レノボのLegion 570 Pro(16型 AMD)は、Zen3+世代のモバイルRyzen 6000シリーズを搭載するゲーミングノートPCです。GPUはエントリー向けのRTX 3050から、ミドルハイのRTX 3070 Tiまでを選択可能。ディスプレイはやや大きめの16インチで、解像度は1920×1200ドット。最大で165Hzのリフレッシュレートに対応しています。
価格はエントリー向けのRTX 3050 Ti搭載で16万円台から(2022年10月末時点)。同構成の他社製品と比べると、価格は3万円程度高めです。そのほかのGPU搭載モデルでも、割高感があります。
しかしそのぶん、品質面で優れている点が特徴です。複雑な操作にも対応できるキーボードや排熱性能の高い本体、鮮やかなゲーム映像を堪能できるHDR対応ディスプレイなど、安いゲーミングノートPCにはない魅力が盛り込まれています。言わば、『高級エントリー機』といったところでしょうか。
この記事ではメーカーからお借りした実機を使って、デザインや性能、実際の使い心地などをレビューします。
Legion 570 Pro
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スペック
OS | Windows 11 Home / Pro |
---|---|
ディスプレイ | 16インチ 非光沢 タッチ非対応 IPS 100%sRGB |
パネル | 1920×1200 165Hz 300nit / 2560×1600 165Hz 500nit HDR400 |
CPU | Ryzen 5 6600H / Ryzen 7 6800H / Ryzen 9 6900HX |
メモリー | 16GB(8GB×2) / 32GB(16GB×2) ※DDR5-4800、最大32GB |
ストレージ | 512GB / 1TB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050(4GB)/RTX 3050 Ti(4GB)/RTX 3060(6GB)/ RTX 3070(8GB) / RTX 3070 Ti(8GB) |
通信 | Wi-Fi 6 / 6E、Bluetooth 5.1、有線LAN(1Gbps) |
インターフェース | USB3.2 Gen2 Type-C(映像出力対応、背面のみUSB PD対応)×3、USB3.2 Gen1×3、HDMI2.1、有線LAN、ヘッドセット端子 |
生体認証 | なし |
サイズ / 重量 | 幅359.9×奥行き264.4×高さ19.9~26.4mm / 約2.5kg |
バッテリー | 約11時間 |
本体デザイン
サイズと重量
ディスプレイについて
キーボードについて
ベンチマーク結果
試用機のスペック
CPU | Ryzen 7 6800H |
---|---|
メモリー | 16GB |
ストレージ | 512GB NVMe SSD |
グラフィックス | RTX 3050 Ti (4GB) |
最大グラフィックスパワー | 95W |
※ベンチマークテストはWindows 10の電源プランを「バランス」、電源モードを「最適なパフォーマンス」に設定した上で、標準収録ユーティリティー「Lenovo Vantage」の「サーマル・モード設定」を「パフォーマンス・モード」に設定。さらに電源アダプターを接続した状態で実施しています
※ベンチマーク結果はパーツ構成や環境、タイミング、個体差などさまざまな要因によって大きく変わることがあります
CPU性能
標準のCPUとしては、AMD Zen3+世代のRyzen 7 6800Hが使われています。カスタマイズ対応モデルでは、Ryzen 5 6600HやRyzen 9 6900HXの選択も可能です。
Ryzen 7 6800H搭載の試用機では、ベンチマークテストで非常に優秀な結果が出ました。現行世代のゲームを楽しむには十分な性能であり、また動画編集などの高度な処理を行なうのにも向いています。ただしインテル第12世代のCore i7やCore i9には及びませんでした。
CPUの性能差 (マルチコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
21119
|
Core i7-12700H |
15066
|
Legion 570 Pro(Ryzen 7 6800H) |
13938
|
Ryzen 7 6800H |
13673
|
Ryzen 9 5900HX |
12654
|
Ryzen 7 5800H |
11346
|
Core i7-11800H |
11123
|
Ryzen 5 5600H |
8901
|
Core i5-11400H |
7529
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
CPUの性能差 (シングルコア性能)
CPU | CINEBENCH R23 CPUスコア |
---|---|
Core i9-12900HX |
1906
|
Core i7-12700H |
1806
|
Ryzen 7 6800H |
1532
|
Legion 570 Pro(Ryzen 7 6800H) |
1531
|
Core i7-11800H |
1502
|
Core i5-11400H |
1461
|
Ryzen 9 5900HX |
1459
|
Ryzen 7 5800H |
1375
|
※10分間実行し続けた際の最終スコア。そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
グラフィックス性能
グラフィックス機能としてはエントリー(入門)向けのRTX 3050またはRTX 3050 Ti、ミドルレンジ(中級)向けのRTX 3060が標準モデルとして用意されています。カスタマイズ対応モデルで2560×1600ドットのディスプレイを選択すると、さらに上位のRTX 3070およびRTX 3070 Tiを選択可能です。
今回試用したのは、RTX 3050 Ti搭載モデルです。3Dベンチマークテストを行なったところ、当サイトの平均値を上回る結果が出ました。
おそらく高いCPU性能が影響しているのと、最大グラフィックスパワーが95Wに設定されているためだと思われます。RTX 3050 Tiの仕様上の上限は80Wですが、DYNAMIC BOOST 2.0でGPUへの電力を上乗せしているのでしょう。エントリー向けとしては非常に優秀で、前世代のミドルレンジに相当します。
GPUの性能 (DirectX 12、WQHD)
GPU | 3DMark Time Spy Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
13493
|
RTX 3080 |
11612
|
RTX 3070 Ti |
10357
|
RTX 3070 |
9707
|
RTX 3060 |
8297
|
Legion 570 Pro(RTX 3050 Ti) |
6049
|
RTX 3050 Ti |
5207
|
RTX 3050 |
4426
|
GTX 1650 |
3178
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
GPUの性能 (DirectX 11、フルHD)
GPU | 3DMark Fire Strike Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
30787
|
RTX 3080 |
28274
|
RTX 3070 Ti |
25538
|
RTX 3070 |
25161
|
RTX 3060 |
21476
|
Legion 570 Pro(RTX 3050 Ti) |
15215
|
RTX 3050 Ti |
13528
|
RTX 3050 |
11051
|
GTX 1650 |
8758
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
RTX 3050 / 3050 Tiはレイトレーシングに対応していますが、パフォーマンスはかなり低めです。事実上の非対応と考えていいでしょう。レイトレーシングを有効にしてゲームをプレーするなら、RTX 3060以上(できればRTX 3070以上)のGPUをおすすめします。
GPUの性能 (レイトレーシング)
GPU | 3DMark Port Royal Graphicsスコア |
---|---|
RTX 3080 Ti |
8527
|
RTX 3080 |
7148
|
RTX 3070 |
5957
|
RTX 3060 |
4909
|
Legion 570 Pro(RTX 3050 Ti) |
649
|
RTX 3050 Ti |
585
|
RTX 3050 |
537
|
※そのほかのスコアは当サイト計測値の平均
PCを使った作業の快適さ
PCMark10は、PCを使った作業の快適さを計測するベンチマークテストです。一般的な作業を想定しているため、テストでは比較的軽い処理が行なわれています。各テストの傾向としては「Essentials」(一般利用)ではCPUのシングルコア性能やストレージ性能、「Productivity」(ビジネス利用)ではCPUのマルチコア性能とメモリー性能、「Digital Contents Creation」(コンテンツ制作)ではCPUとストレージ、GPU性能が強く影響するようです。
ベンチマークテストの結果は非常に優秀です。特にコンテンツ制作のテストでは、旧世代のCPUを搭載したミドルレンジ機と同等以上のスコアが出ています。ゲームだけでなく、さまざまなシーンで活用できるでしょう。
PCMark 10ベンチマーク結果
テスト | スコア |
---|---|
Essentials (一般的な利用) 目標値:4100 |
10210
9477
8362
9667
9418
10093 |
Productivity (ビジネス利用) 目標値:4500 |
9566
6534
8253
8530
7927
8766 |
Digital Contents Creation (コンテンツ制作) 目標値:3450 |
9449
5363
6187
8109
8486
10284 |
※スコアの目安はPCMark 10公式サイトによるもの
比較機のスペック
▶Surface Pro 8 | Core i7-1185G7 / 16GB / Iris Xe |
---|---|
▶Surface Studio | Core i7-11370H / 16GB / RTX 3050 Ti |
▶Inspiron 16 Plus | Core i7-11800 / 16GB / RTX 3050 |
▶raytrek R5-CA | Core i7-10875H / 16GB / RTX 3060 |
▶GALLERIA UL7C-R37 | Core i7-11800H / 16GB / RTX 3070 |
ゲーム性能
Ryzen 7 + RTX 3050 Tiモデルでゲーム系ベンチマークを試したところ、重いゲームでも普通に楽しめそうな結果が出ました。ただしグラボの機能としてはレイトレーシングに対応しているものの、実際のゲームではFPSがかなり低下するので、事実上の非対応と考えたほうがいいでしょう。そこそこ重めの人気FPSでも、画質を調整すれば高リフレッシュレートでプレー可能です。
検証結果まとめ
- ・激重タイトルは低画質ならOK
- ・中量級タイトルは高画質でも快適
- ・事実上レイトレ非対応
- ・中量級FPSは画質調整で100~144Hz
- ・競技系FPSは165Hzはり付き可能
※平均60 FPS以上が快適に遊べる目安
エーペックスレジェンズ 射撃訓練場(中量級)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 74 / 53.3 |
最低画質 | 195.9 / 144 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが低下します
ヴァロラント 屋外射撃場(超軽い)
画質 | 平均FPS / 低位1% |
最高画質 | 243.1 / 125.9 FPS |
最低画質 | ※未計測 |
※実際のプレーではこの結果よりもFPSが10%程度低下します
CS:GO FPS Benchmark(軽い)
画質 | 平均FPS |
最高画質 | 238.28 |
最低画質 | 297.44 |
※ワークショップ内のマップ「FPS Benchmark」を使用
FF15ベンチ (重い / DX11)
画質 | スコア / 評価 |
高品質 | 5732 / やや快適 |
標準品質 | 8653 / 快適 |
軽量品質 | 10809 / とても快適 |
※スコアが6000以上で「快適」
FF14ベンチ:暁月のフィナーレ (やや重い / DX11)
画質 | スコア / 平均FPS |
最高品質 | 14194 / 99.5 FPS |
高品質 | 16424 / 119.5 FPS |
標準品質 | 19370 / 143.5 FPS |
ファークライ6(ちょっと重い / DX12)
設定 ※レイトレ無効 | 平均FPS / 最小FPS |
最高 | 15 / 13 |
低 | 68 / 56 |
Marvel’s Spider-Man Remastered(ちょっと重い)
設定 ※レイトレ無効 | 平均FPS / 最小FPS |
最高 | 82 / 54.3 |
低 | 94.2 / 63 |
丁寧な仕上がりのエントリー~ミドルレンジ機
Legion 570 Proの価格は、Ryzen 7 6800H + RTX 3050 Tiモデルで16万円台から(2022年10月末時点)。同クラス製品が11~12万円あたりで買えることを考えると、やや割高です。
しかしLegion 570 Proは、ゲーム用にしっかり最適化されている点がポイント。使いやすいインターフェース配置やNキーロールオーバー相当のキーボード、HDR対応ディスプレイなど、ストレスなくゲームを楽しむための配慮が施されています。価格の安い機種はこのあたりが弱く、細かい部分でストレスを感じるかもしれません。
予算が許すのであれば、RTX 3060以上のGPUとHDR対応2560×1600ドットの組み合わせがおすすめです。ワンランク上のゲーム体験を堪能できるでしょう。
Legion 570 Pro
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