デルのVostro 3420は、14インチのフルHDディスプレイを搭載するビジネス向けスタンダードノートPCです。CPUには第11 / 12世代のCore i3 / Core i5が使われています。
第12世代Coreプロセッサの性能は悪くないものの、値段が高いわりに本体がかなりチープです。ボディやキーボード、インターフェース周りは格安ノートPC相当。大きさや重さについても、特筆すべき点は見当たりません。企業の一括導入などで選ばれる機種だと思います。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Vostro 3420
スペック
OS | Windows 11 Home / Pro |
---|---|
ディスプレイ | 14インチ 1920×1080ドット WVA 非光沢 250nit 45% NTSC |
CPU | Core i3-1215U / Core i5-1235U / Core i5-1135G7 |
メモリー | 8GB×1 DDR4-2666 ※メモリースロット×2 |
ストレージ | 256 NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
通信 | 11a/b/g/n/ac、Bluetooth、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB3.2 Gen1×2、USB2.0×1、HDMI1.4、有線LAN、SDカードスロット、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
セキュリティ | ※生体認証は非対応 |
サイズ / 重量 | 幅323.67mm、奥行き220.26mm、高さ18.62~23.02mm / 約1.48kg |
バッテリー | 3セル 41WHr ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン
Vostro 3420の筐体は、ハッキリ言ってチープです。ボディは樹脂(プラスチック)製の安っぽい仕上がり。軽く押すとたわみが生じ、頑丈な作りには思えません。5~6万円台であればなんとか納得できるクオリティーですが、8~12万円台の製品としてはかなり厳しいと感じます。
サイズと重量
15.6インチタイプと比べると、本体は軽量コンパクトです。と言っても、気軽に持ち運べるほどでもありません。屋内で持ち歩くぶんには問題ありませんが、基本的には据え置き用と考えてください。
ディスプレイについて
ディスプレイは良くも悪くも普通です。いまはノートPCの高解像度化やアスペクト比16:10化が進んでおり、16:9のフルHDは定番とは言えやや時代遅れな印象がします。とは言えこの仕様は未だ主流ですから、特に問題があるわけではありません。
キーボードについて
キーボードは、気にしなければ普通に使えるレベルです。作りは格安機相当で、タイプ感はいまひとつでした。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i3-1215U(Pコア×2+Eコア×4、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB×1(DDR4-2666) |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「MyDell」の「電源マネージャ」→「サーマルモード」を「超高パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCore i3-1215U / Core i5-1235Uまたは第11世代のCore i5-1135G7が使われています。
Core i3-1215U搭載の試用機でCPUベンチマークテストを行なったところ、前世代(第11世代)のCore i5やCore i7を大きく上回る結果が出ました。現在のスリムノートPC向けCPUのなかでは中位クラスですが、非常に優秀な結果です。1年前に販売された10万円クラスのインテル製CPU搭載ノートPCよりも、CPUパフォーマンスに優れています。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1280P |
12396
|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9728
|
Core i7-1260P |
8984
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
7580
|
Core i7-1250U |
7552
|
Core i5-1235U |
7104
|
Core i3-1215U |
6086
|
Vostro 3420(Core i3-1215U) |
5936
|
Ryzen 3 5400U |
5693
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
Core i3-1115G4 |
3378
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i7-1280P |
1733
|
Core i7-1250U |
1726
|
Core i7-1260P |
1636
|
Core i3-1215U |
1622
|
Core i5-1235U |
1616
|
Core i5-1240P |
1606
|
Vostro 3420(Core i3-1215U) |
1584
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Ryzen 7 5825U |
1433
|
Core i7-1165G7 |
1423
|
Ryzen 5 5625U |
1404
|
Core i5-1135G7 |
1349
|
Core i3-1115G4 |
1329
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス性能はかなり低めです。グラフィックス機能はCPU内蔵のUHD Graphics。Core i5はIris Xe Graphicsにも対応していますが、メモリーがシングルチャネルだとUHD Graphicsでしか動作しません。さらにメモリー速度が2666MHzとやや遅いため、3Dベンチマークテストではいまいちな結果でした。
メモリーを増設してデュアルチャネル化すればスコアは改善されるはずですが、そもそもVostro 3420はビジネス向けPCなので、あまり気にする必要はないでしょう。文字や数値中心の作業であれば、高いグラフィックス性能はそれほど必要ないはずです。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
Iris Plus |
812
|
Vostro 3420(Core i3,UHD) |
677
|
UHD |
407
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は上回ってはいるものの、最近のノートPCとしてはやや控えめな結果です。とは言え試用機がCore i3-1215U搭載であることを考えれば、エントリー向けCPU搭載機としては健闘していると言っていいでしょう。重い処理をガッツリこなすPCではありませんが、文字や数値中心のビジネス作業をライトにこなすには十分です。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
8549
9477
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6415
6534
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
4417
5363
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリー駆動時間は公開されていません。そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から7時間10分で休止状態へ移行しました。消費電力が大きい状態でテストを行なったので、十分と言えば十分でしょう。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i3モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 7時間10分 |
充電率50%までの時間 | - | 1時間19分 |
満充電になるまでの時間 | - | 2時間36分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
個人で導入するにはやや厳しい
記事執筆時点でのVostro 3420の値段は、Core i3モデルで8万2000円前後、Core i5モデルで約10万円です。第12世代Coreプロセッサは第11世代を大きく上回るほど高性能で、Core i3-1215UでもCore i7-1165G7以上と考えれば、値段が高いのはわからないでもありません。
しかしより高性能なZen3世代のモバイルRyzen 5000シリーズ搭載機なら、もっと安く手に入ります。単純に性能と価格だけで見るなら、ほかの機種を選んだほうがいいでしょう。
また、筐体がチープすぎるのも非常に残念です。8~10万円払ってプラスチック製のベコベコボディは、正直なところあり得ません。同じ値段でもっと高品質&高機能な機種はたくさんあります。
以上の理由からVostro 3420には非常に厳しい評価を下さざるを得ないわけですが、法人需要の点で考えると若干変わってくるかもしれません。個人向け製品にはない保証 / サポートサービスを選べる点はメリットですし、ソリューション込みなどでの一括導入ともなれば1台あたりの値段は大きく変わるでしょう。そのあたりについては、デルに電話で問い合わせることをおすすめします。
Vostro 3420
*
当サイトでは2~3万円台の格安ノートPCから高性能ノートPCまで、さまざまな最新モデルを検証・解説しています。記事の更新情報やお買い得情報を当サイトのツイッターアカウントでお知らせしているので、ぜひフォローをお願いします。
ツイッターでこまめブログをフォローする
関連記事