ドスパラのraytrek G5-Rは、15.6インチサイズのノートPCです。高性能なRyzen 7 4800Hとエントリー向けGPUのGeForce GTX 1650 Ti搭載で価格は13万円台と、クリエイター向けノートPCとしてはお手ごろ。パソコンを使った創作活動の入門機に向いています。
人気ペイントツール「CLIP STUDIO PAINT」が正常に動作することも確認されています。ソフトの各種機能だけでなく、片手デバイスの「CLIP STUDIO TABMATE」や液タブ「Wacom One」の動作も検証済み。これから「CLIP STUDIO PAINT」を始めたい人にもおすすめです。
リンク
ソフトとハードの動作検証について(ドスパラ公式サイト)
CLIP STUDIO PAINT公式サイト
CLIP STUDIO TABMATE公式ページ
Wacom One公式ページ
raytrek G5-Rレビューのスペック
OS | ・Windows 10 Home ・Windows 10 Pro |
---|---|
画面サイズ | 15.6インチ |
解像度 | 1920×1080 |
CPU | Ryzen 7 4800H(8コア16スレッド) |
メモリー | 16GB(8GB×2) ※スロット2基、PC4-25600、最大64GB |
SSD | 512GB NVMe SSD ※最大2TB |
HDD | なし |
グラフィックス | GTX 1650 Ti (4GB) |
リフレッシュレート | 60Hz |
モバイル通信 | - |
堅牢性テスト | ※表記なし |
色域 / 輝度 | sRGBカバー率 約99% Adobe RGBカバー率 約76% |
幅×奥行き | 359×244mm |
厚さ | 20mm |
重量 | 約2.0kg |
バッテリー | 約4.1時間 |
※2021年8月4日時点。構成は変更される場合があります
本体カラー | グレー |
---|---|
画面の表面 | 非光沢 |
パネルの種類 | 表記なし ※IPS相当 |
タッチ / ペン | - |
光学ドライブ | - |
テンキー | 3列 |
有線LAN | 1000Mbps |
無線LAN | Wi-Fi 6(最大2.4Gbps) |
Bluetooth | 5.1 |
USB3.2 | 2(Gen1) |
USB3.0 | - |
USB2.0 | 1 |
USB Type-C | 1(3.2 Gen2、DP対応) |
Thunderbolt | - |
メモリーカード | SD |
HDMI | 1(2.1) |
VGA (D-sub15) | - |
DisplayPort | 2(Mini) |
Webカメラ | HD画質(92万画素) |
顔認証カメラ | - |
指紋センサー | - |
付属品 | 120W ACアダプターなど |
オフィス | なし(オプションで追加可能) |
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
この記事の目次
- ▶スペック
- ▶デザインと使いやすさ
- ▶ベンチマーク結果
- ▶まとめ
※2021年8月4日時点、送料込み
デザインと使いやすさ
外観について
raytrek G5-RはゲーミングノートPC向けのCPUを使った高性能なノートPCですが、見た目はゲーミングノートPCほどゴツくはありません。やや厚みはありますが、本体デザインは落ち着いたスタイリッシュな印象です。シーンを選ばずに利用できるでしょう。
ディスプレイについて
ディスプレイのサイズは15.6インチで、解像度は1920×1080ドットのフルHD。ノートPCと一般的なスペックです。リフレッシュレートは、一般のPCやテレビなどと同じ60Hz。デスクトップの文字は2~2.8mm程度でやや小さいものの(スケーリング125%)、読みづらい字はありませんでした。ディスプレイの表面は光沢なしのノングレアで、映り込みが抑えられています。
イラストや写真などのクリエイティブワークでは、ディスプレイの色味が重要です。公式スペックでは色域はsRGBカバー率が99%とのこと。キャリブレーターを使って色域を計測したところ、sRGBカバー率は99.9%でした。ディスプレイ表示用のイラストや写真用には十分なクオリティーです。
色域測定結果
sRGBカバー率 | 99.9% |
---|---|
Adobe RGBカバー率 | 77.3% |
DCI-P3カバー率 | 81.2% |
ただ実際の映像はやや暗く感じます。そのため色がわずかに寒色系で、鮮やかさに欠けます。色味を重視する作業では、キャリブレーション(色の調整)を行なったほうがいいでしょう。
キーボードについて
キーボードはバックライト対応の日本語配列です。数値入力に便利なテンキーが付いていますが、一般的な4列構成ではなく3列構成である点に注意してください。また下から2行目の記号キーがやや小ぶりですが、英数字キーについては違和感なく使えるでしょう。
キーピッチは実測で19mmでした。キートップは14.3mmでやや小さいものの、キーとキーの間隔は標準的です。キーストロークは実測で平均1.29mm。ストロークはやや浅く、入力時にわずかなグラつきを感じます。キーを押した瞬間のクリック感はやや固めで、全体的にカクカクとしたタイプ感です。
タイプ音は控えめです。カクカクとした音が少し聞こえますが、うるさくは感じませんでした。ただし打ち下ろすようにタイプするとパチパチと響くので注意してください。Enterキーやスペースキーも音が響くので、静かな場所では周りに配慮したほうがいいでしょう。
インターフェース/機能について
周辺機器接続用のインターフェース(端子)類は十分な構成です。左右側面にUSB端子があるので取り回しの自由度が高く、繋ぎっぱなしで使う端子類は背面に配置されているのでケーブルがジャマになりません。ただし有線LANは左側面なので、利用時はケーブルがジャマに感じることがあります。
またSDカードサイズのメモリーカードスロットが用意されている点もポイント。デジカメで撮影した画像を、手軽に取り込めます。Type-Cは充電には非対応で映像出力には対応しているとのことですが、試用機では利用できませんでした。
Type-C端子の機能
USB PD 18W充電 | × |
---|---|
USB PD 30W充電 | × |
USB PD 45W充電 | × |
USB PD 65W充電 | × |
USB PD 100W充電 | × |
映像出力 | × |
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 4800H |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | GTX 1650 Ti (4GB) |
※各ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「高パフォーマンス」に設定した上で、標準収録ソフト「Gaming Center」の「電源設定」で「ゲームモード」を選択し、さらに「ターボモード」をオンにした最大パフォーマンス設定で実施しています
※グラフィックス機能内蔵のAMD製プロセッサーは本来「APU」と呼ばれますが、ここではわかりやすさ優先で「CPU」と表記します
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、旧世代のRyzen 7 4800H(8コア/16スレッド)が使われています。旧世代とは言え、性能はまだまだ現役レベル。CPU性能を計測するベンチマークテストを行なったところ、現行世代のCPUのなかでも非常に優れた結果が出ました。特に動画編集や高度な画像処理など、高いCPU性能が求められる処理で威力を発揮するでしょう。
CPUの性能差(マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R20 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 9 5900HX |
5262
|
Core i7-11800H |
5060
|
raytrek G5-R (Ryzen 7 4800H) |
4370
|
Ryzen 7 4800H |
4307
|
Core i9-11900H |
4210
|
Core i7-10870H |
3679
|
Core i7-10875H |
3551
|
Ryzen 5 4600H |
3293
|
Core i7-10750H |
2825
|
Core i5-10300H |
2249
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差(総合性能)
CPU | PassMark 9.0 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 9 5900HX |
23137
|
Core i7-11800H |
21493
|
Core i9-11900H |
21026
|
Ryzen 7 4800H |
19999
|
Core i7-10875H |
19085
|
Core i7-10870H |
18686
|
raytrek G5-R (Ryzen 7 4800H) |
18125
|
Core i7-10750H |
15614
|
Core i5-10300H |
12217
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、専用グラフィックスのGeForce GTX 1650 Tiが使われます。前世代のエントリークラスのGPUであるため、現行世代と比べると性能はやや低め。しかしCPUベンチマークテスト内蔵のグラフィックス機能よりも、圧倒的に高性能です。プロクオリティー動画編集や3D制作など高いGPU性能が求められる作業には向きませんが、イラスト制作や写真の加工、小規模な動画編集には十分でしょう。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 |
11914
|
RTX 2080 |
9599
|
RTX 3070 |
8831
|
RTX 3060 |
8262
|
RTX 2070 |
7660
|
RTX 2060 |
5860
|
GTX 1660 Ti |
5626
|
RTX 3050 Ti |
5166
|
raytrek G5-R(GTX 1650Ti) |
3792
|
GTX 1650 Ti |
3686
|
GTX 1650 |
3178
|
Iris Xe (Core i7) |
1250
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (DirectX 11、フルHD)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 |
28566
|
RTX 2080 |
25078
|
RTX 3070 |
24153
|
RTX 3060 |
21620
|
RTX 2070 |
20037
|
RTX 2060 |
15685
|
GTX 1660 Ti |
14451
|
RTX 3050 Ti |
13385
|
raytrek G5-R(GTX 1650Ti) |
10649
|
GTX 1650 Ti |
10123
|
GTX 1650 |
8758
|
Iris Xe (Core i7) |
4486
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。テスト結果の比較用に14インチモバイルノートPCのThinkPad X1 Carbon Gen9(Core i7-1165G7+16GBメモリー)と、クリエイター向けノートPCのraytrek R5-CA(Core i7-10875H+16GBメモリー+RTX 3060)の結果もまとめました。
ベンチマーク結果では、非常に優秀な結果が出ています。GPU性能が影響するコンテンツ制作のテストではさすがにRTX 3060搭載機種には及びませんが、GPU非搭載のノートPCよりも高いクリエイティブ性能を発揮できます。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9259
10193
9418 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
7689
7072
7927 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
7035
5203
8486 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
Digital Content Creation詳細
ワークロード | スコア |
---|---|
Photo Editing (写真加工) |
9032
12294 |
Rendering and Visualization (3D制作) |
8761
10458 |
Video Editing (動画編集) |
4401
4754 |
クリエイティブ性能
UL Procyonは、アドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測するベンチマークテストです。「Photo Editing」ではPhotoshopとLightroom Classicを、「Video Editing」ではPremiere Proを利用します。テスト結果の比較用にミドルレンジクリエイター向けノートPCのraytrek R5-CA(Core i7-10875H+32GBメモリー+RTX 3060)と、ハイエンドゲーミングノートPCのROG Strix SCAR 15 G533QS(Ryzen 9 5900HX+ 32GBメモリー+RTX 3080 )の結果もまとめました。
Procyonベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Photo Editing |
4801
6579
6811 |
Image Retouching |
4840
6020
6896 |
Batch Processing |
4763
7190
6728 |
Video Editing |
3574
5821
5901 |
raytrek G5-Rは、GPU性能的にはエントリークラスです。ミドルレンジやハイエンド向けのGPUを搭載する機種には及びませんでしたが、それでもスコアは悪くありません。ただしほかのテスト機が32GBメモリー搭載でスコアが伸びたため、相対的にスコアが低く見えるだけとい思われます。
ちなみにテスト結果を見ると、動画編集よりも画像加工に向いていることがわかります。データ容量の大きいイラストを制作するならメモリー容量を、大量の写真を加工/現像するなら高速で大容量のSSDの増設をおすすめします。
ストレージのアクセス速度
ストレージは512GBのNVMe(PCIe 3.0 x4)SSDです。注文時のカスタマイズで容量やSSDの種類を変更できます。
アクセス速度を計測したところ、非常に優秀な結果が出ました。しかし負荷の高い処理を連続で行なうと、シーケンシャルライトの速度が大きく低下しています。サーマルスロットリングの影響が出ているのかもしれません。大量の大容量ファイルを連続して書き込む際に、パフォーマンスが低下する可能性があります。パーツカスタマイズで信頼性の高いSSDを選ぶか、SSDに放熱シートなど貼ったりするといいでしょう。
起動時間
ウィンドウズの起動時間(バッテリー駆動時)は平均10.76秒でした。最近のSSD搭載ノートPCの平均は15秒前後ですので、起動は高速です。待たされている感はほとんどありません。
起動時間の計測結果(手動計測)
1回目 | 10.8秒 |
---|---|
2回目 | 10.6秒 |
3回目 | 10.8秒 |
4回目 | 10.7秒 |
5回目 | 10.9秒 |
平均 | 10.76秒 |
駆動音計測結果
PCに高い負荷がかかると空冷ファンが強く稼働し、駆動音(ファンの回転音や通気口からの風切り音)が大きく聞こえます。夜の静かな時間帯では、周囲に気を配ったほうがいいかもしれません。特に空冷ファンを最大出力で動作させる「ターボモード」を有効にすると音が大きいので注意してください。
駆動音の計測結果
電源オフ | 38.4dBA | - |
---|---|---|
待機中 | 42dBA | ときおり排気音が聞こえる程度。音は気にならない |
ゲームモード高負荷時 | 49.8dBA | 排気音は大きく聞こえる。ヘッドホンを着用すれば気にならない |
ターボモード有効時 | 51.7dBA | 高音域の排気音が大きく聞こえて、ややうるさい。部屋の外にまで音がわずかに聞こえるほど |
ゲーム系ベンチマーク結果
raytrek G5-RはゲーミングノートPCではありませんが、ゲーム系ベンチマークテストも試してみました。GPUはエントリークラスですが、やや重い程度のタイトルでもフルHDの最高画質で快適に楽しめます。重いゲームについては、画質や解像度を調整する必要がありそうです。
ただしリフレッシュレートが60Hzなので、eスポーツレベルのプレーには不向きです。高リフレッシュレートでプレーするなら、外付けのゲーミングディスプレイの利用をおすすめします。
PSO2 ニュージェネシスベンチ(やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
ウルトラ | 6029 |
中 | 19251 |
最低 | 40688 |
※1920×1080ドットの結果。5000以上が快適に遊べる目安
FF14ベンチ:漆黒のヴィランズ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 10058 / 70.5 FPS |
高品質 | 12192 / 88.1 FPS |
標準品質 | 13962 / 103.2 FPS |
※1920×1080ドットの結果。平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
ドラクエXベンチ (超軽い / DX9)
画質 | スコア / 評価 |
最高品質 | 16975 / すごく快適 |
標準品質 | 16935 / すごく快適 |
低品質 | 18069 / すごく快適 |
※1920×1080ドットの結果
イラストや写真向きの手頃なクリエイター向けノートPC
よかった点
Ryzen 7 4800H+16GBメモリーの組み合わせは、非常に高性能です。パフォーマンスだけで考えても、本体価格13万円台は普通にお買い得と言っていいでしょう。またクリエイター向けノートPCとしてはコンパクトかつ軽量で、外観がスタイリッシュである点もポイント。入門用のクリエイター向けノートとしては高コスパな機種です。
気になる点
試用機ではベンチマークテストの結果が、思ったよりも伸びませんでした。エントリークラスとしては十分な性能ですが、より本格的に使いたいならメモリーを32GBに増設したり、より高品質なSSDを選んだほうがいいかもしれません。
※2021年8月4日時点、送料込み
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