2024年発売のパソコンHPノートパソコンレビュー

HP EliteBook 830 G11レビュー:高級感と安定性を重視したビジネスモバイル

3.5
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HP EliteBook 830 G1

機材貸し出し:株式会社日本HP

HPの「EliteBook 830 G11」は、コンパクトタイプのビジネス向けモバイルノートPCです。モバイル向けとは言っても、重さは約1.288kgでそれほど軽くはありません。またCPUは省電力性能重視のCore Ultra Uシリーズで、性能はほどほどといったところ。値段は18~20万円台と、ややお高めです。

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11

そんな感じでデメリットを挙げるとなにからなにまでダメな気がしますが、実はそうではありません。性能と価格が重視される個人向けモデルと違い、ビジネス向け(法人)モデルで大切なのは安定性と安心感です。

 

重量が重いのは、堅牢性と長時間のバッテリー駆動を実現するため。性能がほどほどなのも、省電力性能重視のCPUで、発熱を抑えているため。価格が高いのもそれなりに高品質な部品やセキュリティー機能を用意しているため。一見するとデメリットに見える点も、そんな理由があるためです。パソコンでなにを重視するかはひとそれぞれですので、「安心感」と「安定性」にピンときてなおかつお金を払えるならアリだと思います。

この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11

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おことわり

このレビュー記事では、メーカー貸し出し機材を1週間程度試用した上で作成しています。長期にわたって試用した際の耐久性については検証していません。あらかじめご了承ください。

 

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...

スペック

発売日 2024年3月
OS Windows 11 Pro
ディスプレイ 13.3インチ、1920×1200(WUXGA)、非光沢、400nit
CPU Core Ultra 5 125U / Core Ultra 5 135U / Core Ultra 7 155U / Core Ultra 7 165U /
メモリー LPDDR5 16GB(オンボード、増設非対応)
ストレージ 256 / 512GB NVMe SSD
グラフィックス Intel Graphics(CPU内蔵)
通信 Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3
インターフェース Thunderbolt 4(40Gbps、PD/DP対応)×2、USB Type-A×2、HDMI2.1、ヘッドホン端子
生体認証 指紋センサー、顔認証用IRカメラ
サイズ / 重量 幅300×奥行き215.05×高さ19.22mm / 約1.288kg
バッテリー 最大 約22時間28分(JEITA3.0)

価格(記事執筆時)

スペック 価格
Core Ultra 5 125U / 16GB / 256GB 17万9441円
Core Ultra 7 155U / 16GB / 512GB 20万0561円

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外観

HP EliteBook 830 G11は、とても高級感のある外観です。スタンダートなシルバーのカラーで、どちらかと言えば軽やかな印象。ビジネス向けノートPCというと黒系統の色で地味な印象がありますが、この機種は都会的でスタイリッシュな雰囲気を漂わせています。

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11の外観

HP EliteBook 830 G11

ボディには軽量で強度の高いマグネシウムを採用。マグネシウムボディの製品は塗料が妙に厚かったり、肉厚が薄くてベコベコなものがあるのですが、HP EliteBook 830 G11はとても高い質感を実現しています。触った感触はアルミと変わりません

HP EliteBook 830 G11

シュッとしたスリムなボディ。エッジは丸みを帯びたラウンドフォルムデザイン。いろいろと凝った作りです。表面はサラサラとした手触りで、指紋の跡は目立ちません

HP EliteBook 830 G11

ディスプレイを開いた状態

HP EliteBook 830 G11

ディスプレイはほぼ180度まで開きます

HP EliteBook 830 G11

ディスプレイのベゼル(枠)は上部がやや太めですが、これはカメラ類が収められているため

HP EliteBook 830 G11

キーボード面はおそらくアルミ製。タッチパッド周辺にはキラリと光るダイヤモンドカット加工が施されていました。キーボードのキーもワンランク上のものが使われています(詳しくは後述)

HP EliteBook 830 G11

底面部はマグネシウム製

 

サイズと重量

HP EliteBook 830 G11は、13.3インチのディスプレイを搭載したモバイルタイプです。軽量コンパクトで、持ち歩きに向いています。ただし重量は普通か、いまどきのモバイルノートPCとしてはやや重いくらい。人によっては「まあ、持ち歩けないことはないかな」というレベルだと思います。

しかし妙に軽い機種はボディがベコベコだったり、バッテリー駆動時間が短いことがあるので、必ずしも使いやすいわけではありません。その点でHP EliteBook 830 G11はしっかり仕上げられており。実用性を重視したモバイルノートPCであることがうかがえます。

HP EliteBook 830 G11

本体サイズは幅300×奥行き215.05mm

HP EliteBook 830 G11

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。A4サイズよりもほんのわずかに大きい程度です

HP EliteBook 830 G11

厚さは実測で18.6mm前後

HP EliteBook 830 G11

底面部のゴム足を含めた高さは22.1mm前後でした。デスクに置いても、比較的薄く感じます

HP EliteBook 830 G11

重さは実測で1.309kg。13.3インチのモバイルタイプとしては、やや重く感じるかもしれません

HP EliteBook 830 G11

手で持った際に、それなりのズッシリ感があります

HP EliteBook 830 G11

付属の電源アダプターは65WのType-C。ノートPC用に付属のものとしてはコンパクトですが、市販のType-C充電器と比べるとかなり大きく感じます。ほかのUSB PD製品も使えますが、ほかの充電器を接続するとアラートが表示されるので注意(そのまま使えます)

ディスプレイ

ディスプレイの映像はキレイです。クリエイティブワーク向けの広色域ディスプレイほどではありませんが、画面の暗さや微妙な色合いなどは一切感じられませんでした。値段の高い上位ブランドだけあって、品質の高いパネルが使われているようです。エントリー / ミドルレンジクラスの機種よりも、ストレスなく作業できるでしょう。

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11

映像は明るく、自然な色合いです。スマホやタブレット、OLEDパネルほどの鮮やかさはありませんが、ノートPCとしては十分なクオリティー

HP EliteBook 830 G11

カラーキャリブレーター(i1Display Pro)での計測では、色域はsRGBカバー率で95.7%でした。おそらく72% NTSCか100% sRGBのパネルが使われているのでしょう。個人的には前者のような気がします

HP EliteBook 830 G11

左が標準の色合いで、右がカラーキャリブレーション後の色合い。補正後のほうがやや赤の鮮やかさは増していますが、それほど大きくは変わりません。標準の状態で、かなり自然な色合いを実現しています

HP EliteBook 830 G11

ディスプレイのガンマカーブ

HP EliteBook 830 G11

画面の明るさを最大にしたときの輝度は392nitでした。明るい照明の下でも、画面の内容をハッキリと確認できます

キーボード

海外メーカー製のモバイルノートPCで、キーボードの日本語配列がちゃんとしているものはなかなかありません。筆者が把握する限りでは、AppleとHPのミドルレンジ~ハイエンドクラスあたりくらいです。日本語キーボードで違和感なく入力したいなら、HP製品を選ぶといいでしょう。

 

HP EliteBook 830 G11では、全体的に品質の高いキーボードが使われています。人によって好みは異なりますが、安いノートPCよりもダメなところが少ない仕上がりです。

HP EliteBook 830 G11

HP EliteBook 830 G11の日本語キーボード

HP EliteBook 830 G11

キーボード左側

HP EliteBook 830 G11

キーボード右側

HP EliteBook 830 G11

キーピッチは18.7mmで、標準値である19mmよりもやや狭めです。しかし窮屈さは感じませんでした。キーストロークは1.5~1.7mmで、カクッとした確かなクリック感があります。ストロークがやや深いので、しっかり押し込んで入力する人向き

HP EliteBook 830 G11

キートップはおそらくレーザー刻印タイプ。サラサラとした心地よい手触りです

HP EliteBook 830 G11

電源ボタンが微妙な位置にありますが、長押ししないと反応しないので、押し間違えても問題ありません

HP EliteBook 830 G11

Copilotキーを搭載。ただしCopilot+準拠ではないため、最新のAI機能には対応していません

端子類

端子類は多くはありませんが、モバイルノートPCとしては十分な構成です。さまざまな周辺機器を使うなら、Thunderboltドックを1台用意しておくと便利かもしれません。

HP EliteBook 830 G11

左側面にはHDMI、USB Type-A、Thunderbolt4(PD/DP)×2

HP EliteBook 830 G11

右側面にはヘッドホン端子、USB Type-A、セキュリティーロック、nanoSIMカードスロット口(対応モデルなし)

HP EliteBook 830 G11

キーボード右下には指紋センサー

HP EliteBook 830 G11

ディスプレイ上部には1440p 30fps対応のWebカメラと、顔認証用のIRカメラ

HP EliteBook 830 G11

排気口はこの部分。温められた空気はディスプレイに直接当たらず、まずはヒンジ部分に当たります

堅牢性とセキュリティー

HP EliteBook 830 G11

MIL-STD-810Hクリアーの頑丈設計

HP EliteBook 830 G11は、米国国防総省制定の耐久基準「MIL-STD-810H」(通称「MILスペック」)の19項目の試験をクリアーしているとのこと。試験のl内容は、以下のとおり。

HP MIL-STD-810H

HPが実施しているMIL-STD-810Hの試験内容

これだけだとちょっとわかりづらいのですが、たとえばほかのメーカーだと試験項目が8~10種類だけだったりするので、そのぶん安心感はあるかなと思います

 

またさらに「HP Total Test Process」と呼ばれる独自の試験も行なわれています。試験内容は電気・通信・電力・信頼性・熱・音響・性能、落下や温度変化などなど。満員電車での圧力を想定した圧縮荷重試験なども行なわれています。

HP Total Test Process

落下や圧力などに対する耐久性を確認する独自の「HP Total Test Process」

 

HP製品で堅牢性(壊れにくさ)がアピールされているイメージはないのですが、テストを自体はしっかり行なわれているようです。それも一部では、他社製品よりも厳しいテスト内容かもしれません。某社なら安心とか◯◯じゃなきゃダメなんて声もありますが、これだけの試験が行なわれているのであれば、安心して使えるのではないでしょうか。

充実のセキュリティー機能

HP EliteBook 830 G11はHPのセキュリティー保護機能「HP Wolf Security for Business」に対応しています。BIOS / ファームウェアレベルからメールやWebサイトへのアクセスまで、さまざまな場面で悪意ある攻撃からパソコンを保護することが可能です。

HP Wolf Security

起動時に表示される「HP Wolf Security」のロゴ ※写真は別の機種

 

UEFI(BIOS設定)からさまざまな機能を利用可能 ※写真は別の機種

 

HP Wolf Security

ソフトからはファイルやメール、アクセス先のWebページを監視 ※写真は別の機種

ベンチマーク結果

試用機のスペック

CPU Core Ultra 7 155U(12コア14スレッド)
メモリー LPDDR5 16GB(オンボード)
ストレージ 512GB NVMe SSD
グラフィックス Intel Graphics ※CPU内蔵

※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります

パフォーマンス設定について

ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「バランス」に設定した上で、電源アダプターを接続した状態で実施しています。また標準収録ユーティリティー「myHP」から、ふたつのモードを使ってテストを行ないました。

HP EliteBook 830 G11

標準収録ユーティリティー「myHP」によるパフォーマンス設定

 

用意されているモード設定

モード名 概要
Smart Sense
※記事中では”標準”と表記
アプリの使用状況やバッテリー残量などに基づいて、パフォーマンスやファンの回転などを最適化する
パフォーマンス CPUパワーを最大限に発揮。そのぶんファンの騒音が大きい

 

CPU性能

CPUとしては、Meteor Lake世代のCore Ultra Uシリーズが使われています。ほかの機種で使われているCore Ultra Hシリーズとの違いは、コア数や内蔵グラフィックスが異なる点。第13世代以前と同じく、末尾が「U」のシリーズは省電力版で「H」のシリーズは高性能版と考えるといいでしょう。また同じUシリーズでも、vPro(ビジネス向けのセキュリティ機能)の種類によって型番が異なります。

Meteor Lake

Meteor Lake世代の主なCPU

 

CPU性能を計測する「CINEBENCH R23」では、控えめな結果が出ました。普通に使うぶんには十分な性能ですが、ほかのCPUを搭載した機種に比べて、やや低めの結果が出ています。

 

ノートPCの性能比較

CPU CINEBENCH R23
検証機(Core Ultra 7 155U) ※標準
S1473
M6631
検証機(Core Ultra 7 155U)※パフォーマンス
S1685
M7418
Yoga 7i Gen 9(Core Ultra 7 155H)
S1751
M8704
Inspiron 13 5330(Core Ultra 5 125H)
S1683
M9475
HP Dragonfly G4(Core i7-1355U)
S1554
M6789
Inspiron 14 5445(Ryzen 7 8840U)
S1707
M10666
HP ProBook 465 G11(Ryzen 7 7735U)
S1532
M10132
HP 245 G10(Ryzen 7 7730U)
S1443
M9521
HP Pavilion Aero 13-bg(Ryzen 5 8640U)
S1677
M9317
ThinkBook 16(Ryzen 5 7530U)
S1458
M7683

※「S」はシングル、「M」はマルチ。スコアは当サイトの実機計測結果(検証機以外は標準設定時)

 

CPU性能を計測する「PassMark CPU Mark」の統計データと比較すると、性能的には「中の上」といったところです。最強性能ではないものの、ビジネス向けモバイルであることを考えれば十分な結果だと言っていいでしょう。

 

薄型ノートPC向けCPUの性能差 (総合性能)

CPU PassMark CPU Mark Score
Ryzen 7 7840U
24988
Core Ultra 7 155H
24944
Ryzen 7 8840U
24588
Core Ultra 5 125H
21813
Ryzen 7 7735U
21341
検証機(Core Ultra 7 155U) ※パフォーマンス
20058
Ryzen 5 8640U
19266
Ryzen 7 7730U
18651
検証機(Core Ultra 7 155U) ※標準
18620
Core Ultra 5 125U
17935
Core 5 120U
17471
Core Ultra 7 155U
16624
Ryzen 5 7535U
16371
Ryzen 5 7530U
16190
Core 7 150U
13990
Core 3 100U
11885
Ryzen 3 7330U
10874
Ryzen 5 7520U
9301
Ryzen 3 7320U
9001
N100
5549

※そのほかのスコアはPassMark CPU Benchmarksによる集計値

グラフィックス性能

グラフィックス機能としては、CPU内蔵のIntel Graphicsが使われています。Core Ultra HシリーズのIntel Arc Graphicsは(内蔵タイプとしては)非常に高性能ですが、Intel Graphicsはそれほどでもありません。従来のIris Xeよりも多少パワーアップした程度と考えてください。

 

3Dベンチマークテストの結果は以下のとおり。前世代のIris Xeよりもスコアで上回ってはいるものの、最近の内蔵グラフィックスとしてはそれほど高性能というわけでもありません。ただしHP EliteBook 830 G11はビジネス向けのモバイルノートPCであるため、高いグラフィックス性能は必要ないでしょう。大作ゲームや高度な動画編集を行なわないなら問題ありません

 

ノートPC向けGPUの性能(DirectX 12)

GPU 3DMark Time Spy Graphics
RTX 3050
4874
Intel Arc Graphics(Meteor Lake)
3759
GTX 1650
3444
Radeon 780M(RDNA3)
2727
Radeon 680M(RDNA2)
2350
Radeon 760M(RDNA3)
2282
テスト機(Intel Graphics)
1857
Iris Xe
1522
Radeon 660M(RDNA2)
1189

※そのほかのスコアはUL Solutionsによる平均値

 

PCを使った作業の快適さ

PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。

 

テスト結果の見方

テスト名 概要
Essentials
(一般利用)
ソフトの起動やWeb閲覧、ビデオ会議など一般的な作業を想定。CPUのシングルコア性能が強く影響する
Productivity
(ビジネス利用)
表計算とワープロにおいて、中規模クラスのデータを扱うテスト。CPUのマルチコア性能が影響しやすい
Digital Contents Creation
(コンテンツ制作)
写真加工と3D製作、動画編集を扱うテスト。CPU性能とグラフィックス性能が強く影響する

 

標準設定時とパフォーマンス設定時とで同じテストを2回行なったところ、どちらも目標値を大きく上回る結果が出ました。ひととおりの作業については、問題なく行なえるでしょう。

 

ただしパフォーマンス設定時では一般利用のテストでスコアが伸びているものの、それ以外のテストでスコアが下がっています。誤差の可能性も考えられますが、マルチコア(マルチスレッド)系の処理では性能があまり変わらないのかもしれません。であれば、標準モードで使うほうがいいと思います。

PCMark 10ベンチマーク結果

テスト スコア
Essentials
目標値:4100
通常8738
パフォーマンス9262
Yoga11277
HP2459902
ThinkBook9961
Ins1410649
Aero10100
Productivity
目標値:4500
通常8363
パフォーマンス8624
Yoga8283
HP2459336
ThinkBook9878
Ins1411053
Aero9964
Digital Contents Creation
目標値:3450
通常6842
パフォーマンス6637
Yoga8866
HP2455781
ThinkBook4833
Ins148243
Aero7374

※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの

比較機のスペック

Yoga 7i Gen 9 Core Ultra 7 155H / 16GB / Intel Arc
HP 245 G10 Ryzen 7 7730U / 16GB / Radeon
ThinkBook 16 Gen 6 Ryzen 5 7530U / 16GB / Radeon
Inspiron 14 5445 Ryzen 7 8840U / 16GB / Radeon 780M
HP Pavilion Aero 13-bg Ryzen 5 8640U / 16GB / Radeon 760M

AI性能

HP EliteBook 830 G11で使われているCore Ultra UシリーズはNPU搭載ということで、AI性能についても検証しました。

 

UL ProcyonでWindows ML(Direct ML)を使用したときのテストでは、まずまずのスコアが出ました。ただこれは単純にCPU性能(と内蔵グラフィックス性能)が出ているだけで、特にNPUが強く影響しているようには見えません(ただし今後はアップデートなどにより変わる可能性はあります)。このクラスとしては、標準的な結果と考えていいでしょう。

HP ProBook 445 G11

UL ProcyonによるAIベンチマーク結果

NPU性能が影響する(はずの)OpenVINOテストでは、十分なNPU性能が出ているように見えます。ただしCore Ultra 7 155Hの結果だけNPUが「Float16」ではなく「Float32」である点に注意してください(UL Procyonのアップデートにより、最近はFloat32でのテストを行なえなくなったため)。

HP ProBook 445 G11

UL ProcyonによるAIベンチマーク結果

 

この結果を見て言えるのは、「なんかよくわからん」ということだけです。NPUについてはいまだ不明な点が多く、効果が現われているのか実感するのが難しい状況ではないでしょうか。2024年7月時点においては、AI性能でノートPCを選ぶのはやめたほうがいいと思います(今後のアップデートやCPUの進化によっては変わる可能性あり)。

 

バッテリー性能

HP ProBook 445 G11

駆動時間

バッテリー駆動時間の公称値は、MobileMark 25で最大約16時間、JEITA測定法Ver3.0で最大約22時間28分とされています。しかしこれは(おそらく)消費電力を抑えた状態の結果で、実際の利用を想定した測定結果ではありません。実際の利用では、駆動時間が短くなりがちです。またJEIATA3.0については動画再生時とアイドル時(なにも操作しない状態)のふたつを並記するのが一般的ですが、「22時間28分」の数値がなにを表わしているのかはっきりしません。

 

そこでPCMark 10のバッテリーベンチマークテストを行なったところ、開始から14時間4分でバッテリー切れとなりました。公称値よりも短い結果ですが、ほかの機種だと同じテストで8~10時間くらいが多いので、なかなか優秀な結果です

バッテリー駆動時間の計測結果(Ryzen 7モデル)

テスト方法 駆動時間
※公称値 最大 約22時間28分(JEITA3.0) / 最大 約16時間(MobileMark 25)
PCMark 10 Modern Office (ビジネス作業) 14時間4分
50%充電までにかかった時間 32分
フル充電までにかかった時間 2時間

※テストの条件や計測方法についてはコチラ

バッテリー駆動の性能

ノートPCを内蔵バッテリーで利用すると、電源接続時よりもパフォーマンスが低下します。機種によって異なりますが、バッテリー駆動時にはベンチマークスコアが2~3割程度下がるのが一般的です。

 

HP EliteBook 830 G11でバッテリー駆動時のCPUベンチマークテストを行なったところ、シングルコア性能はやはり大きく下がったものの、マルチコア性能は微増という結果が出ました。

 

CINEBENCH R23ベンチマーク結果

CPU スコア
電源接続時 ※標準
S1473
M6631
バッテリー駆動時 ※標準
S978(34%減)
M6795(2%増)
電源接続時 ※パフォーマンス
S1685
M7418
バッテリー駆動時 ※パフォーマンス
S1319(22%減)
M7727(4%増)

※「S」はシングル、「M」はマルチ

 

PCMark 10では、標準モードでスコアが2割前後低下しています。しかしパフォーマンスモードで「Productivity」と「Digital Contents Creation」が同等以上のスコアでした。なお、このふたつのテストはマルチコア性能が強く影響します。

 

PCMark 10ベンチマーク結果

テスト スコア
Essentials
目標値:4100
電源/標準8738
バッテリー/標準6819
電源/パフォーマンス9262
バッテリー/パフォーマンス8504
Productivity
目標値:4500
電源/標準8363
バッテリー/標準6234
電源/パフォーマンス8624
バッテリー/パフォーマンス9059
Digital Contents Creation
目標値:3450
電源/標準6842
バッテリー/標準5604
電源/パフォーマンス6637
バッテリー/パフォーマンス6633

※スコアの目標値はPCMark 10公式サイトによるもの

 

以上のことから、バッテリー駆動時には体感的な速度を上げるために、マルチコア性能が上がるようにチューニングされているのかもしれません

熱と騒音について

※計測時の室温は28度。室温が変わると、結果が異なる場合があります

CPUの熱について

高負荷な「CINEBENCH R23」実行中のCPU温度 / 消費電力を調べたところ、テスト開始から20秒間は熱も電力も非常に高い状態が続いていましたが、それ以降はどちらもグッと抑えた状態で推移していました。

まず熱で見ると、高出力状態では最大で110度まで達し、最終的には65度前後まで低下。その結果、平均としては67.6度と出ています。Core Ultra 7 155U自体の最大動作温度は110度なので、規格としては許容範囲内です。多少なりとも熱による影響が出ているはずですが、このあとガクッと下げているから問題ないという判断なのでしょうか。ちなみに高出力時の20秒間はサーマルスロットリングが発生していますが、その後は出ていません。

 

HP ProBook 445 G11

CINEBENCH R23のマルチコアテストを10分間行なった際のCPU温度とCPU消費電力の推移

 

次に消費電力で見ると、高出力時には42~58W出ていました。Core Ultra 7 155Uの最大ターボパワー(MTP)は57Wなので、限界ギリギリというか、限界を超えている状態です(センサーの誤差の可能性もありますが)。高出力状態が終わると急激に電力が減少し、最終的には16W前後を推移しています。これはプロセッサーバースパワー(PBP)の15Wに近い数値です。

 

このグラフを見ると、HP EliteBook 830 G11のCPUベンチマーク結果が低いのは、あえて性能を抑えているためということがわかります。一瞬の高出力期間はあるものの、中長期的には発熱を抑えてシステムの安定を図っているということでしょう。パフォーマンスよりも安定性を重視するのは、ビジネス用途の機器ではよく見られることです。

本体の熱と駆動音について

高負荷時でも、本体表面の熱はそれほど感じられませんでした。キーボードがほんのり温かいなと感じる程度です。

HP ProBook 445 G11

本体表面の最大温度は、キーボード中央から上部にかけて37~38度前後

 

騒音(空冷ファンの回転音や通気口からの風切り音)を計測したところ、軽作業時は「耳を澄ませば聞こえる」程度で基本的には静かです。高い負荷がかかると音は大きく聞こえるものの、特別うるさくはありませんでした。ただし長時間聞き続けると、ストレスを感じるかもしれません。また静かな場所では、周囲への配慮が必要だと思います。

 

駆動音の計測結果

待機中 37.2dB ほぼ無音。耳を近づけると、ファンの回転音が聞こえる程度
軽作業時 37.3dB 同上
高負荷時(CINEBENCH) 46dB前後 音は少し大きいが、うるさくは感じない。個人的な感覚ではUSB扇風機の中風くらい
(参考)エアコンの最大出力時 48~58dBA前後

他機種との比較

比較するなら同じビジネス向けモデルを選ぶべきですが、いまかなり人気のある13.3インチモバイルということで、個人向けモデルの「HP Pavilion Aero 13-bg」(2024年モデル)と比べてみました。

 

HP Pavilion Aero 13-bg

人気の13.3インチモバイル「HP Pavilion Aero 13-bg」

関連リンク

HP Pavilion Aero 13-bg 製品詳細(HP公式サイト)
icon

軽さとパフォーマンスの点では、HP Pavilion Aero 13-bgに軍配が上がります。しかし前述したように、HP EliteBook 830 G11は性能よりも安定性を重視した機種です。インテル製CPUの優位点や本体の堅牢性、セキュリティー機能、有償の法人サポートなどを考慮すれば、値段が高くてもHP EliteBook 830 G11を選びたい人はいるでしょう。「絶対的な安心感」の観点からは、HP EliteBook 830 G11のほうが上だと思います。

 

HP EliteBook 830 G11とHP Pavilion Aero 13-bgの比較

HP EliteBook 830 G11 HP Pavilion Aero 13-bg
HP EliteBook 830 G11 HP Pavilion Aero 13-bg
Windows 11 Pro Windows 11 Home
13.3インチ、1920×1200ドット、IPS、非光沢、400nit
Core Ultra 5 125U
Core Ultra 7 155U ほか
Ryzen 5 8640U
Ryzen 7 8840U
LPDDR5 16GB(オンボード)
256GB / 512GB SSD 512GB / 1TB SSD
Thunderbolt 4(40Gbps、PD/DP) Type-C(PD/DP)
最大16時間(MobileMark 25)
最大22時間28分(JEITA3.0)
最大11時間30分(MobileMark 25)
マグネシウム製ボディ
約1.28kg 約990g
最厚部 19.2mm 最厚部 17.4mm
MIL-STD-810H準拠
HP Total Test Processクリアー
天面耐圧テスト350kgfクリアー
HP Wolf Security for Business(永続利用可能) マカフィーリブセーフ30日版
法人向けサポート 個人向けサポート
18~20万円台 12~14万円台

考察とまとめ

さすがの高品質

ここ最近HPのビジネス向けモデルを触っていて、いくつかあるシリーズの違いがなんとなくわかってきました。単に高品質か低品質かというだけでなく、細かな部分がいろいろ違っています。大まかな傾向としては、以下のとおりです。

 

HPビジネス向けシリーズの違い

EliteBookシリーズ ProBookシリーズ HPシリーズ
Windows Pro Windows 11 Home
最新CPU 上位CPU 下位~中位CPU
メタルボディ メタル+樹脂 樹脂
標準キー配列 変則キー配列
高品質キー 標準品質キー
高品質パネル 標準品質パネル
Thunderbolt対応 PD/DP対応Type-C Type-Cデータ通信のみ

※例外あり

 

筆者は基本的に「安いパソコン」がスキなのですが、今回HP EliteBook 830 G11を触ってみて値段の高いものもアリだなと思わせる仕上がりでした。エントリー / ミドルレンジの機種と比べて、明らかに勝っている部分がいくつもあるからです。

 

安い機種でも普通に使えますが、ミドルレンジ以上の機種はストレスを感じる場面が少ない気がします。割り切ってコスパを取るか、日常的な快適さを優先するかは、人によって意見が分かれるでしょう。

長時間の安定動作が魅力

各種ベンチマーク結果をご覧いただくとおわかりのように、HP EliteBook 830 G11の性能は上位モデルでもほどほどです。ですがこれは、省電力性能重視のCPUを採用しているため。外出先で動画エンコードレベルの高負荷な作業をする人はいないでしょうし、駆動時間重視のモバイルタイプなら「ほどほど」でも十分でしょう。その結果、長時間のバッテリー駆動を可能としています。

 

さらに、CPUの発熱が抑えられている点もポイント。一時的に110度に達した場面もありましたが、平均で見れば概ね発熱は抑えられているほうです。熱による不調やパーツ類の劣化が少ないと考えれば、長期的には安定した動作を見込めます。そんな安定性や堅牢性、セキュリティー機能を重視したい人は、ぜひHP EliteBook 830 G11を検討してみてください。

HP EliteBook 830 G11

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こまめ(タカハシリョウ)

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