HUAWEI MateBook D 16は、第12世代のCore i5-12450Hを搭載したスタンダードタイプ(GPU非搭載で一般用途向け)のノートPCです。16インチの大きくて見やすいディスプレイを搭載しながらも、軽量スリムでコンパクトなボディに仕上げられています。
ただし、値段はかなり高め。通常価格はCore i5 + 8GBメモリーの構成で17万円台から。セール等で値引きがあったとしても、同クラスの他社製品より割高感があります。MacBookやSurfaceと似たようなハイブランド路線を狙っているものと思われますが、その価値があるかどうかは正直なところ疑問です。
そこでこの記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 16インチ 1920×1200ドット IPS 300nit 100% sRGB |
CPU | Core i5-12450H |
メモリー | 8/16GB LPDDR4x-3733 ※オンボード |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
通信 | 11a/b/g/n/ac/ax、Bluetooth 5.1 |
インターフェース | USB Type-C(USB PD充電 / 映像出力対応)×1、USB Type-C(USB PD充電対応)×1、USB3.2 Gen1 Type-A ×1、USB2.0 Type-A×1、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
生体認証 | 指紋認証 |
サイズ / 重量 | 幅356.7mm、奥行き248.7mm、高さ18.4mm / 約1.7kg |
バッテリー | 約9時間(8GBモデル) / 約8.4時間(16GBモデル) |
本体デザイン
サイズと重量
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i5-12450H(Pコア×4+Eコア×4、45W) |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Huawe PC Manager」の「パフォーマンスの調整」を「パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、インテル第12世代のCore i5-12450Hが使われています。ゲーミングPC向けのHシリーズではあるものの、同シリーズのなかではもっとも性能を抑えたCPUです。とは言え8コア12スレッドの構成は前世代Core i5の6コア12スレッドよりも進化しており、性能の向上が見込めます。
CPUベンチマークテスト結果は、なかなか優秀です。もともとはゲーミングノートPC向けだけあって、Core i5ながらスタンダードノートPC向けの上位CPUに迫る結果が出ています。同じゲーミングノートPC向けCPUのなかでは、そこそこ優秀といったレベルです。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
15066
|
Ryzen 7 6800H |
13673
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9728
|
MateBook D16(Core i5-12450H) |
9046
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i7-1260P |
8984
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
7580
|
Core i7-1250U |
7552
|
Core i5-11400H |
7529
|
Core i5-1235U |
5989
|
Core i3-1215U |
5715
|
Ryzen 3 5400U |
5693
|
Core i7-1185G7 |
5668
|
Ryzen 3 5300U |
5140
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i7-12700H |
1806
|
Core i7-1255U |
1743
|
Core i7-1250U |
1726
|
MateBook D16(Core i5-12450H) |
1691
|
Core i3-1215U |
1661
|
Core i5-1235U |
1648
|
Core i7-1260P |
1636
|
Core i5-1240P |
1606
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Core i7-11800H |
1502
|
Core i7-1185G7 |
1484
|
Ryzen 7 6800U |
1471
|
Core i5-11400H |
1461
|
Ryzen 7 5825U |
1433
|
Core i7-1165G7 |
1423
|
Ryzen 5 5625U |
1404
|
Core i5-1135G7 |
1349
|
Core i3-1115G4 |
1329
|
Ryzen 3 5300U |
1125
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
ただしCore i5-12400H本来の性能からは、ややパワーダウンしているような印象を受けます。本体がスリムなので、熱対策としてあえてパフォーマンスを落としているのかもしれません。メモリーが8GBである点も、影響している可能性があります。
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD Graphicsが使われます。3Dベンチマークテストの結果は同じUHD Grapghicsの平均値よりも優秀ではあったものの、最近の内蔵グラフィックスとしてはかなり低めです。ゲームやクリエイター向けソフトでの効果は見込めません。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
MateBook D16(UHD) |
871
|
Iris Plus |
812
|
UHD |
407
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
各テストの目標値は大きく上回ってはいるものの、最近のノートPCとしては控えめな結果です。CPUベンチマークではそこそこ優秀な結果が出ているので、もしかすると8GBのメモリー容量が足を引っ張っているのかもしれません。軽めの作業であれば普通に使えますが、ガッツリ使うなら16GBメモリーのモデルをおすすめします。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9777
9477
10606
9667
10024
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6805
6534
8578
8530
8593
8766 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
5320
5363
7972
8109
9988
10284 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶GALLERIA XL7C-R36 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3060 |
▶GALLERIA UL7C-R37 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3070 |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間はモデルによって異なります。今回試用したCore i5モデルは約9時間とされていますが、公称値は実際の利用を想定した測定結果ではないため、実際の利用では駆動時間が短くなりがちです。
そこでビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から6時間52分で休止状態へ移行しました。公称値よりもかなり短いのですが、消費電力の高いCPUが使われていることを考えれば仕方がないでしょう。電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i5モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 約9時間 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 6時間52分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
仕上がりはいいが値段が高すぎる
スタンダードノートPCとして考えるなら、なかなかの仕上がりです。16インチの大きな画面を搭載しながらも、本体はスリムかつコンパクトで軽量。キーボードにも大きな不満はなく、ディスプレイの色合いも鮮やかです。
個人的に残念なのは、Thunderbolt 4に対応していない点です。Type-Cでもある程度はなんとかなりますが、Thunderbolt 4に対応していれば拡張性は格段に向上したでしょう。たとえばeGPUでグラフィックス性能を底上げすれば、また違った使い方ができたはずです。Core i5-12450Hの性能はそこそこ優秀ではあるものの、現在の構成では「普通よりもちょっと高性能なノートPC」的な位置付けでしかありません。
不満な点は2点。まずひとつは、8GBメモリーモデルを用意している点です。いまやプレミアムクラスの機種なら、最低でも16GBメモリーを搭載するべきでしょう。ベンチマーク結果をご覧いただくとおわかりのように、せっかく高性能なCPUを搭載しているのにメモリー容量の少なさが足を引っ張っています。
ふたつ目は、値段がかなり高い点です。Core i5 + 8GBメモリーで通常価格は17万2800円、Core i5 + 16GBメモリーで19万2800円。セールで多少割引きがあったとしても、8GBメモリーモデルでいいとこ14~15万円台といったところでしょうか。これだけの予算があれば、CPU / GPU性能に優れるミドルレンジクラスのゲーミングノートPCを入手できます。用途やターゲットが違うとは言え、この筐体にこれだけのお金を出せるかどうかは意見がわかれると思います。
確かにMacBookやSurfaceなど、同程度のスペックで値段の高い機種は存在します。しかしこれらは、ほかに代えがない魅力があるからではないでしょうか。ではHUAWEI MateBook D 16の唯一無二の魅力はなにかと考えたとき、残念ながら筆者には思い浮かびませんでした。ファーウェイ製デバイス間でシームレスに連携できる「Super Device」という固有の機能はあるものの、筆者にとっては何万円も上乗せしていいと思えるほどではありません。
メーカーとしてはハイブランド路線を貫きとおしたいとは思いますが、一般的な消費者目線で考えると厳しいのではないか、というのが筆者の正直な感想です。ファーウェイの熱狂的なファンでこれくらいの金額ではビクともしないのであれば、即購入してもいいのかなとは思います。
*
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