デルのInspiron 13 ノートパソコン(以下、”Inspiron 13 5320″)は、13.3インチディスプレイ搭載のモバイルノートPCです。一般的な13インチタイプよりも本体が小さく、持ち歩きに適しています。

軽量コンパクトなモバイルノートPC『Inspiron 13 5320』
性能はかなり優秀です。13インチクラスのモバイルノートPCでは本体内部の熱が上がりすぎるのを防ぐために性能をあえて落としているケースが多いのですが、Inspiron 13 5320では十分なパフォーマンスが発揮できているように見受けられます。ただし品質も性能もハイエンドクラスであるぶん、値段はやや高めです。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。

Inspiron 13 5320
スペック
OS | Windows 11 Home |
---|---|
ディスプレイ | 13.3インチ 1920×1200ドットまたは2560×1600ドット WVA 300nit 100% sRGB |
CPU | Core i3-1215U / Core i5-1240P / Core i7-1260P |
メモリー | 8/16GB LPDDR5-4800 ※オンボード |
ストレージ | 256 / 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD /Iris Xe Graphics(CPU内蔵) |
通信 | Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2 |
インターフェース | Thunderbolt 4(USB PD充電 / 映像出力対応)×2、USB 3.2 Gen1 Type-A ×1、HDMI(最大1920×1080@60Hz)、ヘッドフォン出力 / マイク入力 |
生体認証 | 指紋認証(オプション) |
サイズ / 重量 | 幅296.68mm、奥行き213.5mm、高さ14.35~15.65mm / 約1.25kg |
バッテリー | 4セル 54Whr ※駆動時間は非公開 |
本体デザイン

Inspiron 13 5320の外観。本体カラーはプラチナシルバー。実際の色合いはメタリックな明るいシルバーで、ノートPCとしてはよくあるカラーです

実物を手にして驚くのは、とにかく小さい点。上位ブランドのモバイルノートPC『XPS 13』に迫る小ささです

フットプリント(設置面積)は幅296.68mm×奥行き213.5mm

A4ノート(ピンク)とB5ノート(ブルー)とのサイズ比較。ほぼA4サイズと考えていいでしょう。13.3インチタイプとしては非常にコンパクトです

厚さは公称値で14.35~15.65mm(突起部を除く)。実測では15.6mmでした

底面部のゴム足(突起部)を含めたときの高さは16.5mm。設置時でも厚みを感じません

エッジの立ったシャープなフォルム。やや角ばった印象のあるデザインです

ハイエンドモデルのようなシュッとしたスリムさは見た目からは感じられませんが、実際に手で持つと薄く感じます

重さは実測で1.213kg。実際に手で持つと、かなり軽く感じます

天板はアルミニウム。表面はツヤ消しでサラサラとした手触りです。指紋の跡は少し残ります

ディスプレイを開いた状態。撮影時にWindows 11の「表示されるコンテンツと明るさを最適化するとバッテリーの改善に役立ちます」等が有効になっていたため、写真ではディスプレイがかなり暗く映っています。実際には明るくて見やすい画面です

キーボード面の素材もアルミニウム。キーの色はグレーで、全体的に淡い配色です

ディスプレイのベゼルは細め。Webカメラのある上部はやや太く作られていますが、気になるほどではありません

カメラはプライバシーシャッター付き。写真撮影は最大1920×1080ドットの200万画素で、動画撮影は1080p 30Hz

USB PDと映像出力対応のThunderbolt 4×2を搭載。メモリーカードスロットがないのは残念ですが、モバイル用としては十分な構成です

電源アダプターはType-Cの65W。重さは291gです。持ち歩くには大きくて重いので、他メーカーの小型充電器で代用するといいでしょう。多くのPCメーカーは充電器への関心が低いのか、大きめの電源アダプターを採用するところばかりです

スピーカーは底面部に配置。音量は大きく音がしっかり聞こえるものの、音の出る箇所が接地面でふさがれているため、中音域はややこもって聞こえます。ビデオ会議や動画視聴には問題ありません。ただなにもしていない状態で謎の音が聞こえることがありました(ソフト面での影響かも?)

キーボード右上に指紋センサー内蔵の電源ボタン。ボタンを押し込む力が強いので触れた程度では反応しませんが、誤って強く叩くとスリープへ移行するので注意

吸気口のある対面部は樹脂(プラスチック)製。排気口は本体背面のディスプレイパネル側に配置されています
ディスプレイについて

画面サイズは13.3インチ。解像度は1920×1200ドットと2560×1600ドットの2種類が用意されています。今回試用したのは1920×1200ドットのモデル

色域はsRGB 100%。スマホやタブレットほど鮮やかではありませんが、ノートPCとしては高品質なパネルが使われています。ただし前述のとおり、写真撮影時にWindows 11の節電機能が働いたため画面がかなり暗くなってしまいました。実際にはもっと明るく鮮やかに映し出されます

IPS相当の広視野角パネルが使われていますが、画面を斜めから見たときの映像が、IPSパネルよりもやや暗めに感じます。モバイルノートPCとして、あえてのぞき見されにくくしているのかもしれません
キーボードについて

キーボードはテンキーなしの日本語配列

キーボードバックライトに対応

キーの大きさは十分ですが、Enterキー周辺で一部のキーが隣接しています。上下のカーソルキーも小さくて、やや使いづらく感じました

キーストローク(押し込む深さ)は一般的なノートPCよりも浅め。入力中にキーボードの中央付近で、キーのたわみが感じられます。押し込むように強く入力するタイプではなく、指の上げ下ろしを抑えて軽い力で入力する人向きです

タイプ音は軽い力でもカタカタと聞こえます。うるさくはないのですが、底面部のすき間による反響で、低い音が響いて聞こえました。静かな場所では、周囲へ多少配慮したほうがいいでしょう
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Core i3-1215U(Pコア×2+Eコア×4、15W) |
---|---|
メモリー | 8GB |
ストレージ | 256GB NVMe SSD |
グラフィックス | UHD Graphics(CPU内蔵) |
※ベンチマークテストはWindows 11の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「My Dell」の「電源マネージャー」にて「サーマルモード」を最高設定の「超高パフォーマンス」に変更。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
CPUとしては、Core i3-1215U / Core i5-1240P / Core i7-1260Pが使われています。今回のテストで使ったCore i3-1215Uは省電力性能重視タイプで、インテル第12世代Coreプロセッサのなかでは性能はあまり高くはありません。しかしベンチマークテストでは前世代のCore i5 / Core i7を上回っており、一般的な事務作業や普段使いにはまったく問題ない性能です。
中上位のモデルで使われているCore i5-1240PとCore i7-1260Pは性能重視タイプで、高い性能を期待できます。
CPUの性能差 (総合性能)
CPU | PassMark 10 CPU Markスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
22327
|
Ryzen 7 5825U |
20302
|
Core i7-1260P |
20058
|
Ryzen 5 5625U |
18897
|
Core i5-1240P |
18571
|
Core i7-1255U |
17176
|
Core i5-1235U |
13951
|
Inspiron 13 5320(Core i3-1215U) |
11958
|
Core i7-1165G7 |
11723
|
Core i3-1215U |
11681
|
Core i5-1135G7 |
11249
|
Ryzen 5 7520U |
10124
|
Core i3-1115G4 |
6750
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Ryzen 7 6800U |
10183
|
Ryzen 7 5825U |
9740
|
Core i7-1260P |
9254
|
Core i5-1240P |
8928
|
Ryzen 5 5625U |
8267
|
Core i7-1255U |
7819
|
Core i5-1235U |
7708
|
Inspiron 13 5320(Core i3-1215U) |
6678
|
Core i3-1215U |
6216
|
Ryzen 5 7520U |
5029
|
Core i5-1135G7 |
4932
|
Core i7-1165G7 |
4711
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としては、CPU内蔵のUHD Graphics(Core i3)またはIris Xe Graphics(Core i5/i7)が使われます。3Dベンチマークテストの結果は同じUHD Grapghicsの平均値よりも優秀ではあったものの、最近の内蔵グラフィックスとして低めです。ゲームやクリエイター向けソフトでの効果は期待しないほうが無難です。Core i5 / i7であれば多少は改善されるでしょう。
GPUの性能差(DirectX 12)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
GTX 1650 |
3241
|
Radeon 680M(Ryzen7) |
2211
|
Iris Xe(Core i7+LPDDR4x) |
1528
|
Iris Xe(Core i5+LPDDR4x) |
1302
|
Iris Xe(Core i7+DDR4) |
1149
|
Inspiron 13 5320(Core i3, UHD) |
1043
|
Radeon (Ryzen 7) |
1000
|
Iris Xe(Core i5+DDR4) |
977
|
UHD(Core i3) |
900
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
Core i3-1215U搭載機の結果は各テストの目標値を上回っており、普通の使い方であればまったく問題ありません。ただしコンテンツ制作や高度なデータ集計などでは、やや性能が劣るようです。ネットの調べ物やWeb会議などの使い方であれば、十分でしょう。高度な処理を行なう場合は、Core i5 / i7モデルを選んでください。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
9681
9984
10606
10594
10647
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
6374
9266
8578
9536
6968
6759 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
4890
5987
7972
6685
5997
6342 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック(スリムノートPC)
▶IdeaPad Slim 570 | Ryzen 5 5625U / 8GB / Radeon |
---|---|
▶Yoga 770 | Ryzen 7 6800U / 16GB / Radeon 680M |
▶HP Pavilion 15-eh | Ryzen 7 5825U / 16GB / Radeon |
▶HP Spectre x360-14 | Core i7-1255U / 16GB / Iris Xe |
▶XPS 13 Plus | Core i7-1260P / 16GB / Iris Xe |
バッテリー駆動時間
バッテリーの駆動時間は公開されていません。そこでCore i3モデルを使ってビジネス作業 (Web閲覧や文書作成、ビデオチャットなど)での駆動時間を計測したところ、開始から13時間42分で休止状態へ移行しました。それほど重くはない処理とは言え、これだけもてば十分なはずです。なお電源プランや画面の輝度を変更すれば、駆動時間はさらに延びる可能性があります。
バッテリー駆動時間の計測結果 ※Core i3モデル
テスト方法 | バッテリー消費 | 駆動時間 |
---|---|---|
※公称値 | 小 | 非公開 |
Modern Office (ビジネス作業) | 大 | 13時間42分 |
※テストの条件や計測方法についてはコチラ
コンパクト&高性能だけど値段は高め
デルのノートPCにおいて「Inspiron 5000」は、どちらかと言えば価格と品質のバランスを重視したミドルレンジクラスのシリーズです。しかしInspiron 13 5320は本体が非常にコンパクトかつ仕上がりがよく、ハイエンド機並みの仕上がりを実現しています。
特筆すべきは、パフォーマンスが高い点です。軽量コンパクトなノートPCでありながら2基の空冷ファンを搭載することで、熱による性能の低下を極力抑えているように見受けられます。13インチクラスのなかでは、かなり優秀だと考えていいでしょう。

モバイルノートPCは熱対策のために性能を抑えがちの機種が多いのですが、Inspiron 13 5320は高いパフォーマンスを実現しています
価格は記事執筆時点でCore i3モデルが10万円台、Core i5モデルが11万円台、Core i7モデルが14万円台。軽量コンパクト&高性能であることを考えれば値段の高さは仕方がないのですが、Core i3 / i5モデルは割高な印象を受けます。購入するのであれば、Core i7モデルがおすすめです。

Inspiron 13 5320
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