レノボの「ThinkCentre M75q Tiny」シリーズは、ガッツリ使えるパワーと非常にコンパクトで場所を取らない点が人気のデスクトップPCです。最新モデル「ThinkCentre M75q Tiny Gen 5(AMD)」は、CPUにAMDのRyzen 8000GEシリーズを採用。前モデルから性能が大きく向上しています。
値段は8万円台から(記事執筆時)。旧モデルは裏ワザを使えばとんでもなく安く買えたので、値上がりしたと考える人もいるかもしれません。ただ個人的には、現在の相場とベンチマーク結果を見比べると価格相応のパフォーマンスだと考えています。
ただし実際に触ってみたとこと、駆動音(通気口からの排気音やファンの回転音など)がだいぶ大きく聞こえました。人によっては気にならないかもしれませんが、個人的には「う~ん」とうなってしまうレベルです。少なくとも静かなPCではありません。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、外観や性能、実際の使い心地などをレビューします。
おことわり
このレビュー記事では、実機を10日間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。
スペック
発売日 | 2024年6月 |
---|---|
OS | Windows 11 Home / Pro |
CPU | Ryzen 8000GEシリーズ (Ryzen 3 8300GE / Ryzen 3 PRO 8300GE / Ryzen 5 8500GE / Ryzen 5 PRO 8500GE /Ryzen 5 PRO 8600GE / Ryzen 7 PRO 8700GE /) |
メモリー | DDR5-5200 8~32GB ※SO-DIMM、スロット×2、最大64GB |
SSD | 256GB~1TB PCIe4.0 SSD ※最大2台まで追加可能 |
グラフィックス | Radeon 700Mシリーズ ※CPU内蔵、RDNA3 (Radeon 740M[Ryzen 3/5] / Radeon 760M[Ryzen 5] / Radeon 780M[Ryzen 7]) |
通信 | なし または Wi-Fi 6/6E&Bluetooth、有線LAN(1Gb)×1 |
インターフェース ※基本構成 |
USB3.2 Type-C Gen2(データ通信)×1、USB3.2 Gen2 Type-A×3、USB2.0×3、HDMI×1、DisplayPort×1、有線LAN×1、ヘッドホン端子 ※追加オプションで構成は変わります |
ドライブベイ | なし |
スロット | M.2スロット×3(ストレージ用×2、Wi-Fi用×1) |
付属品 | USBキーボード、USBマウス、スタンド、電源アダプターなど |
サイズ / 重量 | 幅179×奥行き182.9×厚さ36.5mm / 最大約1.25kg |
価格
公式サイトの価格
公式サイトでのThinkCentre M75q Tiny Gen 5の価格は以下のとおり(記事執筆時)。一部のモデルは週末や深夜帯(22時から翌6時まで)に値下がりすることがあります。
公式サイトの価格
スペック | 価格 |
---|---|
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB [即納] | 8万1840円 |
Ryzen 3 PRO 8300GE / 8GB / 256GB [カスタマイズ対応] | 8万7285円 |
Ryzen 7 PRO 8700GE / 16GB / 512GB [即納] ※週末価格 | 8万1840円 |
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro [即納] | 9万9990円 |
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro / Office [即納] | 12万4960円 |
Ryzen 5 PRO 8600GE / 8GB / 512GB / Win11 Pro [カスタマイズ対応] | 13万2132円 |
※2024年9月28日時点
楽天直営ショップの価格
楽天では直販サイトよりもちょっと高めの値段に設定されていますが、クーポンや定期的に行なわれるイベントのポイント還元を含めると、公式サイトよりも安く買える場合があります。ただしパーツカスタマイズには対応していません。また旧モデルの「ThinkCentre M75q Tiny Gen 2」も販売されているため、間違って購入しないよう注意してください。
楽天直営ショップの価格
スペック | 価格 |
---|---|
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / 3年保証 | 8万4800円 |
Ryzen 5 PRO 8500GE / 16GB / 512GB / Win11 Pro / 3年保証 | 9万9800円 |
Ryzen 7 PRO 8700GE / 16GB / 512GB / 3年保証 | 10万9800円 |
※2024年9月28日時点
外観
インターフェース構成
付属品
改造・パーツ交換について
本体の分解方法
メモリーの増設方法
SSDの増設・換装
Wi-Fi関係
メンテナンス性
UEFI(BIOS)設定画面
※UEFI(BIOS)画面を開くには、電源オン後のロゴが表示されているあいだに「F1」キーを押します。
パフォーマンス設定
UEFI(BIOS)からのパフォーマンス調整については、「Power」タブの「Intelligent Cooling」で変更可能です。ただしこの設定は、標準収録のWindows用アプリ「Lenovo Commercial Vantage」と連動しているため、パフォーマンスのためにUEFI(BIOS)画面を操作する必要はありません。
モードの種類
項目名 | 概要 |
---|---|
Balance | 騒音と性能のバランスを取ったモード |
Performance ※標準 | 性能優先モード。ファンの音はかなり大きい |
Full Speed | ファンスピードが最大のモード。性能は「Performance」と変わらない |
ベンチマーク結果
今回の検証では、3種類のモデルを試用しました。それぞれCPUやメモリー容量、グラフィックス機能などが異なります。
検証機のスペック
CPU | Ryzen 7 PRO 8700GE | Ryzen 5 PRO 8600GE | Ryzen 5 8500GE |
---|---|---|---|
メモリー | 32GB(16B×2) | 16GB(8B×2) | |
ストレージ | 1TB SSD | 512GB SSD | |
グラフィックス | Radeon 780M | Radeon 760M | Radeon 740M |
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
パフォーマンス設定について
ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に、電源モードを「バランス」に設定した上で、「Lenovo Commercial Vantage」の「インテリジェント・クーリング・エンジン」を「バランス・モード」と「パフォーマンス・モード」に切り替えて行なっています。
ストレージ性能
使われているストレージは、PCIe 4.0 x4接続です。容量は256GBから1TBまで。試用機では、なかなか高速なSSDが使われていました。
CPU性能
CPUとしては、Zen4世代のRyen 8000GEシリーズが使われています。名称に「PRO」の付いたものは、セキュリティー機能を強化したビジネス向けです。型番末尾の「E」は、「省電力性能重視タイプ」であることを表わします。
CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」の結果は以下のとおり。今回試用した3種類のモデルで見ると、「Ryzen 7 PRO 8700GE」 → 「Ryzen 5 PRO 8600G」 → 「Ryzen 5 8500GE」の順で高性能です。
同じRyzen 5でも「8500GE」と「PRO 8600GE」とで性能が異なるのは、コア構成の違いによるもの。8500GEでは通常のZen 4ベースコアと縮小版のZen 4cコアが使われており、その差が現われていると考えていいでしょう。すべてZen 4コアのPRO 8600GEのほうが高性能ですが、その差はわずかで、ベンチマークテストでは10%弱程度の違いでしかありませんでした。
CPU別の性能比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
Ryzen 7 PRO 8700GE ※バランス |
1806
13958 |
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス |
1810
14957 |
Ryzen 5 PRO 8600GE ※バランス |
1787
11322 |
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス |
1789
12105 |
Ryzen 5 8500GE ※バランス |
1783
10360 |
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス |
1787
11072 |
※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果
省電力版とは言えデスクトップ向けのCPUが使われているだけあって、なかなか高性能です。特にRyzen 7モデルであれば、ノートPC向けを搭載したミニPCよりも高いスコアが出ています。またRyzen 5000GEシリーズを搭載した前モデルと比べても、性能は大きく向上しました(中上位モデルに関して)。
最近のミニPCとの性能比較(標準設定時)
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
GMKtec NucBox G3(Intel N100) |
796
2882 |
GMKtec NucBox M5 Plus(Ryzen 7 5825U) |
1364
6514 |
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス |
1787
11072
|
ThinkCentre M75q Gen2(Ryzen 7 PRO 5750GE) |
1499
11278 |
GEEKOM GT13 Pro(Core i9-13900H) |
1723
11651 |
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス |
1789
12105
|
MINISFORUM UM773 Lite(Ryzen 7 7735HS) |
1571
12478 |
MINISFORUM MS-01(Core i9-12900H) |
1720
14156 |
GEEKOM AE7(Ryzen 9 7940HS) |
1781
14483 |
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス |
1810
14957
|
※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果
スタンダードタイプのデスクトップPCと比べても、ベンチマークスコアは悪くありません。Ryzen 5モデルでも、インテルの第12~14世代Core i5と同等レベルと考えていいでしょう。
デスクトップPC向けCPUとの比較
CPU | CINEBENCH R23 Score |
---|---|
Ryzen 5 8500GE ※パフォーマンス |
1787
11072
|
IdeaCentre 5i Gen 8(Core i5-13400) |
1772
11826 |
Inspiron 3030S(Core i5-14400) |
1700
11873 |
Ryzen 5 PRO 8600GE ※パフォーマンス |
1789
12105
|
Inspiron 3020(Core i5-13400) |
1762
13666 |
Ryzen 7 PRO 8700GE ※パフォーマンス |
1810
14957
|
※「S」はシングル、「M」はマルチ。そのほかのスコアは当サイトの実機計測結果
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のRadeon 740M / 760M / 780Mが使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストを行なったところ、Ryzen 7モデルのRadeon 780Mはそこそこ優秀ではあったものの、Ryzen 5モデルでは控えめな結果となりました。そのRadeon 780Mについても、3DMarkでは平均以下です。省電力CPUということで、スコアが多少低めに出ているのかもしれません。
ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphics |
---|---|
RTX 3050 |
4874
|
Intel Arc Graphics(Meteor Lake) |
3759
|
GTX 1650 |
3444
|
Radeon 780M(RDNA3) |
2727
|
Ryzen7モデル(Radeon 780M) |
2456
|
Radeon 680M(RDNA2) |
2350
|
Radeon 760M(RDNA3) |
2282
|
Iris Xe |
1522
|
Ryzen5モデル(Radeon 760M) |
1314
|
Radeon 660M(RDNA2) |
1189
|
Ryzen5モデル(Radeon 740M) |
1038
|
※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Essentials (一般利用) |
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する |
Productivity (ビジネス利用) |
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) |
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する |
ThinkCentre M75q Tiny Gen 5では、Ryzen 5 / Ryzen 7モデルで優秀な結果が出ています。一般利用やビジネス利用においては、それぞれのモデルで大きな性能差は見受けられません。ただしコンテンツ制作のテストでは、グラフィックス性能の影響で比較的大きな差が出ました。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10755
10607
10228
7142
10256
10783
10921
10849 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
10805
10616
10258
4879
9930
9785
6840
7023 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
8559
7512
5993
2515
5707
8695
7429
7978 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
▶UM773 Lite | Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M |
▶GEEKOM GT13 Pro | Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe |
▶MS-01 | Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe |
クリエイティブ性能
「UL Procyon」は、世界的にも利用者が多く「デファクトスタンダード」とも言えるアドビ製プロクリエイター向けソフトの快適さを計測します。「PCMark 10」と比べて、より高度で実践的なテストを行なう点が特徴です。
テスト結果の見方
テスト名 | 概要 |
---|---|
Photo Editing | 「Photoshop」と「Lightroom Classic」を利用した、写真の加工・出力に関する総合評価 |
Video Editing | 「Premiere Pro」を使ったテストで、フルHD (H.264)および4K (H.265)動画の出力にかかった時間からスコアが算出される |
テストはRyzen 7モデルのみで行ないました。検証機とそのほかのミニPCの結果は、以下のグラフのとおり。ミニPCのなかでは比較的高めの性能ですが、軽めの写真加工程度なら問題なく利用できるはずです。
クリエイティブ性能の比較
CPU | UL Procyon |
---|---|
ThinkCentre M75q Gen5 Ryzen 7 |
5952
8065
|
MINISFORUM MS-01 |
4631
5491 |
MINISFORUM UM773 Lite |
※エラー
7234 |
GEEKOM AE7 |
5772
7195 |
MINISFORUM MS-01 |
5349
7755 |
※「P」は「Photo Editing」、「V」は「Video Editing」。スコアは当サイトの実機計測結果
比較機のスペック(ミニPC)
▶UM773 Lite | Ryzen 7 7735HS / 16GB / Radeon 680M |
---|---|
▶GEEKOM NUC AE7 | Ryzen 9 7940HS / 32GB / Radeon 780M |
▶GEEKOM GT13 Pro | Core i9-13900H / 32GB / Iris Xe |
▶MS-01 | Core i9-12900H / 32GB / Iris Xe |
ゲーム性能について
旧世代のCPUが使われていることもあって、ゲーム性能はかなり低めです。よっぽど軽いゲームならなんとかなりますが、ゲームのプレーは考えないほうが無難でしょう。
※テスト結果はすべて「バランス・モード」時のものです
標準設定時
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(やや軽い)
フルHDの最低画質時だとほぼ75 fps以上前後で、ときおりフレームレートが下がっても常時60 fps以上はキープしていました。普通に遊べるレベルですが、高リフレッシュレート時のなめらかな動きは感じられません。画質を上げると動きがカクつくので、標準設定ではこのあたりが限界でしょう。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
75 fps前後 | 50 fps前後 |
原神(軽い)
フルHDの最低画質でほぼ60fps。ただし派手なエフェクトやオブジェクトが多いシーンではフレームレートが落ちるかもしれません。とりあえずカジュアルには楽しめるでしょう。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
ほぼ 60fpsでカクつきはナシ | 40 fps前後でカクカクと感じる |
FF14ベンチ(やや重い)
フルHDのデスクトップ向け標準品質(最低プリセット)で「5988」の「普通」。平均フレームレートは40.84 fpsで遊べないことはないのですが、動きがカクカクに感じるはずです。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
5988(普通) 平均40.84 fps | 3036(設定変更を推奨) 平均21.13 fps |
SF6ベンチ(軽い)
フルHDの最低画質で平均60 fpsと条件はなんとかクリアー。しかし最低画質だとグラフィックスがかなりショボイので注意してください。気にしないのならアリ。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
FIGHTING GROUND:平均59.97 fps(快適にプレイできます) | FIGHTING GROUND:平均28.45 fps(動作困難です) |
サイバーパンク2077(超重い)
平均フレームレートはゲーム機(ニンテンドースイッチ)レベルではあるものの、ときおり30 fpsを割り込むことがあり、かなりカクついて見えます。正直なところ、プレーは厳しいレベルです。
フレームレート
最低画質 | 最高画質 |
---|---|
平均33.78 fpsでカクカク | ※未計測 |
フレーム生成有効時
AMDの設定ユーティリティー「AMD Software」からAMDのフレーム生成である「AMFM」を有効化したりゲーム内のフレーム生成機能を利用すると、フレームレートが向上する場合があります。ただしどんなゲームでも改善されるわけではなく、逆にフレームレートが落ちてしまうこともあるようです。
熱と騒音について
CPUの熱について
※計測時の室温は27度前後。室温が変わると、結果が異なる場合があります
※Ryzen 5モデルの計測データを誤って削除してしまったため、Ryzen 7モデルのデータのみを紹介します
ベンチマーク中におけるCPUの温度と消費電力を確認したところ、興味深い現象が見られました。どうやら規定の温度を一定時間保ち続けると、CPUの消費電力が下がる仕組みのようです。
まず標準設定のパフォーマンス・モードで見ると、テスト開始から5分20秒あたりまで消費電力は42W前後を推移していました。そこから消費電力が下がりはじめ、最終的には35W前後を推移しています。平均温度は76.8度ですが、消費電力が低下する前は79.4度、低下してからは74度です。
バランス・モードではもっとタイミングが早く、開始から3分程度で消費電力が低下しました。低下前の平均は消費電力が34.79Wで温度が68.3度、低下後は消費電力28.24Wが温度が65.2度。パフォーマンス・モードに比べてファンの出力が抑えられているため、そのぶん早く電力制限のタイミングに達したのかもしれません。
UEFI BIOSからのみ設定できる「Full Speed」モードでは逆にタイミングが遅く、消費電力が低下したのは開始から6分47秒後でした。低下前の平均は消費電力が41.7Wで温度が66.5度、低下後は消費電力35.5Wが温度が62.8度。PCの状態的にはもっとも温度が低いこのモードが理想的ではあるものの、騒音がとんでもなく大きいので現実的ではありません。
まとめると、「Ryzen 7モデルでは、CPUの消費電力が最大42W前後」「温度については高負荷時でも問題ないレベル」といったところです。
各項目の平均値と最大値
パフォーマンス | バランス | フルスピード | |
CPU消費電力 | 42W前後→35W前後 | 35W前後→28W前後 | 42W前後→35W前後 |
CPU温度 | 79.4度前後→74度 | 68.3度前後→65.2度 | 66.5度前後→62.8度 |
本体の駆動音について
駆動音(ファンの回転音や通気口からの風切り音)は、かなり大きく聞こえます。モードを変えても基本的には変わらず、Ryzen 7モデルでもRyzen 5モデルでも同じでした。ただし今回は本体から20cm離れた場所にマイクを置いて計測したため、多少数値が大きめに出ているかもしれません。設置場所や使い方によって大きく変わる可能性はあるものの、基本的には駆動音が大きいと考えたほうがいいでしょう。
駆動音の計測結果(Ryzen 7モデル)
待機中 | 37.1dB前後 | ほぼ無音 |
---|---|---|
軽作業時(パフォーマンス) | 38~49.7dB前後 | 排気音とファンの回転音が非常に大きい。ただし音が聞こえるのは断続的かつ短時間なので、それほど気にならない |
高負荷時(パフォーマンス) | 49.6dB前後 | 常時排気音が非常に大きく、とてもうるさく感じる |
軽作業時(バランス) | 38~47.7dB前後 | 無音のときもあれば、かなり大きく聞こえることもある。うるさいのは短時間 |
高負荷時(バランス) | 39~48dB前後 | はじめは「サーッ」という音だが、時間がたつにつれて排気音と回転音が大きく聞こえる。人によってはうるさく感じるかも |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
駆動音の計測結果(Ryzen 5 PRO 8600GEモデル)
待機中 | 37.1dB前後 | ほぼ無音 |
---|---|---|
軽作業時(パフォーマンス) | 37~50.2dB前後 | ほとんどは静かだが、定期的に短時間のあいだ排気音がとても大きく聞こえる |
高負荷時(パフォーマンス) | 50dB前後 | 排気音が非常に大きい。USB扇風機の「強」程度。ガマンはできるが、長時間聞き続けるのはストレスを感じる |
軽作業時(バランス) | 39~48dB前後 | ほとんどは静かだが、定期的に短時間のあいだ排気音がとても大きく聞こえる |
高負荷時(バランス) | 42~47dB前後 | 排気音が大きい。ゲーミングノートPCをフルパワーでぶん回しているときと変わらないくらい |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
駆動音の計測結果(Ryzen 5 PRO 8600GEモデル)
待機中 | 37.1dB前後 | ほぼ無音 |
---|---|---|
軽作業時(パフォーマンス) | 38~51dB前後 | 排気音とファンの回転音が大きい。ただし音が聞こえるのは断続的かつ短時間なので、それほど気にならない |
高負荷時(パフォーマンス) | 51.5dB前後 | 常時排気音が非常に大きく、とてもうるさく感じる |
軽作業時(バランス) | 39~45dB前後 | 無音のときもあれば、かなり大きく聞こえることもある。うるさいのは短時間 |
高負荷時(バランス) | 46dB前後 | 排気音と回転音が大きく聞こえる。人によってはうるさく感じるかも |
(参考)エアコンの最大出力 | 48~58dBA前後 | - |
前モデルとの違い
2020~2022年に発売された前モデル「ThinkCentre M75q Tiny Gen 2」とは、スペックだけでなく、さまざまな面が異なります。
考察とまとめ
グラフィックス系はいまひとつ
今回はThinkCentre M75q Tiny Gen 5の3モデルでベンチマークテストを行ないましたが、どのモデルも値段相応のパフォーマンスが出ていると思います。事務作業用としては、非常に優秀です。さらにミニPCのように知名度の低いメーカー製ではなく、超大手であるレノボ製である点がポイント。ミニPCはある種バクチ的なところがありますが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5であれば品質的にもサポート的にも安心して使えます。
ただし気になるのは、グラフィックス性能が弱い点です。RDNA3とのことでちょっと期待していたのですが、正直なところイメージしていたほどではありませんでした。特にRyzen 5モデルのRadeon 740M / 760Mは性能が低く、上位のRyzen 7モデルでもほどほど。ごく軽いゲームなら楽しめますが、基本的には事務作業用と考えたほうがいいでしょう。
騒音を抑える手段がない
この機種の最大の弱点は、駆動音が大きい点です。そして、騒音対策のためにできることがほとんどない点が致命的だと思います。
一般的なPCでは静音性重視のモードが用意されていることが多いのですが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5にはありません。またCPUのランクを下げれば騒音がマシになることが多いのですが、ThinkCentre M75q Tiny Gen 5ではRyzen 5モデルとRyzen 7モデルでほとんど変わりませんでした。大きな音が出る状態を、受け入れるしかない状況です。設置場所によっては多少緩和できるはずですが、基本的には音が大きいままで使うしかありません。その点を踏まえた上で、十分検討してください。