レノボの『ThinkPad E14 Gen4(第12世代インテル)』(以下、”ThinkPad E14 Gen4″)は、インテル第12世代Coreプロセッサ搭載の14インチスタンダードノートPCです。頑丈で壊れにくいボディと、ノートPCとしてはタイプ感に優れるキーボードが特徴。キーボードを使ってガッツリ作業したい人に向いています。
使いやすい14インチとして定番のシリーズでしたが、このモデルから値段が大きく変わってしまいました。最安のCore i3モデルでも9万円台、ミドルレンジのCore i5モデルだと11万円台(記事執筆時)。ちょっとした高級機並みの値段です。もともとはコスパ重視の低価格帯モデルであっただけに、いまの値段で入手するのは正直なところ抵抗があります。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
ThinkPad E14 Gen4
スペック
OS | Windows 11 Home / Pro |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 1920×1080ドット IPS 非光沢 300nit 45% NTSC |
CPU | Core i3-1215U / Core i5-1235U / Core i7-1255U |
メモリー | 8 / 16GB DDR4-3200 ※オンボード8GB+スロット1 |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD / Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB4 / Thunderbolt 4×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×1、HDMI、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | なし / 指紋認証 |
サイズ / 重量 | 幅324mm、奥行き220.7mm、高さ17.9mm / 約1.64kg |
バッテリー | 最大16.7時間 |
本体デザイン
本体の外観については、「いつものEシリーズ」といった印象です。前モデル、さらにその前のモデルからほとんど変わっていません。ある意味では定番のスタイルとも言えますが、逆にちょっとした古くささや野暮ったさを感じました。
サイズと重量
本体はコンパクトではあるものの、厚みと重さを感じます。持ち歩けないわけではありませんが、基本的には据え置き向けです。
ディスプレイについて
ディスプレイは良くも悪くも普通です。いまはノートPCの高解像度化やアスペクト比16:10化が進んでおり、16:9のフルHDは定番とは言えやや時代遅れな印象がします。とは言えこの仕様は未だ主流ですから、特に問題があるわけではありません。
キーボードについて
キーボードについては、なかなかいい仕上がりです。ThinkPadシリーズのなかでは、比較的違和感がありません。タイプ感にこだわる人におすすめします。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-1235U(Pコア×2+Eコア×8、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB×1 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCoreプロセッサが使われています。標準仕様では消費電力の少ないUシリーズですが、一部のモデルではパーツカスタマイズによりPシリーズに変更可能。基本的にはCore i7-1260P > Core i5-1240P > Core i71255U > Core i5-1235U > Core i3-1215Uの順で高性能です。
Core i5-1235U搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、同CPUの平均値を上回る結果が出ました。ノートPCとしては、かなり優秀な部類に入ります。大作ゲームや高度な動画編集などには向きませんが、たいていの作業であれば問題なく行なえるでしょう。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
ThinkPad E14(Core i5-1235U) |
8218
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6216
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i7-1250U |
1726
|
Core i7-1260P |
1680
|
Core i5-1235U |
1616
|
Core i3-1215U |
1623
|
Core i5-1240P |
1606
|
ThinkPad E14(Core i5-1235U) |
1584
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Core i7-1165G7 |
1423
|
Ryzen 5 5625U |
1394
|
Core i5-1135G7 |
1349
|
Core i3-1115G4 |
1329
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。試用機ではCore i5-1235Uが使われていましたが、メモリーがシングルチャネルのため、Iris XeではなくUHD Graphicsとして動作しました。ベンチマークスコアは、内蔵タイプとしてはかなり低めです。文字や数値データ中心の処理にはあまり影響しませんが、メモリーはできる限りデュアルチャネル(4GB×2や8GB×2など)で利用することをおすすめします。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
ThinkPad E14(UHD) |
820
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。コンテンツ制作系は若干弱いながらも、目標値はかろうじて上回っています。小規模な作品程度なら、問題なく使えるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9409
9984
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6968
9266
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5525
5987
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は最大16.7時間とされています。しかしこれはバッテリーの消費量をグッと抑えた場合の結果。公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から5時間56分で休止状態へ移行しました。公称値よりもかなり短いのですが、消費電力の高い状態でのテストであることを考えれば仕方がないでしょう。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 最大 16.7時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 5時間56分 |
充電率50%までの時間 | - | 30分 |
満充電になるまでの時間 | - | 2時間10分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
いつものThinkPadだけど値段が高い
ひととおり触ってみて感じるのは、「いつものEシリーズだな」という点です。筐体はここ2~3年で変わらず、機能も同じ。新しさは感じられません。それだけ完成度が高いということかもしれませんが、さすがにベゼルの太さあたりに野暮ったさが感じられるようになってきました。インテルCoreプロセッサで見れば第11世代から第12世代で性能が大きく向上しているものの、Ryzenシリーズと比べるとそれほどでもありません。
ただキーボードがしっかりしていて、そこそこのパーツカスタマイズ / パーツ交換が可能な14インチというと、ほかにはなかなかありません。キーボードのタイプ感も他機種よりも良く、USB4 / Thunderbolt4にも対応していますし、使いやすさの点では文句のない仕上がりです。
しかしながら、第12世代搭載モデルになって値段がかなり上がったのは残念です。第11世代搭載のThinkPad E14 Gen2はCore i3モデルで6万円台、Core i5モデルで8万円台程度でした。現行モデルのThinkPad E14 Gen4ではCore i3モデルで9万円台、Core i5モデルで11万円台です(記事執筆時)。3~4割程度値上がりしたことで、入手しにくい機種となってしまいました。
Eシリーズはコスパの高さがウリだったのですが、現在はどちらかというと高級機です。値段が気にならないのであれば、検討してみてはいかがでしょうか。
ThinkPad E14 Gen4
*
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