CHUWI(ツーウェイ)の『LarkBox X 2023』は、コンパクトサイズのミニPCです。CPUはいま格安PC界隈で大人気のIntelプロセッサーN100で、メモリーはLPDDR5 12GB、ストレージは512GB SATA SSDの構成。販売価格は2万円台半ばあたりと安いにも関わらず、軽めの作業には問題なく使えるパフォーマンスを実現しています。
ほかのミニPCと比べて「サイズがやや大きい」「メモリーやSSDを増設できない」「OSがWindows 11 Home」などのデメリットはあるものの、それでも常時売れ筋ランキングに入ったり、売り切れたりするほどの人気商品です。中華系インディーズメーカーのなかでは知名度と実績のあるメーカーで、比較的安心感があるためかもしれません。また楽天の直営ショップではタイミングによって驚くほど安く入手できることもあるので、その点が影響している可能性もあります。
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年6月 |
---|---|
OS | Windows 11 Home |
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
チップセット | ※CPUに内蔵 |
グラフィックス | UHD Graphics (CPU内蔵) |
メモリー | LPDDR5 12GB |
ストレージ | 512GB SATA SSD |
インターフェース | USB3.1 ×4、USB Type-C×1、3.5mmヘッドホン端子×1、HDMI(4K@60Hz)、DisplayPort(4K@60Hz)、有線LAN×2 |
拡張スロット | ※不明 |
ドライブベイ | ※不明 |
通信 | Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、有線LAN(2.5Gbps、1Gbps) |
サイズ / 重量 | 幅127×奥行き127×高さ49mm / 約400g |
電源 | 36W アダプター |
本体デザイン
LarkBox X 2023の本体は、デスクトップPCとしては非常にコンパクトです。ただし最近のミニPCとしては、若干大きく作られています。小さいほうが場所を取らないものの、大きければそのぶん内部に熱がこもりにくいと考えることもできるでしょう。
メモリー/SSDの増設について
LarkBox X 2023では、SSDのみ交換可能です。メモリーはオンボードのLPDDR5のため、増設 / 換装は行なえません。ただしIntelプロセッサーN100の(公式上の)上限は16GBであり、仮に12GB→16GBに増設できたとしても、劇的な効果は感じられないと思います。
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
---|---|
メモリー | 12GB LPDDR5 |
ストレージ | 512GB SATA SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「高パフォーマンス」に設定した上で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けでAlder Lake-N世代のIntelプロセッサーN100が使われています。4コア4スレッドで動作するCPUで、TDP(消費電力量の目安)は標準で6W。ただしLarkBox X 2023ではPL1が15W、PL2が35Wに設定されていました。電力制限の上限が大きいぶん、ほかのIntelプロセッサーN100搭載機よりも高いパフォーマンスを発揮できると考える人もいるでしょう。
しかしCPUベンチマークテストの結果をほかのIntelプロセッサーN100搭載ミニPCと比較したところ、確かにもっとも高いスコアは出ましたが、大きな差が出るほどではありませんでした。このあたりは熱設計 / 熱対策も影響する部分なので、電力制限だけで性能が大きく変わることはないと思われます。
Intel N100搭載ミニPCの性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
LarkBox X 2023(PL1:15W、PL2:35W) |
6235
|
SkyBarium Mini PC(PL1:12W、PL2:20W) |
6219
|
Beelink S12 Pro(PL1:20W、PL2:25W) |
6134
|
Intel N100平均値 |
5651
|
※平均値はPassMark CPU Benchmarksによる集計値、そのほかは当サイトの計測値
ノートPC向けCPUとベンチマークスコアを比較すると、現行世代のCPUのなかでは下位クラスです。より高性能なデスクトップPC向けCPUとでは、その差はさらに大きく広がります。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Ryzen 7 7735U |
21237
|
Core i5-1340P |
20974
|
Core i7-1360P |
19702
|
Ryzen 7 7730U |
19245
|
Core i5-1335U |
19074
|
Ryzen 5 7535U |
16856
|
Ryzen 5 7530U |
16265
|
Core i7-1355U |
16048
|
Core i3-1315U |
13813
|
Ryzen 3 7330U |
11013
|
Intel N305 |
10374
|
Ryzen 5 7520U |
9802
|
Ryzen 3 7320U |
9258
|
LarkBox X 2023(Intel N100) |
6235
|
Intel N100 |
5651
|
Athlon Silver 7120U |
2558
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
軽めの作業で強く影響するシングルスレッド(シングルコア)のスコアで見ても、やはり低めの結果です。ただし上記の総合性能の結果ほど、他CPUとの差は大きくありません。数値的には、ネットの調べ物や動画視聴などの軽めの作業であれば十分なスコアです。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i7-1360P |
3785
|
Core i7-1355U |
3736
|
Core i5-1335U |
3771
|
Core i7-1355U |
3736
|
Core i3-1315U |
3600
|
Ryzen 7 7730U |
3254
|
Ryzen 7 7735U |
3241
|
Ryzen 5 7530U |
3213
|
Ryzen 5 7535U |
3105
|
Ryzen 3 7330U |
3053
|
Ryzen 5 7520U |
2586
|
Ryzen 3 7320U |
2486
|
Intel N305 |
2280
|
LarkBox X 2023(Intel N100) |
2083
|
Intel N100 |
1982
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
ちなみにシングルスレッドのベンチマーク結果をちょっと古いCPUと比較すると、いまから5~6年前に使われていた第8世代のCore i5 / Core i7に相当します。
CPUの性能差 (シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-1035G1 |
2263
|
Core i5-10210U |
2198
|
Core i7-8565U |
2194
|
Core i5-8265U |
2097
|
LarkBox X 2023(Intel N100) |
2083
|
Core i7-8550U |
2057
|
Core i7-7500U |
1928
|
Core i5-8250U |
1915
|
Core i7-6500U |
1700
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Zen3+) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4) |
1302
|
Radeon (Zen3) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Radeon (Zen2+) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
LarkBox X 2023(Intel N100) |
328
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)のテストでは目標値ギリギリ、コンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。やはり軽めの作業向きです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
7142
10616
10917
9869
10258
10501 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
4879
10003
9572
8854
7417
7622 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
2515
6018
6536
8298
6026
6624 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶ThinkBook 14 Gen5 | Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon |
---|---|
▶IdeaPad Flex 5 Gen8 | Ryzen 7-7730U / 16GB / Radeon |
▶Zenbook 15 OLED | Ryzen 7 7735U / 16GB / Radeon |
▶HP Pavilion 15-eg | Core i7-1355U / 16GB / Iris Xe |
▶Inspiron 16 5630 | Core i7-1360P / 16GB / Iris Xe |
ストレージ性能
ストレージには、512GBのSATA SSDが使われています。テスト機で使われていたのは「AirDisk 512GB SSD」と認識されるSSDで、おそらく「AirDisk」というブランド名なのでしょう。アクセス速度計測結果はSATA SSDとしては標準的ではあるものの、PCIe接続が主流である最近のPCとしては物足りなさを感じます。また、SSDそのものの信頼性についても不明な部分です。万が一に備えて、こまめにバックアップを取ってください。
激安PCのなかでは安心感のある機種
記事執筆時点では、アマゾンでの販売価格が2万6000円前後。楽天でも販売金額は同じではあるものの、タイミングによっては割引クーポンやポイント還元が出ることもあり、条件によっては実質価格で2万円前後になることもあるでしょう。楽天ユーザーであれば、定期的に行なわれるイベント時の購入がお得です。
ほかのIntelプロセッサーN100搭載ミニPCの相場は、2万円台半ばあたり。機種によってはメモリーやSSDの容量が大きいこともあり、LarkBox X 2023が(楽天のポイント還元を除けば)特別安いわけではありません。筐体がやや大きい、メモリー / SSDを増設できないなどの点を無視できないデメリットと捉える人もいるでしょう。また格安ミニPCはWindows 11 Proが多いのに対し、LarkBox X 2023はWindows 11 Homeが使われている点もある意味ではデメリットかもしれません。
ただ筆者としては、CHUWIは比較的「ちゃんとしているメーカー」であると考えています。中華系インディーズメーカーのなかでは実績もあり、ライセンス周りでの問題が発生したこともありません(ほかのメーカーはネット認証やクリーンインストールが必要な場合あり)。その意味で、ほかの格安ミニPCよりも安心感があります。その点を重視するならアリではないでしょうか。