ミニPCレビュー

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)レビュー:大人気コンパクトPCのRyzen 8000GE搭載版

3.5
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ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

機材貸し出し:レノボ・ジャパン合同会社

レノボの「ThinkCentre M75q Tiny」シリーズは、ガッツリ使えるパワーと非常にコンパクトで場所を取らない点が人気のデスクトップPCです。最新モデル「ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)」は、CPUにAMDのRyzen 8000GEシリーズを採用。前モデルから性能が大きく向上しています。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

 

値段は8万円台から(記事執筆時)。旧モデルは裏ワザを使えばとんでもなく安く買えたので、値上がりしたと考える人もいるかもしれません。ただ個人的には、現在の相場とベンチマーク結果を見比べると価格相応のパフォーマンスだと考えています。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

3種類のモデルで性能を検証しました 

 

ただし実際に触ってみたとこと、駆動音(通気口からの排気音やファンの回転音など)がだいぶ大きく聞こえました。人によっては気にならないかもしれませんが、個人的には「う~ん」とうなってしまうレベルです。少なくとも静かなPCではありません

 

この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、外観や性能、実際の使い心地などをレビューします。

おことわり

このレビュー記事では、実機を10日間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。

スペック

発売日 2024年6月
OS Windows 11 Home / Pro
CPU Ryzen 8000GEシリーズ
(Ryzen 3 8300GE / Ryzen 3 PRO 8300GE / Ryzen 5 8500GE / Ryzen 5 PRO 8500GE /Ryzen 5 PRO 8600GE / Ryzen 7 PRO 8700GE /)
メモリー DDR5-5200 8~32GB ※SO-DIMM、スロット×2、最大64GB
SSD 256GB~1TB PCIe4.0 SSD ※最大2台まで追加可能
グラフィックス Radeon 700Mシリーズ ※CPU内蔵、RDNA3
(Radeon 740M[Ryzen 3/5] / Radeon 760M[Ryzen 5] / Radeon 780M[Ryzen 7])
通信 なし または Wi-Fi 6/6E&Bluetooth、有線LAN(1Gb)×1
インターフェース
※基本構成
USB3.2 Type-C Gen2(データ通信)×1、USB3.2 Gen2 Type-A×3、USB2.0×3、HDMI×1、DisplayPort×1、有線LAN×1、ヘッドホン端子 ※追加オプションで構成は変わります
ドライブベイ なし
スロット M.2スロット×3(ストレージ用×2、Wi-Fi用×1)
付属品 USBキーボード、USBマウス、スタンド、電源アダプターなど
サイズ / 重量 幅179×奥行き182.9×厚さ36.5mm / 最大約1.25kg

価格

公式サイトの価格

公式サイトでのThinkCentre M75q Tiny Gen 5の価格は以下のとおり(記事執筆時)。一部のモデルは週末や深夜帯(22時から翌6時まで)に値下がりすることがあります。

公式サイトの価格

スペック 価格
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB [即納] 8万1840円
Ryzen 3 PRO 8300GE / 8GB / 256GB [カスタマイズ対応] 8万7285円
Ryzen 7 PRO 8700GE / 16GB / 512GB [即納] ※週末価格 8万1840円
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro [即納] 9万9990円
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro / Office [即納] 12万4960円
Ryzen 5 PRO 8600GE / 8GB / 512GB / Win11 Pro [カスタマイズ対応] 13万2132円

※2024年9月28日時点

楽天直営ショップの価格

楽天では直販サイトよりもちょっと高めの値段に設定されていますが、クーポンや定期的に行なわれるイベントのポイント還元を含めると、公式サイトよりも安く買える場合があります。ただしパーツカスタマイズには対応していません。また旧モデルの「ThinkCentre M75q Tiny Gen 2」も販売されているため、間違って購入しないよう注意してください

楽天直営ショップの価格

スペック 価格
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / 3年保証 8万4800円
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro / 3年保証 9万9800円
Ryzen 7 PRO 8700GE / 16GB / 512GB / 3年保証 10万9800円

※2024年9月28日時点

外観

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5の外観

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

公式スペックでは、縦置きの状態で各部の寸法が記載されています。ただしこの状態はイメージしづらいため、この記事では横向きに設置した状態を標準として各部を説明するのであらかじめご了承ください

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

厚さは36.5mm。デスクトップPCとしては非常にスリムです

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

大きさは幅179mm、奥行き182.9mm

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

一般的なミニPC(写真右)よりもだいぶ大きいのですが、普通のタワー型デスクトップPCと比べれば非常にコンパクト

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ミニPCとの厚さの違い

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

筐体(ケース)は鉄製で、とても頑丈に作られています。フロントパネルは樹脂(プラスチック)製。ブラックのカラーは指紋の跡が少し残りました

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

天板面

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

底面部

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

重さは実測で1.165kg

インターフェース構成

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

前面には左からヘッドホン端子、USB3.2 Gen2 Type-A×2、USB3.2 Gen2 Type-C(データ通信用)、電源ボタン

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

背面には電源コネクター、DisplayPort、USB3.2 Gen2 Type-A×2、キーボード接続用USB2.0、USB2.0×2、有線LAN、Wifiアンテナ用端子(Wi-Fiを追加した場合)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

上部の「1」「2」の部分には、購入時のカスタマイズで追加した端子が配置されます。追加したType-Cは、映像出力とUSB PDに対応

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

キーボード用USB2.0にUSBキーボードを接続すると、Alt+Pキーで電源を入れられるようになります。写真はレノボ純正品ではないキーボード付きのモバイルディスプレイですが、正常に動作することを確認しました(すべてのキーボードでの動作を保証するわけではありません)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

側面に端子類は用意されていません

付属品

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

電源アダプターは90Wの角口タイプ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

アダプターとケーブルを合わせて361g

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

付属のUSBキーボード。ごく普通のフルサイズキーボードです。カスタマイズモデルなら省略することで、購入価格を少し安く抑えられます

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

標準付属のUSBマウス。ThinkPadっぽい色の組み合わせですが、特にThinkPadシリーズというわけでもありません

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

付属のバーティカルスタンド

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

スタンドを使えば、縦置き時に安定した状態で設置できます

改造・パーツ交換について

本体の分解方法

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

まずは本体背面のネジを外します。検証機の場合は、ドライバーを使わなくても外れました

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ネジを取り外したあと、天板面をスライドさせてケースを取り外します

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ケースを外した状態

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

マザーボード全体

メモリーの増設方法

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

メモリーは空冷ファンの下に配置されています。ドライバーなどは必要なく、手でパカッと外れました

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

メモリースロットは2基で、規格はDDR5-5200。最大容量は64GB。試用したRyzen 7モデルには、16GB×2のメモリーが使われていました

SSDの増設・換装

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ストレージ用のM.2スロットは2基。対応規格はPCIe 4.0 x4。ネジではなくプラスチック製のピン(写真の青い部分)で固定されているため、交換・増設時でもドライバーは不要です。ピン穴の位置的にType-2242にも対応してるような雰囲気

Wi-Fi関係

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

Wi-Fiカードは「5W10V25844」。ネットで調べたところ、どうやらレノボ製っぽいです

メンテナンス性

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

カバーの取り外しからSSD / メモリーの交換まで、すべてドライバー不要で行なえます。また空冷ファンは取り外し可能で、掃除も(比較的)簡単です。メンテナンス性は非常に優秀と言っていいでしょう

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

その気になればCPUも交換できるっぽかったのですが、今回は貸出機を使っているため、固定レバーの動作を確認するだけにとどめておきました

UEFI(BIOS)設定画面

※UEFI(BIOS)画面を開くには、電源オン後のロゴが表示されているあいだに「F1」キーを押します。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Main」タブ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Device」タブ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Advanced」タブ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Power」タブ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Security」タブ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Startup]タブ

パフォーマンス設定

UEFI(BIOS)からのパフォーマンス調整については、「Power」タブの「Intelligent Cooling」で変更可能です。ただしこの設定は、標準収録のWindows用アプリ「Lenovo Commercial Vantage」と連動しているため、パフォーマンスのためにUEFI(BIOS)画面を操作する必要はありません

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

「Power」タブの「Intelligent Cooling」でパフォーマンスを変更できます

 

モードの種類

項目名 概要
Balance 騒音と性能のバランスを取ったモード
Performance ※標準 性能優先モード。ファンの音はかなり大きい
Full Speed ファンスピードが最大のモード。性能は「Performance」と変わらない

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

標準収録の「Lenovo Commercial Vantage」。「デバイス設定」→「グローバル電源管理」の「インテリジェント・クーリング・エンジン」でもパフォーマンス調整を行なえます

 

ベンチマーク結果

今回の検証では、3種類のモデルを試用しました。それぞれCPUやメモリー容量、グラフィックス機能などが異なります。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

検証で利用した3種類のモデル

検証機のスペック

CPU Ryzen 7 PRO 8700GE Ryzen 5 PRO 8600GE Ryzen 5 8500GE
メモリー 32GB(16B×2) 16GB(8B×2)
ストレージ 1TB SSD 512GB SSD
グラフィックス Radeon 780M Radeon 760M Radeon 740M

※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります

パフォーマンス設定について

ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」に設定した上で、「Lenovo Commercial Vantage」の「インテリジェント・クーリング・エンジン」を「バランス・モード」と「パフォーマンス・モード」に切り替えて行なっています。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

騒音をやや抑えた「バランス」と、性能優先の「パフォーマンス」。標準では「パフォーマンス」に設定されています

ストレージ性能

使われているストレージは、PCIe 4.0 x4接続です。容量は256GBから1TBまで。試用機では、なかなか高速なSSDが使われていました。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

1TB SSDのアクセス速度

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

試用機ではサムスン製の「PM9C1」が使われていました ※異なるSSDが使われている場合があります

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

512GB SSDのアクセス速度

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

こちらはSKハイニックス製 ※異なるSSDが使われている場合があります

CPU性能

CPUとしては、Zen4世代のRyen 8000GEシリーズが使われています。名称に「PRO」の付いたものは、セキュリティー機能を強化したビジネス向けです。型番末尾の「E」は、「省電力性能重視タイプ」であることを表わします。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

各CPUのスペック

 

CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」の結果は以下のとおり。今回試用した3種類のモデルで見ると、「Ryzen 7 PRO 8700GE」 → 「Ryzen 5 PRO 8600G」 → 「Ryzen 5 8500GE」の順で高性能です。

同じRyzen 5でも「8500GE」と「PRO 8600GE」とで性能が異なるのは、コア構成の違いによるもの。8500GEでは通常のZen 4ベースコアと縮小版のZen 4cコアが使われており、その差が現われていると考えていいでしょう。すべてZen 4コアのPRO 8600GEのほうが高性能ですが、その差はわずかで、ベンチマークテストでは10%弱程度の違いでしかありませんでした。

 

CPU別の性能比較

CPU CINEBENCH R23 Score
Ryzen 7 PRO 8700GE ※バランス
S1806
M13958
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス
S1810
M14957
Ryzen 5 PRO 8600GE ※バランス
S1787
M11322
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス
S1789
M12105
Ryzen 5 8500GE ※バランス
S1783
M10360
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス
S1787
M11072

※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果

 

省電力版とは言えデスクトップ向けのCPUが使われているだけあって、なかなか高性能です。特にRyzen 7モデルであれば、ノートPC向けを搭載したミニPCよりも高いスコアが出ています。またRyzen 5000GEシリーズを搭載した前モデルと比べても、性能は大きく向上しました(中上位モデルに関して)。

 

最近のミニPCとの性能比較(標準設定時)

CPU CINEBENCH R23 Score
GMKtec NucBox G3(Intel N100)
S796
M2882
GMKtec NucBox M5 Plus(Ryzen 7 5825U)
S1364
M6514
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス
S1787
M11072
ThinkCentre M75q Gen2(Ryzen 7 PRO 5750GE)
S1499
M11278
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H)
S1723
M11651
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス
S1789
M12105
MINISFORUM UM773 Lite(Ryzen 7 7735HS)
S1571
M12478
MINISFORUM MS-01(Core i9-12900H)
S1720
M14156
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS)
S1781
M14483
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス
S1810
M14957

※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果

 

スタンダードタイプのデスクトップPCと比べても、ベンチマークスコアは悪くありません。Ryzen 5モデルでも、インテルの第12~14世代Core i5と同等レベルと考えていいでしょう。

 

デスクトップPC向けCPUとの比較

CPU CINEBENCH R23 Score
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス
S1787
M11072
IdeaCentre 5i Gen 8(Core i5-13400)
S1772
M11826
Inspiron 3030S(Core i5-14400)
S1700
M11873
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス
S1789
M12105
Inspiron 3020(Core i5-13400)
S1762
M13666
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス
S1810
M14957

※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果

グラフィックス性能

グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon 740M / 760M / 780Mが使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストを行なったところ、Ryzen 7モデルのRadeon 780Mはそこそこ優秀ではあったものの、Ryzen 5モデルでは控えめな結果となりました。そのRadeon 780Mについても、3DMarkでは平均以下です。省電力CPUということで、スコアが多少低めに出ているのかもしれません。

 

ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)

GPU 3DMark Time Spy Graphics
RTX 3050
4874
Intel Arc Graphics(Meteor Lake)
3759
GTX 1650
3444
Radeon 780M(RDNA3)
2727
Ryzen7モデル(Radeon 780M)
2456
Radeon 680M(RDNA2)
2350
Radeon 760M(RDNA3)
2282
Iris Xe
1522
Ryzen5モデル(Radeon 760M)
1314
Radeon 660M(RDNA2)
1189
Ryzen5モデル(Radeon 740M)
1038

※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値

PCを使った作業の快適さ

PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。

 

テスト結果の見方

テスト名 概要
Essentials
(一般利用)
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する
Productivity
(ビジネス利用)
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい
Digital Contents Creation
(コンテンツ制作)
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5では、Ryzen 5 / Ryzen 7モデルで優秀な結果が出ています。一般利用やビジネス利用においては、それぞれのモデルで大きな性能差は見受けられません。ただしコンテンツ制作のテストでは、グラフィックス性能の影響で比較的大きな差が出ました。

 

PCMark 10ベンチマーク結果

テスト スコア
Essentials
(一般的な利用)
目標値:4100
Ryzen710755
Ryzen5 Pro10607
Ryzen510228
LarkBox7142
M75q10256
UM77310783
GT13P10921
MS-0110849
Productivity
(ビジネス利用)
目標値:4500
Ryzen710805
Ryzen5 Pro10616
Ryzen510258
LarkBox4879
M75q9930
UM7739785
GT13P6840
MS-017023
Digital Contents Creation
(コンテンツ制作)
目標値:3450
Ryzen78559
Ryzen5 Pro7512
Ryzen55993
LarkBox2515
M75q5707
UM7738695
GT13P7429
MS-017978

※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの

比較機のスペック(ミニPC)

LarkBox X 2023 Intel N100 / 12GB / UHD
ThinkCentre M75q Gen2 Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon
UM773 Lite Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M
GEEKOM GT13 Pro Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe
MS-01 Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe

クリエイティブ性能

「UL Procyon」は、世界的にも利用者が多く「デファクトスタンダード」とも言えるアドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測します。「PCMark 10」と比べて、より高度で実践的なテストを行なう点が特徴です。

テスト結果の見方

テスト名 概要
Photo Editing 「Photoshop」と「Lightroom Classic」を利用した、写真の加工・出力に関する総合評価
Video Editing 「Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間からスコアが算出される

 

テストはRyzen 7モデルのみで行ないました。検証機とそのほかのミニPCの結果は、以下のグラフのとおり。ミニPCのなかでは比較的高めの性能ですが、軽めの写真加工程度なら問題なく利用できるはずです。

 

クリエイティブ性能の比較

CPU UL Procyon
ThinkCentre M75q Gen5 Ryzen 7
P5952
V8065
MINISFORUM MS-01
P4631
V5491
MINISFORUM UM773 Lite
※エラー
V7234
GEEKOM AE7
P5772
V7195
MINISFORUM MS-01
P5349
V7755

※「P」は「Photo Editing」、「V」は「Video Editing」。スコアは当サイトの実機計測結果

比較機のスペック(ミニPC)

UM773 Lite Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M
GEEKOM NUC AE7 Ryzen 9 7940HS / 32GB / Radeon 780M
GEEKOM GT13 Pro Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe
MS-01 Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe

ゲーム性能について

旧世代のCPUが使われていることもあって、ゲーム性能はかなり低めです。よっぽど軽いゲームならなんとかなりますが、ゲームのプレーは考えないほうが無難でしょう。

※テスト結果はすべて「バランス・モード」時のものです

標準設定時

エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(やや軽い)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

フルHDの最低画質時だとほぼ75 fps以上前後で、ときおりフレームレートが下がっても常時60 fps以上はキープしていました。普通に遊べるレベルですが、高リフレッシュレート時のなめらかな動きは感じられません。画質を上げると動きがカクつくので、標準設定ではこのあたりが限界でしょう。

フレームレート

最低画質 最高画質
75 fps前後 50 fps前後

原神(軽い)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

フルHDの最低画質でほぼ60fps。ただし派手なエフェクトやオブジェクトが多いシーンではフレームレートが落ちるかもしれません。とりあえずカジュアルには楽しめるでしょう。

フレームレート

最低画質 最高画質
ほぼ 60fpsでカクつきはナシ 40 fps前後でカクカクと感じる

FF14ベンチ(やや重い)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

フルHDのデスクトップ向け標準品質(最低プリセット)で「5988」の「普通」。平均フレームレートは40.84 fpsで遊べないことはないのですが、動きがカクカクに感じるはずです。

フレームレート

最低画質 最高画質
5988(普通) 平均40.84 fps 3036(設定変更を推奨) 平均21.13 fps

SF6ベンチ(軽い)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

フルHDの最低画質で平均60 fpsと条件はなんとかクリアー。しかし最低画質だとグラフィックスがかなりショボイので注意してください。気にしないのならアリ。

フレームレート

最低画質 最高画質
FIGHTING GROUND:平均59.97 fps(快適にプレイできます) FIGHTING GROUND:平均28.45 fps(動作困難です)

サイバーパンク2077(超重い)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

平均フレームレートはゲーム機(ニンテンドースイッチ)レベルではあるものの、ときおり30 fpsを割り込むことがあり、かなりカクついて見えます。正直なところ、プレーは厳しいレベルです。

フレームレート

最低画質 最高画質
平均33.78 fpsでカクカク ※未計測

フレーム生成有効時

AMDの設定ユーティリティー「AMD Software」からAMDのフレーム生成である「AMFM」を有効化したりゲーム内のフレーム生成機能を利用すると、フレームレートが向上する場合があります。ただしどんなゲームでも改善されるわけではなく、逆にフレームレートが落ちてしまうこともあるようです。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

エーペックスレジェンズではAMFMを有効にすると、フレームレートが75 fps前後→50 fps以下に落ち込みました

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

サイバーパンク2077では、ゲーム内設定のフレーム生成を有効化することでフレームレートが平均33 fps→平均56 fpsに向上しています

熱と騒音について

CPUの熱について

※計測時の室温は27度前後。室温が変わると、結果が異なる場合があります
※Ryzen 5モデルの計測データを誤って削除してしまったため、Ryzen 7モデルのデータのみを紹介します

ベンチマーク中におけるCPUの温度と消費電力を確認したところ、興味深い現象が見られました。どうやら規定の温度を一定時間保ち続けると、CPUの消費電力が下がる仕組みのようです。

 

まず標準設定のパフォーマンス・モードで見ると、テスト開始から5分20秒あたりまで消費電力は42W前後を推移していました。そこから消費電力が下がりはじめ、最終的には35W前後を推移しています。平均温度は76.8度ですが、消費電力が低下する前は79.4度、低下してからは74度です。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移(パフォーマンス・モード時)

 

バランス・モードではもっとタイミングが早く、開始から3分程度で消費電力が低下しました。低下前の平均は消費電力が34.79Wで温度が68.3度、低下後は消費電力28.24Wが温度が65.2度。パフォーマンス・モードに比べてファンの出力が抑えられているため、そのぶん早く電力制限のタイミングに達したのかもしれません。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移(バランス・モード時)

 

UEFI BIOSからのみ設定できる「Full Speed」モードでは逆にタイミングが遅く、消費電力が低下したのは開始から6分47秒後でした。低下前の平均は消費電力が41.7Wで温度が66.5度、低下後は消費電力35.5Wが温度が62.8度。PCの状態的にはもっとも温度が低いこのモードが理想的ではあるものの、騒音がとんでもなく大きいので現実的ではありません。

 

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

まとめると、「Ryzen 7モデルでは、CPUの消費電力が最大42W前後」「温度については高負荷時でも問題ないレベル」といったところです。

 

各項目の平均値と最大値

パフォーマンス バランス フルスピード
CPU消費電力 42W前後→35W前後 35W前後→28W前後 42W前後→35W前後
CPU温度 79.4度前後→74度 68.3度前後→65.2度 66.5度前後→62.8度

本体の駆動音について

駆動音(ファンの回転音や通気口からの風切り音)は、かなり大きく聞こえます。モードを変えても基本的には変わらず、Ryzen 7モデルでもRyzen 5モデルでも同じでした。ただし今回は本体から20cm離れた場所にマイクを置いて計測したため、多少数値が大きめに出ているかもしれません。設置場所や使い方によって大きく変わる可能性はあるものの、基本的には駆動音が大きいと考えたほうがいいでしょう。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5

本体から20cm離れた場所にマイクを置いて計測しています

 

駆動音の計測結果(Ryzen 7モデル)

待機中 37.1dB前後 ほぼ無音
軽作業時(パフォーマンス) 38~49.7dB前後 排気音とファンの回転音が非常に大きい。ただし音が聞こえるのは断続的かつ短時間なので、それほど気にならない
高負荷時(パフォーマンス) 49.6dB前後 常時排気音が非常に大きく、とてもうるさく感じる
軽作業時(バランス) 38~47.7dB前後 無音のときもあれば、かなり大きく聞こえることもある。うるさいのは短時間
高負荷時(バランス) 39~48dB前後 はじめは「サーッ」という音だが、時間がたつにつれて排気音と回転音が大きく聞こえる。人によってはうるさく感じるかも
(参考)エアコンの最大出力 48~58dBA前後

 

駆動音の計測結果(Ryzen 5 PRO 8600GEモデル)

待機中 37.1dB前後 ほぼ無音
軽作業時(パフォーマンス) 37~50.2dB前後 ほとんどは静かだが、定期的に短時間のあいだ排気音がとても大きく聞こえる
高負荷時(パフォーマンス) 50dB前後 排気音が非常に大きい。USB扇風機の「強」程度。ガマンはできるが、長時間聞き続けるのはストレスを感じる
軽作業時(バランス) 39~48dB前後 ほとんどは静かだが、定期的に短時間のあいだ排気音がとても大きく聞こえる
高負荷時(バランス) 42~47dB前後 排気音が大きい。ゲーミングノートPCをフルパワーでぶん回しているときと変わらないくらい
(参考)エアコンの最大出力 48~58dBA前後

 

駆動音の計測結果(Ryzen 5 PRO 8600GEモデル)

待機中 37.1dB前後 ほぼ無音
軽作業時(パフォーマンス) 38~51dB前後 排気音とファンの回転音が大きい。ただし音が聞こえるのは断続的かつ短時間なので、それほど気にならない
高負荷時(パフォーマンス) 51.5dB前後 常時排気音が非常に大きく、とてもうるさく感じる
軽作業時(バランス) 39~45dB前後 無音のときもあれば、かなり大きく聞こえることもある。うるさいのは短時間
高負荷時(バランス) 46dB前後 排気音と回転音が大きく聞こえる。人によってはうるさく感じるかも
(参考)エアコンの最大出力 48~58dBA前後

前モデルとの違い

2020~2022年に発売された前モデル「ThinkCentre M75q Tiny Gen 2」とは、スペックだけでなく、さまざまな面が異なります。

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

本体サイズや外観はほぼ同じ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

フロントパネルではGen5で、USB Type-Aの数がひとつ増えました

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

背面のインターフェース構成はほぼ変わっていません(Gen2のType-Cは追加オプションによるもの)

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

本体内部はマザーボードのレイアウトが大きく変わり、2.5インチストレージのスペースがなくなりました。代わりにストレージ用のM.2スロットが1基付いています

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

前モデルまではメモリーとSSDのスロットが底面部にありました

考察とまとめ

ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)

グラフィックス系はいまひとつ

今回はThinkCentre M75q Tiny Gen 5の3モデルでベンチマークテストを行ないましたが、どのモデルも値段相応のパフォーマンスが出ていると思います。事務作業用としては、非常に優秀です。さらにミニPCのように知名度の低いメーカー製ではなく、超大手であるレノボ製である点がポイント。ミニPCはある種バクチ的なところがありますが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5であれば品質的にもサポート的にも安心して使えます。

ただし気になるのは、グラフィックス性能が弱い点です。RDNA3とのことでちょっと期待していたのですが、正直なところイメージしていたほどではありませんでした。特にRyzen 5モデルのRadeon 740M / 760Mは性能が低く、上位のRyzen 7モデルでもほどほど。ごく軽いゲームなら楽しめますが、基本的には事務作業用と考えたほうがいいでしょう。

騒音を抑える手段がない

この機種の最大の弱点は、駆動音が大きい点です。そして、騒音対策のためにできることがほとんどない点が致命的だと思います。

一般的なPCでは静音性重視のモードが用意されていることが多いのですが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5にはありません。またCPUのランクを下げれば騒音がマシになることが多いのですが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5ではRyzen 5モデルとRyzen 7モデルでほとんど変わりませんでした。大きな音が出る状態を、受け入れるしかない状況です。設置場所によっては多少緩和できるはずですが、基本的には音が大きいままで使うしかありません。その点を踏まえた上で、十分検討してください。

記事を書いた人
こまめ(タカハシリョウ)

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