.78kg。15.6インチタイプとしては非常に優秀 |
画面 | 広色域パネルを採用。解像度はフルHD/4Kで、4Kタイプはタッチ操作やペン入力に対応 |
今回はメーカーからお借りしたPrecision 15 5000 (5530)の実機を使って、本体デザインや使い心地、ベンチマーク結果などをレビューします。
法人モデルは個人でも購入可能
Precision 15 5000 (5530)は法人向けのモデルで、企業や官公庁、自治体、各種団体向けに販売されています。しかし個人事業主や自営業の方でも購入可能です。公式サイトから注文すれば、所属確認などは必要ありません。
この記事の目次
※2019年1月24日時点。現在の価格は公式サイトでご確認ください
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Precision 15 5000 (5530)のスペック
OS | Windows 10 Pro Windows 10 Pro for WorkStation |
---|---|
CPU | Core i5-8300H Core i5-8400H Core i7-8850H Core i9-8950HK Xeon E-2176M |
メモリー | 8GB 16GB 32GB 64GB ※ECC非対応 |
ストレージ | 256GB ~ 2TB SSD (PCIe) 1TB SSHD 500GB / 1TB / 2TB HDD ※デュアル可 ※SSDの詳細は下記参照 |
グラフィックス | Intel HD Graphics (dGPUなし) Quadro P1000 (4GB) Quadro P2000 (4GB) |
ディスプレイ | 15.6インチ、 1920×1080 / 3840×2160ドット、 IGZO4、光沢(4K) / 非光沢(FHD)、 タッチ対応(4K) / タッチ非対応(FHD) |
光学ドライブ | なし |
通信機能 | IEEE802.11a/b/g/n/ac、 Bluetooth 5.0 |
インターフェース | Thunderbolt 3×1、 USB3.1 Gen1(フルサイズ)×2、 HDMI、 SDカードスロット、 ヘッドホン出力 |
セキュリティー | TPM2.0、 セキュリティースロット |
カメラ | 92万画素 |
サイズ | 幅357×奥行き235.3×高さ11.1~16.82mm |
重量 | 約1.78kg(タッチ非対応) 約2.04kg(タッチ対応) |
バッテリー駆動時間 | ※非公開 |
サポート | 3年間オンサイト保守サービス |
※2019年1月24日時点。構成は変更される場合があります
SSDの違いについて
SSDは容量のほかに「Class 40」や「Class 50」、「SED Class 40」などで分類されています。Class 40とClass 50についてはデル独自の品質基準で、Class 40はコンシューマ向けの高性能モデル、Class 50はエンタープライズ向けの高性能モデル相当です。またSEDは暗号化ドライブであることを表わします。
SSDの違い
- Class 40 → コンシューマ向け
- Class 50 → エンタープライズ向け
- SED Class 40 → コンシューマ向けで暗号化ドライブ
ちなみに試用機ではClass 40のSSDとしてサムスンのPM981が搭載されていましたが、別売りのオプションとしてサムスンのPM961がClass 40のSSDとして販売されていました。PM981とPM961では性能差がけっこうあると思うのですが、どのあたりを基準としているのかは不明です。
Precision 15 5000 (5530)のラインナップ
Precision 15 5000 (5530)には、パーツ構成の異なるさまざまなモデルが用意されています。どのモデルもパーツのアップグレードが可能ですが、グラフィックス機能(GPU)のみ変更できません。まずは使いたいGPUを選び、そのあとでCPUやメモリー、ストレージ構成などを選ぶといいでしょう。
ラインナップ
ベーシックモデル ※Core i5-8400H+SSHD | |
---|---|
税込17万円台 | |
ベーシックモデル ※Core i5-8400H+SSHD | |
税込20万円台 | |
プラチナモデル ※Xeon E-2176M | |
税込25万円台 | |
プラチナモデル ※Core i9-8950HK | |
税込29万円台後半 | |
ベーシックモデル ※Core i5-8300H | |
税込12万円台後半~ | |
プレミアムモデル ※Core i7-8850H | |
税込24万円台 |
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本体の大きさやデザイン
Precision 15 5000 (5530)の特徴は、ミドルレンジクラスのdGPUを搭載しながらも、本体サイズがコンパクトかつ薄い点です。モバイル向けのQuadro P1000 / 2000搭載モデルとしては、最薄クラスと言っていいでしょう。
本体カラーはブラッシュドオニキスブラックとプラチナシルバーの2色。質感は非常に高く、存在感も抜群です。薄くて持ち運びやすいのはもちろんのこと、プレゼンで使えば「こんなに薄いのにグリグリ動くの!?」と相手に大きなインパクトを与えられるでしょう。
画面の色と見やすさ
液晶ディスプレイのサイズは15.6インチ。解像度は1920×1080ドットのフルHDと、3840×2160ドットの4Kの2種類が用意されています。
カタログスペックではフルHDディスプレイの輝度は400nitで色域は72%とのこと。なにに対して72%なのかは説明されていませんが、おそらくsRGB比かと思われます。
4Kディスプレイの場合は輝度は360nitで「Adobe 100%」とされています。おそらくAdobeRGBカバー率が100%とのことだと思うのですが、i1DisplayProで計測したところ82.2%でした。
4Kディスプレイのほうが輝度は低いのですが、画面は非常に明るく感じます。また色がとても鮮やかでした。
標準収録のDell PremierColorを使えば、カラープロファイルの切り替えやソフトウェアキャリブレーション(要キャリブレーター)が手軽に行なえます。
液晶ディスプレイは色域が広く色鮮やかなのですが、使われているパネルはシャープのIGZO液晶で、10bitカラー表示には対応していません。dGPUがQuadro P1000 / 2000なので出力としては10bitカラー表示に対応しているかもしれませんが、公式サイトにそのような記述はありませんでした。
※デル公式サイトのチャット相談で10bit出力について問い合わせたところ「グラフィックカードが対応しているので問題ない」との回答でした。しかしデスクトップPC向けの「グラフィックカード」と勘違いしている可能性もあるため、いまいち確信は持てません。
映像品質については、個人的にMacBook Pro並みのクオリティーだと思います。液晶ディスプレイが8bitカラー表示である点についても、プレゼンなどのモバイル用途であれば問題はないでしょう。
なお液晶ディスプレイの表面はフルHDでは非光沢、4Kでは光沢仕上げです。
キーボードの使いやすさ
Precision 15 5000 (5530) は15.6インチタイプですが、キーボードにはテンキーがありません。ただしそのぶんほかのデル製モデルに比べてキーが大きく、余裕のある配列になっています。
キーストロークはかなり浅く、実測で1mm強でした。正確には計測できませんでしたが、もしかすると1.2~1.3mm程度かもしれません。入力時に軽いクリック感はありますが、ストロークが浅く手応えは控えめです。キーを深く押し込むよりも、軽いタッチでペチペチと入力するような使い方に向いています。個人的にはタイプ感に物足りなさを感じますが、文書作成向けのモデルではないので大きな問題ではないのでしょう。
端子類の種類と使いやすさ
周辺機器接続用のインターフェース(端子類)は多くありません。とは言え、USB機器やケーブルを大量に接続するようなモデルではないので、それほど問題ではないでしょう。なお前述のとおり、映像出力端子が10bitカラー出力に対応しているかは不明です。
左側面のインターフェース
- ① 電源コネクター
- ② USB3.1 Gen1
- ③ HDMI
- ④ Thundebolt 3
- ⑤ ヘッドホン出力
右側面のインターフェース
- ① SDカードスロット
- ② USB3.1 Gen1
- ③ バッテリー残量確認ボタン
- ④ セキュリティースロット ※盗難防止用
ベンチマーク結果
今回のテストでは、Core i9-8950HK+Quadro P2000搭載のプラチナモデルを使いました。主なスペックは以下のとおりです。なおベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります。あらかじめご了承ください。
試用機のスペック
OS | Windows 10 Pro |
---|---|
CPU | Core i9-8950HK |
メモリー | 16GB |
ストレージ | 256GB SSD(PCIe) |
グラフィックス | Quadro P2000 (4GB) |
ストレージ性能
試用機で使われていた256GB SSDは、PCIe接続の爆速タイプです。転送モードはツールで調べられなかったのですが、シーケンシャルリードが3000MB/秒を超えていることからPCIe 3.0 x4だと考えていいでしょう。
ちなみに試用したプラチナモデルでは標準でClass 40(デル独自の品質基準)のSSDが使われているのですが、現在広く流通しているSSDのなかではほぼ最高速ですので、Class 50にアップグレードしてもアクセス速度が大きく変わることはないと思われます。おそらくシーケンシャルライトが若干伸びるか、信頼性が向上する程度でしょう。コストパフォーマンスを重視するなら、Class 40でも十分です。
ウィンドウズの起動時間は平均24.34秒でした。PCIe接続のSSDを搭載しているモデルだと10~13秒であることが多いのですが、電源を入れた直後のロゴ表示画面でしばらく処理が行なわれているで、ちょっと時間がかかっています。もしかすると、起動のたびにセキュリティー機能が働いているのかもしれません。
起動時間の計測結果(手動による計測)
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | 5回目 | 平均 |
---|---|---|---|---|---|
27.6秒 | 25.3秒 | 24.0秒 | 27.0秒 | 17.8秒 | 24.34秒 |
CPU性能
試用機で使われていたCore i9-8950HKは6コア/12スレッドで動作するCPUで、非常に高性能です。ベンチマークテストの結果では、ゲーミングノートPCで使われているCore i7-8750Hよりも高いスコアが出ました。高い負荷の処理でも、快適にこなせるでしょう。
なおPrecision 15 5000 (5530)が対応するCPUについては基本的に、Core i9-8950H > Xeon E-2176M > Corei7-8850H > Core i5-8400H > Core i5-8300Hの順で高性能です(ベンチマークサイトの結果は当サイトの計測結果よりも低めの結果がでる場合があります)。
CPUベンチマーク結果
CPU | PassMark PerformanceTestのCPU Markスコア |
---|---|
Precision 15 5000(Core i9-8950HK) |
|
Xeon E-2176M ※2 |
|
Core i7-8750H (ゲーミングノートPC用) |
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Core i7-8850H ※2 |
|
Core i5-8300H |
|
Core i5-8400H ※2 |
|
Core i7-8565U (スタンダードノートPC用) |
|
※そのほかのベンチマーク結果は当サイト計測の平均値 ※2 PassMark CPU Benchmarksを参照
各CPUの細かな違いについては、以下のとおりです。パフォーマンスを重視するならCore i9-8950HKを選ぶといいでしょう。ただし法人利用で社内システムがvProに対応していたりXeonに最適化されているならXeon E-2176Mを選ぶべきです。またXeon E-2176MはCPUとしてはECCメモリー(データ修復機能付きメモリー)に対応していますが、Precision 15 5000 (5530)ではECCメモリーを利用できない点に注意してください。
各CPUの違い
Core i9-8950HK | Xeon E-2176M | Core i7-8850H | Core i5-8400H | Core i5-8300H | |
---|---|---|---|---|---|
コア数/スレッド数 | 6/12 | 6/12 | 6/12 | 4/8 | 4/8 |
動作周波数 | 2.90GHz | 2.70GHz | 2.60GHz | 2.50GHz | 2.30GHz |
最大動作周波数 | 4.80GHz | 4.40GHz | 4.30GHz | 4.20GHz | 4.00GHz |
ECCメモリー | × | ○ | × | × | × |
vPro | × | ○ | ○ | ○ | × |
グラフィックス性能について
3D/CADソフトにおけるOpenGL性能を計測するSPECviewperf 13の結果は以下のとおりです。試用機ではQuadro P2000が使われていましたので、Quadro P1000搭載モデルではこれよりも低い結果となることが予想されます。
Direct Xの性能を計測する3D Markでは、GeForce GTX 1050 Tiをやや下回る結果となりました。そもそもPrecision 15 5000 (5530) はゲーム用ではないのですが、軽めの3Dゲームなら楽しめそうです。
CPUの違い
GPU | 3DMark Fire Strikeのスコア |
---|---|
GTX 1060 (6GB) |
|
GTX 1050 Ti |
|
Precision 15 5530 (Quadro P2000) |
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GTX 1050 |
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※そのほかのGPUのベンチマーク結果は当サイト計測の平均値
ゲーム系ベンチマーク結果
FF14:紅蓮のリベレーター(DX11) ※中量級
|
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1920×1080 (フルHD) | 最高品質 | 6323(とても快適) ※42.958 FPS |
高品質(ノートPC) | 9173(非常に快適) ※62.887 FPS | |
標準品質(ノートPC) | 12012(非常に快適) ※84.632 FPS | |
ドラゴンクエストX(DX9) ※軽量級
|
||
1920×1080 (フルHD) | 最高品質 | 17941(すごく快適) |
標準品質 | 19153(すごく快適) | |
低品質 | 24231(すごく快適) |
ただしゲームで楽しむことを主な目的とするなら、GeForce GTXシリーズを搭載したゲーミングノートPCのほうが安くすみます。また単純にOpenGL性能だけで見ればQuadro P2000ならGeForce GTX 1060を上回りますが、Quadro P1000ではコスパが悪くなるかもしれません。
利用するソフトやシステムがQuadroシリーズに最適化されている、もしくはQuadroシリーズでないと動作しないならPrecision 15 5000 (5530) を選ぶべきでしょう。しかしこれからソフトを選ぶ、もしくは使っているソフトやシステムがGeForce GTXシリーズでも遜色なく動作するのであれば、コスパの高さの面でGeForce GTXシリーズ搭載ノートPCをおすすめします。
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バッテリー性能
バッテリー駆動時間は公式には公開されていないのですが、当サイトの計測方法では4時間32分という結果でした。
ただしこのテストはバッテリー消費がかなり少ないため、3DソフトやCAD/CAMソフトを利用すると駆動時間がかなり短くなる可能性があります。この結果から推測すると、実駆動時間は2時間程度と考えたほうがいいかもしれません。バッテリー消費の大きいパーツ構成ですので仕方がないのですが、長時間にわたるプレゼンなどで利用する場合は、電源アダプターの利用を前提としたほうが無難です。
バッテリー駆動時間のテスト結果
公称値 | ※非公開 |
---|---|
BBenchによる計測 | 4時間32分(Core i9/Quadro P2000/4K) |
PCMark 8による計測 | ※未計測 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
プレゼン特化型ミドルレンジWS
ということで、今回はPrecision 15 5000 (5530)のレビューをお届けしました。
このモデルを選ぶメリットは、ミドルレンジクラスでそこそこ動くQuadro P1000 / 2000搭載なのに薄くて小さくて軽いから持ち歩きやすいしカッコイイからクライアントにウケるという点です。この点に尽きると言っても過言ではありません。
パフォーマンスや使い勝手で考えればQuadro P4000 / 5000を搭載した17インチモバイルワークステーションのほうが圧倒的に有利ですし、それらならそこそこ制作もできたりします。Quadro P1000 / 2000では本格的な制作にはちょっと厳しい場合もあり、メインで使うにはパワー不足です。個人制作規模の作品であれば問題ないですが、それなりの規模のプロジェクトには向いていません。
しかしプレゼンや打ち合わせでデータを見たり、プレビューを表示したりするには十分でしょう。Precision 15 5000 (5530)はまさにこの部分を狙ったモデルである、というのが筆者の感想です。
※2019年1月24日時点。現在の価格はセール情報の記事でご確認ください
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