『GMKtec NucBox G3』(以下、”NucBox G3″)は、中国のメーカー「GMKtec」によるIntel N100搭載のミニPCです。記事執筆時点の価格は1万8000円~1万9000円前後(クーポン使用時)。性能は低いのですが、ネットの調べ物やメール、ちょっとした文書作成などには普通に使えます。
記事執筆時の価格
モデル | 価格 |
---|---|
N100 / 8GB / 256GB | 1万9000円前後 |
※2023年11月18日時点
ポイントは、同CPU搭載ミニPCのなかでも特に消費電力が低い点です。サーバーや写真・音楽などのメディア保管用など、電源をつけっぱなしで利用するのに向いています。メモリーを自分で交換できる点もポイント。
ポイント
- ✅消費電力が特に低い
- ✅メモリー増設対応
- ✅M.2 SATA SSD増設可能
- ✅Type-C非対応
- ✅有線LANは2.5Gb×1
この記事では筆者が購入した実機を使って、本体の外観や機能、実際の性能についてレビューします。
この記事の目次
- ▶ スペック
- ▶ 本体デザイン
- ▶ メモリー/SSDの増設について
- ▶ ベンチマーク結果
- ▶ まとめ
GMKtec NucBox G3
ミニPCに関してのご注意
ミニPCは中国のインディーズメーカーによるものが中心で、品質や信頼性に関しては大手メーカー製ほどではない場合があります。あくまでもPCマニア向けのオモチャとして考えてください。長期間安心して使いたいなら、大手メーカー製品を強くおすすめします。
スペック
発売 | 2023年10月 |
---|---|
OS | Windows 11 Pro |
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア4スレッド) |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
メモリー | DDR4-3200 8GB×1 ※スロット×1(空きなし) |
ストレージ | 256GB PCIe 3.0 SSD ※M.2 Type-2280 |
インターフェース | USB3.2 Gen1×4、HDMI(4K@60Hz)×2、3.5mmステレオジャック、有線LAN(2.5Gb) |
拡張スロット | M.2 Type-2242 SATAスロット |
ドライブベイ | なし |
通信 | Wi-Fi 6 + BT 5.2 + 有線LAN(2.5Gbps)×1 |
サイズ / 重量 ※実測値 | 幅114mm、奥行き106mm、高さ42mm / 360g |
付属品 | 電源アダプター、HDMIケーブル×1、取り付けマウンタなど |
オフィス | なし |
Windowsのラインセンス
Windows 11 Proのライセンスは、個人利用が可能なOEM版(OEM_DM channel)でした。中華系ミニPCのなかには個人利用不可のボリュームライセンスが使われているものがありますが、この機種については問題ありません。
認証マークについて
技適マークやPSEマークについても、ちゃんと掲載されています。正式な手続きが行なわれた機種です。
本体デザイン
パッケージ
外観
インターフェース構成
メモリー/SSDの増設について
本体の分解方法
メモリーの増設方法
ストレージの増設・換装
M.2 SSD
2.5インチストレージ
※NucBox G3は2.5インチストレージの増設には対応していません
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | IntelプロセッサーN100(4コア/4スレッド) |
---|---|
メモリー | 8GB DDR4-3200 |
ストレージ | 256GB PCIe 3.0 SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※各種ベンチマークテストは、ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」に設定した上で実施しています。ちなみに電源プランを「高パフォーマンス」に変更しても、ほとんど差は出ません
※ベンチマーク結果はパーツ構成やタイミング、環境、個体差などの要因で大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、ノートPC向けでAlder Lake-N世代のIntelプロセッサーN100が使われています。4コア4スレッドで動作するCPUで、TDP(消費電力量の目安)は標準で6W。ただし6W前後で動作するのは軽作業中だけで、待機時では1W前後、高負荷時では10~12W前後で動作します。
検証機でCPUベンチマークテストを行なったところ、同CPU搭載の他社製品よりも低い結果が出ました。ただしこれは消費電力が他機種よりも低く抑えられているためです(後述)。
激安ミニPCの性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
SkyBarium Mini PC(N100) |
6274
|
LarkBox X 2023(N100) |
6235
|
Beelink S12 Pro(N100) |
6188
|
HeroBox 2023(N100) |
6165
|
NucBox G3(N100) |
6107
|
TRIGKEY GREEN G4(N95) |
5787
|
Intel N100 PassMark平均 |
5620
|
Intel N95 PassMark平均 |
5425
|
※PassMark平均はPassMark CPU Benchmarksによる集計値、そのほかは当サイトの計測値
低価格なミニPCで使われているCPUと比較すると、わりと性能が低いことがわかります。
ミニPC向けCPUの性能比較
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
Core i5-13500H |
24011
|
Ryzen 7 5800H |
21256
|
Ryzen 7 6800U |
20598
|
Ryzen 7 5800U |
18670
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
18517
|
Core i5-12450H |
17812
|
Ryzen 5 5600H |
17119
|
Ryzen 5 5600U |
15462
|
Intel N305 |
10050
|
検証機(N100) |
6107
|
Intel N100 |
5630
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
軽めの作業に影響するシングルスレッド性能は、さらに低めです。当サイト計測の平均値だと2000前後ですが、そこから12~13%程度低いスコアが出ています。実際には軽めの作業には普通に使えるのですが、ごくわずかに、ほかのN100搭載機よりも反応が遅いような気がします。
ミニPC向けCPUの性能比較(シングルスレッド)
CPU | PassMark CPU Mark Single Threaded |
---|---|
Core i5-13500H |
3538
|
Core i5-12450H |
3473
|
Ryzen 7 6800U |
3208
|
Ryzen 5 PRO 5650GE |
3180
|
Ryzen 7 5800H |
3060
|
Ryzen 7 5800U |
3048
|
Ryzen 5 5600H |
2964
|
Ryzen 5 5600U |
2916
|
Intel N305 |
2252
|
Intel N100 |
1971
|
検証機(N100) |
1776
|
※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値
グラフィックス性能
グラフィックス周りの処理には、CPU内蔵のグラフィックス機能が使われます。グラフィックス性能を計測する3Dベンチマークテストの結果はかなり低く、現在の水準では最低クラスです。ですが、ゲームや動画編集を行なわないのであれば、特に問題はないでしょう。ゲームについても、ソリティアレベルであれば問題なくプレーできます。
内蔵グラフィックスの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3445
|
Radeon(RDNA 3) |
2862
|
Radeon 680M(RDNA 2) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR) |
1302
|
Radeon (Vega) |
1204
|
Iris Xe(Core i7+DDR) |
1149
|
Iris Xe(Core i5+DDR) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
検証機 |
323
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
一般的な利用(Web閲覧やビデオ会議)のテストでは目標値を大きくクリアーしているものの、ビジネス利用(表計算やワープロ)とコンテンツ制作(写真加工や3D制作、動画編集)では目標値を下回っています。ほかのN100搭載機ではビジネス利用のテストは目標値をクリアーすることが多いのですが、この点はちょっと残念。ごくごく軽い作業向けです。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
7119
7142
7957
10603
10299
10256 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
4259
4879
5300
9709
7128
9930 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
2406
2515
3962
6044
6586
5707 |
※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(ミニPC)
▶LarkBox X 2023 | Intel N100 / 12GB / UHD |
---|---|
▶MINISFORUM UN305 | Core i3-N305 / 8GB / UHD |
▶NucBox10 | Ryzen 7 5800U / 16GB / Radeon |
▶IdeaCentre Mini Gen 8 | Core i5-13500H / 8GB / UHD |
ThinkCentre M75q Gen2 | Ryzen 7 PRO 5750GE / 32GB / Radeon |
CPUの発熱について
※計測時の室温は20度。室温が変わると、結果が異なる場合があります
高負荷時におけるCPU温度を計測したところ、最大温度は77度で平均温度は73.7度と低めでした。消費電力は最大でも12.1W、平均では9.99Wと、ほかのN100搭載機(18~20W前後)よりもだいぶ低く抑えられています。
UEFI(BIOS設定)を確認すると、CPUの消費電力制限が10Wに設定されていました。そこで制限を15Wに変更したところ、消費電力は平均11.1Wにまで上昇。平均温度もわずかに上がって74.3度でした。
15W制限では、CPUベンチマークスコアが上昇しました。しかしその差はわずかです。劇的に変わるほどではないのであれば、むしろ省電力性能を活かしたほうがいいでしょう。
CPU制限の違いによる性能差
CPU | PassMark CPU Mark Score |
---|---|
15W制限時 |
6131
|
10W制限時 |
6107
|
※スコアは当サイトの計測値
駆動音について
駆動音(ファンの回転音や排気口からの風切り音)は、実作業中はあまり聞こえません。ただし高負荷な処理では、ちょっと低め回転音がハッキリと聞こえました。
駆動音の計測結果
電源オフ | 36.5dB | - |
---|---|---|
電源オン時 | 36.9dB前後 | ほぼ無音。ほかの機種のように、電源を入れた瞬間やWindows Updateの際にファンが大きく回ることはない |
待機中 | 36.6dB前後 | 耳を近づければファンの回転音は聞こえるが、ほぼ無音。ただしときどき「サラサラ」とした音が聞こえる |
高負荷時 | 40.3dB前後 | 音自体は大きくないが、モーターのような低い音がハッキリと聞こえる。静かな場所では気になるものの、設置場所や設置方法しだいでは多少緩和されるかもしれない |
(参考)エアコンの最大出力時 | 48~58dB前後 | - |
省電力性能を活かしたい人向け
Intel N100搭載ミニPCのなかでは、パフォーマンスが低めです。ほかの機種と比べると、若干動作がもたつくかなと感じる場面はありました。とは言え劇的に異なるほどではなく、これはこれで問題なく利用できます。
ポイントは「省電力性が高い」点と「メモリーを増設できる」点です。パフォーマンスが低いのは、ほかの機種よりも消費電力を抑えているため。サーバーのように常時稼働させて使うなら、省電力性能は高いほうがいいでしょう。メモリーが32GBまで認識されている点も、特定の用途には有利です(一般用途向けには16GBで十分)。事務作業用のWindows PCではなく、OSを変えたりいろいろソフトを導入してイジり回したい人に向いています。
GMKtec NucBox G3