レノボの『ThinkPad E15 Gen4(第12世代インテル)』(以下、”ThinkPad E15 Gen4″)は、インテル第12世代Coreプロセッサ搭載の15.6インチスタンダードノートPCです。頑丈で壊れにくいボディと、ノートPCとしてはタイプ感に優れるキーボードが特徴。キーボードを使ってガッツリ作業したい人に向いています。
以前のThinkPad「Eシリーズ」(E14やE15)は値段が安く、コスパの高い機種とされてきました。しかし現在は、Core i3搭載の最安モデルでも9万円台後半から。Core i5モデルだと約12万円(記事執筆時点)です。値段的には、個人向けの高級機かビジネス向けのミドルレンジ機相当と言っていいでしょう。
筐体がここ何年か変わらないので若干の古さはありますが、使い勝手は悪くありません。ただ以前と比べて、値段が変わりすぎた感はあります。というよりも、「以前が安すぎた」のかもしれません。その意味で、ThinkPad Eシリーズの転換期とも言える世代です。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
ThinkPad E15 Gen4
スペック
OS | Windows 11 Home / Pro |
---|---|
ディスプレイ | 15.6インチ 1920×1080ドット IPS 非光沢 300nit |
パネル | 45% NTSC / 100% sRGB |
CPU | Core i3-1215U / Core i5-1235U /Core i5-1240P / Core i7-1255U / Core i7-1260P |
メモリー | 8~40GB DDR4-3200 ※オンボード8GB+スロット1 |
ストレージ | 256GB~1TB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD / Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6 / 6E、Bluetooth、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB4 / Thunderbolt 4×1、USB3.2 Gen1×1、USB2.0×1、HDMI、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | 顔認証(オプション) / 指紋認証(オプション) |
サイズ / 重量 | 幅365mm、奥行き240mm、高さ18.9mm / 約1.78kg |
バッテリー | 約10.1時間 |
本体デザイン
本体の外観は、良く言えば「重厚感のあるデザイン」です。ただ最近のノートPCとしては、ゴツくてイカツい印象を受けました。パッと見た感じはスタイリッシュですが、実際に手に取ると角ばった上にやや厚く感じます。ここ何年か同じ筐体デザインを使い回しているため、若干の古さを感じるのかもしれません。
サイズと重量
15.6インチタイプとしては、一般的な大きさと重さです。ただし底面のゴム足が高い影響により、設置時にはけっこうな厚みを感じました。
ディスプレイについて
ディスプレイは良くも悪くも普通です。いまはノートPCの高解像度化やアスペクト比16:10化が進んでおり、16:9のフルHDは定番とは言えやや時代遅れな印象がします。とは言えこの仕様は未だ主流ですから、特に問題があるわけではありません。
キーボードについて
キーボードについては配列にやや違和感があるものの、タイプ感はなかなかいい仕上がりです。長時間キーボードで作業する人向きです。しかしキー配列を重視するなら、テンキーなしのThinkPad E14のほうがいいかもしれません。
https://komameblog.jp/review/thinkpad-e14-intel/#keyboard
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-1235U(Pコア×2+Eコア×8、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB×1 |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCoreプロセッサが使われています。標準仕様では消費電力の少ないUシリーズですが、一部のモデルではパーツカスタマイズによりPシリーズに変更可能。基本的にはCore i7-1260P > Core i5-1240P > Core i71255U > Core i5-1235U > Core i3-1215Uの順で高性能です。
Core i5-1235U搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、シングルコアのテストでは順当な結果だったものの、マルチコアのテストで低い結果が出ました。タイミングや試用機固有の問題でスコアが低いのかもしれません。ただUシリーズ(末尾が「U」)はそもそも軽い処理向けなので、マルチコア性能が必要な重い処理についてはPシリーズを選んだほうがいいでしょう。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6216
|
ThinkPad E15(Core i5-1235U) |
5543
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i7-1250U |
1726
|
Core i7-1260P |
1680
|
Core i5-1235U |
1616
|
Core i3-1215U |
1623
|
Core i5-1240P |
1606
|
ThinkPad E15(Core i5-1235U) |
1587
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 5825U |
1437
|
Core i7-1165G7 |
1423
|
Ryzen 5 5625U |
1394
|
Core i5-1135G7 |
1349
|
Core i3-1115G4 |
1329
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。試用機ではCore i5-1235Uが使われていましたが、メモリーがシングルチャネルのため、Iris XeではなくUHD Graphicsとして動作しました。ベンチマークスコアは、内蔵タイプとしてはかなり低めです。文字や数値データ中心の処理にはあまり影響しませんが、メモリーはできる限りデュアルチャネル(4GB×2や8GB×2など)で利用することをおすすめします。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
ThinkPad E15(UHD) |
830
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。コンテンツ制作系は若干弱いながらも、目標値はかろうじて上回っています。小規模な作品程度なら、問題なく使えるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9436
9984
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6932
9266
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5465
5987
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
値段が気にならないならアリ
ThinkPad E14 Gen4のレビューでも述べたのですが、基本的な作りがここ2~3年でほとんど変わらず、新しさは感じられません。CPU性能は大きく向上したものの、値段も大きく上がっています。
たとえば前世代の『ThinkPad E15 Gen 2 (第11世代インテル)』なら、Core i3モデルで6万円台、Core i5モデルでも8万円台でした。それが第12世代のいまではCore i3モデルで9万円台後半、Core i5モデルで約12万円です。世界的な物価の上昇や景気によって値段が上がるのは仕方がないものの、もはやThinkPadのEシリーズは以前のような「高コスパモデル」ではなく、「高級モデル」と考えたほうがいいでしょう。
値段の高さが気にならないなら、購入はアリです。とくにこれまでEシリーズを使い続けた人なら、多少値段が上がっても同じフィーリングで操作したいと感じるはず。特徴のひとつであるキーボードのタイプ感を重視するなら、ほかにはさらに値段が高い大手国内ブランドの製品ぐらいしかありません。
ただしキーボードを重視するなら、個人的には14インチタイプの『ThinkPad E14 Gen4』のほうがおすすめです。E15に比べてEnterキー周りに違和感がありません。テンキーが必要ならE15、不要ならE14を選ぶといいでしょう。
https://komameblog.jp/review/thinkpad-e14-intel/
ThinkPad E15 Gen4
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